光と緩やかな空間のつながり、素材の美しさを味わう「坪庭の家」
光を取りこみつつ、プライバシーも守る四角い家をつくるために建築家が出した答えとは?
渡辺安紀 |Aki Watanabe
2017年10月12日
横浜市の閑静な住宅街に中古の住宅を購入したオーナー。築40年になる家は、とても寒く、耐震性にも不安があった。そこで、娘が大学に進学して家を離れたのをきっかけに、家の建て替えを決意した。
オーナー夫妻は以前の家づくりでも施工を担当してもらった大同工業の紹介で、GEN INOUEの代表、井上玄さんにプランの作成を依頼。井上さんは、「オーナーからはマッチ箱のような四角い家をつくってほしいと言われていました。比較的広い敷地ですが、以前の家は周囲からのプライバシーが確保できていませんでした。そこで、窓以外の方法で光を取り入れつつ、プライバシーを確保できる家を提案しました」と話す。オーナー夫妻は希望通りのマッチ箱のようなシンプルな模型を見て、直感的に「これだ!」と感じ、依頼することにした。
オーナー夫妻は以前の家づくりでも施工を担当してもらった大同工業の紹介で、GEN INOUEの代表、井上玄さんにプランの作成を依頼。井上さんは、「オーナーからはマッチ箱のような四角い家をつくってほしいと言われていました。比較的広い敷地ですが、以前の家は周囲からのプライバシーが確保できていませんでした。そこで、窓以外の方法で光を取り入れつつ、プライバシーを確保できる家を提案しました」と話す。オーナー夫妻は希望通りのマッチ箱のようなシンプルな模型を見て、直感的に「これだ!」と感じ、依頼することにした。
どんなHouzz?
住まい手:夫婦と娘1人
所在地:神奈川県横浜市
構造:地下RC、地上木造2階
敷地面積:170.11㎡
延床面積:187.30㎡
建築面積:77.58㎡
間取り:1階:LDK、趣味コーナー、バス、洗面室(トイレ含む)、ウォークイン・クローゼット、2階:主寝室、洋室、和室、2階トイレ、納戸
設計・管理:GEN INOUE
構造設計:ASD
設備設計:K-Planning
施工:大同工業
竣工時期:2015
住まい手:夫婦と娘1人
所在地:神奈川県横浜市
構造:地下RC、地上木造2階
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延床面積:187.30㎡
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間取り:1階:LDK、趣味コーナー、バス、洗面室(トイレ含む)、ウォークイン・クローゼット、2階:主寝室、洋室、和室、2階トイレ、納戸
設計・管理:GEN INOUE
構造設計:ASD
設備設計:K-Planning
施工:大同工業
竣工時期:2015
オーナー夫妻の希望で、木材はすべて、赤みがかった色味と、経年変化が楽しめるチーク材に統一。タイルの外壁に温かみをプラスしている。写真は、幅違い、厚み違いのチークの板を組み合わせた玄関扉。扉が陰影をつくりだして、落ち着いた佇まいを見せつつ、大手を見せないデザインが、家全体のキューブ感を高めている。
この家には「坪庭の家」という名のとおり、坪庭が5つ点在する。坪庭は、採光やプライバシーを確保する以外に、性質の異なるエリアを壁を設けずにゆるくゾーニングする、緩衝帯の役目を果たしている。
玄関を入ると、吹き抜けと正面の坪庭がつくる光の柱に目を奪われる。南西に面した坪庭は、差し込む光の量によって羽根の角度の調整と開閉ができる電動ブラインドを坪庭の外側に設置。家全体の箱の形状を維持して採光を確保している。
左手の引き戸の先にLDK、趣味のスペースを配置し、家族が集まるパブリックなスペースに。右手はバスルームやウォークインクローゼット、というように動線を分けている。
シックで上品な玄関・ポーチのタイルはフォンテトレーディングのもの。
左手の引き戸の先にLDK、趣味のスペースを配置し、家族が集まるパブリックなスペースに。右手はバスルームやウォークインクローゼット、というように動線を分けている。
シックで上品な玄関・ポーチのタイルはフォンテトレーディングのもの。
手前がキッチンとダイニングスペース、右奥がリビング、左奥には奥様がピアノを楽しむ趣味のスペースが続く。坪庭で取りこんだ光を空間全体に行き届かせ、コストを抑えながら開放性をもたせるため、短手方向は耐力壁を必要としない木造ラーメン構造、長手方向は筋交い構造になっている。
キッチンは、壁側に水回りやレンジを集約し、ステンレス天板のアイランドは作業台とした。遮るものがないため、空間がすっきりとした印象だ。
キッチン側、写真左手の勝手口とサービスヤードも坪庭と同じつくり。この勝手口と写真正面の坪庭は南東にあたる。固定式のルーバーを隣家との境界壁の高さまで設置して、プライバシーを確保している。
キッチンは、壁側に水回りやレンジを集約し、ステンレス天板のアイランドは作業台とした。遮るものがないため、空間がすっきりとした印象だ。
キッチン側、写真左手の勝手口とサービスヤードも坪庭と同じつくり。この勝手口と写真正面の坪庭は南東にあたる。固定式のルーバーを隣家との境界壁の高さまで設置して、プライバシーを確保している。
キッチン側から見た、ダイニングスペース。両サイドの坪庭から光が降り注ぎ、ダイニングの天井も吹き抜けになっているので開放感がある。
5つある坪庭のうち3つに植えた木はすべてティーツリー(メラレウカ)。近所に畑も借りるほど、ガーデニングが好きな奥様のセレクト。ティーツリーは葉が細く、あまり虫もつかず、アロマオイルが採れる木。微かにいい香りがするのが気に入っているそう。「坪庭に植えた木がインテリアにもなり、木漏れ日が、部屋になんとも言えない光のアートを生み出してくれます」とオーナー。
5つある坪庭のうち3つに植えた木はすべてティーツリー(メラレウカ)。近所に畑も借りるほど、ガーデニングが好きな奥様のセレクト。ティーツリーは葉が細く、あまり虫もつかず、アロマオイルが採れる木。微かにいい香りがするのが気に入っているそう。「坪庭に植えた木がインテリアにもなり、木漏れ日が、部屋になんとも言えない光のアートを生み出してくれます」とオーナー。
写真右側のリビングのTV収納はチーク材とアルミ引手を格子の小間返しのように組み合わせた造作家具。チークをふんだんに使いつつも、重くなりすぎないようにモダンな素材と組み合わせてバランスを取った。
写真左側の趣味のスペースはピアノを置き、主に奥様が使用。机と書棚はWALL DECO。古材のチークなので空間に柔らかさが出ている。
オーナー夫妻から床暖房の要望があったが、床下空調を採用して、フローリングにはミハマの無垢のチーク材を使った。床下空調は、床下と地下の天井の間に空調をいれ、床下を暖めたり、冷やしたりして間接的に室温を調節する。
リビングダイニングは快適でも、玄関は寒いということがない。各所に開けられたガラリから直接風も出てくるので、この家のようにオープンなフロアプランの場合、大型のエアコンを設置する必要がなくなり、すぐに冷やしたい場所に小さなエアコンを設置するだけで済む。おかげで夫妻は一年を通して快適に過ごせている。
写真左側の趣味のスペースはピアノを置き、主に奥様が使用。机と書棚はWALL DECO。古材のチークなので空間に柔らかさが出ている。
オーナー夫妻から床暖房の要望があったが、床下空調を採用して、フローリングにはミハマの無垢のチーク材を使った。床下空調は、床下と地下の天井の間に空調をいれ、床下を暖めたり、冷やしたりして間接的に室温を調節する。
リビングダイニングは快適でも、玄関は寒いということがない。各所に開けられたガラリから直接風も出てくるので、この家のようにオープンなフロアプランの場合、大型のエアコンを設置する必要がなくなり、すぐに冷やしたい場所に小さなエアコンを設置するだけで済む。おかげで夫妻は一年を通して快適に過ごせている。
階段は、角型の手すりとスチールと組み合わせてモダンで洗練された印象に。ガレージから直接家の中に入るつくりもオーナーのお気に入りだ。
階段を上がると奥様が花を生ける和室。引き戸と揃いの障子の建具は、外国の人に特に好評だ。
電動のブラインドシャッターが水平の状態。洋室、主寝室とプライベート空間が続く。1階までたっぷりと光を届けるため、2階は光を取り込む空間をより広くとっている。
中庭でかなえる「閉じながら開く」快適な暮らし
中庭でかなえる「閉じながら開く」快適な暮らし
固定ブラインドを取り付けた、2階の洗濯物干し場。周囲を気にせず、洗濯物を干せる。
坪庭を取り入れたラーメン構造による空間構成から、玄関扉や家具のデザインといった細部に至るまで、井上さんにとってこのプロジェクトは最初に提案した「こうあるべき」という空間が一貫して実現まで至ったプロジェクトだった。
「オーナー夫妻は、妥協しないクライアントでした」と井上さんは振り返る。「駐車場前の床ひとつとっても、この街にあるべき外構、外観が実現できたという意味で大きな経験になりました。それをお施主さんと設計の段階から共有してプロジェクトを進めるという、限りある予算のなかで工夫を凝らすおもしろさとはまた違った、理想を実現していくおもしろさがありました」と話す。
一方、オーナー夫妻も、「一生懸命作った家ですから、掃除も一生懸命やっています。グリーンの手入れやインテリアの配置も季節ごとに見直したり……休日をそんな風に過ごす時間が多くなり、でもそれが楽しくて、とても満足しています」と話してくれた。
Houzzツアー:2つの中庭を持つ、どこにいても緑と光を感じられる住まい
「オーナー夫妻は、妥協しないクライアントでした」と井上さんは振り返る。「駐車場前の床ひとつとっても、この街にあるべき外構、外観が実現できたという意味で大きな経験になりました。それをお施主さんと設計の段階から共有してプロジェクトを進めるという、限りある予算のなかで工夫を凝らすおもしろさとはまた違った、理想を実現していくおもしろさがありました」と話す。
一方、オーナー夫妻も、「一生懸命作った家ですから、掃除も一生懸命やっています。グリーンの手入れやインテリアの配置も季節ごとに見直したり……休日をそんな風に過ごす時間が多くなり、でもそれが楽しくて、とても満足しています」と話してくれた。
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この様に小さな庭を住まいに取り込むことができるのかと、新鮮な驚きでしたし素敵だと思いました。
素材をチークにとすることで落ち着きや統一感も出ていると思いました。