インテリアの工夫でできる、地震や災害に強い家づくり
日本では、地震や災害は避けられないもの。災害に強い住まいをつくるために、インテリアでできる工夫はまだまだたくさんあります。
町田瑞穂ドロテア
2018年6月19日
地震国の日本では、家づくりにおいて、防災を考えないわけにはいきません。住宅そのものの耐震化はもちろん重要ですが、インテリアの工夫によって、災害時の被害を少なくしたり、避難生活の負担を減らす工夫をすることは可能です。防災対策としてインテリアでできることを考えてみましょう。
避難動線の確保
動線は、普段の生活の快適さをつくる上で大切ですが、特に防災の観点からは、何よりも重要です。まずは、何か起きたときに逃げられるルートを確保すること。自分が避難するときに使うルートがモノで塞がっているのはとても危険です。
普段から、動線となる空間にはモノをレイアウトしない、置かないことが大切です。
動線は、普段の生活の快適さをつくる上で大切ですが、特に防災の観点からは、何よりも重要です。まずは、何か起きたときに逃げられるルートを確保すること。自分が避難するときに使うルートがモノで塞がっているのはとても危険です。
普段から、動線となる空間にはモノをレイアウトしない、置かないことが大切です。
収納はビルトインを中心に
避難動線をしっかり確保するために重要になるのが、収納計画です。収納は基本的にビルトイン(造り付け)で、たっぷりととっておけば、モノをしっかり収納でき、地震時にも倒れてくることがありません。
避難動線をしっかり確保するために重要になるのが、収納計画です。収納は基本的にビルトイン(造り付け)で、たっぷりととっておけば、モノをしっかり収納でき、地震時にも倒れてくることがありません。
光をとりいれる設計
夜に災害がおきたとき、あかりがないと動きづらく、二次的な事故につながる危険があります。そこで、被災時に光が確保できる設計が重要です。
特にマンションの場合、窓際だけでなく家全体にどれだけ自然光を上手にとりこめるか、が鍵となります。例えば、マンションの共用廊下が内廊下になっているなど閉鎖的な場合。蓄電式照明など、災害時に使える照明を設置しておくこともひとつ。
さらに、これからの時代は、新築マンションの設計段階において、平面計画における各戸と共用部の配置によって、防災の観点から工夫できることがあります。また、既存のマンションでも、防災を考えて、廊下側に窓を新設するといった対策も可能です。
夜に災害がおきたとき、あかりがないと動きづらく、二次的な事故につながる危険があります。そこで、被災時に光が確保できる設計が重要です。
特にマンションの場合、窓際だけでなく家全体にどれだけ自然光を上手にとりこめるか、が鍵となります。例えば、マンションの共用廊下が内廊下になっているなど閉鎖的な場合。蓄電式照明など、災害時に使える照明を設置しておくこともひとつ。
さらに、これからの時代は、新築マンションの設計段階において、平面計画における各戸と共用部の配置によって、防災の観点から工夫できることがあります。また、既存のマンションでも、防災を考えて、廊下側に窓を新設するといった対策も可能です。
インテリアで光を回す
最近の壁紙は、メタリック調のものが増えました。室内が華やかになり、少ない照度でも空間全体に光が回るので、明るく感じる効果がうまれます。
- 光る壁紙
最近の壁紙は、メタリック調のものが増えました。室内が華やかになり、少ない照度でも空間全体に光が回るので、明るく感じる効果がうまれます。
- ミラー
一方、日本は昔から、住宅は開口部が多く壁面が小さいので、これまではそうした工夫はあまり必要ありませんでした。しかし、最近のマンションやRC造など、壁面が増えた現代の住宅では、ミラーづかいは活用すべき手法です。
照明は軽いものを選ぶ
照明器具も防災を考えて選びたいもの。吹き抜けや応接間には華やかなシャンデリアを飾りたくなりますが、地震で落下する危険は避けられません。ガラス製のものは落下すると飛び散った破片がケガのもとになります。そこで、樹脂などの軽量素材のものを選ぶのがおすすめです。
写真は〈町田ひろ子アカデミー〉が〈東急ホームズ〉とともに手がけた「美防災」(美しく防災する)をテーマにした住宅です。〈umbel〉というメーカーが手がけた、ミウラ折りによるポリプロピレン製の軽くて華やかなデザイン照明を選んでいます。
照明器具も防災を考えて選びたいもの。吹き抜けや応接間には華やかなシャンデリアを飾りたくなりますが、地震で落下する危険は避けられません。ガラス製のものは落下すると飛び散った破片がケガのもとになります。そこで、樹脂などの軽量素材のものを選ぶのがおすすめです。
写真は〈町田ひろ子アカデミー〉が〈東急ホームズ〉とともに手がけた「美防災」(美しく防災する)をテーマにした住宅です。〈umbel〉というメーカーが手がけた、ミウラ折りによるポリプロピレン製の軽くて華やかなデザイン照明を選んでいます。
床はラグやカーペットで落下物の破損を防止
硬い石材や木材の床の場合は、落下物が割れる危険があるため、モノが落ちそうなところにはカーペットやラグを敷いておくのも1つの対策になります。特に、睡眠中は災害が起こってもとっさに動けないので、人の動線となるエリアだけでも敷物を置くと効果があります。
硬い石材や木材の床の場合は、落下物が割れる危険があるため、モノが落ちそうなところにはカーペットやラグを敷いておくのも1つの対策になります。特に、睡眠中は災害が起こってもとっさに動けないので、人の動線となるエリアだけでも敷物を置くと効果があります。
コルクは防災のためのおすすめ床素材
防災という観点では、コルクの床材もおすすめです。クッション性があり、落下物が破損するリスクが低い素材です。韓国、モンゴル、ロシアなどの寒い国でよく使われていることからもわかるように、断熱性が高く、床暖房がなくても冷たく感じません。子供部屋や床座で使う空間、ヨガルームなどにもおすすめの床材です。
留意点としては、湿度に敏感に反応するので、工事には配慮が必要となります。天然素材なので、角が弱く欠けやすかったり、小さな割れが出やすいのも事実です。それでも、エコな素材であり、耐久性は他の素材に引けを取りません。最近は、表面加工によって強化されたタイプも増えています。コストもフローリング用の無垢材と変わりません。
防災という観点では、コルクの床材もおすすめです。クッション性があり、落下物が破損するリスクが低い素材です。韓国、モンゴル、ロシアなどの寒い国でよく使われていることからもわかるように、断熱性が高く、床暖房がなくても冷たく感じません。子供部屋や床座で使う空間、ヨガルームなどにもおすすめの床材です。
留意点としては、湿度に敏感に反応するので、工事には配慮が必要となります。天然素材なので、角が弱く欠けやすかったり、小さな割れが出やすいのも事実です。それでも、エコな素材であり、耐久性は他の素材に引けを取りません。最近は、表面加工によって強化されたタイプも増えています。コストもフローリング用の無垢材と変わりません。
非常食や防災用品は「ローリングストック」で使いながら備蓄
非常時に必要な水や食料品、日用品の備蓄も重要です。とくに東京都では、自宅で居住の継続ができる状況であれば、在宅避難が推奨されています。となれば、備蓄はしっかりとしておきたいもの。理想的にはパントリーを設置して非常食や水、飲料、日用品を収納し、賞味期限が切れないように、適宜消費しながら新しいものをいれていくローリングストックを実践する必要があります。
非常時に必要な水や食料品、日用品の備蓄も重要です。とくに東京都では、自宅で居住の継続ができる状況であれば、在宅避難が推奨されています。となれば、備蓄はしっかりとしておきたいもの。理想的にはパントリーを設置して非常食や水、飲料、日用品を収納し、賞味期限が切れないように、適宜消費しながら新しいものをいれていくローリングストックを実践する必要があります。
非常時に使いやすいトイレは?
非常時に、被災者の衛生状態を左右するのが、トイレの状況です。東日本大震災を経験した〈町田ひろ子アカデミー仙台校〉の講師たちによれば、断水のときは、タンクレストイレよりウォータータンク型のほうが流しやすかったそうです。デザイン性の観点から、最近はタンクレストイレが人気を集めていますが、防災の観点で考えるべき点もあるかもしれません。
非常時に、被災者の衛生状態を左右するのが、トイレの状況です。東日本大震災を経験した〈町田ひろ子アカデミー仙台校〉の講師たちによれば、断水のときは、タンクレストイレよりウォータータンク型のほうが流しやすかったそうです。デザイン性の観点から、最近はタンクレストイレが人気を集めていますが、防災の観点で考えるべき点もあるかもしれません。
におい対策はアロマキャンドルで
においは避難生活を送るときに大きな問題になります。仙台で被災した講師たちの体験では、消臭にアロマキャンドルが有効だったそうです。
さらに、キャンドルは、消臭効果に加え、夜はあかりになるという点でも、一石二鳥でした。悪臭は生活のクオリティを大きく下げることを考えれば、各部屋に1つずつアロマキャンドルを置いておくことは、立派な防災対策になります。
ただし、キャンドルは火を扱うもの。使用する際には、注意点もあります。二次災害にならないように使用上の注意を理解して、十分に気をつけてくださいね。
においは避難生活を送るときに大きな問題になります。仙台で被災した講師たちの体験では、消臭にアロマキャンドルが有効だったそうです。
さらに、キャンドルは、消臭効果に加え、夜はあかりになるという点でも、一石二鳥でした。悪臭は生活のクオリティを大きく下げることを考えれば、各部屋に1つずつアロマキャンドルを置いておくことは、立派な防災対策になります。
ただし、キャンドルは火を扱うもの。使用する際には、注意点もあります。二次災害にならないように使用上の注意を理解して、十分に気をつけてくださいね。
戸建てを新築するなら考えたい防災方法
最後に、やや大掛かりになりますが、戸建住宅を新築するタイミングなら、防災シェルターをつくってしまう、という選択肢もあります。シェルターというと、家とは別につくるもの、と思いがちですが、前述の「美防災」の住宅では、建物全体の強度を上げつつ、建物内のパントリーを、災害時にシェルターとして使えるように設計しています。(写真のダイニングの右手奥に見える入り口の先が、パントリー兼シェルター)。
具体的には、2x4工法により建物全体の耐震性を高め、火事対策として、不燃構造パネルでつくったシェルター(パントリー)をつくりました。シェルターは、基礎に緊結されているので、津波・水害も想定したモデルになっています。
備えあれば憂いなし。できることから始めてみてください。
最後に、やや大掛かりになりますが、戸建住宅を新築するタイミングなら、防災シェルターをつくってしまう、という選択肢もあります。シェルターというと、家とは別につくるもの、と思いがちですが、前述の「美防災」の住宅では、建物全体の強度を上げつつ、建物内のパントリーを、災害時にシェルターとして使えるように設計しています。(写真のダイニングの右手奥に見える入り口の先が、パントリー兼シェルター)。
具体的には、2x4工法により建物全体の耐震性を高め、火事対策として、不燃構造パネルでつくったシェルター(パントリー)をつくりました。シェルターは、基礎に緊結されているので、津波・水害も想定したモデルになっています。
備えあれば憂いなし。できることから始めてみてください。
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備えあれば憂いなし…その通り…今から始めよう!
madamball様 記事をお読みいただき、コメントを頂戴しましたこと、感謝申し上げます。
当方の言葉足らずを反省いたしました。仰せのように余震のことを考慮すると通常よりもよりキャンドルの取り扱いに注意する必要がありますよね。
文面に書き加えたいと思います。貴重なご意見をありがとうございます。