涼しさ満点。水を庭に取り入れる
庭を構成する要素のひとつである水。ビオトープやつくばいなど、現代住宅でもできる、水の取り入れ方をご紹介します。
舩村佳織
2017年6月21日
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています。
二児の子育て中でもあり、家族みんなが楽しめる庭造りが得意です。設計者として、主婦としての目線から、暮らしやすさに寄り添います。
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています... もっと見る
あっという間に春は過ぎ、まるで夏のような日差しを感じるようになってきました。暑くなってくると水辺が気持ちよく感じられるようになってきます。今年の夏は庭に水辺を取り入れてみませんか? 水のきらめきやせせらぎの音は、五感を通じて涼しさを感じさせてくれます。日本と海外の水を取り入れた庭の事例をもとに、アイデアとメンテナンス方法をご紹介します。
ひと昔前は大きな庭には池があることも多かったですが、近頃は池をつくりたいというケースは稀です。かわりに先代がつくった池を埋めてほしいというお話はよく聞きます。メンテナンスが大変、ということが大きな理由でしょう。自然の風景を庭に再現しようとすると水は不可欠な要素ですが、現代の住宅事情や忙しい日々での手間を考えると難しいことです。
改めて庭にどのように水を取り入れられるか考えてみましょう。現代に合うアイデアが見つけられるかもしれません。
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ビオトープをつくる
従来の庭における池とは違った、ビオトープとして水を取り入れる事例が増えています。ビオトープとは生物の生息地という意味。自然環境を再現した中で、人つの生態系ができあがっている空間のことを言います。うまくつくられたビオトープは人間の手で濾過をしなくても自然に浄化されていきます。そのため基本的には手を加えずに、自然に任せるという管理になります。雨が少ない時期は水量が著しく低下しないよう注意が必要です。
従来の庭における池とは違った、ビオトープとして水を取り入れる事例が増えています。ビオトープとは生物の生息地という意味。自然環境を再現した中で、人つの生態系ができあがっている空間のことを言います。うまくつくられたビオトープは人間の手で濾過をしなくても自然に浄化されていきます。そのため基本的には手を加えずに、自然に任せるという管理になります。雨が少ない時期は水量が著しく低下しないよう注意が必要です。
自然に任せれば良いだけなら、そんな簡単なことはない! と思われるかもしれませんが、ビオトープ内の生態系をうまくつくることが一番難しいのです。
適切な植物や生物を適切な量で投入し、浄化サイクルが出来上がるようにしなくてはなりません。ある生物だけが繁殖しすぎたり、その逆で減りすぎたりしないよう、よく観察することが大事です。生き物が好きな人にはたまらなくおもしろい作業となるでしょう。
都市内に存在するビオトープは、昆虫や鳥のコリドーとしても機能します。コリドーとは生物の通り道のこと。小さなコリドーの連続が、地域の生物多様性につながっていきます。子供と一緒にビオトープを管理すれば、レベルの高い環境教育にもつながります。
適切な植物や生物を適切な量で投入し、浄化サイクルが出来上がるようにしなくてはなりません。ある生物だけが繁殖しすぎたり、その逆で減りすぎたりしないよう、よく観察することが大事です。生き物が好きな人にはたまらなくおもしろい作業となるでしょう。
都市内に存在するビオトープは、昆虫や鳥のコリドーとしても機能します。コリドーとは生物の通り道のこと。小さなコリドーの連続が、地域の生物多様性につながっていきます。子供と一緒にビオトープを管理すれば、レベルの高い環境教育にもつながります。
こちらは睡蓮鉢を利用した小さなビオトープを玄関先に設置した事例。濾過バクテリア入りの底砂を利用すれば、小さい鉢の中でも浄化サイクルができあがるので、濾過装置は必要ありません。合わせてヤマトヌマエビやドジョウを入れ、メダカを泳がせれば涼しげなミニビオトープが完成。様子を見て水を足したり、汚れが気になる場合は少しだけ掃除をする程度の管理で充分です。みなさんが気にするボウフラはメダカが食べてしまうので、心配はいりません。
ビオトープは自然のままの様子を楽しむためのもの。季節によっては寂しい景色に見えるときもありますが、それこそがビオトープの醍醐味。春夏秋冬の美しさを見つけてください。
ビオトープは自然のままの様子を楽しむためのもの。季節によっては寂しい景色に見えるときもありますが、それこそがビオトープの醍醐味。春夏秋冬の美しさを見つけてください。
つくばいで水を取り入れる
茶庭の要素であるつくばいは、手軽に水を取り入れるのにぴったりです。筧(かけい)から水が流れるようにすれば、ボウフラや水の濁りも気にしなくて大丈夫です。筧は水道とつなげて、蛇口で操作するように造ることも可能。つくばいから溢れた水を下水管へと流れるようにすることもできます。挑戦してみたい方は造園屋さんに相談してみましょう。
茶庭の要素であるつくばいは、手軽に水を取り入れるのにぴったりです。筧(かけい)から水が流れるようにすれば、ボウフラや水の濁りも気にしなくて大丈夫です。筧は水道とつなげて、蛇口で操作するように造ることも可能。つくばいから溢れた水を下水管へと流れるようにすることもできます。挑戦してみたい方は造園屋さんに相談してみましょう。
自然石のつくばいは和風のイメージが強いですが、成型タイプのつくばいはモダンで違った印象になります。コンクリートやタイルにも合うので、現代風の建築にもおすすめのタイプです。
つくばいのメンテナンスは汚れが気になったら掃除をするぐらい。長期間水を流さないで溜めっぱなしにしていると、ボウフラが発生するので、定期的に水を入れ替えるようにしましょう。排水を造った場合は落ち葉の詰まりなどに注意が必要。筧から水が流れる音は、なんとも涼しげで気持ちが良いもの。水面に花を浮かべてみたりしてもキレイですよ。
つくばいのメンテナンスは汚れが気になったら掃除をするぐらい。長期間水を流さないで溜めっぱなしにしていると、ボウフラが発生するので、定期的に水を入れ替えるようにしましょう。排水を造った場合は落ち葉の詰まりなどに注意が必要。筧から水が流れる音は、なんとも涼しげで気持ちが良いもの。水面に花を浮かべてみたりしてもキレイですよ。
ポンプでミニ噴水
こちらは海外の事例。つくばいのような形の石の中央にポンプが設置されており、水が循環する仕組みになっています。ヨーロッパでは古くから庭園や街で噴水の装置を見ることができます。日本は滝のように落とす水が主流でしたが、ヨーロッパでは水を下から上げる装置が好まれました。これぐらいの大きさの噴水ならば、日本人の感性にも住宅事情にも合いますね。
こちらは海外の事例。つくばいのような形の石の中央にポンプが設置されており、水が循環する仕組みになっています。ヨーロッパでは古くから庭園や街で噴水の装置を見ることができます。日本は滝のように落とす水が主流でしたが、ヨーロッパでは水を下から上げる装置が好まれました。これぐらいの大きさの噴水ならば、日本人の感性にも住宅事情にも合いますね。
こちらも同様に海外の事例です。ポンプアップの小さな噴水が仕込まれているサイズ違いの壺が並べられています。花壇の中に設置して、植栽とのコーディネートが楽しめます。
造成工事が必要ないこのような装置は、庭が完成している状態でも取り入れやすくおすすめです。水の音と輝きは庭の景色に奥行きを与えてくれます。
造成工事が必要ないこのような装置は、庭が完成している状態でも取り入れやすくおすすめです。水の音と輝きは庭の景色に奥行きを与えてくれます。
錦鯉に挑戦
近年海外での錦鯉人気が高まっています。日本国内の需要よりも海外の需要が上回っているという声も聞こえるほど。こちらの写真も海外の事例です。古臭いイメージを持たれがちな錦鯉ですが、モダンな庭に錦鯉が泳いでいると、とてもセンス良く見えてきます。庭に池があるだけでは少し寂しいもので、錦鯉の赤や白や金色がチラチラと見えるだけで雰囲気はぐっと上質になります。
錦鯉を池で飼う場合、しっかりとした濾過装置を用意することが重要です。後のトラブルを減らすことができます。池ならば大掛かりな掃除は一年に一度程度で大丈夫です。
近年海外での錦鯉人気が高まっています。日本国内の需要よりも海外の需要が上回っているという声も聞こえるほど。こちらの写真も海外の事例です。古臭いイメージを持たれがちな錦鯉ですが、モダンな庭に錦鯉が泳いでいると、とてもセンス良く見えてきます。庭に池があるだけでは少し寂しいもので、錦鯉の赤や白や金色がチラチラと見えるだけで雰囲気はぐっと上質になります。
錦鯉を池で飼う場合、しっかりとした濾過装置を用意することが重要です。後のトラブルを減らすことができます。池ならば大掛かりな掃除は一年に一度程度で大丈夫です。
建築と一体化した水
中庭に水を取り入れた事例です。建築の段階から水をプランに取り込み、非日常的なリゾート感を演出していいます。水を素材のひとつとして利用した効果的な建築です。
日当たりが良い場所では放っておくとどうしても藻が発生してしまいますが、紫外線殺菌灯が付いた濾過装置を使用すれば、藻の発生を防げます。生き物がいない池でも、濾過装置を使用することで、掃除の手間を減らすことができます。
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「小さな和庭」が持つ、大きな存在感を楽しもう
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日本と海外両方の事例から庭に水を取り入れるアイデアをご紹介しました。水は使い方によって、自然の風景を造ったり、ラグジュアリーな空間をつくったりできます。これからの季節は庭に水を取り入れるのにぴったりの季節です。気になるものがある方は、ぜひチャレンジしてみてください。
庭・ガーデニングの記事をもっと読む
教えてHouzz
みなさんの家の庭には「水」を取り入れていますか? 事例写真なども大歓迎です!
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松井福祉住環境企画 様
いつも見ていただいてありがとうございます。
睡蓮鉢の中をメダカがちょろちょろ泳いでる様子はとても癒されます。
ぜひチャレンジしてみてください!