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Houzzツアー:父から子へ、ミッドセンチュリーの名建築家の家を住み継ぐ、美しいリノベーション
アメリカ北西部のモダニズム建築を代表する名建築家、ピエトロ・ベルーシ。彼が設計し、自らも晩年を過ごした家を、建築家となった息子が美しくリノベーションをして住み継いでいます。
Julie Sheer
2015年8月10日
オレゴン州ポートランド、ウエストヒルズにあるミッドセンチュリーモダン住宅の修復プロジェクトを担当した建築家のアンソニー・ベルーシ(Anthony Belluschi)さん。自身の父親であり世界的にも著名な建築家、ピエトロ・ベルーシの作った家を修復するという、責任重大な仕事だった。もともとは1948年に地元のクライアントのために建てられた木とガラスの家だった。マサチューセッツ工科大学の建築学部長を務め東海岸で暮らしていたピエトロ・ベルーシだが、その後ポートランドに戻り、自身が設計したこの家を購入。1973年から1994年に亡くなるまで住み続けた。
父親と同じ道に進み、建築家として成功したアンソニー・ベルーシさん。その後、母親の介護者が母屋のベッドルームに住み込むようになったため、ベルーシさんは敷地内にゲスト用の小さな離れを作り、そこに滞在するようになった。そして母親が亡くなるとベルーシさんと兄弟が家を相続。母屋は60年間ほとんど手が加えられていない状態で、解体すべきという意見もあったが、ベルーシさんはこのゲストハウスに住み込んで母屋を65平方メートル以上拡大するという大規模なリノベーションに取り掛かった。これが父親のオリジナル設計をさらに改良する結果となり、ベルーシさんは2013年に歴史的建造物保存団体〈リストア・オレゴン(Restore Oregon)〉から優れた修復プロジェクトに贈られるデムーロ賞を授与された。
父親と同じ道に進み、建築家として成功したアンソニー・ベルーシさん。その後、母親の介護者が母屋のベッドルームに住み込むようになったため、ベルーシさんは敷地内にゲスト用の小さな離れを作り、そこに滞在するようになった。そして母親が亡くなるとベルーシさんと兄弟が家を相続。母屋は60年間ほとんど手が加えられていない状態で、解体すべきという意見もあったが、ベルーシさんはこのゲストハウスに住み込んで母屋を65平方メートル以上拡大するという大規模なリノベーションに取り掛かった。これが父親のオリジナル設計をさらに改良する結果となり、ベルーシさんは2013年に歴史的建造物保存団体〈リストア・オレゴン(Restore Oregon)〉から優れた修復プロジェクトに贈られるデムーロ賞を授与された。
どんなHouzz?
所在地:オレゴン州ポートランド、ウエストヒルズ
規模:母屋321.4平方メートル、ゲストハウス21.9平方メートル
設計:アンソニー・ベルーシ (Anthony Belluschi)
現在、この家にはベルーシさんと奥さんのマーティさんが暮らしている。イタリア生まれの父・ピエトロは米国北西部独特のミッドセンチュリースタイルを作り出したが、そのスタイルの象徴的作品としてこの家は歴史ツアーの一環にも組み込まれている。木とガラスで作られた低い建物と、光あふれるオープンコンセプトの空間を組み合わせた構造だ。
イタリア生まれのピエトロ・ベルーシは、建築家として華々しい実績を残した。オレゴン州に17の教会を設計したほか、ポートランド中心地では1932年にポートランド美術館、1947年にオレゴニアン・ビルディング、そしてエクイタブル・ビルディング(現在のコモンウェルス・ビルディング)を設計。ニューヨークのパンナムビルや、ジュリアード音楽院の共同設計にも携わっている。そして今日、息子アンソニー・ベルーシさんの熱心な努力のおかげで、ポートランドの丘にもその功績が生き続けている。
家が立っているのは、緑豊かな丘の上。広い窓からは、ポートランドの街並みや橋、オレゴン最高峰のフッド山も見渡せる。コルク床はリノベーション時に新しいものに張り替えている。窓は30年ほど前に断熱シーリングが傷んだ際に一部を取り換えたが、それ以外はほぼオリジナルの状態だ。
Main house photos by Sally Painter
Guesthouse photos by Blaine Covert
所在地:オレゴン州ポートランド、ウエストヒルズ
規模:母屋321.4平方メートル、ゲストハウス21.9平方メートル
設計:アンソニー・ベルーシ (Anthony Belluschi)
現在、この家にはベルーシさんと奥さんのマーティさんが暮らしている。イタリア生まれの父・ピエトロは米国北西部独特のミッドセンチュリースタイルを作り出したが、そのスタイルの象徴的作品としてこの家は歴史ツアーの一環にも組み込まれている。木とガラスで作られた低い建物と、光あふれるオープンコンセプトの空間を組み合わせた構造だ。
イタリア生まれのピエトロ・ベルーシは、建築家として華々しい実績を残した。オレゴン州に17の教会を設計したほか、ポートランド中心地では1932年にポートランド美術館、1947年にオレゴニアン・ビルディング、そしてエクイタブル・ビルディング(現在のコモンウェルス・ビルディング)を設計。ニューヨークのパンナムビルや、ジュリアード音楽院の共同設計にも携わっている。そして今日、息子アンソニー・ベルーシさんの熱心な努力のおかげで、ポートランドの丘にもその功績が生き続けている。
家が立っているのは、緑豊かな丘の上。広い窓からは、ポートランドの街並みや橋、オレゴン最高峰のフッド山も見渡せる。コルク床はリノベーション時に新しいものに張り替えている。窓は30年ほど前に断熱シーリングが傷んだ際に一部を取り換えたが、それ以外はほぼオリジナルの状態だ。
Main house photos by Sally Painter
Guesthouse photos by Blaine Covert
大きく張り出したオーバーハングは典型的なモダニズムデザインで、一年を通じて太陽や雨風から守ってくれる機能もある。オーバーハングの下は、リノベーションで追加した2階ロフト部分。ロフトへは家の中からも、外の階段からも入ることができる。
メディアルームからロフトに上がる特製の梯子。ロフトには包装用品や本などが収納されているほか、孫たちが泊まるための場所もある。ポケットドア式の障子の向こうには小さなバスルームがある。
リビングの暖炉はローマれんが製で、その周囲の天井まである壁にはアダムス山から切り出した石を使用。ノーブルファー材の天井は水濡れのために傷んでおり、リノベーション時に大々的に補修した。ル・コルビュジェのラウンジチェアはアートギャラリーにももう1脚置かれている。
正面玄関ドアの上には木の梁が渡され、オーバーハングの上にはスカイライトがある。外壁に入った縦の隙間から、内側に位置するベルーシさんのオフィスへと新鮮な空気を取り込む。この家の最初のオーナーは精神科医で、この位置に患者用入り口のドアを設置していた。
スカイライトのあるアートギャラリーは、もともとは屋外通路だった場所を改修時に囲い、両側を大きなガラスのドアで区切った空間。ベルーシさんは、増築部分とマスターベッドルームに挟まれたこのギャラリーを「新旧の間の隙間空間」と呼ぶ。およそ幅135センチ、高さ210センチのドアは、「オレゴン州の住宅では史上最大のガラスドアなんだそうです」とベルーシさん
リノベーションでキッチンを倍に拡大し、ペアウッド材のアイランドを追加した。もともとキッチンの中央には仕切り壁があり、その片面に乾燥機付き洗濯機が置かれていたが、北側の多目的ルームへと通り抜けるのに邪魔だったため、壁を取り壊してスペースをつなげた。乾燥機付き洗濯機は、多目的ルームにある古いキチネット用クローゼットの中に移動した。キッチンキャビネットはベイマツ材で、カウンタートップは人工大理石。上の写真のいちばん左は、板張りの扉が付いた冷蔵庫。
珍しい作り付けの石造りのロースト器は当初からあったもので、1955年にライフスタイル誌『サンセット』にも取り上げられた。キャビネットはすべてオリジナルを新しく作り直したレプリカ。コルク床は貼り直し、増築部分とゲストハウスにもコルク床を敷いている。
マスターベッドルームの天井は、シーダーとヘムロックを主に使った網代天井で、水濡れで傷んでいたため大幅に修繕して仕上げた。床から天井まである大きな窓からはゲストハウスが見える。
屋外にはダイニングスペースがあり、こちらのテラスもその一部。ベルーシさん夫妻が朝のコーヒーと午後のお茶を楽しむ場所だ。
中庭に隣接する屋外ダイニングエリアでは、最大18人で食卓を囲むことができる。アジア風の庭は、タカシ・フクダ (Takashi Fukuda) さんの作品。「噴水や石を使ったアジア風の庭を造る芸術家ですね」とベルーシさん。
ゲストハウスは母屋から9メートルほど離れている。もともとは古い納屋があった場所。外壁は、幅約5センチの羽目板をさね継ぎで継いでいる。ベルーシさんが「ミニマルハウス」と呼ぶ21.9平方メートルのゲストハウスのデザインは、父親の設計した母屋からヒントを得ているそうだ。「控えめなたたずまいで、周囲の森にも中庭の風景にも溶け込んでいます」とベルーシさん。「シンプルだけど表現力豊かなスカンジナビアデザインの影響や、禅にも通じるバランス感覚がありますね。父と私が作り出したこのプロジェクト全体のデザイン美学にきちんと沿ったものになりました。」
ゲストハウスのメインルームは、必要に応じてベッドルームにもリビングルームにも書斎にもなる。
ソファベッドを広げるとリビングがベッドルームに早変わり。障子のポケットドアがメインルームとほかの部分を区切っている。外の木々が見えるクリアストーリー窓は、プライバシーへの配慮でもある。ゲストハウスから母屋は見えず、母屋からゲストハウスの内部は見えないそうだ。
ベルーシさんが「キッチバス」と呼んでいる空間にはモミ材のキャビネットがあり、床はコルク、壁と天井はベイマツ材だ。ふたつの機能に分かれており、左側のほうがキッチンコーナー。カウンター左下の扉の中には冷蔵庫、その頭上にあるキャビネットの下の段には電子レンジが収納されている。上の写真右側のキャビネットと、次の写真のシャワー、トイレを含む部分がバスルームコーナー。
「キッチバス」のバスルーム部分には〈TOTO〉の節水トイレを設置。シャワーにはトラバーチンタイルと川石のウォールタイルを使った。天井は木製。
リノベーション計画の図面。
ゲストハウスの立面図(上)と平面図(下)。
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