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中銀カプセルタワーで作り上げるミニマルで機能的な暮らし
築46年のカプセルはまるで近未来のタイニーハウスのよう。工夫が凝らされた、現在進行形の生活を拝見しました。
Mamiko Nakano
2018年10月26日
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建築家の故・黒川紀章氏による「中銀カプセルタワービル」。この東京・銀座にある唯一無二のカプセル型集合住宅に実際に住んでみたいと思う人は、ビルが建ってから46年になる今も後を立たない。カプセルの魅力に惹かれ、昨年入居した30代男性の、ミニマルで機能的な暮らしを見せてもらった。
どんなHouzz?
所在地:東京都中央区銀座
住まい手:田仲森太郎さん
構造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
カプセルの専有面積: 8.86平米
設計監理:黒川紀章建築都市設計事務所
施工:大成建設
竣工:1972年
戸数:140戸
所在地:東京都中央区銀座
住まい手:田仲森太郎さん
構造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
カプセルの専有面積: 8.86平米
設計監理:黒川紀章建築都市設計事務所
施工:大成建設
竣工:1972年
戸数:140戸
中銀カプセルタワーのある銀座エリアでCGデザイナーとして働いているという田仲さん。 歩いて会社にいける場所に住もうと賃貸物件探しをしている中で、カプセルを借りて住めることを知り、2017年の春から入居している。
「景色、雰囲気、狭さ、インパクトのある外観。どれもいいです。存在は知っていたけれども、住めることが分かって、さらに好きになりました」
「景色、雰囲気、狭さ、インパクトのある外観。どれもいいです。存在は知っていたけれども、住めることが分かって、さらに好きになりました」
修繕は加えられているとはいえ、築50年近いビル内にある4畳半サイズの部屋を住みこなすには工夫が必要だ。田仲さんは、一つのアイテムを多目的に使ったり、所有する3Dプリンターを駆使したりして、その工夫を実に楽しんでいる様子だ。
天井についているのはSONYのLED電球スピーカー。
天井についているのはSONYのLED電球スピーカー。
空間が限られているため、玄関スペースはない。入り口を入って右手にはSANYOの冷蔵庫があるが、こちらは収納スペースとして使っている。本当の「冷蔵庫」は「1階のコンビニ」だそう。
愛用の緑色の自転車はスペースを取らない折りたたみ式。DIYグッズを買うためにホームセンターに出かける際などに乗って行くのだという。
愛用の緑色の自転車はスペースを取らない折りたたみ式。DIYグッズを買うためにホームセンターに出かける際などに乗って行くのだという。
「広いところには魅力を感じない」という田仲さん。「大人数で集まるなら広い方がいいけれど、今は一人なので。手の届く範囲になんでもある、秘密基地的な感じが好きですね」
自転車の横にあるユニットバスはお湯がでないので、主にビル内にある共用シャワースペースを使っている。
自転車の横にあるユニットバスはお湯がでないので、主にビル内にある共用シャワースペースを使っている。
家具は、無印良品のユニットシェルフと一体化したデスクと、パシフィックファニチャーサービスで見つけた折りたたみのチェア、そして無印良品のスモールサイズの脚付マットレスのみを置いている。
140戸あるカプセルは分譲されており、それぞれに所有者がいる。
こちらのカプセルの所有者は以前、オフィスとしてここを使っていたが、賃貸物件として貸し出すにあたり、DIYでのリノベーションをした。
写真の床は一見、木に見えるがビニール製。耐水性、耐久性のある、サンゲツの店舗用フロアタイルなのだそうだ。
こちらのカプセルの所有者は以前、オフィスとしてここを使っていたが、賃貸物件として貸し出すにあたり、DIYでのリノベーションをした。
写真の床は一見、木に見えるがビニール製。耐水性、耐久性のある、サンゲツの店舗用フロアタイルなのだそうだ。
田仲さんがCGや動画を制作する、本棚や収納がデスクと一体化したワークスペース。遠目にはシェルフをそのまま使っているように見えるが、デスク上の3Dプリンターを使って出力したパーツなどで、細部に工夫を凝らしている。
例えば、ユニット内に収まっているゴミ箱(向かって左上)をはめこむために使用しているパーツは、3Dプリンターで出力して作ったものだ。
例えば、ユニット内に収まっているゴミ箱(向かって左上)をはめこむために使用しているパーツは、3Dプリンターで出力して作ったものだ。
「カプセルに似ている」という理由で購入したTivoli Audioのラジオを置いている棚はホームセンターで購入した素材を組み合わせて自作した。下支えする脚がない形の棚は「耐荷重20kgくらいの強力なマグネットで上に付いている」とのこと。
ラジオの横は田仲さんのクローゼット。洋服も最小限しかもっていない。ハンガーは無印良品の旅行用を選び、高さをおさえている。
こちらは田仲さんが3Dプリンターで出力した、建物内にある別カプセルのオブジェだ。田仲さんのカプセルと窓の位置が違っているが、最初はこちらのタイプに住みたかったそう。オブジェに加え、中銀カプセルタワーの映像作品も製作中だという。
カプセルの特徴でもある、丸い窓からは高速道路と浜離宮の緑が見える。東京の真ん中にいることがひしひしと感じられる。夜は高速の光が見え、窓の外には「ブレードランナーの世界を彷彿とさせる」景色が広がるのだそうだ。
2006年にはDOCOMOMO JAPANの「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」の一つにも選ばれている中銀カプセルタワービルは、国内外から注目を集め続けている。
カプセルが古くなったら新しいものと交換し「新陳代謝」させながら持続させていく想定で黒川紀章氏により設計されたが、46年間一度も交換されず、修繕されながら保存・活用されてきた。
カプセルが古くなったら新しいものと交換し「新陳代謝」させながら持続させていく想定で黒川紀章氏により設計されたが、46年間一度も交換されず、修繕されながら保存・活用されてきた。
ビルが老朽化する中、カプセルを交換しながら歴史的な建物を持続させたいと考える所有者たちは「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」を設立。見学ツアーやマンスリー居住プランなどを企画しながら、中銀カプセルタワービルの歴史的・建築的価値を訴えている。
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