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My Houzz:建築士のカップルが手がけた、センスのいいオフグリッドのタイニーハウス
大学で出会った建築士同士のカップルが、新居として選んだのは、オフグリッドで移動可能なタイニーハウスでした。
Tamara Armstrong
2016年9月6日
手の届く予算、十分な床面積の確保、環境への配慮。建築士同士のカップル、ララ・ノーベルさんとアンドリュー・カーターさんがトレーラーを基礎にコンテンポラリーなタイニーハウスを建てる際に重視したのは、この3点だった。
施工業者のグレッグ・ソーントンさんと手を組み、二人は現代的なライフスタイルの快適さを犠牲にすることなく、考え抜いた設計を形にした。この家で暮らしはじめて1ヵ月。二人はいま、予算を抑えながら自分の家を持ちたいと願う人やオフグリッド生活を検討している人をはじめ、オーストラリアの人々にタイニーハウスという選択をより広く知ってほしいと考えている。
施工業者のグレッグ・ソーントンさんと手を組み、二人は現代的なライフスタイルの快適さを犠牲にすることなく、考え抜いた設計を形にした。この家で暮らしはじめて1ヵ月。二人はいま、予算を抑えながら自分の家を持ちたいと願う人やオフグリッド生活を検討している人をはじめ、オーストラリアの人々にタイニーハウスという選択をより広く知ってほしいと考えている。
どんなHouzz?
住まい手:ララ・ノーベルさんとアンドリュー・カーターさん(みずから設計と施工を手がける)
所在地:オーストラリア、クイーンズランド州ブリスベン
規模:18平方メートル(これにデッキ部分が加わる)
予算:10万オーストラリアドル(約790万円)
注目ポイント:オーストラリアの平均的な住宅面積はこの家の13倍。家のサイズは駐車スペースでいうと2台分。トレーラーとして運転でき、ガソリンスタンドでの洗車も可能。
ララさんとアンドリューさんは建築を学んでいた学生時代に知り合い、卒業後は大工仕事の見習いの道へ進む。その後、ソーントンさんと組み、コンパクトな住居の設計と建築を専門にする〈タイニーハウス・カンパニー〉を立ち上げた。
タイニーハウスのトレンドが定着しているアメリカ・ポートランドでの現地リサーチを経てできたこの家は、二人の新居であると同時に、会社としてのモデル住宅でもある。完成後の半年間ですでに9ヵ所を巡回し、クイーンズランド州の野外フェスティバル、ウッドフォード・フォーク・フェスティバルをはじめ、さまざまなイベントで展示してきた。
現在は、ブリスベンの借地に落ち着き、アンドリューさんはユニークな自宅のまわりに亜熱帯植物を取り入れた庭の整備を始めている。
住まい手:ララ・ノーベルさんとアンドリュー・カーターさん(みずから設計と施工を手がける)
所在地:オーストラリア、クイーンズランド州ブリスベン
規模:18平方メートル(これにデッキ部分が加わる)
予算:10万オーストラリアドル(約790万円)
注目ポイント:オーストラリアの平均的な住宅面積はこの家の13倍。家のサイズは駐車スペースでいうと2台分。トレーラーとして運転でき、ガソリンスタンドでの洗車も可能。
ララさんとアンドリューさんは建築を学んでいた学生時代に知り合い、卒業後は大工仕事の見習いの道へ進む。その後、ソーントンさんと組み、コンパクトな住居の設計と建築を専門にする〈タイニーハウス・カンパニー〉を立ち上げた。
タイニーハウスのトレンドが定着しているアメリカ・ポートランドでの現地リサーチを経てできたこの家は、二人の新居であると同時に、会社としてのモデル住宅でもある。完成後の半年間ですでに9ヵ所を巡回し、クイーンズランド州の野外フェスティバル、ウッドフォード・フォーク・フェスティバルをはじめ、さまざまなイベントで展示してきた。
現在は、ブリスベンの借地に落ち着き、アンドリューさんはユニークな自宅のまわりに亜熱帯植物を取り入れた庭の整備を始めている。
7.5×2.4メートルという限られた面積と細長い形状のため、できるだけ広く余裕を感じさせる空間にすることが重要だった。そのために工夫したのが収納とレイアウトだ。
スペースを有効活用するためのすぐれたアイデアが、格納式のベッド。設計と施工には友人のネイサン・ノストーさんの協力を得た。費用がかかるオプションにはなったが、おかげでタイニーハウスでの日々の暮らしは格段に快適になっている。全面が収納になった後ろの壁に巻き上げ装置が収められており、リモコン操作でベッドを下ろせば、ラウンジルームは寝室になる。
キッチンに立ってリモコンで格納式ベッドを操作するララさん。
キッチンに立ってリモコンで格納式ベッドを操作するララさん。
ベッドを天井近くまで上げて収めると、服や靴を入れている壁面の収納キャビネットにアクセスできる。日中、ベッドは上に収めてスペースを確保。デザインや外観の面でも、すっきりとした白のラインと格子を基調にした家の美しさとマッチしている。
ベッドの反対側にあたる天井付近は、2人用のベッドがちょうど収まる居心地のよいロフトスペース。頑丈な移動式のはしごで上れる。奥の壁をダークグレーでペイントして落ち着ける雰囲気を出しながら、ルーバーをつけた小窓を設け、自然光と外の空気を採り込んでいる。
ロフトへ出入りする位置に柵をつければより安全になり、子どもが遊べるスペースが広がると考えている、とララさん。
アンドリューさんが大切にしているレコードのコレクションもロフトに。ここでヘッドフォンをして聞きながら過ごすのが幸せなひとときだ。
リビングエリアから家のほぼ全体が目に入るため、すっきりしたパターンと美しいリズムが家のデザインを通して体現されるよう気を配った。それによって空間が整理され、整然として広く感じられるようになるからだ。「できるだけ広く見通せる空間の確保と、風通しをよくすること、高めの船底天井、そして格子状の建材を使って空間を組み立てる手法。これらを通じてそうした感覚を形にできました」とララさんは話す。
環境への配慮も、二人が設計を考える際に重視した点だ。国産のハードウッドを再利用することで、移動可能なタイニーハウスという新しいスタイルの家にも、ぬくもりと歴史を感じさせる味わいが加わった。
「再利用した木材は、この家で生かす前はクイーンズランド州にあった古いコテージの受木や梁として使われていました。当時の釘の跡が歴史を物語っています」とララさん。同じハードウッド材をドアや窓、デッキの床板、キッチンのワークトップとシェルフにも取り入れ、いずれも白い内装と絶妙なコントラストをなしている。
「再利用した木材は、この家で生かす前はクイーンズランド州にあった古いコテージの受木や梁として使われていました。当時の釘の跡が歴史を物語っています」とララさん。同じハードウッド材をドアや窓、デッキの床板、キッチンのワークトップとシェルフにも取り入れ、いずれも白い内装と絶妙なコントラストをなしている。
ララさんの母親アニーさんがよく立ち寄っては、お茶を手にひとときを過ごしていく。スペースに余裕があるため、小さな家でも十分に楽しい時間を過ごせる。メインのエントランスに面したリビングエリアでは、来客にゆったり座ってもらえる。ララさんによると、デッキや庭を含めた家全体で受け入れたゲストは、最大で一度に30人にのぼるとか。
フレームに入れたアートはララ・ノーベルさんの作品
フレームに入れたアートはララ・ノーベルさんの作品
リビングスペースをうまく活用する鍵になっているのが、こちらの収納ユニット。収納としての機能のほか、コーヒーテーブルとして、また必要なときはベンチとしても使え、3役を果たす。
キッチンには冷蔵庫、オーブン、コンロ、シンクといった普通の家に必要な設備がすべてそろう。スプラッシュバックに大判の鏡を用い、スペースを広く感じさせる工夫も。キッチンの向かい側はコンパクトなランドリー。
食事のときは、デッキに面した大きな窓の下にあるテーブルを引き出して使う。
テーブルについてから皿やカトラリーなどが必要になったときは、手を伸ばせばすぐに引き出しから取り出せる。
テーブルを使うとき以外、ダイニング用の椅子は外のデッキに置いている。ただしこの椅子、ララさんの友人から借りているもので、この家にぴったりくる椅子を探しているところだそう。
テーブルを使うとき以外、ダイニング用の椅子は外のデッキに置いている。ただしこの椅子、ララさんの友人から借りているもので、この家にぴったりくる椅子を探しているところだそう。
キッチンの上には壁に沿って天井まで木のシェルフを取り付けた。収納としての役割に加え、二人がお気に入りのものをディスプレイする場所にもなっている。現在の土地に落ち着いてからようやく、素朴なハンドメイドの陶器やガラス製品といった実用性を備えたアイテムをここに飾れるようになったという。
家のつくりはオフグリッド生活に適した設計を念頭においている。生活排水はすべて庭で再利用できるよう処理するほか、コンポスト式トイレとソーラーパワーシステムも組み込んでいる(現時点では外部からの電力を使用)。今、二人が次にほしいと考えているのがソーラーパネルだ。生活排水はホースを通じ、家の裏手の緑あふれる庭で使う。
キッチンとランドリーの間にある引き戸を開けると、バスルームとトイレがある。バスルームの壁にはロフト奥の壁と同じダークグレーを用い、狭く感じさせずに落ち着いた雰囲気を出している。また、床から天井近くまでルーバー窓を大きくとり、風通しをよくして自然光を採り入れている。
十分な広さのあるシャワーブース。ガラス扉は内側と外側のどちらにも開けられるつくりにし、スペースを機能的に使えるよう配慮した。壁のタイルはキッチンの窓下に入れた黒いタイルと同じデザイン。バスルームのもうひとつの窓がここに設けてあり、小さな窓辺は観葉植物を置くのにぴったり。
コンポスト式のトイレを導入した結果、トイレに水を使わずにすむほか、栄養分の豊かな土が作れる。「まさに自然のトイレなのですが、取り入れてよかったと思っています。とてもいいシステムで、においの問題もありません」とララさん。
コンポスト式のトイレを導入した結果、トイレに水を使わずにすむほか、栄養分の豊かな土が作れる。「まさに自然のトイレなのですが、取り入れてよかったと思っています。とてもいいシステムで、においの問題もありません」とララさん。
タイニーハウスの設計にあたってはたくさんの難関があった、と二人は話す。「住宅としての機能をフルに備えた家を7.5×2.4メートルの広さに収めること自体がまず難題です。これに、重量を分散させなくてはいけないことや、移動の問題、オフグリッドシステムの導入、大きな家を好むオーストラリアの一般的な志向といった要素を考慮に入れると、かなり大きなチャレンジだったのがわかってもらえると思います」とアンドリューさんは説明する。
設計も施工もみずから手がけたことで、面白いプロセスを経験でき、それぞれがいくつもの役割をこなした、とララさんは振り返る。「私たちは施主であると同時に、設計者であり、施工業者、プロジェクトマネジャー、大工見習いでもあったわけです。それぞれの立場によってときには選択肢がぶつかりあう場合もあって、二人の間で――ときにはほかの人も交えて――議論もしましたが、それがこのプロジェクトの面白さでもあったと思います。」ララさんとアンドリューさん、施工業者のグレッグ・ソーントンさんの三人は、ときに相反するさまざまな条件や意向を調整していくうち、ひとつの問題を多角的にとらえることを学んだという。
家の外に隣接する組み立て式のデッキは、使えるスペースを広げるという点で重要な構造であり、二人が気に入っている部分でもある。別の場所へ移動するときは2時間ほどでデッキをたため、別途トレーラーに収納して運べる。
家本体とデッキはすべて90センチ四方の格子状の建材をベースに構成されていて、素地をそのまま利用したLVL(単板積層材)フレームから、キッチンのキャビネット、ドアや窓の配置までがこれを元にしている。
家本体とデッキはすべて90センチ四方の格子状の建材をベースに構成されていて、素地をそのまま利用したLVL(単板積層材)フレームから、キッチンのキャビネット、ドアや窓の配置までがこれを元にしている。
家本体に居住スペースとして使えるデッキをつけたおかげで、タイニーハウスでの生活に大きく楽しみが広がった。
デッキに置いたカウチが、ちょうど後ろにあるトレーラーのタイヤを隠している。アンドリューさんはこの窓の外側に朝食スペースを設け、食事ができるスペースを外にも作ろうと計画中だ。
デッキに置いたカウチが、ちょうど後ろにあるトレーラーのタイヤを隠している。アンドリューさんはこの窓の外側に朝食スペースを設け、食事ができるスペースを外にも作ろうと計画中だ。
カウチをどけるとタイヤがのぞく。建物ではなくトレーラーとして登録することによって、オフグリッドをかなえるためのハードルが下がった側面もある。例えば、住宅であればこの家では使用しなくても支払う義務がある公共サービスも、トレーラーなら免除される場合がある。もちろん、ほかの場所へ移動する自由さもトレーラーならではだ。
タイニーハウスで暮らしはじめて、すでに楽しいエピソードがいくつもあるというララさん。そのひとつがウッドフォード・フォーク・フェスティバルでの体験だ。「まわりはみんな土の上にテントを張って寝泊まりしていたのですが、私たちはシャワーもキッチンもふかふかのベッドもあるぜいたくな環境で過ごしながら、野外フェスティバルに参加できました。」
フェスティバルの間、ララさんの両親と3人のゲストが泊まっていったという。「全部で7人がここで寝たんです。ロフトに2人、ベッドに2人、床に敷いたマットに3人。このスペースにそれだけの人数が収まるんですから、すごいですね。」と母親のアニーさん。
ララさんはこう続けた。「この家で初めて道路に出て移動したときのことも忘れられません。無事にちゃんと走れました。すごくドキドキしていたんです!」
フェスティバルの間、ララさんの両親と3人のゲストが泊まっていったという。「全部で7人がここで寝たんです。ロフトに2人、ベッドに2人、床に敷いたマットに3人。このスペースにそれだけの人数が収まるんですから、すごいですね。」と母親のアニーさん。
ララさんはこう続けた。「この家で初めて道路に出て移動したときのことも忘れられません。無事にちゃんと走れました。すごくドキドキしていたんです!」
トレーラー上に収まるサイズの家であれば、建材やエネルギーなどの面で環境への負荷を比較的抑えられるはずだとララさんは言う。近郊の木材を再利用し、オフグリッドシステムを取り入れれば確実に負荷は減る。アンドリューさんは家のまわりに亜熱帯性植物を植えた庭づくりを始めている。二人はおそらく、当面の間ここに腰を落ち着けることになりそうだ。
自分たちで手がけ、完成させたタイニーハウスに誇りを持っているという二人。ほかの人にも何かを感じてもらえたらうれしいと言う。アンドリューさんは次のようにまとめてくれた。「小さいけれど美学のある家を造るのが目標でした。ちょっとの間実験的に住むのではなく、長期的に暮らせる本格的な家といえる、広さと機能を備えた住まいをめざしていましたから。」
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