箱根の森林風景に心奪われる、究極の別荘《ヤマノイエ》
家族や仲間と憩うリビング棟と寝室棟をつなぐのは、森の中を歩くような感覚に誘うガラス張りの渡り廊下。300坪近い緑豊かな傾斜地を活かして建てられた、贅沢な週末住宅。
Miki Anzai
2017年4月18日
静寂に抱かれた、箱根の丘陵地に建つ週末住宅である。傾斜のある広大な敷地には、美しい落葉樹が生い茂り、建物のどこにいても豊かな自然の景観が楽しめる。
オーナーは、国内外のスタートアップを支援する個人投資家だ。家族や友人とくつろぐ場所としてだけではなく、「平日にふらっと来て仕事をする」「仕事仲間と研修合宿をする」「大事な取引相手を招く」など、住宅の域を超えた目的でつくられた、ラグジュアリーな別荘だ。
「あれこれ言うと面白くならない」と、設計に関してオーナーは細かい注文をほとんどつけずに、〈津野建築設計室〉の津野恵美子さんに任せた。都内にあるオーナーの自宅も担当した津野さん。《ヤマノイエ》は、4年以上の歳月をかけ、外構、家具、テキスタイル、照明の専門家も総動員してプランを練り上げた。訪れた人々が、思わず歓声をあげてしまうような、感動的なスペースが至るところに計画されている。
オーナーは、国内外のスタートアップを支援する個人投資家だ。家族や友人とくつろぐ場所としてだけではなく、「平日にふらっと来て仕事をする」「仕事仲間と研修合宿をする」「大事な取引相手を招く」など、住宅の域を超えた目的でつくられた、ラグジュアリーな別荘だ。
「あれこれ言うと面白くならない」と、設計に関してオーナーは細かい注文をほとんどつけずに、〈津野建築設計室〉の津野恵美子さんに任せた。都内にあるオーナーの自宅も担当した津野さん。《ヤマノイエ》は、4年以上の歳月をかけ、外構、家具、テキスタイル、照明の専門家も総動員してプランを練り上げた。訪れた人々が、思わず歓声をあげてしまうような、感動的なスペースが至るところに計画されている。
敷地内の樹木は、極力伐採を避けた。なかでもいちばん立派だったケヤキをシンボルツリーと位置づけ、その木を囲むように、リビング(L)棟とベッドルーム(B)棟を、ガラス張りの渡り廊下でつないでいる。
どんなHouzz?
《ヤマノイエ》
家族構成:夫婦、子供1人
用途:別荘、仕事場、研修所、迎賓施設
所在地:神奈川県足柄下郡
工事種別:新築
構造:木造一部RC造(地上一階地下一階)
延床面積:947.66平方メートル
設計期間:2012年7月〜2014年10月
施工期間:2014年10月〜2016年4月
設計監理:津野建築設計室
構造デザイン:鈴木啓/ASA
外構デザイン:田賀意匠事務所
照明デザイン:コモレビデザイン
テキスタイルデザイン:安東陽子デザイン
撮影:西川公朗
どんなHouzz?
《ヤマノイエ》
家族構成:夫婦、子供1人
用途:別荘、仕事場、研修所、迎賓施設
所在地:神奈川県足柄下郡
工事種別:新築
構造:木造一部RC造(地上一階地下一階)
延床面積:947.66平方メートル
設計期間:2012年7月〜2014年10月
施工期間:2014年10月〜2016年4月
設計監理:津野建築設計室
構造デザイン:鈴木啓/ASA
外構デザイン:田賀意匠事務所
照明デザイン:コモレビデザイン
テキスタイルデザイン:安東陽子デザイン
撮影:西川公朗
敷地の斜面の勾配に沿って緩やかに上っていくL棟の壮大なリビング。天井高は、最大7.9メートル。木の軸組あらわしの天井や、中庭の景色を取り込むダイナミックな開口は、迫力満点だ。「お施主様との最初の打ち合わせが、ハイアットリージェンシー箱根のロビーラウンジでした。いきなり『こういう空間が欲しい』と言われ、驚きました」と津野さん。住宅をホテル風建築にすると、「体育館のようになりかねない」。そこで、敷地の傾斜にそって段差を設け、各フロアにダイニング、ライブラリー、バーラウンジなどエリアの特性を持たせた。フロアごとの段差は60cm。そこに30cmの階段兼ベンチシートを設置し、クッションを配することで、各エリアを穏やかにつなげている。
ダイニングテーブルと外のテラステーブルは、高さを揃えて造作した。両脇の開口を開放すれば、内外一体化した大人数の着席パーティーが可能だ。食後は、暖炉仕立ての薪ストーブを囲んだり、バーカウンターでゆっくりお酒を酌み交わすなど、そのときの気分で、好きな場所を選べる。
鳥のさえずりや木々の葉ずれをBGMに、朝食やバーベキューが楽しめるテラス。テーブルは、コンクリートの研出仕上げで備え付けているので、あとは折りたたみの椅子を出すだけ。食器の準備や後片付けが楽にできるよう、すぐ脇にキッチンを配した。
「まるで森の中にいるよう」とオーナー夫人もお気に入りのキッチン。コーナーウィンドウからの眺望に加え、外の景色がステンレス製の天板に映り込む。オーナーは、家族で滞在したときは、ここで朝食をとるという。
中庭の木々や青空を映し込んだプールテラスは、別荘で最も標高の高い場所にある。プールの浅瀬部分に椅子を出せば、水に足を浸けながら読書もできる。さざ波が立つと、波紋の広がりが水面の景色を幻想的に揺らす。
アウトドア・チェア:パオラ・レンティ
アウトドア・チェア:パオラ・レンティ
100畳を超えるリビングは、角度の緩やかなコの字型に折れ曲がっている。「建物の両端を直線で見通せないことで、奥行き感を出しました」と津野さん。
家具も厳選したものばかりだ。しっとりと柔らかい肌触りの〈Arflex Japan〉のソファ。〈カール・ハンセン& サン〉の一人掛けチェアは、「ワインをこぼしたシミも、人の脂も、全て味わいとして楽しむために、あえてヌメ革」を選択した。
家具も厳選したものばかりだ。しっとりと柔らかい肌触りの〈Arflex Japan〉のソファ。〈カール・ハンセン& サン〉の一人掛けチェアは、「ワインをこぼしたシミも、人の脂も、全て味わいとして楽しむために、あえてヌメ革」を選択した。
バーカウンター後ろの本棚には、真空管アンプやスピーカーがはめ込まれ、ワイングラスラックも取り付けてある。良質な音の響きに身を任せながら、ゆっくりとグラスを傾ける。そんな贅沢がかなう場所。
車座になってワイワイと過ごせるL棟西端にある和室。壁(写真右)には「にじり口」も設けられている。くぐると、本和紙を腰張りした壁と障子の天井に囲まれた2畳の隠れ部屋があらわれる。特に外国からの訪問客に、「日本の伝統的建築が垣間見られる空間として楽しんでいただきたい」と津野さん。
国立公園区域のため、敷地内の全木を調査して環境省に報告した。通常の建築確認申請に加え、同省の細かい基準や運用規定ラインを考慮しつつ、「何十回も模型を作り直した」という津野さん。地盤を丁寧に読み解き、従来の水の流れや樹木の位置などをなるべく変えずに、森を囲むプランに辿り着いた。
L棟とB棟をつなぐガラス張りの回廊。天井は黒色で「存在感を無くし」、カーペットは苔色に。森の中を通って、異空間へ誘われるような期待が膨らむ。
別荘の正面玄関は、B棟の入口である。雨でも濡れずに4台分の車が停められるガレージと、4つの寝室で構成されている。
高い天井と大開口で開放感溢れるガレージ。隣接するガラス張りのアトリエ兼会議室からも、車と中庭を眺められる。アトリエの壁面につくり付けた棚は、「断腸の思いで切ったケヤキ1本」を使って造作した。「土地の記憶は、なるべく残したかった」と津野さん。
斜面下方(1.5階)にある広いプライベートテラス付き寝室。春は新緑、初夏は白いヤマボウシの花、秋は紅葉、冬は一面銀世界と、四季折々の風景が楽しめる。
全寝室にプライベートバスルームが備えられている。ここでは、床と浴槽まわりの壁と浴槽にヒノキを採用した。
エントランスホールと3つの寝室がある2階をつなぐ階段。鉄骨の段板と、そこから延びる横桟が、不思議な浮遊感とパース効果を醸し出す。
実際より広く感じる南向きの20畳の寝室。スツールは、敷地内のヒノキでつくったもの。特注カーテンは開いて置いたときに、「女性が座った時にドレスの裾がふわっとするイメージ」でデザインした。
唯一、角部屋ではない寝室には、遮光スクリーンが自動開閉する天窓を用意し、十分な明るさを確保している。
連続したハイサイドライトの外の森林の景色が、洗面の鏡に映り、ここにも自然の恵みが感じられる。
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究極ですね。とても素敵。
敷地の傾斜にそって段差のある迫力あるリビングが特に。自然と同じ流れに沿って住んでいるようで、こんなところで過ごせるなんて!と羨ましい限りです。
“「あれこれ言うと面白くならない」と、設計に関してオーナーは細かい注文をほとんどつけずに、〈津野建築設計室〉の津野恵美子さんに任せた。”
そうおっしゃるオーナーさんも格好良いですね。
センスある建築家さんに思いっきり家づくりしてもらうって理想的だ!と改めて思いました。
福田さん、そうなのです。広さや設備の豪華さに目が行きがちですが、土地の特徴を細かく読み解き、自然を大切にされて設計・施工された家なのです。ガラス張りの渡り廊下も素敵でしょう〜。津野さん、「この遊び心をオーナーに受け入れてもらえるか」ちょっと不安だったそうですが、ばっちりだったそうです。
自然を取り込み、共生することにも、かなり腐心されています。それは設計だけでなく、工事の時も、木々や土を痛ませないように、細心の注意が払われました。
「多分、建築家の方しか気づいてもらえないだろう」と仰られていましたが、リビングの連なる梁や床の線がズレていないというのも驚異的なことです。
決して安い買い物ではないので、ついつい口を出してしまいそうですが、センスある「プロに任せて」家を建てられるなんて、本当に素敵ですよね。