中世の塔をリノベーションして、モダンで快適な住まいに
中世学者の夫と建築家の妻のカップルが、丁寧な考証に基づいて12世紀の塔を修復・リノベーション。モダンデザインの名作家具をしつらえて、明るく心地よい住まいに作り変えました。
Greta La Rocca
2017年8月8日
イタリア、ウンブリア州のトーディという町からさほど遠くない丘の上に、12世紀にまで起源を遡る監視塔「トレ・アルモンテ」が建っている。私有の公園と、180本以上のオリーブの林に囲まれた建物は、高さ25メートルで、14世紀後半には居住用に増築され、現在は旅行者用の宿泊施設になっている。所有者は中世学者のエンリコ・メネストさんと、妻で建築家のラファエッラ・マリア・ガベッタさん。リノベーションを監督したのもガベッタさんだ。ガベッタさんは、この場所をより現代的なスタイルにし、歴史的な要素とモダンな要素が混じり合った独特な世界を作り出す装飾を選んだ。中世の建築物の中で、アンティークの家具とモダンデザインの名作や地元の職人による工芸品が見事にマッチしている。
どんなHouzz?
所在地:イタリア、ウンブリア州のトーディ
規模:塔は2ヘクタールの土地に建ち、建物自体の広さは700平方メートル。5階建てで、それぞれが130平方メートルの広さ。
竣工:12世紀
リノベーション:1990年代から2005年にかけて
設計:ラファエッラ・マリア・ガベッタさん
注目ポイント:客室やスイートルームだけでなく塔も、こちらから予約できる。
この建物は1954年に文化財に指定されているため、構造には手を付けなかった。「塔のリノベーションにあたって、元の構造に新たな要素は一切加えていません。歴史的建築に見えるニセモノをつくりだしたわけではありません。時の経過とともに荒廃した部分に手をかけただけです」とガベッタさんは言う。
所在地:イタリア、ウンブリア州のトーディ
規模:塔は2ヘクタールの土地に建ち、建物自体の広さは700平方メートル。5階建てで、それぞれが130平方メートルの広さ。
竣工:12世紀
リノベーション:1990年代から2005年にかけて
設計:ラファエッラ・マリア・ガベッタさん
注目ポイント:客室やスイートルームだけでなく塔も、こちらから予約できる。
この建物は1954年に文化財に指定されているため、構造には手を付けなかった。「塔のリノベーションにあたって、元の構造に新たな要素は一切加えていません。歴史的建築に見えるニセモノをつくりだしたわけではありません。時の経過とともに荒廃した部分に手をかけただけです」とガベッタさんは言う。
塔は5階建てで、2003年に設置したエレベーターで楽に上まで行ける。1階には広いリビングルームとキッチン、読書室があり、2階にはメネストさんの図書室がある。この図書室は、学術研究者のみ利用することができる。
他の階の仕切りは18世紀から19世紀に作られたもので、そのまま残した。3階には2つのスイートルーム、4階と5階にはそれぞれベッドルーム2つ、バスルーム2つ、リビングルームとキッチンがあるアパートメントがある。
写真は、1階のアーチ型天井のある広いリビングルーム。壁付けの家具と平行に置かれた中央のテーブルは、地元の職人がこの塔にあったオーク材の梁から作ったものだ。ミッドセンチュリーモダンのデザイナー、マルセル・ブロイヤーのレザーチェアが、インテリアによくあっている。
他の部屋の大部分と同様に、ここでもベージュと茶が色使いの中心だ。明るい色は、壁に掛かった絵画のみ。
他の階の仕切りは18世紀から19世紀に作られたもので、そのまま残した。3階には2つのスイートルーム、4階と5階にはそれぞれベッドルーム2つ、バスルーム2つ、リビングルームとキッチンがあるアパートメントがある。
写真は、1階のアーチ型天井のある広いリビングルーム。壁付けの家具と平行に置かれた中央のテーブルは、地元の職人がこの塔にあったオーク材の梁から作ったものだ。ミッドセンチュリーモダンのデザイナー、マルセル・ブロイヤーのレザーチェアが、インテリアによくあっている。
他の部屋の大部分と同様に、ここでもベージュと茶が色使いの中心だ。明るい色は、壁に掛かった絵画のみ。
こちらは3階にある部屋のひとつ、「ホワイト・スイート」(広さ90平方メートル)。アンティークの家具はキングサイズのベッドのみで、他はコンテンポラリーなアイテムを組み合わせている。「私は北欧やデンマークのデザインが好きです。〈スランプ〉のシャンデリアと〈カルテル〉の椅子を選びました」とガベッタさん。
塔内の床はすべてテラコッタのタイルばりだが、2階だけは白いトラバーチンをはっている。「床は傷みがひどい部分のみ、修復や変更を行いました。」
木の梁とテラコッタのタイルが、この部屋の個性をつくりだしている。
塔内の床はすべてテラコッタのタイルばりだが、2階だけは白いトラバーチンをはっている。「床は傷みがひどい部分のみ、修復や変更を行いました。」
木の梁とテラコッタのタイルが、この部屋の個性をつくりだしている。
写真は3階の「ホワイト・スイート」の外にある廊下。
3階には、もうひとつスイートルームがあり、「レッド・スイート」と呼ばれている。壁に掛かっている現代アーティスト、アレッサンドラ・ピエレッリの傑作「シニョーラ・ロッサ」(英語で「レッド・レディ」)にちなんだ室名だ。「ベルベットのドレスは豪華絢爛で、古いインテリアにエレガントな魅力を加えてくれます。また、ソファは、地元のマーケットで見つけた古い鉄のベッドを改造したものです。」
写真は4階にある広さ50平方メートルのリビングルーム。「古いドレッサーは我が家に古くから伝わる家具で、砂岩でできた暖炉は12世紀のもの。マルセル・ブロイヤーの《ワシリーチェア》は、バウハウス時代へのオマージュです」。
塔内のドアはすべてオリジナルだ。「16世紀から19世紀まで、作られた時代はさまざまです。そのため、素材の木の色合いも違っています。」
リノベーションで最も難しかったのは照明だ。「梁が邪魔になるため、照明の設置は決して容易ではありませんでした。バランスのよい照明にするため、鋼鉄製のケーブルを使ってLED器具を固定し、場所によっては、フロアランプを選んで華やかなあかりを演出しました。」
塔内のドアはすべてオリジナルだ。「16世紀から19世紀まで、作られた時代はさまざまです。そのため、素材の木の色合いも違っています。」
リノベーションで最も難しかったのは照明だ。「梁が邪魔になるため、照明の設置は決して容易ではありませんでした。バランスのよい照明にするため、鋼鉄製のケーブルを使ってLED器具を固定し、場所によっては、フロアランプを選んで華やかなあかりを演出しました。」
5階のリビングルームにも、砂岩製の古い暖炉がある。インテリアはル・コルビュジエへのオマージュとしており、彼の有名なソファがひときわ目立つ。額装されたピエトロ・オラジオのカレンダーが、無塗装の壁にさし色を加えている。
照明は埋込み式。石造りの天井の構造がぐらつき、表面にはひびが入り、作り直す必要があったため、可能になった仕様だ。まず金属製の骨組みを作り、クラックや石と石の間に樹脂を注入して補強し、最後に金網を使って安定性を高めた。
「流れるような、暮らしやすい空間です。とても広いにもかかわらず、あらゆるものが手の届くところにある気がします。一方に先祖伝来の家具、もう一方にデザイナー家具を置き、温もりを感じる心地よい家になっています」と話すのは、この記事の写真を撮影した写真家のフランチェスカ・パリアイさん。「この塔は田園地帯にぽつんと建っていて、各方向から光が当たるため、とても明るく、各部屋に見とれるような光が差し込むんです。」
黒いソファ:〈カッシーナ〉の《LC2》(ル・コルビュジエのデザイン)
照明は埋込み式。石造りの天井の構造がぐらつき、表面にはひびが入り、作り直す必要があったため、可能になった仕様だ。まず金属製の骨組みを作り、クラックや石と石の間に樹脂を注入して補強し、最後に金網を使って安定性を高めた。
「流れるような、暮らしやすい空間です。とても広いにもかかわらず、あらゆるものが手の届くところにある気がします。一方に先祖伝来の家具、もう一方にデザイナー家具を置き、温もりを感じる心地よい家になっています」と話すのは、この記事の写真を撮影した写真家のフランチェスカ・パリアイさん。「この塔は田園地帯にぽつんと建っていて、各方向から光が当たるため、とても明るく、各部屋に見とれるような光が差し込むんです。」
黒いソファ:〈カッシーナ〉の《LC2》(ル・コルビュジエのデザイン)
塔のてっぺんには、200平方メートルほどもある広いテラスがある。四方に視界がひらけており、丘の素晴らしい眺めが楽しめる。地元の職人が作ったアウトドア家具が置かれている。シェーズロングやバーベキューグリルの脇には、12人まで座れる大きなテーブルがある。
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