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モダンアートが映える、貴族の屋敷のリノベーション
イタリア南部の町で50年間空き家だった貴族の屋敷を、半年をかけてリノベーション。モダンアートが映えるギャラリーのような美しい家が完成しました。
Giulia Zappa
2017年7月31日
イタリアのガラティーナにある、ヴォールト(アーチ天井)が特徴的な18世紀の貴族の屋敷〈モンジョ ・デッレファンテ〉に暮らすのは、ミラノ出身のコレクターのふたり。ちょっと変わったロケーションだが、ミッドセンチュリーから現代の作品まで、ふたりがコレクションするアートやデザインのディスプレイにも理想的な住まいが完成した。
どんなHouzz?
住まい手:アントニオ・スコラーリさんとクリスチャン・ピッツィニーニさん
所在地:南イタリア、「かかと」の部分にあるレッチェ県の町、ガラティーナ
竣工:1723年
改修:2013年
設計:〈ピッツィニーニ・スコラーリ・コミュニカツィオーネ〉
規模:延床面積約400平方メートルの3階建て
友人による偶然の紹介がきっかけとなって、風光明媚なサレント地方に家を買うことを思い立ったスコラーリさんとピッツィニーニさん。都会から遠く、静かで、東西を海に面して風が強い、そんなサレント地方の人気は近年高まってきているが、ふたりもすっかりこの土地に魅了されてしまった。その後まもなく、小さな町ナルドに最初のアパートメントを購入。この住まいを舞台に、地元の風景とミニマルでコンテンポラリーなスタイルを融合したまったく新しいインテリアへのアプローチを試していった。
住まい手:アントニオ・スコラーリさんとクリスチャン・ピッツィニーニさん
所在地:南イタリア、「かかと」の部分にあるレッチェ県の町、ガラティーナ
竣工:1723年
改修:2013年
設計:〈ピッツィニーニ・スコラーリ・コミュニカツィオーネ〉
規模:延床面積約400平方メートルの3階建て
友人による偶然の紹介がきっかけとなって、風光明媚なサレント地方に家を買うことを思い立ったスコラーリさんとピッツィニーニさん。都会から遠く、静かで、東西を海に面して風が強い、そんなサレント地方の人気は近年高まってきているが、ふたりもすっかりこの土地に魅了されてしまった。その後まもなく、小さな町ナルドに最初のアパートメントを購入。この住まいを舞台に、地元の風景とミニマルでコンテンポラリーなスタイルを融合したまったく新しいインテリアへのアプローチを試していった。
それから数年後、ふたりはもっと広くてスケールが大きく、コレクションアイテムをディスプレイできるような場所に引っ越したいと考えるようになった。そのためにぴったりのロケーションだと思ったのが、ナルドからもほど近い、バロック様式の街並みが残る小さな町、ガラティーナだ。ここはプッリャ州のほかの町に比べると、まだ観光客にもあまり知られていない。そんなとき幸運にも、ガラティーナの歴史的街区にある壮麗な邸館で、50年間だれも住んでいなかったパラッツォ・モンジョ ・デッレファンテの片翼を購入する機会が巡ってきた。空間の美しさと、さまざまな可能性を感じさせる規模の大きさに加えて、ふたりにとってなにより印象的だったのは、ピアノ・ノビーレ(2階にあたり、大広間や寝室が置かれる)と、珍しいつくりの3階とのコントラストだった。3階は窓が大きく、ひとつながりの空間になっているため、どことなくモダンな印象がある。
1階の大きなエントランスホールは、半年にわたるリノベーションを経て、強烈なインパクトあるスペースとなった。星型ヴォールトの天井が見下ろす空間を、石炭のような濃いグレーでペイントし、屋外から室内への移行をドラマチックに演出。ホールの奥にはアーティストのジョヴァンニ・ラモルゲーゼによるインスタレーションが置かれ、ミステリアスな雰囲気を強調している。
ユニークな建物からインスピレーションを受け、オーナーたちはここでおおぜいの人を招いた文化イベントを開催することを思いついた。2015年から、「ルーチェ(光)」(2015)、「ルーチェ01」(2016)と、夏になるといくつかの部屋を使って、光をテーマにした現代アートの展覧会を開催している。
ユニークな建物からインスピレーションを受け、オーナーたちはここでおおぜいの人を招いた文化イベントを開催することを思いついた。2015年から、「ルーチェ(光)」(2015)、「ルーチェ01」(2016)と、夏になるといくつかの部屋を使って、光をテーマにした現代アートの展覧会を開催している。
2階のピアノ・ノビーレでは、アート作品が空間を圧迫しないように配慮してディスプレイされている。壮観なパヴィリオン・ヴォールトの下にあるのは、なめらかなピーコックブルーのチェア、リートフェルトの«赤と青の椅子»、そして部屋の中心となっているテーブル。厳選されたこれらの家具が句読点のように空間を整えている。 ヴォールトを横切って伸びる赤いリボンのような印象的な彫刻は、イタリアの彫刻家エドゥアルド・アビヒャーの作品だ。
リビングルームに続き、4つの部屋と、ホームオフィス、ゲスト用の寝室が3つある。友人たちが訪れるほか、この素晴らしい邸宅を見に訪れる観光客が宿泊することもある。
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ピアノ・ノビーレ(主階)にあるベッドルーム
リビングエリアも寝室も、すべての部屋に共通しているテーマは1950年代スタイルだ。ミッドセンチュリー初期のアイテムを、イタリアのアートやデザインに重心をおいて取り入れているため、建物の持つ建築的な壮麗さと、調度のテーパードしたシルエットとのあいだに生まれるコントラストがおもしろい。これら2つの要素が混ざり合うことで、家に備わっている威厳ある雰囲気が少しやわらぎ、良いバランスになっている。オリジナルのセメントタイルの床と、温かみのある壁の色が、それぞれの部屋のインテリアを引き立てる。
リビングエリアも寝室も、すべての部屋に共通しているテーマは1950年代スタイルだ。ミッドセンチュリー初期のアイテムを、イタリアのアートやデザインに重心をおいて取り入れているため、建物の持つ建築的な壮麗さと、調度のテーパードしたシルエットとのあいだに生まれるコントラストがおもしろい。これら2つの要素が混ざり合うことで、家に備わっている威厳ある雰囲気が少しやわらぎ、良いバランスになっている。オリジナルのセメントタイルの床と、温かみのある壁の色が、それぞれの部屋のインテリアを引き立てる。
最上階は地元の方言で「スッピンネ」と呼ばれ、屋根と主階のあいだを隔てるスペースという意味だ。大きなオープンプランの空間で、完全リノベーションをしている。限られたスペースのほうが暖房の効率が良いため、冬の滞在中は、アントニオさんとクリスチャンさんはこの階で過ごすことが多い。低い天井が、親密で温かい雰囲気をつくり出し、大きな窓からは冬でも明るい日差しがさんさんと部屋に入る。こちらでも、1950年代のデザインアイテムが厳選されてディスプレイされている。イームズのラウンジチェアとオットマンのほか、1950年代もののカウチ、ボルサーニがテクノ社から発表した《P40チェア》(色はティールブルー)、ジオ・ポンティのサイドボード、スティルノヴォのウォールライト(右側の壁のいちばん手前)などがある。
最上階では、それぞれの部屋のあいだに段差があり、すべての部屋が異なる平面上に位置している。そのため、部屋によって天井の高さも異なる。
リビングエリアから数段ステップを下りれば、キッチンがある。ステンレススチールは、昔ながらのクラシカルなアイテムとも、すっきりとミニマルな空間のラインとも相性が良く、コンテンポラリーな雰囲気に。
美しい光を室内に満たしてくれるスカイライトの下に、見事なコレクターズアイテムを発見。オズヴァルド・ボルサーニのサイドボードで、取っ手のデザインはルチオ・フォンタナだ。1950年代初期の、デザイナーとアーティストとの実りあるコラボレーションの一例だろう。サイドボードの上には、ルイジ・カッチャ・ドミニオーニによるスコンス照明がある。
ダイニングルームでは、スコラーリさん自身がデザインしたテーブルの周りを、ヴィットリオ・ノビリの《メデア》チェアが囲む。壁に掛かっているお皿のセットはジオ・ポンティが〈チェラミケ・フランコ・ポッツィ〉のためにデザインした1967年の製品。
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最上階とつながるテラスからは、ガラティーナ中心部の街並みが見える。この屋外スペースにさえ、土着のクラシカルな要素と、コンテンポラリーデザインとの相互作用が表れている。ニュートラルカラーのクッションが置かれたレッチェ産ライムストーンのベンチの向かいには、ジャスパー・モリソンが〈カッペリーニ〉のためにデザインした《シンキング・マンズ・チェア》の目の覚めるようなブルーが見える。
同じように、バスルームにも、歴史とモダンなスタイルとの共存が感じられる。ブレシアにある〈ステュディオ・カランタ〉で購入した引き出し付きチェストは、ジョヴァンニ・ラモルゲーゼによる黒いセラミック作品や、壁に掛かったヘルムート・ピッツィニーニの作品とよく似合う。
しかし、このインテリアも、オーナーの気分次第でいつだって変わる可能性がある。彼らにとって、住まいとはクリエイティブなカンヴァスで、常に自分たちの新たなスタイルを試すための場所なのだ。さらに、パラッツォ・モンジョのほかにも計画しているプロジェクトがある。ふたりは最近、友人たちの協力を得て16世紀の邸宅を手に入れた。こちらでも、ユニークな視点と型にとらわれないスタイルで、地元に残る名建築の新たな魅力を見せてくれるだろう。
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ご感想をおきかせください。
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