オリジナリティに富む「軒の深い住宅」に注目
軒のある家は古いイメージ? いえいえ、さまざまなテイストで表現されたモダンな住宅がたくさんあります。この記事では、今ふうの軒の深い家に注目しつつ、軒が深いからこそ可能な樋(とい)の気配を消す方法にも触れます。
小川のぞみ
2017年7月26日
ライター/コピーライター/アドバイザー。
日本・湘南エリアからアメリカ・カリフォルニア生活を経て、再び湘南エリアに在住。高断熱・高気密の長期優良住宅に居住しながら、インテリアや整理収納のアドバイス、住宅購入の相談やホームステージング(家具のコーディネートなど)に取り組む。
ライター/コピーライター歴は10年以上。ウェブサイトや雑誌、ECサイトや通販誌、広告媒体(商業施設の冊子やポスター、大手企業発行の会報誌など)にて企画から携わる。担当分野は、住宅、インテリア、教育、ファッション、ランジェリー、インタビュー取材など。スタイリストの経験も多数。
ライター/コピーライター/アドバイザー。
日本・湘南エリアからアメリカ・カリフォルニア生活を経て、再び湘南エリアに在住。高断熱・高気密の長期優良住宅に居住しながら、インテリアや整理収納のアドバイス、住宅購入の相談やホームステージング(家具のコーディネートなど)に取り組む... もっと見る
伝統的な和風住宅の特徴のひとつである軒の深さですが、最近の日本の住宅では軒が浅い傾向があります。デザインやコストの重視、外壁材や屋根材の進化により、軒の浅い家・ない家が増えているのでしょう。しかしながら日本で古来より存在する軒の出の深い家には、利点が多いのも事実。軒の深い現代の住まいにもぜひ注目してみてください! 和風でも和風でなくても、モダンな仕上がりの住宅がたくさん提案されています。早速、Houzzの日本の事例からご紹介します。
1. デザインと機能に優れた軒の深い住宅3例
〈haco建築設計事務所〉が手がけた《諏訪の家 | Suwa no ie》は、濡れ縁ふうのウッドデッキが和のエッセンスを漂わせる住宅。軒裏の高さと室内天井の高さを合わせたデザインに注目してください。室内から見ると深い軒裏と室内天井が繋がって見え、内外の境界をなくすように考慮されているところが秀逸です。
また深い軒は、自然光が直接室内に入らないようにする採光の調整役でもあります。外壁の木板張りやウッドデッキを雨や紫外線によるダメージからも救ってくれます。
〈haco建築設計事務所〉が手がけた《諏訪の家 | Suwa no ie》は、濡れ縁ふうのウッドデッキが和のエッセンスを漂わせる住宅。軒裏の高さと室内天井の高さを合わせたデザインに注目してください。室内から見ると深い軒裏と室内天井が繋がって見え、内外の境界をなくすように考慮されているところが秀逸です。
また深い軒は、自然光が直接室内に入らないようにする採光の調整役でもあります。外壁の木板張りやウッドデッキを雨や紫外線によるダメージからも救ってくれます。
外観は「軒を深くすることで建物全体にボリューム感を与え、印象的にしました」という建築家・羽柴さん意図の通り、壮大さを感じます。
雨樋が内樋になっているのもポイントで、「外壁の木板張りに併せて木の破風を見せ、スッキリと見せたかった」とのこと。軒先の水平ラインと外壁の木板張りの水平ラインも美しく強調されています。
雨樋が内樋になっているのもポイントで、「外壁の木板張りに併せて木の破風を見せ、スッキリと見せたかった」とのこと。軒先の水平ラインと外壁の木板張りの水平ラインも美しく強調されています。
〈スペース101建築事務所〉設計が設計した《DJHOUSEⅡ》は、波のチューブをイメージした外観の庇の形状が個性的。
「あたかも庇が突き出たように見えていますが、庇鼻先のディテールに工夫を凝らしただけで、屋根は一般的にビルなどにある陸屋根になっています」とは建築家の凢内(おおち)さん。
「あたかも庇が突き出たように見えていますが、庇鼻先のディテールに工夫を凝らしただけで、屋根は一般的にビルなどにある陸屋根になっています」とは建築家の凢内(おおち)さん。
次に樋を見てみましょう。
「縦樋は視角的に外観を著しく損なうので、屋上の側面よりステンレスの箱状の金物40センチ程度を外側に向かって持ち出しています」とのことで、確かにすっきりと美観に優れてれています。
雨水に関しては、外構の砂利に自然落下させるように設計しており、その下に雨水枡を忍ばせるという工夫をしています。
「縦樋は視角的に外観を著しく損なうので、屋上の側面よりステンレスの箱状の金物40センチ程度を外側に向かって持ち出しています」とのことで、確かにすっきりと美観に優れてれています。
雨水に関しては、外構の砂利に自然落下させるように設計しており、その下に雨水枡を忍ばせるという工夫をしています。
〈フリーダムアーキテクツデザイン株式会社〉の作品《軒の家》は、リズミカルな深い軒と浅い軒が目を引く平屋です。深い軒は夏の直射日光を軽減するだけでなく、半外部空間が作られるため、スペースの有効活用ができます。
内部と外部をあいまいにしてくれる軒下でくつろぐ時間は、生活を豊かにしてくれるに違いありません。
内部と外部をあいまいにしてくれる軒下でくつろぐ時間は、生活を豊かにしてくれるに違いありません。
正面から見ると、軒の見つけが薄く見えます。そう見えるように軒にカットを施したところが、こちらの住宅の外観へのこだわりです。
雨が降ったら自然を感じるようにと樋はなく、コンクリート平板を浸食して経年変化を楽しみます。ただし雨の落ちるところにはデッキか砂利を敷いており、泥が跳ねないよう考えられています。
集中豪雨など気候変化が激しい昨今ですから、このような樋の考えかたは理にかなっていると思います。
雨が降ったら自然を感じるようにと樋はなく、コンクリート平板を浸食して経年変化を楽しみます。ただし雨の落ちるところにはデッキか砂利を敷いており、泥が跳ねないよう考えられています。
集中豪雨など気候変化が激しい昨今ですから、このような樋の考えかたは理にかなっていると思います。
2. 軒というよりもはや大屋根!? 迫力の住まい3例
〈y+M design office〉が手がけた《雨やどりの家 Rain Shelter House》は、雨や雪の多い山陰地域にあるため、住生活を守るための軒下空間をつくる、というコンセプト。西側のひらけた景観をのぞみつつ西日を調整するために、深い軒が誕生。
道路の反対側に軒樋があるため、すっきりとした外観になっており、「家型の上にフワリと大屋根が乗っているように見せています」とは建築家の三宅さん。
〈y+M design office〉が手がけた《雨やどりの家 Rain Shelter House》は、雨や雪の多い山陰地域にあるため、住生活を守るための軒下空間をつくる、というコンセプト。西側のひらけた景観をのぞみつつ西日を調整するために、深い軒が誕生。
道路の反対側に軒樋があるため、すっきりとした外観になっており、「家型の上にフワリと大屋根が乗っているように見せています」とは建築家の三宅さん。
内観のイメージは、家族が一つ屋根の下に集まる生活で、大屋根の下に家型の部屋を配置。
「太陽光の進入角度の違う方位に合わせて軒の出寸法をコントロールしながら、屋外と屋内の境界が曖昧に感じられるよう、一体に見える天井の仕上げにしている」そうです。
「太陽光の進入角度の違う方位に合わせて軒の出寸法をコントロールしながら、屋外と屋内の境界が曖昧に感じられるよう、一体に見える天井の仕上げにしている」そうです。
〈mA-style architects〉設計の《eaves house》は、窓のある大屋根が大迫力。
なぜこのような外観になったのか建築家の川本さんにお尋ねすると、「建主よりプライバシーを保守したいという要望があったので、何かで囲うことを考えました。壁で囲うようなコートハウスだと周辺環境との関係性を断絶する可能性があると思い、屋根を地面1mまで下げることに。地続きに視線が抜ける周辺との関係性をつくりました」とのこと。
なぜこのような外観になったのか建築家の川本さんにお尋ねすると、「建主よりプライバシーを保守したいという要望があったので、何かで囲うことを考えました。壁で囲うようなコートハウスだと周辺環境との関係性を断絶する可能性があると思い、屋根を地面1mまで下げることに。地続きに視線が抜ける周辺との関係性をつくりました」とのこと。
また、興味深いのが内外の連続性がこの上ないほど曖昧なことです。内部の床の仕上げをそのまま外部へと延長したり、外部の植栽が内部に植えているように屋根を配置することで演出されています。
雨樋については、「地面の中にトリカルパイプという管を入れて、雨水を排出できるように計画した」ということで、そのため見えないようになっています。
雨樋については、「地面の中にトリカルパイプという管を入れて、雨水を排出できるように計画した」ということで、そのため見えないようになっています。
〈一級建築士事務所haus〉の《haus-ubud》は、南国を想わせるリゾート風の大きな三角屋根が特徴的な住まい。
どっしりとした屋根、軒は、守られているような安心感が得られるのも美点のひとつです。「敷地内に車を停めてから、玄関まで雨に濡れずにすむ、深い軒が欲しい」という施主の要望に対する答えがこの大屋根だったそうで、水平方向に14メートルの長さがあります。
どっしりとした屋根、軒は、守られているような安心感が得られるのも美点のひとつです。「敷地内に車を停めてから、玄関まで雨に濡れずにすむ、深い軒が欲しい」という施主の要望に対する答えがこの大屋根だったそうで、水平方向に14メートルの長さがあります。
雨除けになるということは、外壁のメンテナンスが楽。また、直線的なデザインにこだわった屋根のため、ノイズとなる樋はつけていません。その代わりに、雨の日に屋根からの滴が当たるモルタル部分に砂利を敷いたラインを入れ、地面へと導かれる仕組みにして水跳ねを防いでいます。まさにデザイン性と機能性を両立している好例といえるでしょう。
こちらもあわせて
世界中の軒の深い家の写真を見る
教えてHouzz
軒のある家にお住いの方は、そのメリットについてコメント欄にお寄せください。
こちらもあわせて
世界中の軒の深い家の写真を見る
教えてHouzz
軒のある家にお住いの方は、そのメリットについてコメント欄にお寄せください。
おすすめの記事
照明
住まいの印象を大きく変える、ダウンライトの使い方まとめ
文/藤間紗花
複数使うことで空間に陰影をつくり、スタイリッシュな印象を与えてくれるダウンライト。これまでご紹介した、ダウンライトの活用法についての記事を、まとめてお届けします。
続きを読む
写真特集
内と外の境界を曖昧にする、インナーテラスの事例集
文/藤間紗花
天候に関係なく利用でき、かつ陽の光や風の流れを感じられるインナーテラス。事例写真とともに、メリットや設計のポイントについて、それぞれの事例を手がけた専門家に聞きました。
続きを読む
家づくりのヒント
草屋根とは?専門家に聞く取り入れ方
文/藤間紗花
草屋根とは、その名の通り緑化された屋根のこと。住まいの屋根を草屋根にすることにより、どんなメリット・デメリットがあるのでしょう? 施工費用やメンテナンス方法まで、5人の専門家が詳しく解説します。
続きを読む
軒の深い家は夏は涼しく、冬は工夫すれば部屋の奥まで日差しが降るそそぎますね。素敵です。外壁にも優しいし耐久性も良いですね。外壁の
劣化を抑制出来ますね。
雪国暮らしで家は断熱を考え総2階なのですが、軒(それも深めの)がある家には憧れます。
軒と似たスペース空間を得たい為にうちはデッキとテラス屋根を庭に設置する予定です。
雨が降っても、日射しが強くても、カバーされた部分では座ってくつろげるので、デザイン性以外にも優れものです。