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明るさも収納力も実現。ふたつの「部屋」があるパリの20㎡
中二階にベッドを配置し、スマートガラスを取り入れて、デザイナーは息子の小さな学生アパートを生まれ変わらせました。
Agnès Carpentier
2019年4月4日
パリを拠点に活動するインテリアデザイナー、ジャン=クリストフ・ペリュー(Jean-Christophe Peyrieux)には、高校を卒業したばかりで、アートの勉強を始めようとしている息子がいました。普通の親なら、古いアパートに安い家具を放り込んで済ませるところでしょうが、ペリューはインテリアデザイナー。自身の才能を生かして息子が暮らすための快適な空間を作り出すチャンスだと考えたのです。
「このプロジェクトには楽しく取り組めましたよ。部屋の元々の構造を最大限に活かして、好きなスタイルにまとめることができましたからね。クライアントの希望に沿って働くのとはまったく違うものだけど、必ずしも簡単というわけではないんです。自分たちのために何かをするときのほうが、迷いが出たりするものでしょう?」とペリュー。
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「このプロジェクトには楽しく取り組めましたよ。部屋の元々の構造を最大限に活かして、好きなスタイルにまとめることができましたからね。クライアントの希望に沿って働くのとはまったく違うものだけど、必ずしも簡単というわけではないんです。自分たちのために何かをするときのほうが、迷いが出たりするものでしょう?」とペリュー。
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写真:Jean-Christophe Peyrieux
どんなHouzz?
住まい手:18歳のアート学生
所在地:パリ、バスティーユ地区
延床面積:およそ20平方メートル
デザイナー:ジャン=クリストフ・ペリュー
この部屋があるのは、活気に満ちたパリのバスティーユ地区。あるクライアントが1930年代の建物の5階にある、かつて女中が寝泊りしていた部屋を売りたがっているという噂を耳にしたペリューは、このチャンスに飛びつきました。20平方メートルの空間は状態が悪く、大掛かりなリノベーションが必要でした。
どんなHouzz?
住まい手:18歳のアート学生
所在地:パリ、バスティーユ地区
延床面積:およそ20平方メートル
デザイナー:ジャン=クリストフ・ペリュー
この部屋があるのは、活気に満ちたパリのバスティーユ地区。あるクライアントが1930年代の建物の5階にある、かつて女中が寝泊りしていた部屋を売りたがっているという噂を耳にしたペリューは、このチャンスに飛びつきました。20平方メートルの空間は状態が悪く、大掛かりなリノベーションが必要でした。
「最大の挑戦は、2つのベッドを別々の部屋に用意することでした。息子は、兄がちょくちょく遊びに来ることを望んでいたからです」とペリュー。息子の希望を考慮しながら、彼は部屋にある制限を手がかりとしてうまく活かしながら間取りを決めていきました。特に課題となったのが、煙突を隠す分厚い壁で仕切られた、2つの小窓があるバスルームでした。
このワンルームには、バスルームの小窓を除くと、南東向きの窓がひとつあるだけ。アパートの天井の高さが2.85メートルほどあったので、ペリューは中二階を作り、息子のベッドを配置することができました。
「リビングルームにをダブルベッド置く場所をつくることは不可能でした。スペースを占領してしまいますから。でも、幅91センチのアルコーブスペースに2つ目のソファーベッドをうまく収メルことができました。
これで息子は、中二階に畳まなくてもよい2つ目のベッドを手に入れルことができました。兄とそのガールフレンドが泊まりに来てもふたりは下の階で眠ることができ、お互いに干渉しないで済みます」と彼は説明します。
これで息子は、中二階に畳まなくてもよい2つ目のベッドを手に入れルことができました。兄とそのガールフレンドが泊まりに来てもふたりは下の階で眠ることができ、お互いに干渉しないで済みます」と彼は説明します。
空間構成を最適化することと電気配線を得意とするペリューですが、インテリアの装飾面でも妥協はしていません。シェルフユニットと小型の家具はペリュー自身がデザインし、ベルギーのスティール社(Steele)が製造したものです。
はしごは大人向けでないと考えるペリューは、中二階部分に上がる階段をつくりました。MDF構造にしたことで、リビングルームから利用できる隠れた収納にもなります。
およそ60センチ幅の階段の右側には、30センチほどの奥行があるクローゼットがあります。「この階段の下は、実はさらに奥行のある階段下収納となっています。収納は中二階の幅いっぱい、つまり約90センチにわたっています。ですからそこに、クローゼット、靴をしまう引き出し、掛け布団や枕などをしまっておいて必要なときに引き出せる車輪付の収納ボックスを設置しました」とペリューは話します。
ベッドの上には高さ約70センチの空間があり、座っても過ごすのにも十分な高さがあります。
中二階部分の足元にはキッチンのあるリビングエリア、窓のそばの小さなデスク、そして息子が楽器を陳列しているエリアがあります。息子は、父がインテリアデザイン業とともに営むヴィンテージグッズ販売店で70年代のウェルトロン製ラジカセに惚れ込んでしまったので、このスペースも必要でした。
窓際に配置したデスクもペリューのデザインで、スティール社が製造したものです。
バーカウンターはキッチンとリビングを隔てる境界線となっています。中二階部分との「バランスを保つために、高めのテーブルを選びました」とペリューは話します。
テーブルは木製の天板に真ちゅうのスタッズがついている一方で、チェアにはエレファントスキンのような風合いの革を使用しています。テーブルとチェアはいずれもペリューがデザインし、トポス・ワークショップ(Topos Workshop)が製造したものです。
テーブルは木製の天板に真ちゅうのスタッズがついている一方で、チェアにはエレファントスキンのような風合いの革を使用しています。テーブルとチェアはいずれもペリューがデザインし、トポス・ワークショップ(Topos Workshop)が製造したものです。
ペリューの照明に対する愛は強く、自身の店から調達した70年代のガエターノ・ショラーリのシャンデリアやゴールドのウォールランプといった、(とりわけ学生のアパートにしては)豪華な照明を使用しています。「ワンルームの場合、ほんのわずかな家具で雰囲気が決まってしまうため、家具選びには慎重にならなければなりません。中心となるシャンデリアは常に、部屋に特別なスタイルをもたらしてくれます」と彼は言います。
妥当な予算内に抑えるために、ペリューは最高級の家具と御影石を使ったカウンタートップの夢をあきらめました「マットグレーのラッカー塗装が施されたイケア製モデルと、塗装された木製のカウンタートップを選びました。カスタムメイド感を出すために、キッチンをパーテーションで囲み、ミラー・バックスプラッシュを採用しました。天井の下端が各空間の輪郭に沿っていたので天井裏にも十分なスペースがあり、配管やスポットライトの設置が可能となりました」と彼は話します。
空間を最適化するためにペリューが用いたトリックがもう一つあります。キッチンの壁掛けキャビネットのひとつに、アリストン社製の極薄給湯器が隠れています。このタイプの給湯器は円筒形ではなく長方形をしているため、省スペースが叶います。
空間を最適化するためにペリューが用いたトリックがもう一つあります。キッチンの壁掛けキャビネットのひとつに、アリストン社製の極薄給湯器が隠れています。このタイプの給湯器は円筒形ではなく長方形をしているため、省スペースが叶います。
ペリューの息子は、以前暮らしていたアパートの1階の部屋に、悪い思い出しかありません。というのも、パリではよくあることですが、隣の建物との距離があまりに近すぎて薄暗い部屋だったのです。ですから新しい住まいには明るさが欲しい、と希望していました。
そこで親子は、薄いアイボリー色のコンクリート床を選びました。「実によく仕上がりました。部屋全体がとても明るく、狭いアパートを広く感じさせてくれます」とペリューは話します。セルフレベリング性コンクリートをマット仕上げのワックスで保護し、かすかに職人技を感じさせる都会的な仕上がりとなっています。
そこで親子は、薄いアイボリー色のコンクリート床を選びました。「実によく仕上がりました。部屋全体がとても明るく、狭いアパートを広く感じさせてくれます」とペリューは話します。セルフレベリング性コンクリートをマット仕上げのワックスで保護し、かすかに職人技を感じさせる都会的な仕上がりとなっています。
バスルームは、耐力壁を含んでいるため移動させるのが困難でした。ただ、このバスルームがエントランスを暗くしていたため、ボタンひとつで透明度を変えられる細長いスマートガラスのパネル(240センチ×25.4センチ)を壁に差し込むことにしました。「こうすることで、エントランスとキッチンからの眺めを損なうことなく、必要に応じてプライバシーも守ることができます」
ペリューいわく、スマートガラスにおよそ1200ユーロ(約15万円)もかかり予算オーバーとなったけれど、それがこのワンルームにもたらした変化は明らかだと話します。
ペリューいわく、スマートガラスにおよそ1200ユーロ(約15万円)もかかり予算オーバーとなったけれど、それがこのワンルームにもたらした変化は明らかだと話します。
この部屋の特徴を活かすために、ペリューはフレームのないドアを選びました。「そうしたディテールを排除することで、スペースがより滑らかになります」と彼は言います。
小さなバスルームにはシャワーと背の高いクローゼット、洗面台とトイレが備えられています。
注目すべきは、ミニマルに壁に埋め込まれた蛇口と天井に取り付けられたシャワーヘッドです。窓の位置により一般的なシャワーヘッドの取り付けが困難だったため、天井に取り付けるタイプが重宝しました。
もうひとつ、よく考えられたディテールとして、シャワー室の天井の片側に内蔵されたLEDストリップがあります。この照明が柔らかな光をもたらしています。
もうひとつ、よく考えられたディテールとして、シャワー室の天井の片側に内蔵されたLEDストリップがあります。この照明が柔らかな光をもたらしています。
ワンルームのリノベーションを検討中の方に、ペリューからのアドバイスです。「小さな空間では壁を移動させるのが不可能なので、視界をできるだけ広げて窮屈さを感じさせない工夫が必要となります。この部屋では、エントランスからバスルームの向こうにある街の屋根までを見通すことができ、ミラー・バックスプラッシュも空間を広く感じさせるのに一役買っています」
一方、ペリューの息子は、学生生活を満喫しながら自宅に友人を招く楽しさを知ったようです。もちろん、それは課題を終えてからのお楽しみですが。
この他のパリのコンパクトなお部屋のリノベーション記事はこちら
パリの20㎡。機能的でおしゃれな賃貸リノベーション
造作家具で15㎡でも快適。パリの賃貸リノベーション
一方、ペリューの息子は、学生生活を満喫しながら自宅に友人を招く楽しさを知ったようです。もちろん、それは課題を終えてからのお楽しみですが。
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