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ホワイトキューブの私的空間を内包した、倉庫風の住まい
「倉庫をリノベーションしたかのような新築の家」をコンセプトに、インダストリアルな要素と自分好みの暮らしやすさを融合。白いキューブ内に生活要素を集中させた、遊び心のある空間です。
takako kawaguchi
2017年4月17日
雑誌で古い倉庫に手を加えたような家を見て、自分たちもこんなふうにしたい、とイメージをふくらませていたオーナー夫妻。独創的な空間づくりに憧れながらも、「建築家が建てる家は建築雑誌の中の話で、自分たちには遠い存在だとずっと思っていました。しかし〈ALTS DESIGN OFFICE〉の存在を知り、地元にこんなに面白そうな家を建てる建築家がいることに驚くと同時に、若くて年齢の近いこの人たちに依頼しようと直感で決めたのです」。
当初は本物の倉庫のリノベーションを前提に考えていた。しかし実際に住居とする場合の断熱性や耐震性、場所などを建築家とともに熟慮した結果、「倉庫をリノベーションしたかのような新築の家」をつくることに決定。昔からその土地に存在していたような倉庫風建物を生み出し、あたかも自分たちの手で少しずつ改修していったような味わいをプラス。「奇抜という意味ではなく、自分たちの暮らしや価値観に合っている、という意味で、個性的といえる家をつくることができました」。
当初は本物の倉庫のリノベーションを前提に考えていた。しかし実際に住居とする場合の断熱性や耐震性、場所などを建築家とともに熟慮した結果、「倉庫をリノベーションしたかのような新築の家」をつくることに決定。昔からその土地に存在していたような倉庫風建物を生み出し、あたかも自分たちの手で少しずつ改修していったような味わいをプラス。「奇抜という意味ではなく、自分たちの暮らしや価値観に合っている、という意味で、個性的といえる家をつくることができました」。
「コンクリート造りの倉庫内を、アイアンや木材などを使って自分好みにリノベーションした」というストーリーの家づくり。設計・管理をした〈ALTS DESIGN OFFICE〉の水本純央さんは、打ち合わせ時に3つのことを提案した。1つはホワイトキューブを設け、そこに水回りなどのプライベート要素を凝縮すること。2つめは内部と外部のつながりを大切にすること。3つめは空間の機能を限定しないこと。この3つの要素をベースに、オーナーが好きな家具や雑貨、ショップの写真などをイメージソースとして、空間設計や素材選びを進めていった。
どんなHouzz?
住まい手:30代夫婦、子供1人
所在地 : 滋賀県湖南市
構造規模 : 木造2階建て
敷地面積 : 174.38平方メートル
延床面積 : 118.39平方メートル
設計・監理 : ALTS DESIGN OFFICE
施工 : 誠工務店
竣工 : 2015年8月
どんなHouzz?
住まい手:30代夫婦、子供1人
所在地 : 滋賀県湖南市
構造規模 : 木造2階建て
敷地面積 : 174.38平方メートル
延床面積 : 118.39平方メートル
設計・監理 : ALTS DESIGN OFFICE
施工 : 誠工務店
竣工 : 2015年8月
写真奥の白い壁が、1つめの提案であるホワイトキューブ。大きな正方形の倉庫空間に白いプライベートボックスが1個ある、というイメージでつくってある。生活感のにじむ要素はすべてこの中に閉じ込め、他のスペースは洗練されたショップのようなワンルーム空間にすることが狙いだ。キューブ内の広さは13.24平方メートルで、バス、トイレ、洗面とクローゼットを配置。白い外壁はケイカル板(不燃ボード)にペンキを塗って仕上げている。
家の中心にはダイニングキッチンを設け、家族が自然と集うことができるスペースとした。キッチンは、アイアンの柱脚にコンクリートを流し込んだインダストリアルテイスト。コンクリートの床とも一体感があり、凛としたクールなインテリアの要となる造作だ。ダイニングには裸電球風のLED照明を下げ、工場の作業場のような趣を。
家の中心にはダイニングキッチンを設け、家族が自然と集うことができるスペースとした。キッチンは、アイアンの柱脚にコンクリートを流し込んだインダストリアルテイスト。コンクリートの床とも一体感があり、凛としたクールなインテリアの要となる造作だ。ダイニングには裸電球風のLED照明を下げ、工場の作業場のような趣を。
ホワイトキューブ中にある洗面室。9mmの鉄板と〈TOTO〉の実験用シンクをアレンジし、コストダウンしながらモダンな空間を生み出した。
突き当たりのキッチン壁はコンクリートブロックを積み、白くペイント。店舗の厨房からインスピレーションを得たという。
天井は上階の床に使った足場板を、あえてそのまま露出。1階コンクリートの床も、素材感を活かせるコテ押さえの仕上げに。こうした板やコンクリート、ブロックなどの質感が、倉庫風テイストの重要なエッセンスとなっている。
ダイニングキッチンにはフルオープンにできる窓を採用。テラスとの段差も極力なくし、2つめの提案の「内と外が自然とつながる形」に。テラスには鉄骨のパーゴラを設けてあり、現在はテント生地を掛けて使用。洗濯物干し場として、子供の遊び場やバーベキュー場所として、家族が思い思いに活用している。
天井は上階の床に使った足場板を、あえてそのまま露出。1階コンクリートの床も、素材感を活かせるコテ押さえの仕上げに。こうした板やコンクリート、ブロックなどの質感が、倉庫風テイストの重要なエッセンスとなっている。
ダイニングキッチンにはフルオープンにできる窓を採用。テラスとの段差も極力なくし、2つめの提案の「内と外が自然とつながる形」に。テラスには鉄骨のパーゴラを設けてあり、現在はテント生地を掛けて使用。洗濯物干し場として、子供の遊び場やバーベキュー場所として、家族が思い思いに活用している。
コンクリートや鉄といったハードなものと、レトロ感のある食器棚などの家具類をうまく組み合わせたバランス感が絶妙だ。雑貨ショップに足を運んで好きなアイテムを集め、それをアレンジして飾ることは、家族にとって日々の大きな楽しみになっている。
階段は、黒いアイアンと足場板の組み合わせ。スキップフロアのため、実際よりも空間がより広く高く感じられる。
階段は、黒いアイアンと足場板の組み合わせ。スキップフロアのため、実際よりも空間がより広く高く感じられる。
棚には気に入った雑貨や子供の絵本を飾りながら収納。棚板はシンプルなラワン材のランバーコア合板を使用している。この空間は現在はフリースペースだが、将来は壁などで仕切った部屋にすることも可能だ。
「自由な発想で区切った空間に、リビングやダイニングの要素を後からはめこんでいます。あまり細かく仕切らず、収納も固定せず、オーナーの生活に合わせて可変性を持たせるようにしました」と水本さん。3つめの提案はこのように家のあちこちに反映されている。
天井に見える梁は高さや配置を揃えて美しく見えるよう配慮。シースルーの階段が、建築的なアクセントになっている。
「自由な発想で区切った空間に、リビングやダイニングの要素を後からはめこんでいます。あまり細かく仕切らず、収納も固定せず、オーナーの生活に合わせて可変性を持たせるようにしました」と水本さん。3つめの提案はこのように家のあちこちに反映されている。
天井に見える梁は高さや配置を揃えて美しく見えるよう配慮。シースルーの階段が、建築的なアクセントになっている。
ダイニングの先にあるのは土間玄関。テラスと同じくこちらもダイニングとフラットにし、内外をスムーズにつなげている。また、土間玄関に面したホワイトキューブ壁には、あえて浴室の窓を設置。土間のある空間をあたかも屋外のように思わせる、遊び心のある設計だ。ダイニングと土間の間には4枚の引き戸があり、必要に応じて空間を仕切ることもできる。
シューズクローゼットや上着掛けもクローズにせず、見せて楽しむオープン収納を選択。これならライフスタイルに合わせ、収納を増減することも容易だ。土間には自転車なども収納するため、広めの13.24平方メートルに。
ラワン合板を張った他の壁面とは違い、玄関扉の周囲だけは杉材のモルダー仕上げを使用。これは倉庫風の家というコンセプトに合わせ、「もともとシャッターがあったところを改修して、玄関ドアをつけた」という想定によるものだ。
ラワン合板を張った他の壁面とは違い、玄関扉の周囲だけは杉材のモルダー仕上げを使用。これは倉庫風の家というコンセプトに合わせ、「もともとシャッターがあったところを改修して、玄関ドアをつけた」という想定によるものだ。
木材がふんだんに使われた上階部分。倉庫の中をDIYで仕切った、というイメージをふくらませてたどりついた形である。打ち合わせ時には大きな箱の模型をつくり、その中に部屋の要素を配置する作業を何度も重ね、最適なレイアウトを探っていった。
扉の先は寝室。扉周りの壁は個性的で、視線が引き寄せられる。この壁は古くなった工業用のパレットを解体し、リユースしたものだそう。ニュアンスのある色味や不揃いなサイズ感、凹凸感などに面白味があふれている。床の足場板は240×30mmのものを使用。
扉の先は寝室。扉周りの壁は個性的で、視線が引き寄せられる。この壁は古くなった工業用のパレットを解体し、リユースしたものだそう。ニュアンスのある色味や不揃いなサイズ感、凹凸感などに面白味があふれている。床の足場板は240×30mmのものを使用。
寝室内部の様子。扉と小窓は玄関扉とテイストを合わせて造作。
各フロアをゆるやかにつなげながら、明るさや空間の広がりを共有できるステップフロア。ホワイトキューブの上部にあたるこのスペースは、現在は家族の団らんスペースとして活用。
床材は〈アルブルインク〉の《ファンシーモザイク ドミノ チークウッド》。店舗などで使われることも多いタイプだそう。
床材は〈アルブルインク〉の《ファンシーモザイク ドミノ チークウッド》。店舗などで使われることも多いタイプだそう。
右側にはキッチンと同じく、ブロックを積み上げて白く塗った壁が。“倉庫感” が出るよう、ラフにペイントした。突き当たりはワークスペース。ゆくゆくは子供部屋として仕切って使うことを視野に入れている。
ガルバリウム鋼鈑に包まれたキューブ型の外観は、まさに倉庫そのもの。玄関前には大きめの屋根を取り付け、駐車場としても利用できるようにした。
時の流れやその時々のニーズに合わせ、愛着の持てるスペースをつくる余白がある家。夢が叶い、自分たちに合った空間で暮らし始めた今、オーナー夫妻はさらに新たな思いを抱き始めたという。「家をつくる前には思っていなかった、『この家でやりたいこと』が、次々と浮かんできているのです。この家は暮らし方や生き方の可能性をより広げ、深くしてくれています」。
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