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My Houzz:バルコニーとリビングをひとつにした、積み木のような家《オケハウス》
柔軟な発想で限られたスペースを広く使えるよう設計された家。完成に近づくにつれて関わる人が成長し、愛着が高まる家づくりをご紹介します。
渡辺安紀 |Aki Watanabe
2017年1月19日
子どもが全力で遊べるような家を建てたいと考えた会社員の桶矢広樹さんと奥様の香織さん。ご両親が長年貸し出していた土地を更地にして、新たに一軒家を建てることにした。小さなお子さんがいるふたりにとって幼いころから慣れ親しみ、両方のご実家まで徒歩圏内という立地はまさにぴったりの土地だった。桶矢さんと〈中田製作所〉の建築設計士・内装施工者の中田裕一さんとは、2014年に中田さんが手がけた逗子海岸の海の家《シーサイドリビング》を通じて知り合いになった。桶矢さんは一軒家を建てるなら誰かの処女作と決めていたので、リノベーションで素晴らしいパフォーマンスを発揮していた中田さんに依頼。「〈中田製作所〉にとって記念すべき1件目の戸建てなので、作る側にとっても一生忘れられない家になるといいなと考えていました」と桶矢さん。
どんなHouzz?
住まい手:桶矢広樹さん、香織さん夫妻、2歳の娘さん
所在地:横浜市、港南区
敷地面積:82.46平方メートル
延床面積:65.83平方メートル
構造:木造
設計:〈中田製作所〉
施工:〈中田製作所〉、〈伊丹工務店〉
竣工時期:2016年5月
間取り:1LDK+ロフト、バスルーム×1、トイレ×1
どんなHouzz?
住まい手:桶矢広樹さん、香織さん夫妻、2歳の娘さん
所在地:横浜市、港南区
敷地面積:82.46平方メートル
延床面積:65.83平方メートル
構造:木造
設計:〈中田製作所〉
施工:〈中田製作所〉、〈伊丹工務店〉
竣工時期:2016年5月
間取り:1LDK+ロフト、バスルーム×1、トイレ×1
桶矢さんの希望はコンパクトな敷地だけれど、収納を確保しつつ、将来的に人に貸すことも視野にいれたシンプルな間取りの家を建てること。また、木のぬくもりを感じるような家で広く使える天井の高いリビングを2階に作ってほしいというものだった。
設計にあたって、〈中田製作所〉の建築設計士、中田理恵さんは「いかにリビングに長くいられるか」ということを意識したという。「プライバシーを気にしてカーテンを閉めっぱなしにするリビングにしたくなかったんです」と話す。
2階をリビングルームにし、プライバシーを確保できるバルコニーを作ることでバルコニーもリビングの一部として使えるように。1階の前庭はあえてフェンスを立てず、ご近所さんとの交流も楽しめるセミパブリックな第2のリビングルームとして位置付けた。
設計にあたって、〈中田製作所〉の建築設計士、中田理恵さんは「いかにリビングに長くいられるか」ということを意識したという。「プライバシーを気にしてカーテンを閉めっぱなしにするリビングにしたくなかったんです」と話す。
2階をリビングルームにし、プライバシーを確保できるバルコニーを作ることでバルコニーもリビングの一部として使えるように。1階の前庭はあえてフェンスを立てず、ご近所さんとの交流も楽しめるセミパブリックな第2のリビングルームとして位置付けた。
家全体に木をふんだんに使い優しい雰囲気を出した。梁もできるだけ見せる造りに。梁はプレカット工場でカット。複雑な組み方でもコストを抑えられるようになったという。プレカット工場には〈伊丹工務店〉の三代目で同じ30代の伊丹裕貴さんと一緒に見学に行った。伊丹さんは「施主も積極的に家づくりに参加してもらう」という〈中田製作所〉の方針の良き理解者のひとり。彼のサポートのもと、棟上げから桶矢さんも家づくりに参加した。
玄関はベビーカーを置けるスペースをしっかり確保し、天井までの高さの下駄箱も付けた。階段にも無垢のフローリングを使用。子どもの転落防止にネットを張っている。階段の上のリビングルームとの間には引き戸があり、子どもの手の届かない高い位置にロックをつけ、目を離した隙に子どもが階段から落ちるといった事故のおきないようにするなど細やかな気配りがされている。
2階にあがるとキッチン、リビングダイニングがあり、その先にバルコニーが続く。「家族や友人と長く過ごす場所なので、快適さを中田さんと追求しました」と桶矢さん。中田さんと一緒にフローリング材を選びに行き、サンプルの取り寄せ方法も学んだ。床は幅広のオーク材を使用。
リビングにソファを置かないのはだらだらとテレビを見ないようにするため。でも床暖房にしたので冬も居心地がとてもよい。ガスと電気を併用しているので、熱効率がよくランニングコストを抑えることができる。
照明はサイズのセミオーダーができる兵庫県、芦屋の〈フレイム〉のもの。リビングダイニングからバルコニーまで同じものを設置することで2つの空間をひとつにまとめている。大工さんに依頼した木の窓枠にはニッチをつくり、窓や網戸が完全に戸袋に隠せるようにしたのも、桶矢夫妻が気に入っているところ。「バルコニーとリビングダイニングが完全にひとつになります」。
ダイニングのテーブルと椅子は桶矢さんたちがもともと持っていたのもの。打ち合わせの段階でサイズを確認し、それに合わせて空間を設計した。
リビングにソファを置かないのはだらだらとテレビを見ないようにするため。でも床暖房にしたので冬も居心地がとてもよい。ガスと電気を併用しているので、熱効率がよくランニングコストを抑えることができる。
照明はサイズのセミオーダーができる兵庫県、芦屋の〈フレイム〉のもの。リビングダイニングからバルコニーまで同じものを設置することで2つの空間をひとつにまとめている。大工さんに依頼した木の窓枠にはニッチをつくり、窓や網戸が完全に戸袋に隠せるようにしたのも、桶矢夫妻が気に入っているところ。「バルコニーとリビングダイニングが完全にひとつになります」。
ダイニングのテーブルと椅子は桶矢さんたちがもともと持っていたのもの。打ち合わせの段階でサイズを確認し、それに合わせて空間を設計した。
写真右手にはロフトにあがる階段がある。階段の側面を収納兼飾り棚にした。引っ越してきた当初は新しい環境で泣いてしまうことが多かった娘さんも、ここにお気に入りの絵本やぬいぐるみを飾ることで安心したのか、落ち着くようになった。飾り棚は階段側からも使えるようにしたので、桶矢さんはすぐにプロジェクターを購入したそう。
自然光が好きという桶矢夫妻。昼間は自然光がたっぷり入るようにトップライトを設置。オートで開閉し、ブラインドも付いている。東西が隣家に接しているので、南北に窓を設け、風が通るように設計されている。天窓と窓を開けておくだけで、夏もほとんど冷房をつける必要がなかった。
晴れた日は娘さんとごろんと床に寝そべり、空や雲の流れを眺めながら過ごす時間を楽しんでいる。
自然光が好きという桶矢夫妻。昼間は自然光がたっぷり入るようにトップライトを設置。オートで開閉し、ブラインドも付いている。東西が隣家に接しているので、南北に窓を設け、風が通るように設計されている。天窓と窓を開けておくだけで、夏もほとんど冷房をつける必要がなかった。
晴れた日は娘さんとごろんと床に寝そべり、空や雲の流れを眺めながら過ごす時間を楽しんでいる。
「外だけど部屋っぽい」がコンセプトのバルコニー。階段用の手すりを物干棹に使用。木の色目が床と腰壁に木を貼ったバルコニーとなじみ、コーティングされているので雨で濡れても安心だ。
友達を呼んでバーベキューをするときはダイニングテーブルをバルコニー側に寄せて楽しんでいる。ソファがないゆえに空間をフレキシブルに使える。
友達を呼んでバーベキューをするときはダイニングテーブルをバルコニー側に寄せて楽しんでいる。ソファがないゆえに空間をフレキシブルに使える。
キッチンの横にトイレと洗面スペースがある。トイレとの間に引き戸があるため、仕切ることが可能だ。
洗面器と水栓金具、配管は横浜の〈イブキクラフト〉のエッセンスシリーズ。洗面器はスペースを省ける《クレセント》を選択。「部品を自由に組み合わせられるのが魅力ですね」と中田さん。
キッチンは大工さんの手による造作。木材はあとからアレンジしやすいシナを選択。リビングから見える棚は奥様の器コレクションを並べて見せるスペースに。ふたりでキッチンに立つこともある桶矢夫妻。洗いものやコンロを使いながらリビングダイニングが見えて、しかも作業スペースもしっかり確保できるレイアウトにした。
キッチン左手のカウンターは目黒の〈中野製作所〉に依頼したステンレス天板。傷も目立たず、掃除も楽になるようにバイブレーション仕上げにした。
キッチン左手のカウンターは目黒の〈中野製作所〉に依頼したステンレス天板。傷も目立たず、掃除も楽になるようにバイブレーション仕上げにした。
キッチンと洗面所のサブウェイタイルは奥様の希望で実現。小物類もすべて奥様のセンス。子ども用の踏み台やキャニスターにいたるまで「こちらから何も言わなくても、きちんと家にあうものをセンス良く選んでくれました」と中田さん。
「とにかく収納が欲しい」と桶矢夫妻からの依頼でキッチンのカウンターの裏側も飾り棚にした。一番下は手前に引き出せるようになっていて、サッと取り出したいものを収納している。
DIYをしたことなかった桶矢さんが余った端材で作った娘さん用のお絵描き机とソックモンキー用の椅子。娘さんのお気に入りだ。お絵描き机は仕事で夜遅くに帰宅したときの桶矢さんの晩酌台にもなる。「娘の落書きを見ながら飲む酒は格別です」と桶矢さん。
バスルームは〈日比野化学工業〉のハーフユニットバスをセレクト。無垢のサワラの木に囲まれた癒しの空間になっている。バスルームの扉は洗面スペースにも間接的に光が届くように曇りガラスを使用した。
桶矢さんが責任をもって施工した1階の寝室。収納をたっぷりととるため、寝室の壁2面に収納を設置。桶矢さんは天井と壁の塗装、タイルカーペットの敷きこみにチャレンジした。お子さんがまだ小さいため布団を敷いて3人で川の字で寝ている。「家族で寝る部屋を友人とともにほぼ自分たちで作れたことは感慨深いです」と桶矢さん。天井の梁のペンキの跡も良い思い出になっている。
〈中田製作所〉はプロジェクトに取り組む際にオーナーが積極的に参加できる環境をつくることを大切にしている。コストカットにつながることはもちろん、作業を一緒にすることで仲間のような連帯感をもち、一生に何度もない大きな買い物である家に対する愛着を高めてもらう。「お客さんとの関係性が築かれていく過程をとても大切にしています。家が完成することはもちろん嬉しいですが、お客さんと作り上げた人間関係も私たちの宝物になります」と中田さんは話す。
〈中田製作所〉はプロジェクトに取り組む際にオーナーが積極的に参加できる環境をつくることを大切にしている。コストカットにつながることはもちろん、作業を一緒にすることで仲間のような連帯感をもち、一生に何度もない大きな買い物である家に対する愛着を高めてもらう。「お客さんとの関係性が築かれていく過程をとても大切にしています。家が完成することはもちろん嬉しいですが、お客さんと作り上げた人間関係も私たちの宝物になります」と中田さんは話す。
外観は「帰りたくなる家」「小屋のようなかわいらしさ」という要望を出し、家の形がふたつくっついているような積み木のようなデザインができあがった。ガリバリウム鋼板で屋根と外壁を一体化させ、1階部分はモルタル仕上げというカラーブロックで積み木感が出ている。雨樋の色も外壁のふたつの素材、それぞれと同じ色に塗り分け外観に溶け込ませた。外壁の木材は〈チャネルオリジナル〉の《ウィルウォールパネル》レッドシダー材を使用した。
前庭は枕木を敷いて玄関までの小道を演出している。ポストと表札は桶矢夫妻が自分たちで選んで設置した。突き出したバルコニーの下にはゆくゆくはブランコを設置する予定。ミニキッチンも設置できるよう配管工事も既に済ませている。現在は桶矢さんが趣味の自転車のメンテナンスをするのに使用している。バルコニーが庇になって作業するのにちょうどよい。
前庭は枕木を敷いて玄関までの小道を演出している。ポストと表札は桶矢夫妻が自分たちで選んで設置した。突き出したバルコニーの下にはゆくゆくはブランコを設置する予定。ミニキッチンも設置できるよう配管工事も既に済ませている。現在は桶矢さんが趣味の自転車のメンテナンスをするのに使用している。バルコニーが庇になって作業するのにちょうどよい。
三和土(たたき)には娘さんの手形を記念に。
家ができあがるにつれてオーナーが積極的に家づくりに携わっていった《オケハウス》。桶矢さんは「中田さんと共通の友人も誘ってみんなでワイワイやりながら作業するのはとても楽しかったです」と話してくれた。
家ができあがるにつれてオーナーが積極的に家づくりに携わっていった《オケハウス》。桶矢さんは「中田さんと共通の友人も誘ってみんなでワイワイやりながら作業するのはとても楽しかったです」と話してくれた。
写真はお父様とパテの作業をする桶矢さん。お父様は「こうやって息子と息子の家を作る感じ、なんか良いな〜!」と少年のような目をしておっしゃっていたそう。
建築家と職人、施主そしてその家族や友人たちがひとつのチームとなって作り上げた家。大切な人と過ごす空間を自分たちで丁寧に作り上げた記憶に残る家になった。
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