コメント
Houzzツアー : ジグザグのレイアウトで、素晴らしい景観と敷地の有効活用を両立
三角に近い変形の敷地に、ジグザグの形に家を建てることで、開けた眺望と内外の自然な一体感、心地よく隣り合った居室を実現。豊かな森に抱かれた北国の住まい。
takako kawaguchi
2017年2月17日
住宅地の中にありながらも、東には公園、その奥には森を望むという理想の土地を手に入れた、今回ご紹介する家のオーナー。ただしその敷地形状は、南側の前面道路から北へと徐々に狭くなっていく、三角のような不定形。素晴らしい景観とこの敷地形状をどう活かし、融合させていくかが、今回の家づくりの大きな課題となった。この条件に対して、設計を手掛けた〈浅香建築設計事務所〉が考えたのは、方位にとらわれず、建物をジグザグに展開することで、土地のポテンシャルを存分に引き出すというプラン。眺めのいい野原に遊びに来たときのように自由にその場を楽しめたら、という柔軟な発想から生まれたアイデアだった。
写真右の、東側に開けた眺望に対して、どう向き合うかが焦点となった今回のプランニング。単純に考えれば、各空間を東の眺望とパラレルに配するところである。だが不定形の敷地形状など諸条件からそう簡単にはいかず、さらに建物と外部空間とのつながりにおいても、よいアイデアとは言い難かった。そこで導き出した結論が、写真のような「ジグザグ」の形。
これなら東側に存分に窓をとることができ、まず眺望面において申し分ない。そのうえ、建物に2方向を囲まれた外部空間が各所に生まれるため、それぞれが近接する内部空間と、濃密なつながりを持てるようになる。建物と残った外部空間を分断するのではなく、内と外との空間に自然な一体感を持たせることを狙っての発想。こうして、不定形の敷地の隅々まで活かしきることが可能な「ジグザグプラン」が完成した。
これなら東側に存分に窓をとることができ、まず眺望面において申し分ない。そのうえ、建物に2方向を囲まれた外部空間が各所に生まれるため、それぞれが近接する内部空間と、濃密なつながりを持てるようになる。建物と残った外部空間を分断するのではなく、内と外との空間に自然な一体感を持たせることを狙っての発想。こうして、不定形の敷地の隅々まで活かしきることが可能な「ジグザグプラン」が完成した。
家の中を進んで行くと、常に東側には開けた眺望がありながら、ジグザグのレイアウトによって視線はいくつかの方向へと向きを変えていく。そのためか、家全体が自然豊かな眺めに包み込まれているような印象を受ける。
できる限り窓の存在感を消せるフィックス窓を多用し、眺めをダイナミックに取り込んでいるのも、この家の特徴だ。必要最低限に設けられた開閉窓はさまざまな方向へ向くように計算し、先述の外部空間と室内をスムーズにつなげて、開放感を高める役割を担っている。
家のほぼ中央にあるダイニングは、自然に抱かれた心地で食事が楽しめるオープンな空間。特に朝食時の気持ちのよさは格別だ。ダイニングテーブルとチェアはドイツの〈TECTA〉社のもの。
どんなHouzz?
家族構成:夫婦、子供1人
所在地:北海道札幌市
間取り:2LDK
敷地面積:410平方メートル
延床面積:160平方メートル(エントランス部のカーポート含む)
構造:木造
設計:浅香建築設計事務所
施工:株式会社フォレスタ
竣工:2014年9月
できる限り窓の存在感を消せるフィックス窓を多用し、眺めをダイナミックに取り込んでいるのも、この家の特徴だ。必要最低限に設けられた開閉窓はさまざまな方向へ向くように計算し、先述の外部空間と室内をスムーズにつなげて、開放感を高める役割を担っている。
家のほぼ中央にあるダイニングは、自然に抱かれた心地で食事が楽しめるオープンな空間。特に朝食時の気持ちのよさは格別だ。ダイニングテーブルとチェアはドイツの〈TECTA〉社のもの。
どんなHouzz?
家族構成:夫婦、子供1人
所在地:北海道札幌市
間取り:2LDK
敷地面積:410平方メートル
延床面積:160平方メートル(エントランス部のカーポート含む)
構造:木造
設計:浅香建築設計事務所
施工:株式会社フォレスタ
竣工:2014年9月
廊下などはつくらず、ライフスタイルに添った形で各空間が隣り合い、自然と展開されている。手前のリビングは片側に雄大な森を望む景色、もう一方には隣家が気にならずプライバシーの守られた庭が広がる、贅沢な空間となっている。
シャープでシンプルなラインで区切られたキッチンは、オーナーの希望により、リビングやダイニングから見えないレイアウトに。床は色や表情に味わいのある、無垢のウォールナット材を使用。
シャープでシンプルなラインで区切られたキッチンは、オーナーの希望により、リビングやダイニングから見えないレイアウトに。床は色や表情に味わいのある、無垢のウォールナット材を使用。
リビングの広さは約28畳。「広いスペースに家具を置く、ホテルのような雰囲気に」というオーナーの希望が色濃く反映されている。映画鑑賞が趣味というオーナー家族にとって、ゆったりとくつろぎながら映画を楽しめる大きなソファはまさにリビングの主役である。
物があふれていることを好まないため、生活雑貨や家電などもすっきり収納できるようプランニングしたという。
物があふれていることを好まないため、生活雑貨や家電などもすっきり収納できるようプランニングしたという。
テレビを設置した壁面には磁器質タイルを張り、空間を引き締めるアクセントに。下部にはAV機器を収納できる幅1.5mの収納棚を設けてある。
この写真を見ると、リビングから2階の書斎と寝室まで、大きくつながった形になっていることに気づく。「空間にボリュームを持たせるため、寝室まで1つのスペースにしました。ただし、大きな吹き抜けをつくるだけでは空間が散漫になってしまいます。そこで、リビング側を勾配天井にして低い部分も設けることで、空間に落ち着きを与えるようにしました」と設計担当者。天井の低い部分は2.4m、高い部分では4.3mと高低差をつけている。
黒い壁面左は大型のクローゼットへ、右は洗面所と浴室へとつながっている。
この写真を見ると、リビングから2階の書斎と寝室まで、大きくつながった形になっていることに気づく。「空間にボリュームを持たせるため、寝室まで1つのスペースにしました。ただし、大きな吹き抜けをつくるだけでは空間が散漫になってしまいます。そこで、リビング側を勾配天井にして低い部分も設けることで、空間に落ち着きを与えるようにしました」と設計担当者。天井の低い部分は2.4m、高い部分では4.3mと高低差をつけている。
黒い壁面左は大型のクローゼットへ、右は洗面所と浴室へとつながっている。
基本的に〈浅香建築設計事務所〉では、天井には照明器具を設置しないことが多いのだとか。ここでも勾配天井を活かし、光が奥まで伸びていくように天井の低い部分に間接照明を設けている。やわらかな光がくつろぎの場面を包み込み、時間がゆったりと流れるような気分に誘われる。
玄関とダイニングをつなぐスペースでも間接照明を採用。白い壁に光が回り、十分に明るさを感じられる。左手はトイレへ続く引き戸。車椅子にも対応したサイズになっている。
前面ガラス張りで、オープンな印象抜群の洗面所とバスルーム。この窓外には東側の眺望が開けているため、朝日を浴びながら身支度ができる爽快なスペースである。黒い壁面はリビングと同様の磁器質タイル。カウンタートップにも同じタイルを使い、統一感を持たせている。
「読書が好きなので、本棚付きの書斎が欲しい」とのオーナーのリクエストに応えた、2階の書斎。幅2.4mのカウンターは、読書の他、パソコン作業や家事などにも使えるフレキシブルな場所だ。開放的すぎず、プライベート感があって落ち着ける広さと採光のバランスが心憎い。たっぷりとした容量のある本棚は、飾り棚としても活用。本棚の後ろには寝室がある。
南側の前面道路には、大きな壁を一枚構えて周囲の喧騒から一線を引き、その壁の向こうにプライベートな空間が広がっている構成。建物は南向きがいい、という既成概念にとらわれず、他方位の素晴らしい景観へ素直に、積極的に向き合うという選択は、家づくりの幅を広げてくれるものにちがいない。特に寒冷地では、冬場の採光に気をつかうことが多いが、高気密・高断熱住宅の進化により、方位を比較的気にしなくてもいいプランが可能になってきたのだそう。
外装はカラマツの角材(24mm×40mm)を突き付けて貼り込み、仕上げたもの。「外構についても少しずつ、好みのスタイルにつくり上げていきたい」と、オーナーはまだまだ家づくりを楽しみ続ける予定だ。
外装はカラマツの角材(24mm×40mm)を突き付けて貼り込み、仕上げたもの。「外構についても少しずつ、好みのスタイルにつくり上げていきたい」と、オーナーはまだまだ家づくりを楽しみ続ける予定だ。
豊かな自然の眺めに向き合いながら、刻々と変わる陽射しや風に合わせて、広々とした空間の中で居場所を変え、心地よく過ごす。このジグザグ形の家は、そんな開放感と自由さに満ちあふれている。
新築のHouzzツアーをもっと読む
コメント募集中
いかがでしたか? ご感想をお聞かせください。
新築のHouzzツアーをもっと読む
コメント募集中
いかがでしたか? ご感想をお聞かせください。
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む