5つの機能をユニットに収め、狭い空間を広く使ったアパートメント
キッチン、クローゼット、玄関、ランドリー、書斎を兼ねた多機能ユニットを部屋の中に置けば、他の部分はゆったり使える――巧みな設計と木工職人の技でそんな秀逸なアイデアを実現した、イタリアの事例をご紹介します。
Claudia Schiera
2017年5月8日
キッチン、クローゼット、玄関ホール、ランドリー、書斎。オーク材のユニットの中に、これらの機能すべてをコンパクトにおさめた家がある。コモ湖を望むヴィラの最上階に位置し、元はロッジア(壁のない柱廊)だったところを1970年代にアパートメントに改造。そのアパートメントのリビングに、コンパクトな多機能ユニットを設置している。シンプルで合理的な美しさがあるコンパクトな独立型ユニットが、空間の要となっている。
多機能ユニットを設計したのは、イザベラ・マルティさんと彼女のスタッフ。製作には同じイタリア北部カントゥにある〈モルテーニ〉の木工工房が協力した。新しい挑戦を続ける職人たちの工房の技により、精巧かつ複雑な「箱」が完成した。
「寝室エリアの外に、生活に必要な機能をすべて備えた場所をつくってほしい。もちろん、空間が分断して見えないこと、アパートメントのサイズも考慮してほしい。」というオーナーの要望を受けてマルティさんが考えたのが、キューブ型ユニットだ。独立型ユニットは、文字どおり部屋の中に「ぽんと置いた」かのよう。ワンルーム空間や天井を分断しないため、湖を見おろす大きな窓から入る自然光も奥まで届く。
他の内装をすべて終えたのち、ユニットを現場で組み立てた。ユニットの設計にあたって、水まわりや電気関係の設備は事前にミリ単位まで正確に実測。工房内で一度組み立ててから解体し、現場で再度組み立てるという工程を1週間で行った。
他の内装をすべて終えたのち、ユニットを現場で組み立てた。ユニットの設計にあたって、水まわりや電気関係の設備は事前にミリ単位まで正確に実測。工房内で一度組み立ててから解体し、現場で再度組み立てるという工程を1週間で行った。
キッチン設備一式と多機能アイランドキッチンのカウンタートップは、〈ショルテス〉の製品をミラノのインテリアショールーム〈スポッティ〉で購入。アイランドキッチンにはシンク、カウンター面に対してフラットなコンロがあり、下部には調理道具を収納する大型キャビネットがある。
こちらもあわせて
Houzzツアー:37平米のマンションを壁面収納ユニットでゲストをもてなせる家に
こちらもあわせて
Houzzツアー:37平米のマンションを壁面収納ユニットでゲストをもてなせる家に
ユニットの設計で最も興味深い点の1つが、キッチン側についているピボット式ドアだ。両開きの扉を開けたら、そで部分の収納におさめれば、完全に見えなくなる。図面には扉を開いた状態とユニットに収めた状態とが両方描かれている。
現在は市販もされているシステムだが、2009年の製作当時は考案したばかりの最先端の新しいアイデア。もともとはこのプロジェクトのために特別に作ったものだった。
ユニットの大きさは幅が約3.5メートル、奥行2メートル、高さ3メートルほど。基礎構造を含め全体が木製で、芯材に木の圧縮材と断熱材、表面材に木を使ったサンドイッチ構造のパネルを使用している。
キューブはキッチンとランドリールームに区切られている。配管と電気設備もすべて収めている。
キューブはキッチンとランドリールームに区切られている。配管と電気設備もすべて収めている。
省スペースな互い違い階段をあがると、上には小さな書斎がある。
こちらもあわせて
Houzzツアー:4つの箱と巧みなゾーニングで心地よさを追求した、光あふれる家
ホワイトキューブの私的空間を内包した、倉庫風の住まい
Houzzツアー:最高に機能的な47平米のワンルームSOHO
こちらもあわせて
Houzzツアー:4つの箱と巧みなゾーニングで心地よさを追求した、光あふれる家
ホワイトキューブの私的空間を内包した、倉庫風の住まい
Houzzツアー:最高に機能的な47平米のワンルームSOHO
奥行きの浅い棚とワークトップが書斎の周囲をぐるりと取り囲む。幅の広い部分はデスク、ほかは書棚として使っている。書棚は手すり壁でもある。
天井に近いが、人が立てるだけの高さはある。大きな窓の向こうには湖が見える。
天井はもともとダークブラウンの塗装があったが、時間を手間をかけて落とした。念入りにサンドブラストするとようやく元の色と輝きがよみがえり、空間全体の雰囲気が一変した。
天井はもともとダークブラウンの塗装があったが、時間を手間をかけて落とした。念入りにサンドブラストするとようやく元の色と輝きがよみがえり、空間全体の雰囲気が一変した。
階段の裏がランドリールーム。階段下の空間は靴入れとして活用し、スペースを一切無駄にしていない。幅1.2メートルほどのランドリーにも採光用の小窓がある。
ユニットを引き立てるため、フローリングはダークブラウンの乾燥オーク材を選んだ。
扉を全部閉めるとソリッドでコンパクトなキューブになる。生活に必要な多くの機能が、小さな単体のボリュームにぎっしり詰まっている。空間を最大限活用するアプローチは、船の内装のようでもある。それもそのはず、オーナーは熱心なヨット愛好家なのである。
教えてHouzz
いかがでしたか? ご感想をお聞かせください。
Houzzツアーをテーマ別に読む
My Houzz/日本/北米/中南米/ヨーロッパ/北欧/中東/アジア/オセアニア/新築/リノベーション/別荘/二世帯住宅/賃貸住宅/My Houzz
こちらもあわせて
タイニーハウスの記事を読む
おしゃれなタイニーハウスの写真を見る
スモールハウスの写真を見る
相談できる建築家をさがす
地元の工務店一覧を見る
扉を全部閉めるとソリッドでコンパクトなキューブになる。生活に必要な多くの機能が、小さな単体のボリュームにぎっしり詰まっている。空間を最大限活用するアプローチは、船の内装のようでもある。それもそのはず、オーナーは熱心なヨット愛好家なのである。
教えてHouzz
いかがでしたか? ご感想をお聞かせください。
Houzzツアーをテーマ別に読む
My Houzz/日本/北米/中南米/ヨーロッパ/北欧/中東/アジア/オセアニア/新築/リノベーション/別荘/二世帯住宅/賃貸住宅/My Houzz
こちらもあわせて
タイニーハウスの記事を読む
おしゃれなタイニーハウスの写真を見る
スモールハウスの写真を見る
相談できる建築家をさがす
地元の工務店一覧を見る
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む
すごい発想!なんだか、異次元空間みたい。
船のデッキのうえのような、地下室のような・・書斎から見えるすみずみは
なんだろう?! あますとこなく、空間が生きてる感じが素敵です。
面白いです。小さな規模でも熱心に取り組まれていて好感を持ちました。