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日本の家に断熱が必要で、断熱リフォームにDIYが必要な理由とは?
「中古の住宅は暑くて寒くて住みにくい! 」この問題をDIYで解決する取り組みが始まっています。
Junko Kawakami
2017年11月8日
Freelance since 1999.
家の快適さは「温熱環境」で決まる
住宅の快適さを決める最も重要な要素とは何だろうか。どんなにインテリアが素敵でも、どんなに広くて立派でも、寒すぎたり暑すぎたりすれば、決して心地よくは暮らせない。つまり「温熱環境」こそ、家の住み心地を左右する要素である。だが、温熱環境に対する意識が極端に低い国がある。それが、日本である。
「日本の家はなぜ冬こんなに寒くて夏こんなに暑いのか」。海外暮らしを経験した人、日本に移住した外国人が必ず口にする言葉だ。何しろ「家の作りやうは夏を旨とすべし」(『徒然草』)の国である。伝統的な木造の日本家屋は壁がほとんどなく、空間は建具で仕切る。風通しがいいといえば聞こえがいいが、寒い季節でも隙間風が入り放題なわけで、冷えるのも当然である。そして、夏は夏で、地球温暖化により、とりわけ都市部では、近年、猛暑・酷暑が当たり前になっている。もはや日本の夏は自然の風通しでしのげるものではなく、エアコンなしでは過ごせない。
「夏涼しく、冬暖かい家」に欠かせない「断熱性能」と「気密性」
では、温熱環境を改善し、「夏涼しく、冬暖かい家」を実現するにはどうしたらよいのだろうか。一言でいえば、内部と外部の熱が伝わりにくい家、つまり、夏は暑さを室内に入れず、冬は室内の暖かさを外に逃がさない家をつくるしかない。
例えば、冬に部屋の室温が低くても布団の中は暖かい。それは、布団が断熱性能を発揮して、布団の中の環境を暖かく守ってくれているからだ。アイスクリームを保冷バッグに入れると溶けないのは、保冷バッグが暑い環境から断熱された内部を作っているからだ。つまり、家も布団や保冷バッグのような「断熱材」で包み、暖かさがや涼しさが逃げないように「気密性」を高めればいい、ということになる。
住宅の快適さを決める最も重要な要素とは何だろうか。どんなにインテリアが素敵でも、どんなに広くて立派でも、寒すぎたり暑すぎたりすれば、決して心地よくは暮らせない。つまり「温熱環境」こそ、家の住み心地を左右する要素である。だが、温熱環境に対する意識が極端に低い国がある。それが、日本である。
「日本の家はなぜ冬こんなに寒くて夏こんなに暑いのか」。海外暮らしを経験した人、日本に移住した外国人が必ず口にする言葉だ。何しろ「家の作りやうは夏を旨とすべし」(『徒然草』)の国である。伝統的な木造の日本家屋は壁がほとんどなく、空間は建具で仕切る。風通しがいいといえば聞こえがいいが、寒い季節でも隙間風が入り放題なわけで、冷えるのも当然である。そして、夏は夏で、地球温暖化により、とりわけ都市部では、近年、猛暑・酷暑が当たり前になっている。もはや日本の夏は自然の風通しでしのげるものではなく、エアコンなしでは過ごせない。
「夏涼しく、冬暖かい家」に欠かせない「断熱性能」と「気密性」
では、温熱環境を改善し、「夏涼しく、冬暖かい家」を実現するにはどうしたらよいのだろうか。一言でいえば、内部と外部の熱が伝わりにくい家、つまり、夏は暑さを室内に入れず、冬は室内の暖かさを外に逃がさない家をつくるしかない。
例えば、冬に部屋の室温が低くても布団の中は暖かい。それは、布団が断熱性能を発揮して、布団の中の環境を暖かく守ってくれているからだ。アイスクリームを保冷バッグに入れると溶けないのは、保冷バッグが暑い環境から断熱された内部を作っているからだ。つまり、家も布団や保冷バッグのような「断熱材」で包み、暖かさがや涼しさが逃げないように「気密性」を高めればいい、ということになる。
実際、断熱性能を高めないと、住む人の暮らしや家そのものに、以下のようなさまざまなデメリットが生じてしまう。
デメリット1・結露でダニやカビが発生し、柱や土台が腐る
断熱をしていない家の壁の中では、結露が起こりやすい。するとカビやダニが発生しやすくなり、アレルギーや病気を引き起こすことも。また、木造なら壁の内部で柱や土台が腐ってしまうこともある。
デメリット2・ヒートショックのリスクが高まる
ヒートショックとは、急激な温度差がストレスとなり、血圧が上昇したり、失神、心筋梗塞、脳梗塞などを起こすこと。ヒートショックは特に冬の夜、トイレや浴室が、寝室や居室よりも寒いために起こるケースが多い。厚生労働省の調査によれば、ヒートショックによる年間の死亡者数は約1.7万人にのぼり(※)、その3倍が後遺症に苦しんでいる。
デメリット3・熱中症のリスクが高まる
地球温暖化の影響に加え、都市部ではヒートアイランド現象が起こるなど、日本の夏は酷暑になっている。断熱性能の低い住宅は冷房が効きにくく、適度に気温が下がらなければ、屋内で熱中症になることも。
デメリット4・エネルギー効率が悪い
断熱性能が悪い家は、熱が逃げやすいため、エネルギー効率が悪く、暖房や冷房が効きにくい。省エネルギーやサステナビリティが重視される時代に、エネルギーの無駄遣いをする家になってしまう。
新築住宅は2020年から「改正省エネ基準」が義務化。では、中古住宅・マンションは?
世界的に環境問題や地球温暖化への関心が高まるなか、2020年以降、国土交通省による「改正省エネルギー基準」が義務化され、新築住宅については、国が求める省エネ基準を満たさないと建てられなくなる。しかし、既存の中古住宅は、改正省エネ基準を満たす改修(リフォームやリノベーション)が行われなければ、価値のない家となり、ますます活用は進まないままとなる。
※ 厚生労働科学研究費補助金 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究 平成 25 年度
デメリット1・結露でダニやカビが発生し、柱や土台が腐る
断熱をしていない家の壁の中では、結露が起こりやすい。するとカビやダニが発生しやすくなり、アレルギーや病気を引き起こすことも。また、木造なら壁の内部で柱や土台が腐ってしまうこともある。
デメリット2・ヒートショックのリスクが高まる
ヒートショックとは、急激な温度差がストレスとなり、血圧が上昇したり、失神、心筋梗塞、脳梗塞などを起こすこと。ヒートショックは特に冬の夜、トイレや浴室が、寝室や居室よりも寒いために起こるケースが多い。厚生労働省の調査によれば、ヒートショックによる年間の死亡者数は約1.7万人にのぼり(※)、その3倍が後遺症に苦しんでいる。
デメリット3・熱中症のリスクが高まる
地球温暖化の影響に加え、都市部ではヒートアイランド現象が起こるなど、日本の夏は酷暑になっている。断熱性能の低い住宅は冷房が効きにくく、適度に気温が下がらなければ、屋内で熱中症になることも。
デメリット4・エネルギー効率が悪い
断熱性能が悪い家は、熱が逃げやすいため、エネルギー効率が悪く、暖房や冷房が効きにくい。省エネルギーやサステナビリティが重視される時代に、エネルギーの無駄遣いをする家になってしまう。
新築住宅は2020年から「改正省エネ基準」が義務化。では、中古住宅・マンションは?
世界的に環境問題や地球温暖化への関心が高まるなか、2020年以降、国土交通省による「改正省エネルギー基準」が義務化され、新築住宅については、国が求める省エネ基準を満たさないと建てられなくなる。しかし、既存の中古住宅は、改正省エネ基準を満たす改修(リフォームやリノベーション)が行われなければ、価値のない家となり、ますます活用は進まないままとなる。
※ 厚生労働科学研究費補助金 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究 平成 25 年度
「職人不在の時代」こそ、DIYで断熱リフォーム
「それなら、断熱性能を上げる改修をすればいいのでは?」と考えるのは当然だ。しかし、ここに、少子高齢化社会がもたらした「職人不在」という問題が立ちはだかる。世界でもまれな速さで少子高齢化が進んだ結果、日本の建築の現場は深刻な職人不足に陥っている。家を建てたい人、リフォームやリノベーションをしたい人がいて、そのために設計をする人はいても、実際に建物を建てたり手を加えたりするスキルを身につけた職人が足りていないのだ。
そこで、このギャップを埋める解決策として「断熱リフォームをDIYで行う」という選択肢もあるはずだと考えたのが、嶋田洋平さん(建築家、らいおん建築事務所主宰)が委員長をつとめる「HEAD研究会オープンプロセス タスクフォース」である。「空前の職人不足時代には、住む人自身がもっと家づくりに関わる時代になる。DIYがブームを迎えているのもその証左でしょう。このタスクフォースは、建築のプロセスそのものをオープンにすることで、これからのリフォームのあり方を提示していくことを目指しており、その第一弾として、断熱DIYに取り組むことにしたのです。やってくれる人がいないなら、自分たちでやるしかありません」と嶋田さんは話す。論より証拠、というわけで、この夏、築40年超の団地型集合住宅の住戸内の2室を実際にDIYで断熱リフォームするプロジェクトが行われた。
それでは、続く記事で、断熱DIYリフォームのようすをレポートする。
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「それなら、断熱性能を上げる改修をすればいいのでは?」と考えるのは当然だ。しかし、ここに、少子高齢化社会がもたらした「職人不在」という問題が立ちはだかる。世界でもまれな速さで少子高齢化が進んだ結果、日本の建築の現場は深刻な職人不足に陥っている。家を建てたい人、リフォームやリノベーションをしたい人がいて、そのために設計をする人はいても、実際に建物を建てたり手を加えたりするスキルを身につけた職人が足りていないのだ。
そこで、このギャップを埋める解決策として「断熱リフォームをDIYで行う」という選択肢もあるはずだと考えたのが、嶋田洋平さん(建築家、らいおん建築事務所主宰)が委員長をつとめる「HEAD研究会オープンプロセス タスクフォース」である。「空前の職人不足時代には、住む人自身がもっと家づくりに関わる時代になる。DIYがブームを迎えているのもその証左でしょう。このタスクフォースは、建築のプロセスそのものをオープンにすることで、これからのリフォームのあり方を提示していくことを目指しており、その第一弾として、断熱DIYに取り組むことにしたのです。やってくれる人がいないなら、自分たちでやるしかありません」と嶋田さんは話す。論より証拠、というわけで、この夏、築40年超の団地型集合住宅の住戸内の2室を実際にDIYで断熱リフォームするプロジェクトが行われた。
それでは、続く記事で、断熱DIYリフォームのようすをレポートする。
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