味わいのある素材を活かし、56平米の築40年マンションを住みやすいワンルームに
築40年のマンションの団地風の間取りをワンルームにリノベーション。アンティークの建具を使い、エイジング塗装や味わい深いテクスチャーを積み重ねて、おしゃれなヴィンテージスタイルに仕上げました。
Houzz Japan
2018年7月21日
Houzz Japan 公式アカウント
この部屋は、大阪で建築設計とプロダクトデザインを手がけるMimasisDesign(ミメイシスデザイン)代表、鈴木義之さんの自邸だ。築40年のマンションをリノベーションするにあたり、まず思い立ったのはアンティーク建具を採用することだったという。行きつけのアンティークショップ〈ロンドンクラシックス〉に建材を探しに行くことから、家づくりはスタートした。ここは工房を兼ねたショップで、イギリスから買い付けている多種多様なアンティーク材料が入り混じって置かれている。アンティークに興味のない人から見ると、一見、資材置き場なのか工房なのかわからないという反応をされるほどだそう。しかし実は宝の山で、歴史を刻んだ本物の古さを前にすると、いろいろなイメージがふくらむ、と鈴木さんは言う。
もともと、56.7平方メートルの広さを有効利用するにはワンルームにするしかないと考えていたので、そのワンルームの掃き出し窓を「上げ下げ窓」で覆い、二重窓に。この「上げ下げ窓」は玄関からリビングドアを開けると真っ先に視界に入ってくる。古い団地のような佇まいから、大きく世界観を変えるきっかけのアイテムとなった。
〈ロンドンクラシックス〉のオーナーに無理を言って譲ってもらったというこの「木製上げ下げ窓」は、バロック様式の木造教会からはるばる日本に来たのだそう。家づくりはこの「上げ下げ窓」の位置を決めることから始まった。
〈ロンドンクラシックス〉のオーナーに無理を言って譲ってもらったというこの「木製上げ下げ窓」は、バロック様式の木造教会からはるばる日本に来たのだそう。家づくりはこの「上げ下げ窓」の位置を決めることから始まった。
どんな部屋?
《Apartment in tamagawa》
所在地:大阪府
住まい手:MimasisDesign代表、鈴木義之さんご夫妻と子ども3人
種別:RC造アパート(築40年)のリノベーション
専有面積:56.7平方メートル
設計:MimasisDesign(ミメイシスデザイン)
施工 : 谷口工務店
リノベーション竣工: 2015年
《Apartment in tamagawa》
所在地:大阪府
住まい手:MimasisDesign代表、鈴木義之さんご夫妻と子ども3人
種別:RC造アパート(築40年)のリノベーション
専有面積:56.7平方メートル
設計:MimasisDesign(ミメイシスデザイン)
施工 : 谷口工務店
リノベーション竣工: 2015年
他のリビングドア、トイレドア、室内ドア、室内用小窓などもアンティーク建具を採用した。いずれもアンティークショップに並んでいたものを、プランサイズに合わせてアンティークのガラス戸や金物をつけてもらった。そういった融通が利くのもこのお店の魅力だという。
玄関からワンルームに入ると、スペースの有効活用と動線を考慮して、すぐ右手にキッチンを配置。左手にバスルームとパウダールームをつくり、この間をくぐり抜けると、ダイニング、リビングへとつながるようになっている。
キッチンとパウダールームのカウンターの材料を同じ素材にし、より一体感を醸し出している。
キッチンはペニンシュラ(片側壁付)に。ちょうど、キッチンの前になる位置に排水の縦配管(写真左の観葉植物の奥にある柱)があり、悩ましいところだったが、遮音を兼ねて大きなアンティーク風丸柱にすることに決定。一見、コンクリートをむき出しにしたようなこの柱は、実は、新たに西側の壁とともにエイジング塗装したもの。「上げ下げ窓」の時代に合わせて中世の古城のようなイメージで仕上げてもらった。
キッチンは幅210×奥行き75cmと少し小さめだが、カップボードを対面させて配置し、コンパクトにまとめることで解決。カップボードのカウンター下部は引き出し、上部はオープン棚に。棚板や引き出しの面材は、アンティークショップで用意してもらった古材を採用した。
レンジフードや水栓はアンティークのイメージに合わせ、真鍮を採用したかったが、アンティークのレンジフードを探すのに苦労した。結局、板金工場で製作してもらうことになった。
レンジフードや水栓はアンティークのイメージに合わせ、真鍮を採用したかったが、アンティークのレンジフードを探すのに苦労した。結局、板金工場で製作してもらうことになった。
ダイニングの左手は、下部を高さ140cmの収納と上部を寝室の二層にしている。ダイニングと寝室の間は格子窓にし、空間をはっきりと仕切らず、あいまいにゾーニングすることで開放感を持たせている。階段正面には、子どもたちのためにデザインしたキッズハウスがおさまっている。
目線の高さの格子窓も、寝室の照明をつけなければ、はっきりと中を見ることはできず、来訪者からは何の部屋かはっきりとわからないそう。
目線の高さの格子窓も、寝室の照明をつけなければ、はっきりと中を見ることはできず、来訪者からは何の部屋かはっきりとわからないそう。
リビングは高さを複数設定し、クッションを造り付けにすることでリビングそれ自体がソファやカフェテーブルといった家具の役割を果たす。囲われることで、リビング自体が穴蔵的なニッチとなり、ダイニングとはっきり区分。居心地のよいくつろげる空間になった。
リビング横にはウォークインクローゼット、書斎を配置。リビングとの境界壁にはアンティーク小窓を設置した。室内ドアと小窓を配した壁は、それ自体に家のような遊び心がある。ちょうど書斎に位置するその小窓は、いつも子どもたちがのぞき込み、仕事を少々邪魔されることはあっても、孤立しがちな書斎とリビングとのコミュニケーションがとれる。
3人の子どもたちはリビングでおもちゃで遊び、ダイニングで絵を描き、寝室の小窓から顔を出し、キッズハウスでおままごとをしたり、昼寝をしたり。家全体を遊び場にして楽しく過ごしている。
この空間全体を引き立てているのが、テクスチャーを意識して選んだインテリアだ。壁面は古城の石積みをイメージしたエイジング塗装や杉荒材に白塗装の板壁、天井はコンクリート剥き出しに白塗装、床はナラ材の原板の質感を活かしたパーケットといったラフな雰囲気の素材を主に、キッチン壁にライムストーン、下り天井にチーク材フローリング、玄関床に大谷石など質感豊かな素材をミックス。
白やアイボリーと木の色でまとめた味わいのある素材のインテリアに、300年の時を超えてここにやってきた「上げ下げ窓」からの光が差し込み、心地よい空気感を醸し出している。
鈴木さんは現在郊外に新居を建築中で、このワンルームは売りに出す予定だそうだが、コンパクトな住み心地のよさが工夫された家で家族と過ごした時間は忘れがたいと話してくれた。
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とても好きな感じです。「少しアティック的な寝室」、「仕切りのない開放的な洗面脱衣室」、「荒いコンクリートにアイボリーの塗装」等好きな所をあげればきりがありません。
自邸だということもあり、思いっきりやらせてもらいました。中でもエイジング塗装は初の試みでしたが、素晴らしいエイジングの職人さんに出会えてうまくまとめて頂きました。