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Houzzツアー:家族の歴史と思い出が詰まった、ヴィクトリアンハウスの暮らし
サンフランシスコを象徴する住宅の1つ、ヴィクトリアンハウス。オリジナルの外観に復元し、長年買い集めたヴィンテージ品や家族の思い出の品に囲まれて送る暮らしをご紹介します。
Junko Kawakami
2016年6月9日
Freelance since 1999.
サンフランシスコの特徴的な歴史的街並みといえば、ヴィクトリアンハウスだろう。ヴィクトリアンハウスとは、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて建てられた住宅で、間口が狭く奥に長いのが特徴だ。パステルカラーに塗装されたヴィクトリアンハウスは、「ペインテッド・レイディーズ(塗装された淑女たち)」と呼ばれる美しい家並みをつくりだす。だが、旅行者がその内側で営まれている暮らしを見る機会はあまりない。
この記事では、ウエスタン・アディション地区のヴィクトリアンハウスの暮らしをご紹介する。住まい手は、欧米の建築・インテリア雑誌や広告で活躍し、現在は日本で活動する写真家ジミー・コールセンさんの伯母さまだ。この家の正確な築年数は不明だが、水道管の表示は1886年になっており、おそらく築130年は経っていると思われる。1990年にこの家に越してきて以来、住まい手が亡きご主人と二人で少しずつリノベーションして大切につくりあげてきた暮らしを見ていこう。
どんなHouzz
居住者:70代の女性。産業環境衛生の専門家で現在はセミリタイア生活を送っている。
所在地:サンフランシスコ市ウェスタン・アディション地区
竣工年:建物は水道管の表示によればおそらく1886年以前に竣工。1997年に外壁、2000年にキッチン、2008年年に奥にあるメインバスルーム+トイレとメインベッドルーム、2012年に手前のバスルームをリノベーションした。
規模:延床面積約190平方メートル(居住部分約110平方メートル、半地下のガレージ+ホームオフィス部分約80平方メートル)。ベッドルームx3、バスルーム&トイレx2、トイレx1
設計:ファサードは1997年にコーネリア・グリフィンの設計によりオリジナルの姿に修復した。屋内のリノベーションは直接工務店を雇って実施した。
写真:ジミー・コールセン
この記事では、ウエスタン・アディション地区のヴィクトリアンハウスの暮らしをご紹介する。住まい手は、欧米の建築・インテリア雑誌や広告で活躍し、現在は日本で活動する写真家ジミー・コールセンさんの伯母さまだ。この家の正確な築年数は不明だが、水道管の表示は1886年になっており、おそらく築130年は経っていると思われる。1990年にこの家に越してきて以来、住まい手が亡きご主人と二人で少しずつリノベーションして大切につくりあげてきた暮らしを見ていこう。
どんなHouzz
居住者:70代の女性。産業環境衛生の専門家で現在はセミリタイア生活を送っている。
所在地:サンフランシスコ市ウェスタン・アディション地区
竣工年:建物は水道管の表示によればおそらく1886年以前に竣工。1997年に外壁、2000年にキッチン、2008年年に奥にあるメインバスルーム+トイレとメインベッドルーム、2012年に手前のバスルームをリノベーションした。
規模:延床面積約190平方メートル(居住部分約110平方メートル、半地下のガレージ+ホームオフィス部分約80平方メートル)。ベッドルームx3、バスルーム&トイレx2、トイレx1
設計:ファサードは1997年にコーネリア・グリフィンの設計によりオリジナルの姿に修復した。屋内のリノベーションは直接工務店を雇って実施した。
写真:ジミー・コールセン
通りに面したファサード。十数段の階段を登ったところにエントランスがある。階段の向かって左側はガレージ。ガレージ階は半地下になっており、ガレージの奥のスペースは、工業衛生(工場や労働環境における環境衛生や危険を調査し予防する仕事)の専門家である住まい手がホームオフィスとして使っていた。
現在の美しいクリーム色のファサードは1997年に建築家を雇い、この家のオリジナルの姿に復元したもの。1990年に夫婦で引っ越してきた当時の家の姿が左の写真だ。そろそろ賃貸ではなく自分の家を持ちたいと考えて、この家を購入した。
エントランスホールのコーナー。正面の壁には、ニューイングランドの古い家であるのご主人の家の紋章旗を飾っている。右側のシルエットの絵も、ご主人のご先祖を描いたもの。帽子掛けには帽子好きの住まい手のカラフルな帽子がたくさんかかっていて、インテリアのアクセントになっている。
エントランスホール。天井が3メートルほどと高いのは、ヴィクトリアンハウスの特徴。住まい手がこの家について最も気に入っている点の1つである。南に面したガラス張りのドアとハイサイドライトから光がたっぷりと入る明るい空間だ。
通りに面したリビング。細長い部屋だが、天井が高く、壁の色が明るいので、ゆったりと広く感じる。住まい手は若いころからヴィンテージ家具が好きだった。家の中の家具や調度品の多くは、過去数十年にわたって少しずつ揃えてきたものだ。結婚する前に暮らしていた東海岸でも、休日にヴィンテージショップを回るのが趣味だったが、特に結婚してサンフランシスコに引っ越してきてからは、見知らぬ土地で知り合いが誰もいなかったため、ヴィンテージショップめぐりは、友人たち知り合う機会にもなった。
明るい部屋を引き締める、落ち着いた紺色のソファもヴィンテージショップで手に入れた。
壁の写真は、右の2つがドイツ系アメリカ人の女性写真家、ルース・バーンハードの作品。左端はイモージン・カニンガムの作品。住まい手は慈善活動を通じてバーンハードやカニンガム、バーナード・チンらカリフォルニアの著名な写真家たちと友人になり、作品を購入するようになった。
壁の写真は、右の2つがドイツ系アメリカ人の女性写真家、ルース・バーンハードの作品。左端はイモージン・カニンガムの作品。住まい手は慈善活動を通じてバーンハードやカニンガム、バーナード・チンらカリフォルニアの著名な写真家たちと友人になり、作品を購入するようになった。
暖炉はこの家が竣工した当時の姿を今もとどめている。壁には、住まい手のお母さまがつくった刺繍のタペストリーがかかっている。
マントルピースの右端にある写真に写っているのは、住まい手のお母さま。マントルピースだけでなく、家の中のサイドテーブルや棚の上に写真や小さなアイテムがたくさん飾られているが、これらは先祖から受け継いだもの。家族の思い出の品、旅行やヴィンテージショップめぐりで買い集めたもの、今は亡きご主人が趣味で集めていたものなどだ。
マントルピースの右端にある写真に写っているのは、住まい手のお母さま。マントルピースだけでなく、家の中のサイドテーブルや棚の上に写真や小さなアイテムがたくさん飾られているが、これらは先祖から受け継いだもの。家族の思い出の品、旅行やヴィンテージショップめぐりで買い集めたもの、今は亡きご主人が趣味で集めていたものなどだ。
マントルピースの上に置かれたグラスには、住まい手の曽祖父さまの肖像が入っている。曽祖父さまのヨーゼフ・シュヴァイクはドイツ東部、ポーランドと国境を接するラウジッツ地方南部のヴァイスヴァッサーでガラス器製造業を創業し、ヨーロッパで初めて電球を生産して成功をおさめたユダヤ系の実業家。政治家として地元社会に貢献し人望も厚かったが、ヨーゼフが1923年に亡くなり、反ユダヤ主義が高まりナチスが台頭すると、一族は屋敷や資産を没収され、やむなく国外へと亡命。住まい手はヨーゼフの孫娘を母として、ニューヨークで生まれた。このクリスタルのグラスは、家族の歴史を語る品でもある。
ご両親の写真。小さなプロペラ飛行機の模型は亡くなったご主人が集めていたもの。
サイドテーブルに置かれたランプは、おばさまが使っていたもの。壁のタペストリーやクッションは住まい手のお母さまの刺繍の作品。白と赤を貴重にした、あたたかい空間だ。
ゲスト用ベッドルームは2012年にリノベーションした。古いトランクもヴィンテージショップで入手したもの。
2008年にリノベーションしたメインベッドルーム。壁紙はご主人が選んだ。キッチンの脇にあり、こじんまりとしたサイズで、おそらく元は使用人用だったと思われる。ベッドやドライシンク(ドレッサー)はヴィンテージショップで買ったもの、ベッドカバーは住まい手のお母さまの作品。
ドライシンクの上には思い出の品が並んでいる。右端の南北戦争の兵士をかたどった小さな像は、ご主人のコレクションの一品。
ご主人が愛用していた時計。ガラスのプレートは、1930年代の大恐慌(デプレッション)時代に生産された「デプレッショングラス」と呼ばれる型押しの色付きガラス製品。不況の時代に安価に供給するためにつくられた製品だが、色といい形といいどこか懐かしい雰囲気があり、今ではコレクターも少なくない。
2000年にリノベーションしたキッチン。ワークトップはテラゾーにリサイクルガラスを混ぜたもの(下の写真でクローズアップが見られる)。ラグや壁に飾ったプレートのマルチカラーともマッチしている。
お皿やカップなどの食器類も長年買い集めたヴィンテージが多い。グリーンのガラスのカップもデプレッショングラスだ。
白い戸棚は「ベイカーズ・キャビネット」、つまり「パン作り用の戸棚」と呼ばれる家具。住まい手が東部で暮らしていたころに手に入れたヴィンテージ品だ。白くペイントされているので圧迫感がなく、明るい空間をさらに広く感じさせる効果がある。
上部の扉を開けると、小麦粉を入れておく部分がついていて、取手を回すと必要な分だけ粉を取り出すことができ、その下の横長の扉を手前に開けると、パンやクッキーの生地をこねる作業台になる。
メインのバスルームは2008年にリノベーションした。
メインのベッドルームには、裏庭に出られるデッキを増設した。
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