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楕円の中庭とベランダのある、サステナブルな家
表の伝統的な煉瓦壁の後ろには、オーバル型の中庭を中心とするモダンで美しい家がありました。
Joanna Tovia
2017年4月11日
かなり斬新なかたちの建物だが、意外にもこちらは、若い夫婦と子どもたちという一家が暮らす機能的な住宅だ。以前は、この2区画分の広い敷地のなかに、荒れ果てた古い家が建っていた。それを取り壊した跡地を使い、モダンで快適な、家族の成長に合わせて柔軟に変化していく家をつくっている。
デザインの要望を伝え、設計が最終段階になったところで、オーナーたちは海外に移り、あとは建築家たちに任せることになった。「この敷地は厳しい保護地区にあるので、この土地の伝統的な景観を尊重する必要がありました」と〈ルイジ・ロセッリ・アーキテクツ〉の建築家、クリスティーナ・サーレストロムさんは言う。「でも、より屋外とつながりのある生活をしたいと考える現代的な家族の住まいですから、古いタイプの家を真似ただけのレプリカにはしたくなかったんです。」
珍しい楕円形の中庭だが、この中庭のおかげで敷地のスペースを最大活用でき、2本の成木もそのまま生かすことができた。「プライバシーを確保しながら、家族どうしのつながり、屋外とのつながりをつくることも中庭の狙いです」とサーレストロムさんは言う。
デザインの要望を伝え、設計が最終段階になったところで、オーナーたちは海外に移り、あとは建築家たちに任せることになった。「この敷地は厳しい保護地区にあるので、この土地の伝統的な景観を尊重する必要がありました」と〈ルイジ・ロセッリ・アーキテクツ〉の建築家、クリスティーナ・サーレストロムさんは言う。「でも、より屋外とつながりのある生活をしたいと考える現代的な家族の住まいですから、古いタイプの家を真似ただけのレプリカにはしたくなかったんです。」
珍しい楕円形の中庭だが、この中庭のおかげで敷地のスペースを最大活用でき、2本の成木もそのまま生かすことができた。「プライバシーを確保しながら、家族どうしのつながり、屋外とのつながりをつくることも中庭の狙いです」とサーレストロムさんは言う。
Photos by Edward Birch
どんなHouzz?
住まい手:若い共働き夫婦と子どもたち
規模:延床面積976平方メートル、ベッドルーム×4、リビングエリア×2、キッチン/ダイニングエリア、書斎、離れ
所在地:西オーストラリア州、スビアコ
建築家:〈ルイジ・ロセッリ・アーキテクツ〉のクリスティーナ・サーレストロムとルイジ・ロセッリ
裏庭のかわりに中庭をつくるというのは、建築家、ルイジ・ロセッリさんのアイデアだった。個別の棟がいくつもつながったような家の中央に、楕円状のベランダに囲まれた秘密の庭があるというイメージを思い描いた。
どんなHouzz?
住まい手:若い共働き夫婦と子どもたち
規模:延床面積976平方メートル、ベッドルーム×4、リビングエリア×2、キッチン/ダイニングエリア、書斎、離れ
所在地:西オーストラリア州、スビアコ
建築家:〈ルイジ・ロセッリ・アーキテクツ〉のクリスティーナ・サーレストロムとルイジ・ロセッリ
裏庭のかわりに中庭をつくるというのは、建築家、ルイジ・ロセッリさんのアイデアだった。個別の棟がいくつもつながったような家の中央に、楕円状のベランダに囲まれた秘密の庭があるというイメージを思い描いた。
道路から見ると、それほど大きくもない、ふつうの家族向け住宅に見える。平らな敷地と四角いかたちを強調し、町の景観を尊重した外観になっている。スビアコは、オーストラリア連邦成立時代のフェデレーション様式家並みがパース近郊でもっともよく保存されている地域なのだ。
格子模様のレンガ、よろい戸、切妻屋根などの効果で、新しい家が1900年代初期の街並みにしっくりとはまっている。スビアコの地域住民たちも、喜んでこの家を受け入れてくれたとサーレストロムさんは言う。「小さな三角屋根や、伝統的なスタイルをアレンジしたポーチ、再利用レンガでつくった模様など、すべて1900年代初期の姿を残している街並みに合うものなんです。」
建物の内包エネルギー(建設に伴うエネルギー消費)を低減するため、オリジナルの家の建材をできるだけ再利用している。格子パターンは、地域と調和する伝統的なディテールであるだけでなく、建物のデザインそのものとしても美しい。
建物の内包エネルギー(建設に伴うエネルギー消費)を低減するため、オリジナルの家の建材をできるだけ再利用している。格子パターンは、地域と調和する伝統的なディテールであるだけでなく、建物のデザインそのものとしても美しい。
赤いレンガは、崩壊寸前だった古い家や物置き小屋に使われていたもので、白いレンガはしっくいやペンキ塗りの壁を取り壊したものだ。「古い建物のレンガをきれいに洗って使っています。模様をつくるために、オリジナルの白い塗料をいくらか残すように注意しました」とサーレストロムさんは言う。
レンガ壁は、外に面した壁からエントランスのくぼみ部分に回り込む。玄関ドアには縦方向の波型ガラスを使っており、じゅうぶんな光を通しながら、プライバシーを保つことができる。
レンガ壁は、外に面した壁からエントランスのくぼみ部分に回り込む。玄関ドアには縦方向の波型ガラスを使っており、じゅうぶんな光を通しながら、プライバシーを保つことができる。
エントランスの天井に開いた楕円形の穴が、中庭のかたちを連想させる。
図面から分かるように、キッチンに面したテラスが、離れとそのほかの部分を隔てている。離れにはガレージが付いており、こちらも残りの部分とは隔てられている。マスターベッドルーム、キッチン、離れからは中庭の眺めが見え、直接中庭に出ることもできる。それ以外の部屋と中庭とのあいだには廊下が通っている。
エントランスからリビングスペース、ベッドルームへと延びる廊下には、ユーカリの一種であるジャラ材をダークステイン加工した床板を使った。
家の表側にある2つのリビングエリアには、真ちゅうを編んだメッシュ素材の扉が使われている。こちらでは、この扉をスライド開閉することで、暖炉とテレビ(写真右側)を必要に応じて見せ隠しできる。暖炉は、応接用のフォーマルなリビングと、キッチンにつながる家族のリビングとの間に配置され、両側で使うことができる。
その隣はキッチン。アイランドには〈ストーン・イタリアーナ〉のカウンタートップと、アメリカンオーク材のキャビネットを使い、キャビネットはダークステイン加工したジャラ材の土台から浮かんでいるような印象だ。こちらでも真ちゅうメッシュの扉が使われており、その下のバックスプラッシュは鏡張りで、キッチンに奥行きを加えている。
中庭のかたちに沿って曲線を描く廊下には、埋め込み式のLEDライン照明を使った。廊下の壁と、壁につくられたくぼみ部分は、アメリカンオーク材に塗装を施した装飾パネルで仕上げ、ここに収納戸棚が隠れている。
室内の各所に見られる微妙なカーブが、中庭の楕円形を思わせる。
ガラスモザイクタイルの壁が緩やかなカーブを描き、光を受けてきらめくバスルーム。自立型バスタブと洗面ボウルが、楕円形のフォルムを繰り返す。4つのバスルームすべてで〈ビザッツァ〉のタイルを使っている。
どの空間でも、照明を効果的に使うことで、この家の建築的な魅力が強調されている。
床から天井までの扉が収納を隠す特注キャビネットで、屋内全体をとおしてシームレスな印象に仕上がっている。2つめのベッドルームの壁面に造りつけたこちらのワードローブも、収納スペースをたっぷり確保しながら、インテリアをすっきりと保ってくれる。
いつの時代も美しい三角屋根のフォルム、伝統的な木のトラス、小さいガラスの窓、といった昔ながらの部分がある一方、縦のブラインド、曲面ガラス、研磨コンクリート、スカンジナビアン家具といったモダンな要素も使われており、その双方がインテリアに「良い緊張感」をつくり出していると、サーレストロムさんは語る。家の表側にあるこちらの書斎は、造りつけの木製キャビネットですっきりと片付いていながら、太陽の光もたっぷり入り温かみのある空間になっている。
2つ分の敷地にそそり立つような、巨大な建物にはしたくなかった。「ひとつひとつの構造は、近隣の家と同じくらいのスケールです。大きな木もそのまま守ることができました」とサーレストロムさんは言う。
楕円を囲んでいるジャラ材のデッキは、床板の7枚につき1枚ずつ先細のかたちにして並べることで、曲線に沿わせている。デッキ部分の天井も同じ手法だ。この楕円形の空間(家族は「裏庭」と呼んでいるそうだ)の使いみちは、ボール遊びやクリケット、日光浴、そしてにぎやかなパーティ。「部屋の中から見える舞台みたいなスペースでもありますね。子どもたちが遊んだり、友人たちをおもてなしする場所です」とサーレストロムさん。
玄関を入って向かい側は、中庭に面したガラス扉になっている。この部分には縦方向のルーバーを使ったブラインドがあり、必要に応じて閉じることができる。2つの屋根のあいだにまたがって、応接間の暖炉の煙突が見える。
玄関を入って向かい側は、中庭に面したガラス扉になっている。この部分には縦方向のルーバーを使ったブラインドがあり、必要に応じて閉じることができる。2つの屋根のあいだにまたがって、応接間の暖炉の煙突が見える。
北方向の眺め。キッチンとリビングなど家族のスペースは左側、いちばん奥に見えるのが離れとガレージ、右側にはベッドルームが並ぶ。
ロセッリさんがこのプロジェクトでいちばん気に入っているのは、建物の内部と中庭とが、流れるようにつながっている点だ。「想像していたとおりにうまく行きました。内と外のスペースが互いに交じりあいながら、プライベートな寝室エリアと、リビング・ダイニングエリアとのあいだをつなげるとともに、緩衝地帯にもなっています」とロセッリさんは言う。
「道路側から入ってきて中庭が目に入ったときの、驚きの効果は素晴らしいですね。常に庭とのつながりがあるのも特徴です。」
ロセッリさんがこのプロジェクトでいちばん気に入っているのは、建物の内部と中庭とが、流れるようにつながっている点だ。「想像していたとおりにうまく行きました。内と外のスペースが互いに交じりあいながら、プライベートな寝室エリアと、リビング・ダイニングエリアとのあいだをつなげるとともに、緩衝地帯にもなっています」とロセッリさんは言う。
「道路側から入ってきて中庭が目に入ったときの、驚きの効果は素晴らしいですね。常に庭とのつながりがあるのも特徴です。」
〈ルイジ・ロセッリ・アーキテクツ〉が手掛けるすべてのプロジェクトの核となっているのが、サステナビリティだ。「決して後付けではありません」とサーレストロムさんは言う。古い家から出た素材をできるだけ再利用したほか、パッシブ空調として通風を最大活用している。また、日陰をつくる工夫(中庭の可動型アルミ製ブラインド、中庭側と外側の両方につくられたポーチなど)や、太陽光発電用のソーラーパネルも、当初から設計の中心的要素だった。
オリジナルのコンセプトスケッチ。のちに設置予定のプールも見える。
ほかのホームオーナーたちも、ふつうの裏庭の代わりに中庭を検討してみるべきだろうかとロセッリさんに聞いてみた。「建物を敷地の境界に近づけて建てることができて、中のスペースを広く取れるなら、ぜひ考えてみてほしいですね。住まい手に高いプライバシーを確保しながら、内側はひろびろとつながりのある明るい住まいが可能になります。」
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ほかのホームオーナーたちも、ふつうの裏庭の代わりに中庭を検討してみるべきだろうかとロセッリさんに聞いてみた。「建物を敷地の境界に近づけて建てることができて、中のスペースを広く取れるなら、ぜひ考えてみてほしいですね。住まい手に高いプライバシーを確保しながら、内側はひろびろとつながりのある明るい住まいが可能になります。」
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