Houzzツアー:新しいけど懐かしい。家族が重ねた時間を感じるリノベーション
古い部屋の間取りを変え、以前の空間を忘れさせるような新しい空間へと進化させる、それはリノベーションの醍醐味のひとつ。そんな醍醐味を実現しながら、住まう家族が感じたのは懐かしさ。新たな家族とともに生まれ変わったリノベーション空間をご紹介します。
逗子駅にほど近い築33年のマンション。居室がすべて南向きの窓を持つ、眺めのいい部屋に住んでいたのは、オーナーの芝川佳代子さん。外観はメンテナンスもされ築年数を感じさせないが、水回りなどに不安もあり、結婚以来住み続けたこの部屋もいつかは改修をと考えていた。
一方、結婚以来東京に住みながらも「いつか子育ては逗子でしたい」と考えていたのが娘・黒田慶子さんと哲二さん夫婦。念願の子供を授かったことがきっかけになり、かつて慶子さんも育ったこの部屋を2世帯で住むためのリノベーションをすることに。谷尻誠さんと吉田愛さんが主宰する〈Suppose Design Office〉に設計を依頼した。仕事柄、哲二さんが谷尻さんの仕事の進め方や作品、そしてその人柄を知っていたことに加え、「いろんな建築事務所の作品を見ましたが、いちばん魅かれたのが〈Suppose Design Office〉のデザインだったんです」と慶子さんは話す。
どんなHouzz?
住まい手:母+娘夫婦+子ども1人
所在地:神奈川県逗子市
設計:Suppose Design Office
施工:Roovice
規模:延床面積135.5平方メートル
竣工(建物):1982年
竣工(リノベーション):2015年11月
一方、結婚以来東京に住みながらも「いつか子育ては逗子でしたい」と考えていたのが娘・黒田慶子さんと哲二さん夫婦。念願の子供を授かったことがきっかけになり、かつて慶子さんも育ったこの部屋を2世帯で住むためのリノベーションをすることに。谷尻誠さんと吉田愛さんが主宰する〈Suppose Design Office〉に設計を依頼した。仕事柄、哲二さんが谷尻さんの仕事の進め方や作品、そしてその人柄を知っていたことに加え、「いろんな建築事務所の作品を見ましたが、いちばん魅かれたのが〈Suppose Design Office〉のデザインだったんです」と慶子さんは話す。
どんなHouzz?
住まい手:母+娘夫婦+子ども1人
所在地:神奈川県逗子市
設計:Suppose Design Office
施工:Roovice
規模:延床面積135.5平方メートル
竣工(建物):1982年
竣工(リノベーション):2015年11月
LDKは隣にあった個室の壁を排し、約32畳の広々とした空間に。特筆すべきは、なんといっても約4.3mのキッチンカウンターだろう。
谷尻さんから提案された当初、そのサイズがピンとこなかったという。「だから出来上がったときは、予想外の大きさに正直びっくり(笑)。でも実際に使ってみるとまったく気にならず、長すぎるということはなかったですね」と母・芝川佳代子さんは話す。
カウンターの両面はすべて収納に。友人が来たときは大皿料理を並べたり、娘さんと一緒に料理をしたり、さらに椅子を置いてここでくつろぐこともできるこの場所。キッチンカウンターという用途を超え、リビングを印象付けるひとつの家具として存在しているといっていいだろう。
ソファ:〈アルフレックス〉の《マレンコ》
谷尻さんから提案された当初、そのサイズがピンとこなかったという。「だから出来上がったときは、予想外の大きさに正直びっくり(笑)。でも実際に使ってみるとまったく気にならず、長すぎるということはなかったですね」と母・芝川佳代子さんは話す。
カウンターの両面はすべて収納に。友人が来たときは大皿料理を並べたり、娘さんと一緒に料理をしたり、さらに椅子を置いてここでくつろぐこともできるこの場所。キッチンカウンターという用途を超え、リビングを印象付けるひとつの家具として存在しているといっていいだろう。
ソファ:〈アルフレックス〉の《マレンコ》
ダイニングテーブルは、芝川さんが結婚した時にご主人の実家から譲り受けたアンティーク。ピアノ横の机もご主人が以前使っていたものだ。
実はこれらの家具、もっと濃い色合いだったものを船大工の手で研磨。木目を出し、リビング全体のトーンに合わせ、明るい色へと変えている。これは「古いものを削り、新たな表情を出してあげよう」という谷尻さんからの提案だったが、できれば愛着のある家具を使いたいと思っていた芝川さんたちにとってもうれしい提案だった。
ダイニングチェア:イームズ《セブンチェア》
実はこれらの家具、もっと濃い色合いだったものを船大工の手で研磨。木目を出し、リビング全体のトーンに合わせ、明るい色へと変えている。これは「古いものを削り、新たな表情を出してあげよう」という谷尻さんからの提案だったが、できれば愛着のある家具を使いたいと思っていた芝川さんたちにとってもうれしい提案だった。
ダイニングチェア:イームズ《セブンチェア》
南向きの窓の足元には、リビングの奥行9.5mにわたり60㎝幅の小上がりを設けている。谷尻さんが「ただ広さを追及するのではなく、“遊び”がないとつまらない」とこだわった個所だ。
当初は「できるだけ段差はなくしたい」と思っていた芝川さん。「でもグリーンを置いたり、子どものおもちゃを置いたり、これがあると部屋にメリハリがつくんです。友人が来ればここに腰かけたりもできるので、意外と便利なんですよ」と今ではそのスペースを楽しんでいる。
当初は「できるだけ段差はなくしたい」と思っていた芝川さん。「でもグリーンを置いたり、子どものおもちゃを置いたり、これがあると部屋にメリハリがつくんです。友人が来ればここに腰かけたりもできるので、意外と便利なんですよ」と今ではそのスペースを楽しんでいる。
ガスレンジの隣には、これを機会に絶対入れたかったという〈ガゲナウ〉のバーベキューグリルを設置。ふたを開けると、溶岩石を敷き詰めたグリルが現れる。「遠赤外線効果でお肉も野菜もジューシーに焼けるんです。それだけで美味しいので、お料理の楽しみがより増えました」念願の〈ミーレ〉の大型食洗機も設置した。
料理は食べるのも作るのも好きという芝川さん。〈ストウブ〉のケトルや〈ケメックス〉のコーヒーメーカーをはじめ、たくさんのキッチンツールは長年愛用しているものばかりだ。
料理は食べるのも作るのも好きという芝川さん。〈ストウブ〉のケトルや〈ケメックス〉のコーヒーメーカーをはじめ、たくさんのキッチンツールは長年愛用しているものばかりだ。
真鍮製のレールに下げられているのは、芝川さんのお母様から贈られたマグカップ。生まれ年の干支が描かれており、持ち手部分の三日月の絵には「“ツキ”を掴めるように」という遊び心が。母子2つのカップに今は結婚時に送られた哲二さんの分も増え、3つのマグが揃って並ぶ。野菜を置いた古い印判皿をはじめ、〈アラビア〉や〈大倉陶園〉など食器もお好きな芝川さん。そのほとんどがご主人やご自身の実家から譲り受けたものだそうだ。
リビングに使用されている照明の、真鍮製のシェードはオリジナルデザイン。昔の電球のようなLED電球《サイフォン》が、どこか懐かしい暖かな光を室内に投げかける。
リビングや廊下の壁には同じデザインのブラケットライトを設置。壁や天井は下地材であるカチオンを刷毛目を残して仕上げている。
「きれいに塗りすぎても味が出ないし、刷毛目の残し方によっては汚く見えてしまう可能性もあるので、建築家の谷尻さんが求める微妙なバランスを目指して、施工を手がけた〈Roovice〉の職人さんが何度も塗り直して仕上げてくださったそうです」と芝川さん。
「きれいに塗りすぎても味が出ないし、刷毛目の残し方によっては汚く見えてしまう可能性もあるので、建築家の谷尻さんが求める微妙なバランスを目指して、施工を手がけた〈Roovice〉の職人さんが何度も塗り直して仕上げてくださったそうです」と芝川さん。
玄関のシューズボックス。飾り棚には真鍮メッキのプレートが貼られている。ミラー仕上げではない分、奥行き感が曖昧になり不思議な感覚に。芝川さんが活けた花が、お客さまを出迎える。
リビングと廊下をつなぐドアは、素通しガラスと細いドア枠のシンプルなデザインに。かつてのリビングにあしらわれていた廻縁と同じデザインを、ドアの額縁や幅木にも採用。以前と異なるのはその色。以前はダークブラウンの廻縁が重厚な雰囲気を作り出していたが、このリノベーションでキッチンカウンターやフローリングと同じトーンの薄いベージュ系の木材に張り替えた。
このリノベーションによって間取りは変わり、独創的なキッチンにはかつての面影を見ることはない。それでも「すごく変わったのに、ぜんぜん違和感がない」と芝川さん。娘の慶子さんも「昔の部屋ではないのに、懐かしい場所に戻ってきた感じ」と言う。「例えば古いものも、削って新しい表情を出す。“懐かしいけど、新しい”。この部屋全体がそういう感じなんだと思います」と哲二さんも話す。
写真:左から黒田慶子さん、息子の成志くん、黒田哲二さん、芝川佳代子さん、芝川さんの膝の上にいるのは犬の菊次郎くん
写真:左から黒田慶子さん、息子の成志くん、黒田哲二さん、芝川佳代子さん、芝川さんの膝の上にいるのは犬の菊次郎くん
実はリノベーション前、この部屋を訪れた谷尻さんは「このままでもいいんじゃないかな」とつぶやいたそうだ。芝川さんが結婚以来住み、二人の娘さんの成長を見守ったこの部屋には、重ねた時間と空気がある。「このままでもいい」と言った谷尻さんの意味は、その空気感を残すということだったのかもしれない。
そして新しい家族とともに、懐かしさの上にまた新たな時間が重ねられていく、それがこのリノベーションなのだ。
教えてHouzz
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そして新しい家族とともに、懐かしさの上にまた新たな時間が重ねられていく、それがこのリノベーションなのだ。
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