若き建築家たちが運営する、下町の複合型シェアハウス
東京下町の築40年の工場付き住宅を改造。賃貸部屋、設計アトリエ、民泊が一体となった、シェアプレイスとして生まれ変わりました。
Rieko Ozawa
2018年8月30日
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
Houzz contributors, Editor & Writer. I have been interested in the floor plan since I was a child. Then, I became an editor of the INTERIOR & HOUSING magazine. We bought a maisonette dwelling unit built in early 1980s and have been renovating little by little with my partner.
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
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東京のイーストエリア西日暮里。谷中商店街からもほど近い、下町情緒の残る街のシェアハウス。かつて桐箪笥の工房兼用だった築40年の木造2階建住宅を改修し、賃貸3部屋、ゲストルーム1室、設計アトリエ1室からなる複合型のシェアハウスに生まれ変わった。設計とプロデュースを担当したのは、若手建築家の勝亦優祐さんと丸山裕貴さんが代表を務める〈勝亦丸山建築計画〉。設計に留まらず、自らこのシェアハウスの運営も行っている。
シェアハウスの住人と〈勝亦丸山建築計画〉の二人。丸山さん(写真右端)はシェアハウス内にアトリエを構え、勝亦さん(左奥)は拠点を静岡に置きながら、月に一週間程度ゲストルームを利用して東京での仕事をこなしている。
住人の1人、佐竹雄太さん(中央)は、〈創造系不動産〉に勤務する建築不動産コンサルタント。このシェアハウスの物件取得及び賃貸システムの構築にも大きく貢献した。
2人の女性住人は設計事務所に勤務する山内響子さん(左手前)と、システムエンジニアの輿石典子さん。輿石さんは大阪旅行中に滞在したゲストハウスで勝亦・丸山の両氏と出会ったことが、ここに入居するきっかけになったという。
住人の1人、佐竹雄太さん(中央)は、〈創造系不動産〉に勤務する建築不動産コンサルタント。このシェアハウスの物件取得及び賃貸システムの構築にも大きく貢献した。
2人の女性住人は設計事務所に勤務する山内響子さん(左手前)と、システムエンジニアの輿石典子さん。輿石さんは大阪旅行中に滞在したゲストハウスで勝亦・丸山の両氏と出会ったことが、ここに入居するきっかけになったという。
公道と私道が交わる角地に立つ木造2階建住宅。間口は狭いが奥行きが深いという、東京の下町に多い佇まいだ。この一角にも同様の住宅が立ち並んでいる。
どんなHouzz?
所在地:東京都北区
住まい手:不動産コンサルタント、建築デザイナー、ITエンジニア
構造:木造2階建
専有面積:96.06平方メートル
間取り:5LDK
撮影:千葉正人、輿石典子
どんなHouzz?
所在地:東京都北区
住まい手:不動産コンサルタント、建築デザイナー、ITエンジニア
構造:木造2階建
専有面積:96.06平方メートル
間取り:5LDK
撮影:千葉正人、輿石典子
1階にキッチン、リビングダイニング、バス・トイレ・洗面所を設け、ここが住人およびゲストの共有スペースとなる。キッチンの奥はアトリエ。境界にはドアもあるが、おおむね開け放しているという。
冷蔵庫や調理家電、調理器具は共用で使い、食材は個々で所有し管理する。ルールは特に設けず、消耗品などは皆で買い出しに出かけ、掃除は気づいた人が行っている。定住者が3人というコンパクトなコミュニティゆえの当事者意識が、成熟した自治につながっているようだ。
冷蔵庫や調理家電、調理器具は共用で使い、食材は個々で所有し管理する。ルールは特に設けず、消耗品などは皆で買い出しに出かけ、掃除は気づいた人が行っている。定住者が3人というコンパクトなコミュニティゆえの当事者意識が、成熟した自治につながっているようだ。
利用者のクロスポイントとなる、リビングダイニング。ときにはミーティングやプレゼンテーションの場になることも。
居住者にとってはここが食卓となるが、生活サイクルが異なるため、日常で住人がともにテーブルを囲むことはほとんどないという。「出社時間と帰宅時間が、ちょうど1〜2時間ずつずれるから、気兼ねなく料理をしてくつろぐことができます」と輿石さん。
居住者にとってはここが食卓となるが、生活サイクルが異なるため、日常で住人がともにテーブルを囲むことはほとんどないという。「出社時間と帰宅時間が、ちょうど1〜2時間ずつずれるから、気兼ねなく料理をしてくつろぐことができます」と輿石さん。
竣工時のダイニング。1階の共用部分は、打ち合わせに使用することも想定し、日常的でありながらも住人の領有とならない “フラット” な場になるよう、空間構成に工夫がなされている。「外部を引き込むように私道に沿わせて土間の通りを設け、 内壁には向かいの住宅と同じ外壁色を用いました」 と丸山さん。同時に、ライティングレールで内部を囲い込むようにフレーム化することで、入れ子状の領域が生まれ、土間の輪郭を強調している。
「ここでは今後、家の前にある私道を介した一体的なリノベーションを視野に入れられるように、通りと関係し合う手法をとっています。平たく言うと、リビングが外につながっている感じになったらいいな、ということです(笑)」と勝亦さんは言う。
こちらは設計アトリエ。壁一面のブックシェルフは、単管パイプを組んだもの。「基本的には、自宅で昼食をすませてからここに来ます」。妻帯者の丸山さんにとっては、ここはあくまでも仕事の場。
「シェアハウス事業としては手探りの部分もあるので、自ら身を置くことで、使い方や改善点などさまざまなことが見えてきました」。人との出会いも多くなるので、ケーススタディハウスとして非常に重要な役割を果たしているという。
「シェアハウス事業としては手探りの部分もあるので、自ら身を置くことで、使い方や改善点などさまざまなことが見えてきました」。人との出会いも多くなるので、ケーススタディハウスとして非常に重要な役割を果たしているという。
2階は、賃貸3室とゲストルーム1室。既存の柱や筋交いを残し、他も構造の補強を行いながら壁を立て直し、新たな間取りを構築した。
佐竹さんの居室。机代わりにした出窓、カーテンレールに掛けられた衣類、布団の寝床など、なんとも居心地のよさそうな部屋だ。
ゲストルームには、足場用の単管パイプを用いて造った2段ベッドを備えている。
勝亦さんはここを東京の拠点とし、ローカルのおもしろさと都会のおもしろさ、それぞれを活かした事業展開を繰り広げている。
勝亦さんはここを東京の拠点とし、ローカルのおもしろさと都会のおもしろさ、それぞれを活かした事業展開を繰り広げている。
1階にある共有の洗面・脱衣所。朝のピーク時に2人が同時に使えるよう、ダブルシンクに。洗面台は通気性とコストコントロールの面からオープンスタイルとした。水回り空間の手入れにもルールや当番はなく、掃除は気づいた者が行う。
シャワーブースには外壁と同じ外装タイルを貼り、資材を有効活用。コストを抑えながら、意匠に連続性を持たせた。
トイレの照明は既存のものを再利用。レトロモダンなデザインが、このシェアハウスに流れる空気感に、非常によくマッチしている。
階段と廊下の間の壁は、パブリックエリアとプライベートエリアの境界。1階から貫かれ、同じグレーでペイントされている。
路地→通り土間→段差と、外から内にかけて徐々にクローズド空間に向かい、グレーの壁から先は、プライベートなエリアとなる空間構成。
路地→通り土間→段差と、外から内にかけて徐々にクローズド空間に向かい、グレーの壁から先は、プライベートなエリアとなる空間構成。
今回、取材のために開催された住人が集まるランチパーティ。ゲストには、勝亦・丸山両氏に自邸のリノベーションを依頼している、フォトグラファーの千葉正人さん夫妻も訪れた。
3人の住人は「シェアハウスに住むなんて、自分には向いていないと思っていた」と口を揃えて言う。それでもここを選んだのは「都合がいいから」
しかしながら、帰宅時に窓の外にこぼれる灯りや、玄関に並ぶスリッパに人の気配を感じ、安らぎを覚えるとも。「必要以上に “みんなで一緒に” っていう感じがないから、それぞれがマイペースでいられます」と佐竹さんは語る。
しかしながら、帰宅時に窓の外にこぼれる灯りや、玄関に並ぶスリッパに人の気配を感じ、安らぎを覚えるとも。「必要以上に “みんなで一緒に” っていう感じがないから、それぞれがマイペースでいられます」と佐竹さんは語る。
竣工後まもなく開催したオープンハウス兼ワークショップの際のスナップ。西日暮里シェアハウスの事例をもとに、建築家がシェアハウスを運営するということ、多拠点生活のサポートなどをテーマにプレゼンテーションを行った。
このワークショップには、設計に携わる事業者を中心に、多くの人が集まったという。
この「西日暮里シェアハウスプロジェクト」は、設計集団が運営する事業体のケーススタディであると同時に、多拠点型生活のサービスを展開するための布石としても位置づけられている。運営者の勝亦さん自らが先導となり、地方から来た人たちが行き交える場としても広がりを見せている。
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