コメント
海外のセンスでつくる和の家づくり
禅、茶室、わびさび、障子、畳など、海外の方が日本の美しさを語るときに登場するキーワードはたくさんあります。日本の影響を受けて、海外の人はどんな風に家に取り入れているのでしょうか。
〈アップル〉のCEOだった生前のスティーブ・ジョブズや地図情報ゲーム《イングレス》や《ポケモンGO》を開発した〈ナイアンテック〉創設者のジョン・ハンケが禅に関心を持ち、その教えを生活に取り入れていたのは有名な話です。このように日本の伝統文化に興味を持つ海外の方はたくさんいますが、建築やインテリア、ガーデンデザインのモチーフとして取り入れる建築家や専門家もまた少なくありません。でも、例えば日本人が海外の伝統的な建築様式などを取り入れても現地の雰囲気そのものにはならないように、海外でつくられる和のデザインからはどこか違った印象を感じます。風土や環境によるもの、解釈のバランスなどさまざまな要因があるでしょう。日本でも洋風建築が大半になった今だからこそ、そんなデザインを改めて見直すと、新鮮で参考になりそうなアイデアがたくさんあります。そこで今回は、海外の視点を通した和の建築デザインをご紹介したいと思います。
禅の心を語るタイニーハウス
海外の方にとって、和のモチーフと言えばやはり千利休の茶室でしょうか。素材や配置、広さは異なるものの、掛け軸のかかった床の間や畳、炉、にじり口など要素を忠実に踏襲したデザインです。ですがこちらで驚くべき点は、トレーラーハウスのように移動できることです。シンクが見えるキッチンの手前には、日本式のユニット型浴槽のあるバストイレも完備。ハシゴを登ったロフトも畳敷きという、徹底した和の空間です。
海外の方にとって、和のモチーフと言えばやはり千利休の茶室でしょうか。素材や配置、広さは異なるものの、掛け軸のかかった床の間や畳、炉、にじり口など要素を忠実に踏襲したデザインです。ですがこちらで驚くべき点は、トレーラーハウスのように移動できることです。シンクが見えるキッチンの手前には、日本式のユニット型浴槽のあるバストイレも完備。ハシゴを登ったロフトも畳敷きという、徹底した和の空間です。
こちらが外観。言ってみればタイニーハウスのリビングに茶室を組み合わせたデザインなのですが、意外とありそうでないアイデアでは? さすがタイニーハウス発祥の地アメリカという発想です。
こちらもあわせて
Houzzツアー:好きなときに好きな場所でお茶会を! ポータブルな茶室兼住宅
こちらもあわせて
Houzzツアー:好きなときに好きな場所でお茶会を! ポータブルな茶室兼住宅
オリジナルの禅の解釈で
サンフランシスコの設計士による茶室のデザインです。竹素材の天井や雪見障子、わら聚楽の赤土壁など、日本の伝統的な材質と禅の茶室の要素をふんだんに取り入れています。またモチーフは忠実に再現する一方で、小さなダウンライトを壁沿いに並べたり、ロマネスク様式発祥のヴォールト天井とも取れるかまぼこ型の曲線を採用したりしているのが和と洋の出会いを感じさせます。竹や和紙なども含め普段から日本の素材をデザインに利用している人だけある、絶妙な取り入れ方です。
サンフランシスコの設計士による茶室のデザインです。竹素材の天井や雪見障子、わら聚楽の赤土壁など、日本の伝統的な材質と禅の茶室の要素をふんだんに取り入れています。またモチーフは忠実に再現する一方で、小さなダウンライトを壁沿いに並べたり、ロマネスク様式発祥のヴォールト天井とも取れるかまぼこ型の曲線を採用したりしているのが和と洋の出会いを感じさせます。竹や和紙なども含め普段から日本の素材をデザインに利用している人だけある、絶妙な取り入れ方です。
アジアンモチーフの融合
オハイオ州につくられた茶室。建築家は「ジャパニーズスタイル」と銘打っていますが、どこかオリエンタルな香りがするデザインです。恐らく、屋根のトタンなど材質選びに加え、壁のガラス使いや観音開きの扉が醸し出す開放感、中国の伝統建築に多い左右対称構造、内部の陰陽模様や(欄間とも異なる)アジア風の柄の透かし彫りの天窓など、随所にアジア各地の要素が感じられるからでしょう。また庭を楽しむ額縁としての丸窓がステンドグラス風のすりガラスなのも興味深い点です。日本の一般的な(草庵)茶室は左右非対称な構成をつかい、開口部はあえて狭くすることで内側を別世界としますが、それとは異なるオリジナリティが感じられます。
オハイオ州につくられた茶室。建築家は「ジャパニーズスタイル」と銘打っていますが、どこかオリエンタルな香りがするデザインです。恐らく、屋根のトタンなど材質選びに加え、壁のガラス使いや観音開きの扉が醸し出す開放感、中国の伝統建築に多い左右対称構造、内部の陰陽模様や(欄間とも異なる)アジア風の柄の透かし彫りの天窓など、随所にアジア各地の要素が感じられるからでしょう。また庭を楽しむ額縁としての丸窓がステンドグラス風のすりガラスなのも興味深い点です。日本の一般的な(草庵)茶室は左右非対称な構成をつかい、開口部はあえて狭くすることで内側を別世界としますが、それとは異なるオリジナリティが感じられます。
浴室に和とレス・イズ・モア(Less is more)の心を
日本では高音多湿の気候やメンテナンスの問題もあり、木材の使用は贅沢なことです。ひのきやヒバなど香りのよい木を使った浴室は多くの人が憧れますが、一般家庭では躊躇する人も多いかもしれません。でも、せっかくなら肌や足に気持ちのよい自然素材で浴室や床をつくってみたい、という人はいるでしょう。そんな場合は、このサンフランシスコのデザインを参考にしてはいかがでしょう。海外の浴室には珍しく日本風の木製の浴槽が作りつけられています。一方床にはすのこをはめ込み、段差でつまづくことない安全性と通気性の両方を確保しています。さらに大きな窓は、実際の床面積以上の明るさや開放感を感じさせてくれることでしょう。
日本では高音多湿の気候やメンテナンスの問題もあり、木材の使用は贅沢なことです。ひのきやヒバなど香りのよい木を使った浴室は多くの人が憧れますが、一般家庭では躊躇する人も多いかもしれません。でも、せっかくなら肌や足に気持ちのよい自然素材で浴室や床をつくってみたい、という人はいるでしょう。そんな場合は、このサンフランシスコのデザインを参考にしてはいかがでしょう。海外の浴室には珍しく日本風の木製の浴槽が作りつけられています。一方床にはすのこをはめ込み、段差でつまづくことない安全性と通気性の両方を確保しています。さらに大きな窓は、実際の床面積以上の明るさや開放感を感じさせてくれることでしょう。
木の浴槽をアクセントに
リノベーションした建物の浴室。木製の浴槽と床、周囲の自然木を活かした装飾、コンクリート目地の黒い小石を敷き詰めた壁などで和を感じさせる一方、中央の天井から流れるシャワーやアンティークのシャワーヘッド、周囲のアイアン製什器や古材を活用したドアや壁、ローマ風の手水鉢などのチョイスを見ると、和風やオリエンタルではもはや括れない印象に仕上がっています。ちなみに分類は「インダストリアル」だそう。今の日本でのリノベーションにも活かせそうな実験性あふれるアイデアです。
こちらもあわせて
日本のお風呂のすばらしさとは?
リノベーションした建物の浴室。木製の浴槽と床、周囲の自然木を活かした装飾、コンクリート目地の黒い小石を敷き詰めた壁などで和を感じさせる一方、中央の天井から流れるシャワーやアンティークのシャワーヘッド、周囲のアイアン製什器や古材を活用したドアや壁、ローマ風の手水鉢などのチョイスを見ると、和風やオリエンタルではもはや括れない印象に仕上がっています。ちなみに分類は「インダストリアル」だそう。今の日本でのリノベーションにも活かせそうな実験性あふれるアイデアです。
こちらもあわせて
日本のお風呂のすばらしさとは?
シェーカー風の和モチーフ
茶室や和室でよく使われる丸窓、木製の浴槽や漆喰風の壁、障子風の飾りなどが印象的な浴室。アジアンテイストのデザインだそうですが、どちらかといえばウィリアム・メレル・ヴォーリズが建てた豊郷小学校などのような大正・昭和モダン建築をイメージさせます。イギリスのアパートらしく、シェーカー風のシンプルで抑えた印象も感じられるのが不思議です。
こちらもあわせて
落ち着ける空間をつくりたい? それなら、日本の「旅館」をお手本にしよう!
茶室や和室でよく使われる丸窓、木製の浴槽や漆喰風の壁、障子風の飾りなどが印象的な浴室。アジアンテイストのデザインだそうですが、どちらかといえばウィリアム・メレル・ヴォーリズが建てた豊郷小学校などのような大正・昭和モダン建築をイメージさせます。イギリスのアパートらしく、シェーカー風のシンプルで抑えた印象も感じられるのが不思議です。
こちらもあわせて
落ち着ける空間をつくりたい? それなら、日本の「旅館」をお手本にしよう!
建物を日本庭園に同化させる
こちらはプール付きの大きな庭のある物件。古いトイレのまわりに木製の柵を建て、格子に蔓系の植物を絡ませてグリーンカーテンで覆ってしまおうというアイデアです。「建物を保存するため、周囲の日本庭園となじむようにしてほしい」という依頼主の要望によるものだそうです。確かに、建物の在処を唯一知らせるのは赤い庇のみで、それ以外はひっそりと印象を消しているかのようです。既存の建物自体に手を加えず、四季の変化を楽しむ日本庭園のわびさびの要素に同化させることで保存する手法には斬新さを感じます。
こちらもあわせて
世界のHouzzから:モダニズムの造園家、ローレンス・ハルプリンが手がけた日本風庭園
こちらはプール付きの大きな庭のある物件。古いトイレのまわりに木製の柵を建て、格子に蔓系の植物を絡ませてグリーンカーテンで覆ってしまおうというアイデアです。「建物を保存するため、周囲の日本庭園となじむようにしてほしい」という依頼主の要望によるものだそうです。確かに、建物の在処を唯一知らせるのは赤い庇のみで、それ以外はひっそりと印象を消しているかのようです。既存の建物自体に手を加えず、四季の変化を楽しむ日本庭園のわびさびの要素に同化させることで保存する手法には斬新さを感じます。
こちらもあわせて
世界のHouzzから:モダニズムの造園家、ローレンス・ハルプリンが手がけた日本風庭園
和をダイナミックに融合
ここからは、和の設えを細部に取り入れた例です。飛び石のある中庭、障子風の明かり窓、リビングと廊下を分ける三和土風の床と随所に和の要素が散りばめられています。でも、いかにもな日本家屋風にならないのは、高い天井にまで続く明かり窓や玉砂利よりもワイルドな石など、ダイナミックさを感じさせる所が大きいのかもしれません。キッチンや階段などに艶のある濃茶の木材を選んでいる点も、アジア的なモダンさを加えています。
ここからは、和の設えを細部に取り入れた例です。飛び石のある中庭、障子風の明かり窓、リビングと廊下を分ける三和土風の床と随所に和の要素が散りばめられています。でも、いかにもな日本家屋風にならないのは、高い天井にまで続く明かり窓や玉砂利よりもワイルドな石など、ダイナミックさを感じさせる所が大きいのかもしれません。キッチンや階段などに艶のある濃茶の木材を選んでいる点も、アジア的なモダンさを加えています。
花見が楽しみな庭づくり
咲き誇る花が目を惹く庭は、トロントの個人宅。庭のサイズに比較すると少々大きな木ですが、あえて入口付近に配して枝が通路(内)側に傾くバランス感が絶妙です。空間の奥行きと木の高さを活かした配置や曲線の通路など、花を美しく見せる立体感のあるデザイン。実はこの例では直球の和の要素は見当たらないのですが、モダンな庭造りの参考にいかがでしょう。
咲き誇る花が目を惹く庭は、トロントの個人宅。庭のサイズに比較すると少々大きな木ですが、あえて入口付近に配して枝が通路(内)側に傾くバランス感が絶妙です。空間の奥行きと木の高さを活かした配置や曲線の通路など、花を美しく見せる立体感のあるデザイン。実はこの例では直球の和の要素は見当たらないのですが、モダンな庭造りの参考にいかがでしょう。
モダンな建物に日本庭園のエッセンスを
日本庭園の要素を活かした庭づくりの例。ミッドセンチュリーな建物の入口のデッキから通じる玉砂利の庭に飛び石、ししおどしを模した鉄製オブジェや椿を眺められる石造りのベンチと、和洋折衷らしいデザインにしあがっています。
国内でも洋風デザインの建築が一般的になり、伝統的な建築要素は減りつつあります。そんな中で見る海外経由の和のデザインは、日本人としても斬新で発見する部分も多いはず。インテリアづくり、また新築やリノベーションなどのアイデアとして、ぜひ参考にしてみてください。
教えてHouzz
海外の方に自慢したい、日本建築の良さを教えてください。
こちらもあわせて
和室・和風の家の写真を見る
インテリアとデザインの新トレンド、北欧 ✕ 日本の「ジャパンディ スタイル」に注目!
日本庭園の要素を活かした庭づくりの例。ミッドセンチュリーな建物の入口のデッキから通じる玉砂利の庭に飛び石、ししおどしを模した鉄製オブジェや椿を眺められる石造りのベンチと、和洋折衷らしいデザインにしあがっています。
国内でも洋風デザインの建築が一般的になり、伝統的な建築要素は減りつつあります。そんな中で見る海外経由の和のデザインは、日本人としても斬新で発見する部分も多いはず。インテリアづくり、また新築やリノベーションなどのアイデアとして、ぜひ参考にしてみてください。
教えてHouzz
海外の方に自慢したい、日本建築の良さを教えてください。
こちらもあわせて
和室・和風の家の写真を見る
インテリアとデザインの新トレンド、北欧 ✕ 日本の「ジャパンディ スタイル」に注目!
おすすめの記事
専門家とのやりとり
プロと一緒に部屋づくりをして、素敵なインテリアを手に入れよう
部屋づくりをインテリアの専門家に依頼すると、自分では思いつかない提案がもらえることも。プロに依頼するメリットや探し方などをご紹介します。
続きを読む
コーディネート・スタイリング
おしゃれな室内インテリアにする、クッションの上手な選び方
文/片岸千代子
クッションはインテリアとしても優秀。春夏のクッションから、秋冬仕様に“衣替え”してみませんか?
続きを読む
暮らしのヒント
テレビのあり方を考えよう。テレビを主役にしないインテリアのススメ
「かっこいいリビングには大きなテレビが必要」と思い込んでいませんか? ライフスタイルが変化している今、テレビのあり方やリビングでの過ごし方について考えてみましょう。
続きを読む
名作デザイン
現代に生きる、ウィリアム・モリスのテキスタイルデザイン
アーツ&クラフツ運動に影響を与えた近代デザインの父、ウィリアム・モリス。多彩なデザイン活動の中で最もよく知られるのはそのテキスタイル。美しい植物文様が現代のインテリアにも盛んに取り入れられています。
続きを読む
名作デザイン
ウィリアム・モリスのものづくり精神とテキスタイルデザイン
イギリスの文化芸術、特に室内装飾の分野で大きな功績を残したモリスのものづくりについて、テキスタイルデザインを中心にご紹介します。
続きを読む
コーディネート・スタイリング
ブランケット、クッション、ファブリックパネルで秋冬のインテリアにチェンジ!
インテリアに季節感を取り入れるのに、最も気軽に使えるのはファブリック。なかでもすぐに試せるブランケット、クッション、ファブリックパネルで小さな模様替えをしてみませんか?
続きを読む
コーディネート・スタイリング
ソファはなきゃダメ?ソファのない暮らしを選ぶ理由
リビングにはソファを置くのが当たり前、と思っていませんか?ライフスタイルによっては、ソファを置かないという選択肢もあります。
続きを読む
寝室の記事
狭い寝室のためのベッドとベッドまわりのアイデア
寝室をリラックスできる空間にし、ぐっすり眠るのは重要です。狭い寝室を快適にするための、インテリアのアイデアをチェックしてみましょう。
続きを読む