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建築家に聞く住まいづくり:阿部勤さんの場合
名作住宅として名高い《中心のある家》に住まいながら、100以上の住宅設計を手がけてきた建築家の阿部勤さんに、「住宅設計」や「住まいづくり」についてうかがいました。
柴田直美
2017年3月24日
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité internationale des arts)にて滞在研究。 http://www.naomishibata.com/
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité... もっと見る
阿部勤さんは、建築設計事務所「アルテック」の代表として40年以上にわたり、建築設計をされているなかで、100以上の住宅を手がけている。
阿部さんが独立して最初に手がけた自邸《中心のある家》は(名だたる建築家も含め)実際に訪れた人々から絶賛されている。それも手放しで。そんな家には図面から読み取れない何があるのだろうかと、細かいことも見落とさないようにと、緊張した気持ちで訪れた。そしてやはり圧倒された。威圧感ではなく、空間にしっかと包まれて守られているような圧倒的に平和な感覚。《中心のある家》での暮らしの実感は、以降の住宅設計にもぞんぶんに活かされているという。
住宅を設計することは、施主と一緒に「住まい方を探す」ことと表現される阿部さん。自邸で、住宅設計における阿部さんの姿勢について伺った。
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名作住宅:住む人とともに育つ家と庭。建築家阿部勤さん自邸「中心のある家」をたずねて
阿部さんが独立して最初に手がけた自邸《中心のある家》は(名だたる建築家も含め)実際に訪れた人々から絶賛されている。それも手放しで。そんな家には図面から読み取れない何があるのだろうかと、細かいことも見落とさないようにと、緊張した気持ちで訪れた。そしてやはり圧倒された。威圧感ではなく、空間にしっかと包まれて守られているような圧倒的に平和な感覚。《中心のある家》での暮らしの実感は、以降の住宅設計にもぞんぶんに活かされているという。
住宅を設計することは、施主と一緒に「住まい方を探す」ことと表現される阿部さん。自邸で、住宅設計における阿部さんの姿勢について伺った。
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写真:阿部さんの自邸《中心のある家》のキッチン
住宅の設計で大切なことはなんですか?
――住宅設計というのは、生活の場をつくることです。住まい手のいろいろなものを受け入れる寛容さが肝心です。「家は住まい手のために作るのだ」ということは、坂倉準三事務所に勤めているときに坂倉さんから再三言われました。
――住み続けられる「器」としての家であるためには、手入れが不可欠です。また、次の世代に手渡すとして、一世代を40年とすると、80年住むことができる家をつくる必要があります。70〜80年変わらずに存在し続けるもの、そういった「心のよりどころ」が空間として存在するというのが大切です。
住宅の設計で大切なことはなんですか?
――住宅設計というのは、生活の場をつくることです。住まい手のいろいろなものを受け入れる寛容さが肝心です。「家は住まい手のために作るのだ」ということは、坂倉準三事務所に勤めているときに坂倉さんから再三言われました。
――住み続けられる「器」としての家であるためには、手入れが不可欠です。また、次の世代に手渡すとして、一世代を40年とすると、80年住むことができる家をつくる必要があります。70〜80年変わらずに存在し続けるもの、そういった「心のよりどころ」が空間として存在するというのが大切です。
写真:阿部さんの事務所である〈アルテック〉が手がけた《鎌倉の家》
住宅を設計するとき、施主とはどんな話をしますか?
――住宅ができる過程に施主ができるだけ関わりを持つことで、愛着が沸き、「自分の家」となると考えています。とにかく何でも話してもらうようにお願いします。いろいろな本を見て気に入ったものをファイルしてもらったり、その人の感性がどんな空間を良しとするのかを一緒に探したりするのが、住宅を設計するということです。
住宅を設計するとき、施主とはどんな話をしますか?
――住宅ができる過程に施主ができるだけ関わりを持つことで、愛着が沸き、「自分の家」となると考えています。とにかく何でも話してもらうようにお願いします。いろいろな本を見て気に入ったものをファイルしてもらったり、その人の感性がどんな空間を良しとするのかを一緒に探したりするのが、住宅を設計するということです。
写真:《中心のある家》を庭から望む
住宅のスケール(大きさ)についての考えを聞かせてください。
――これからのキーワードは「コンパクト」に住まうこと、です。40年前と今とを比べると、住宅のスケールはコンパクトになってきました。それは人間の本能とは関係なく、社会の問題として都市化しているからです。狭小地では平面的に開かれて快適な空間は期待できず「都市住宅」として狭小地で上を向いて暮らすことになるので、「上に開かれた家」というのが、これから考える家になるでしょう。そしてそれに加えて田舎にも小さな家をもつ二拠点生活というのがいいでしょうね。
または、大きな家の中でもコンパクトに暮らすということもありますね。局所的に暖めたりすることで環境負荷も抑えられます。
住宅のスケール(大きさ)についての考えを聞かせてください。
――これからのキーワードは「コンパクト」に住まうこと、です。40年前と今とを比べると、住宅のスケールはコンパクトになってきました。それは人間の本能とは関係なく、社会の問題として都市化しているからです。狭小地では平面的に開かれて快適な空間は期待できず「都市住宅」として狭小地で上を向いて暮らすことになるので、「上に開かれた家」というのが、これから考える家になるでしょう。そしてそれに加えて田舎にも小さな家をもつ二拠点生活というのがいいでしょうね。
または、大きな家の中でもコンパクトに暮らすということもありますね。局所的に暖めたりすることで環境負荷も抑えられます。
写真:アルテックが手がけた《国立の家》のキッチン
これから住宅を建てる人へのアドバイスはありますか?
――たくさんの建築家に会って、いかに自分に合った建築家を見つけるかが大事です。手間をかけることで生まれる豊かさがあります。自分の場所だと誇れるような家を持ってほしいです。気が合うというのは特に人間関係に限らず、モノについても気に入ったものとは気のあうものなのです。
これから住宅を建てる人へのアドバイスはありますか?
――たくさんの建築家に会って、いかに自分に合った建築家を見つけるかが大事です。手間をかけることで生まれる豊かさがあります。自分の場所だと誇れるような家を持ってほしいです。気が合うというのは特に人間関係に限らず、モノについても気に入ったものとは気のあうものなのです。
写真:《中心のある家》の2階にある阿部さんの仕事場
若い建築家に伝えたいことはありますか?
――住まうことの実体験が大事です。ぜひ若いうちに自分の住まいをつくってみることをおすすめします。
今まで見た中で「住んでみたいな」と思った住宅はありますか?
――最近、スリランカの旅から戻ったばかりなのですが、見てきた住宅でいいなと思ったのは、建築家ジェフリー・バワが設計した《Bawa House 87》です。自然と半屋外の関係が良かったですね。
若い建築家に伝えたいことはありますか?
――住まうことの実体験が大事です。ぜひ若いうちに自分の住まいをつくってみることをおすすめします。
今まで見た中で「住んでみたいな」と思った住宅はありますか?
――最近、スリランカの旅から戻ったばかりなのですが、見てきた住宅でいいなと思ったのは、建築家ジェフリー・バワが設計した《Bawa House 87》です。自然と半屋外の関係が良かったですね。
写真:阿部勤さん。自宅の仕事場にて
自邸の「中心のある家」には、たくさんのモノが溢れている。モノが増えすぎることはないのですか?と聞くと、「そうだねえ、今以上は増やせないかな」と笑う。でも全く雑然とした様子にならないのは、きっと買い足すものたちも、家の一部として馴染み、生活にとけ込んで行くからなのだろう。
お話を聞いているうちに阿部さんが住宅のことを「住まい」と呼んでいることに気がついた。住宅でもなく家でもなく「住まい」という言葉には、「住宅はそこにある生活と切り離せない」という意思がはっきりと表れていた。
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