My Houzz:里山暮らしを仲間たちと楽しむ、建築家夫妻の自宅兼アトリエ
ものづくりに携わる人々の移住の地として人気の丹波篠山。地元の木材や石材を使い、豊かな自然に囲まれた里山の景色を望む、訪れる人々を温かく迎え入れる家。
Miki Anzai
2016年12月9日
「どこに住みたい?」「どんなところに住みたい?」という問いに対し、夫婦共通の答えは「常に自然を感じられる田舎だった」と話す、建築士の半田俊哉さん。緑豊かで、黒豆や栗の産地としても有名な兵庫県の丹波篠山を選んだのは、同じく建築士である奥様の平田智子さんの出身地だから。それだけでなく、大阪市内まで電車や車で1時間足らずなのに、目の前に広がる田園風景を、まるで自分たちの庭のように眺めながら暮らせる好立地があったからだという。
近年この都市に近い農村に、ものづくりをする人々が多数移住してきているのも、二人の決断を後押しした。「田舎にこんな家があったらいいな」と誰もが思う家。そして、「自分たちだけでなく、訪れる人が、和気藹々と過ごせる『みんなの田舎』になるような場」として設計したという半田邸。二人が経営する〈エイチ・アンド一級建築士事務所〉との、公私の溶け合い具合もほどよい、「環境に対して開き、人を迎え入れる」建物だ。
近年この都市に近い農村に、ものづくりをする人々が多数移住してきているのも、二人の決断を後押しした。「田舎にこんな家があったらいいな」と誰もが思う家。そして、「自分たちだけでなく、訪れる人が、和気藹々と過ごせる『みんなの田舎』になるような場」として設計したという半田邸。二人が経営する〈エイチ・アンド一級建築士事務所〉との、公私の溶け合い具合もほどよい、「環境に対して開き、人を迎え入れる」建物だ。
一日の始まりを最高の景色で迎えられるように計画した、半田さんのいちばんのお気に入りのリビング・ダイニング。春には満開の桜が窓を覆い尽くし、葉がすべて落ちる冬には、遠くの山々まで見渡せる。八重桜の並木道の向こうに広がる田畑は、厳寒に耐える土の状態から、青々とした緑へ。やがて、稲穂が黄金色の波となり、四季折々で姿を変える。
どんなHouzz?
居住形態:新築(更地購入)
住まい手:半田俊哉さん、平田智子さん夫妻、子供2人
所在地:兵庫県篠山市
構造:木造 地上2階建て
設計:エイチ・アンド一級建築士事務所
施工:株式会社いとうともひさ
造園:露地屋
延床面積:122.77平方メートル
敷地面積:292.74平方メートル
竣工:2016年5月
どんなHouzz?
居住形態:新築(更地購入)
住まい手:半田俊哉さん、平田智子さん夫妻、子供2人
所在地:兵庫県篠山市
構造:木造 地上2階建て
設計:エイチ・アンド一級建築士事務所
施工:株式会社いとうともひさ
造園:露地屋
延床面積:122.77平方メートル
敷地面積:292.74平方メートル
竣工:2016年5月
平屋かと見まごうばかりの、ゆったりとおおらかな外観。裏の山と建物がなじむように、一枚の大きな片流れの屋根を、山の斜面に沿って計画した。
外壁が西洋漆喰の左側が事務所で、杉材の右側が住宅だ。杉材は本来、あまり水に強い素材ではないが、「軒をしっかり出すことで、建具や外壁が傷まないように配慮した」と半田さん。軒先の高さも、訪れる人が建物に対して「親近感を持てる高さ」に設計されている。
外壁が西洋漆喰の左側が事務所で、杉材の右側が住宅だ。杉材は本来、あまり水に強い素材ではないが、「軒をしっかり出すことで、建具や外壁が傷まないように配慮した」と半田さん。軒先の高さも、訪れる人が建物に対して「親近感を持てる高さ」に設計されている。
造園は、山から採ってきた樹木を使いながら、周囲の自然とは一線を画す凛とした雰囲気に。山の中で陽光を求めて縦横無尽に伸びていた木々は、一見アンバランスに見えるが、それらを「生け花」のように見立てている。
家づくりのスタートは、「眺めのよいキッチンを計画することだった」と智子さん。朝食の準備から、とても豊かな気持ちになれるという、とっておきのスペースになった。
キッチン手前のカウンターには、智子さんが料理をしている間、子供たちが来て遊んだり、話しかけたりする。台の高さをダイニングテーブルと同じに合わせたので、パーティーのときにはテーブルを移動し、1つの大テーブルとして利用している。
キッチン手前のカウンターには、智子さんが料理をしている間、子供たちが来て遊んだり、話しかけたりする。台の高さをダイニングテーブルと同じに合わせたので、パーティーのときにはテーブルを移動し、1つの大テーブルとして利用している。
眺めのよい1階(平面図下)の南側をくつろげる空間にして、北側をピアノコーナー、主寝室、水まわりなど、落ち着いたこもり感のある居場所に。2階(平面図上)は、外と少し距離を置き、環境を優しく感じられる場所にした。
構造材、造作材、床材の杉は、ほぼすべて丹波篠山の杉材を使用。地元の材料を使うことで、「どこか、地面から建物が生えているような気すらします」と半田さん。
玄関やポーチも、地元の丹波鉄平石を使い、作業時には友人も交えて敷きつめた。「身近な人と材料のつながり」を、文字通り形にしている。
玄関やポーチも、地元の丹波鉄平石を使い、作業時には友人も交えて敷きつめた。「身近な人と材料のつながり」を、文字通り形にしている。
外の石畳の玄関ポーチは、来客時には庭のように使って、バーベキューなどの場にしている。地面から建具までの高さを、400mmほど上げてつくったので、開放時にはここに腰かけることもできる。
ポーチに置いてある子供用の椅子は、半田さんが天井の梁の余りを自ら加工して制作した。大人も座れるので、来客時には大活躍するという。机は、もともとは大人用の椅子だったもの。
屋根の軒を深くしたので、雨が少々降っても窓を開けたままにでき、ポーチも利用できる。また、この部分の屋根にだけガラスを嵌めこむことで、リビングとポーチの両方の採光を満たす役割も果たしている。
ポーチに置いてある子供用の椅子は、半田さんが天井の梁の余りを自ら加工して制作した。大人も座れるので、来客時には大活躍するという。机は、もともとは大人用の椅子だったもの。
屋根の軒を深くしたので、雨が少々降っても窓を開けたままにでき、ポーチも利用できる。また、この部分の屋根にだけガラスを嵌めこむことで、リビングとポーチの両方の採光を満たす役割も果たしている。
冬は薪ストーブだけで、建物全体が暖まる工夫が凝らされている。吹き抜けに面した2階のフリースペースに、サーキュレーターを設置し、薪ストーブから上昇してくる熱気を1階に下ろしているのだ。また、建物全体の天井をつなげ、1、2階の間仕切りを天井まで伸ばさないことで、暖気がすべての部屋に行き渡るようにも計画されている。薪ストーブを焚けば裸足で歩けるほど、杉の床は暖かいそうだ。
いっぽう、夏は冷房を使わず、温かい空気が吹き抜けを介し、2階の窓から外部へ抜けるよう、垂直方向の風の流れをつくっている。
いっぽう、夏は冷房を使わず、温かい空気が吹き抜けを介し、2階の窓から外部へ抜けるよう、垂直方向の風の流れをつくっている。
テーブルは、杉と同じ製材所で眠っていた欅材をもらい、夫妻でデザインし、自ら組み立てた。高さは椅子に座った目線で、空まで含めた外の景色がすべてが見えるように計算されている。窓の高さも、テーブルに合わせ、低めに設定した。
造り付けの棚は、子供たちと手作りしたクリスマスの飾りを置いたり、季節の行事のないときには、ケニア旅行で購入した木製のキリンの置物などを飾っている。
造り付けの棚は、子供たちと手作りしたクリスマスの飾りを置いたり、季節の行事のないときには、ケニア旅行で購入した木製のキリンの置物などを飾っている。
土間を挟んで、自宅部分(左)と事務所(右)を適度に分断している。もともと、顧客と家族の動線が交わらないように計画した家ではあったが、最近は「来客のほとんどを、自宅のダイニングへご案内し、空間プラス生活しているシーンを体感してもらっています」と半田さん。
天体望遠鏡は、丹波篠山の夜空の星があまりにもきれいなので、地元の古道具屋で購入して、家族で利用しているのだそう。「木製の三脚に一目惚れした」という、ヴィンテージものだ。
天体望遠鏡は、丹波篠山の夜空の星があまりにもきれいなので、地元の古道具屋で購入して、家族で利用しているのだそう。「木製の三脚に一目惚れした」という、ヴィンテージものだ。
木造家屋であれば通常隠れている天井裏の梁を、「隠すなんてもったいない」と、あらわし構造にした半田夫妻。見た目に重すぎず、繊細ながら、力強く感じられるようにと、材料の幅は一般的な105mmではなく、60mmにした。
2階の奥は、現在は11畳余りのフリースペースだが、将来は3等分した窓の中央部分(固定)を境に、2つの子供部屋に変更する予定だ。
2階の奥は、現在は11畳余りのフリースペースだが、将来は3等分した窓の中央部分(固定)を境に、2つの子供部屋に変更する予定だ。
事務所の作業机からも、南と西に広がる景色を存分に楽しめる。
「人の幸せは素朴な日常の中にある」と考えている半田夫妻。この自邸のように、2人が設計する住宅は、「奇抜なデザイン、驚くような空間ではなく、素朴、かつ人間と同じようによい年の取り方をするもの」を心がけているという。
どの空間にいても、居心地のよい建物には、家族はもちろんのこと、人々が気軽に集い、笑顔や笑い声が絶えない。
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