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「コト」から始める家づくり:つくる、食べる、そしてその先
〈ブルースタジオ〉石井健による新連載。第1回は「料理をする」という「コト」とキッチンから家づくりを考えます。
Takeshi Ishii
2017年1月26日
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの黎明期から1000件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの黎明期から1000件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。... もっと見る
長年、家づくりのプロとしてたくさんのお施主さんと一緒に仕事をしてきましたが、家をつくるとなると、「キッチンはどのタイプしようか?」とか「リビングは広くしたい」とか、個別の部屋のイメージから考えようとする人が少なくありませんでした。それも間違いではないのですが、本来、家の主役はそこに住む人、その人が営む暮らしであるはず。となれば、快適な家をつくりたいなら、「部屋」という「モノ」ではなく、住む人が毎日行う行動、つまり「コト」から考えるほうが理にかなっているのではないでしょうか。そんな風に考えて、今回から「「コト」から始める家づくり」というタイトルで、連載を始めることにしました。
第1回は「料理をする」という「コト」を出発点に、キッチンから家づくりを考えます。毎日料理をしっかりする人、平日はあまりしないけれど週末は料理を楽しむ人、大人数の料理をする人、一人暮らしで好きなものを料理したい人、人を招いておもてなしするのが大好きな人など、料理するといってもさまざまなシチュエーションが考えられますし、それに従い、キッチンの設計も変わってきます。その家に住む人がオンとオフにどんなふうに料理と向き合っているのか、料理をつくる人と食べる人がどんなふうにコミュニケーションしたいのか。つまり、住む人がどんな気持ちでごはんをつくり、食べたいのかを考えることが大切な基本となります。
第1回は「料理をする」という「コト」を出発点に、キッチンから家づくりを考えます。毎日料理をしっかりする人、平日はあまりしないけれど週末は料理を楽しむ人、大人数の料理をする人、一人暮らしで好きなものを料理したい人、人を招いておもてなしするのが大好きな人など、料理するといってもさまざまなシチュエーションが考えられますし、それに従い、キッチンの設計も変わってきます。その家に住む人がオンとオフにどんなふうに料理と向き合っているのか、料理をつくる人と食べる人がどんなふうにコミュニケーションしたいのか。つまり、住む人がどんな気持ちでごはんをつくり、食べたいのかを考えることが大切な基本となります。
キッチンは、切る、温める、洗うといった「調理作業」を行う空間。そのための機能をもつモノ――シンクやコンロ、ワークトップといった調理器具・設備――が目に見える形で存在しているので、「キッチンづくり=完成されたキッチン設備を買うこと」と思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、料理とは何かを考えてみると、本来、素材を洗ったり、加熱したりすること。だからキッチンも本来は、水と火があれば成立する、シンプルな空間のはずです。「キッチンには現代的な機能や設備がたくさん揃っていなくちゃ」という思い込みをいちど捨てて、「料理する」ことの原点に立ち返り、その上で、自分が暮らしの中で、どんな料理や食事を求めているかを考えて、求める「コト」をプラスしていけば、もっと自由で楽しいキッチンを発想できるはずです。
しかし、料理とは何かを考えてみると、本来、素材を洗ったり、加熱したりすること。だからキッチンも本来は、水と火があれば成立する、シンプルな空間のはずです。「キッチンには現代的な機能や設備がたくさん揃っていなくちゃ」という思い込みをいちど捨てて、「料理する」ことの原点に立ち返り、その上で、自分が暮らしの中で、どんな料理や食事を求めているかを考えて、求める「コト」をプラスしていけば、もっと自由で楽しいキッチンを発想できるはずです。
キッチンを「外」とつなげる
キッチンは家の中にあるべき、というのは思い込み。ピクニックや花見を思い出すまでもなく、外で食べるご飯は楽しいもの。ならば、キッチンを「外」とつなぐのだってありです。休日の朝、近くに住む家族がキッチンとつながるテラスに集まってくる。晴れた日には、デッキに椅子とテーブルを出して、淹れたてのコーヒーと焼きたてのパンをいただく。大人がおしゃべりする傍らで、子ども同士は庭で遊ぶ――そんな風景が想像できる半アウトドアなキッチン&ダイニングは、これから人気が出そうです。お天気の悪い日でも、大きな窓越しに外を眺めながら食事を楽しむことができます。
キッチンは家の中にあるべき、というのは思い込み。ピクニックや花見を思い出すまでもなく、外で食べるご飯は楽しいもの。ならば、キッチンを「外」とつなぐのだってありです。休日の朝、近くに住む家族がキッチンとつながるテラスに集まってくる。晴れた日には、デッキに椅子とテーブルを出して、淹れたてのコーヒーと焼きたてのパンをいただく。大人がおしゃべりする傍らで、子ども同士は庭で遊ぶ――そんな風景が想像できる半アウトドアなキッチン&ダイニングは、これから人気が出そうです。お天気の悪い日でも、大きな窓越しに外を眺めながら食事を楽しむことができます。
キッチンを家の司令塔にする
家族が自然と集まる場がキッチンだという家庭もあるでしょう。あるいは、キッチンが家の中でいちばん落ちつくスペースという人もいるかもしれません。それなら、いっそキッチンを家の中心、司令塔にしてしまいましょう。こちらの家ではキッチンが家の中心にあるので、リビングで遊ぶ子どもの様子から、ワークスペースで仕事をする姿まで、キッチンから家全体を見渡せます。まさに、キッチンが司令塔の役割を果たしている事例です。
家族が自然と集まる場がキッチンだという家庭もあるでしょう。あるいは、キッチンが家の中でいちばん落ちつくスペースという人もいるかもしれません。それなら、いっそキッチンを家の中心、司令塔にしてしまいましょう。こちらの家ではキッチンが家の中心にあるので、リビングで遊ぶ子どもの様子から、ワークスペースで仕事をする姿まで、キッチンから家全体を見渡せます。まさに、キッチンが司令塔の役割を果たしている事例です。
「つくる」と「食べる」の境界をあいまいにする
家飲み需要が高まっている今日この頃。こちらでは、飲みながらおつまみをつくって、座ってまた飲んで、最後は小上がりでうたた寝もできるという、究極の家飲み時間が過ごせるスペースです。友人同士で集まっても、家族だけでも楽しい。「つくる」と「食べる」を隔てていないのが特徴です。家飲みでは“誰もがリラックスできる”ことがポイントだと思いますが、それを可能にする設計です。
家飲み需要が高まっている今日この頃。こちらでは、飲みながらおつまみをつくって、座ってまた飲んで、最後は小上がりでうたた寝もできるという、究極の家飲み時間が過ごせるスペースです。友人同士で集まっても、家族だけでも楽しい。「つくる」と「食べる」を隔てていないのが特徴です。家飲みでは“誰もがリラックスできる”ことがポイントだと思いますが、それを可能にする設計です。
「つくる」と「食べる」の境界がない例をもうひとつ。通常のコンロとは別に、野菜鍋が大好きな施主のために、キッチンとダイニングテーブルを一体化。さらにダイニングテーブルに鍋専用のIHを埋め込みました。「家飲み」や「おもてなし」のときには、料理をつくる人がキッチンにこもってしまいがちですが、このスタイルならつくる人と食べる人の団らんも叶います。
キッチンに住まう
現代において、キッチンは調理という目的に限定された機能空間ではありません。キッチンで仕事をしたり、キッチンでくつろいだっていいのです。たとえば、小さな家なら、キッチンにダイニングはもちろん書斎の機能をぐっと引き寄せて、家族の時間や個人のプライベート時間を過ごせる場所にしてしまう。あるいは、料理が好きで、一日の3分の1以上は、料理を仕込みながら、キッチンの片隅で読書したり書き物をしたり、という、キッチンに住まうような暮らしもあるのではないでしょうか。
現代において、キッチンは調理という目的に限定された機能空間ではありません。キッチンで仕事をしたり、キッチンでくつろいだっていいのです。たとえば、小さな家なら、キッチンにダイニングはもちろん書斎の機能をぐっと引き寄せて、家族の時間や個人のプライベート時間を過ごせる場所にしてしまう。あるいは、料理が好きで、一日の3分の1以上は、料理を仕込みながら、キッチンの片隅で読書したり書き物をしたり、という、キッチンに住まうような暮らしもあるのではないでしょうか。
そう考えると、例えば、スタイリッシュな黒が新鮮な、ドイツの建築家によるキッチンは、「キッチンに住まう」がまさに実践できそうです。キッチンの設備はありながらも、棚や家具、照明のしつらえはまるでふつうの部屋のよう。足下には子どものおもちゃがあるということは、ここで子どもも一緒に過ごしているのでしょう。
そしてその先…… キッチンが人と人とつなぐソーシャル(社交)の場に
かつては、調理を担当する人以外は足を踏み入れない場所、つまりプライベートな空間の代表格であったキッチンですが、最近は社交(ソーシャル)活動のメイン舞台に。ネットで募った希望者を家に招き、手料理でもてなす「ソーシャルダイニング」と呼ばれる交流サービスや、自宅のキッチンで開く料理教室やワークショップも人気が高まっています。「同じ釜の飯を食べた仲間」という表現があるくらい、食事をともにすることには人と人とを結びつける力があることを考えれば、実は不思議ではありません。
家族生活の中心となるだけでなく、外の人とつながるハブとなる――2017年のキッチンはますますこの方向へ向かっています。
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料理以外にキッチンでしていることはありますか?
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