海外が再発見する日本の「畳」の魅力
日本発祥の伝統的床材である畳は、今や国を飛び越え、海外にも広がっています。世界各国のハウズにも畳のある和の空間はたくさん掲載されています。そうした写真から、あらためて、私たち日本人が畳のある生活を見直してみてはいかがでしょう?
小川のぞみ
2017年1月15日
ライター/コピーライター/アドバイザー。
日本・湘南エリアからアメリカ・カリフォルニア生活を経て、再び湘南エリアに在住。高断熱・高気密の長期優良住宅に居住しながら、インテリアや整理収納のアドバイス、住宅購入の相談やホームステージング(家具のコーディネートなど)に取り組む。
ライター/コピーライター歴は10年以上。ウェブサイトや雑誌、ECサイトや通販誌、広告媒体(商業施設の冊子やポスター、大手企業発行の会報誌など)にて企画から携わる。担当分野は、住宅、インテリア、教育、ファッション、ランジェリー、インタビュー取材など。スタイリストの経験も多数。
ライター/コピーライター/アドバイザー。
日本・湘南エリアからアメリカ・カリフォルニア生活を経て、再び湘南エリアに在住。高断熱・高気密の長期優良住宅に居住しながら、インテリアや整理収納のアドバイス、住宅購入の相談やホームステージング(家具のコーディネートなど)に取り組む... もっと見る
現代の畳には、い草、和紙、ポリプロ材、木質材とさまざまな素材が使われていますが、伝統的な畳とは、わらを糸で刺し固めた畳床(たたみどこ)を、い草で編んだ畳表(たたみおもて)でくるみ、畳の長辺2つに畳縁(たたみへり)をつけたものです。畳の歴史は古く、古事記や日本書記に「畳」という記述が見られるほど。当初はござのような畳を重ねて板の間に敷いたり、寝具として使っていたと考えられており、前述のような、私たちが知る畳の構造になったのは、平安時代以降です。鎌倉〜室町時代になると、書院造の影響で畳を部屋全体に敷きつめるようになりました。しかし畳は、高級品とされ、身分による使用制限があったため、庶民のものとなったのは江戸時代のことでした。
今や誰もが楽しめるようになった畳。日本では、昭和の住宅には必ずといっていいほど畳敷の和室が見られたものの、現在は新築で畳を採用した部屋が少なくなってきています。畳発祥の国としては嘆かわしいですが、逆に世界では、畳の魅力に惹かれ、自由に使いこなす愛好家が増えてきています。この記事では海外のHouzzの事例から、畳の魅力をあらためて再発見してみたいと思います。
今や誰もが楽しめるようになった畳。日本では、昭和の住宅には必ずといっていいほど畳敷の和室が見られたものの、現在は新築で畳を採用した部屋が少なくなってきています。畳発祥の国としては嘆かわしいですが、逆に世界では、畳の魅力に惹かれ、自由に使いこなす愛好家が増えてきています。この記事では海外のHouzzの事例から、畳の魅力をあらためて再発見してみたいと思います。
1. 畳のあるくつろぎ空間
アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコの和室です。茶室ふうに配置した畳ですが、掘りごたつのように使うくつろぎ空間となっています。和のアイテムが散りばめられ、住む人のセンスが感じられます。畳空間のコーディネートを楽しんでいますね。
アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコの和室です。茶室ふうに配置した畳ですが、掘りごたつのように使うくつろぎ空間となっています。和のアイテムが散りばめられ、住む人のセンスが感じられます。畳空間のコーディネートを楽しんでいますね。
アメリカ、コロラド州のデンバーの事例です。畳に合う座卓とクッションは日本人に馴染み深いですが、床の間的な空間にオリジナリティがあふれています。石を敷き詰め、ジャポネスクな絵を飾り、畳のある和室を個性的なイメージで仕上げています。この海外ならではの感性が興味深いですね。
アメリカ、カリフォルニア州のホームオフィスです。畳がポイントの和の空間に、モニター類が意外にもしっくりきています。畳に座って仕事をしたり、ときには寝転んで休憩をするのでしょうか。和のくつろぎは海外の方にとっては特別で、仕事への活力になるのでしょう。
モダンな日本の和室? と勘違いしてしまいそうなオーストラリア、メルボルン郊外にある、縁(へり)なしの半畳サイズの畳を使った空間です。最近では、ユニット畳として、床材としてだけでなく、ラグのように手軽に使える畳も多くあります。いわゆる、ちょい置きにも映える畳で使い勝手がよいです。
ドイツ、ハンブルグの和空間は、まるで日本のそれです。引き戸からは畳、座卓、掛け軸が見え、古き良き和室の面持ちです。今の日本の住宅に、このような部屋がいったいどのぐらいあるでしょうか。海外でここまで再現して畳を愛用してくれているなんて、日本人としては感動ものです。
2. 寝室に畳を取り入れる
フランス、パリのマンションの一室です。寝室にベッドというありふれた光景ですが、床が畳敷というところに驚きとセンスを感じます。異国の都会にも溶け込む畳は、私たちが思う以上に懐の広いインテリアといえるのかもしれません。
フランス、パリのマンションの一室です。寝室にベッドというありふれた光景ですが、床が畳敷というところに驚きとセンスを感じます。異国の都会にも溶け込む畳は、私たちが思う以上に懐の広いインテリアといえるのかもしれません。
こちらもフランス、パリの事例ですが、床に畳を敷いて、その上に布団を置いています。和洋折衷のベッドを自作しているところがスタイリッシュ。日本人には和室と布団がセットなので、この方法はなかなか思いつきませんよね。
ニュージーランド、オークランドの寝室です。低めのベッドの周りにはぐるりと畳が敷かれ、ラグのような使い方で和室のようなニュアンス。カラーリングも畳カラーで統一し、リラックスムードが漂っています。
3. フローリングと畳のコラボ
アメリカ、カリフォルニア州カーメルにある家です。和風ではないモダンな住宅ですが、リビングのフローリングの一部を思い切って畳にし、アクセントにしています。凛とした和を室内に見事に馴染ませており、これは日本の現代の住宅でも参考になるデザインです。
アメリカ、カリフォルニア州カーメルにある家です。和風ではないモダンな住宅ですが、リビングのフローリングの一部を思い切って畳にし、アクセントにしています。凛とした和を室内に見事に馴染ませており、これは日本の現代の住宅でも参考になるデザインです。
こちらの一段上がった畳の空間は、カナダのリビング。ソファの後ろにわざわざ設えた場所です。このような小上がりスペースは最近の日本での住宅でもよく見られますが、ひとつの空間の中をさりげなくゾーニングできる点が魅力です。広い和室は不要でも畳は少し欲しいというかたには最適なとりいれかたといえるでしょう。
西インド諸島にあるフローリング×畳の空間です。外の景色を座って見るために設けられたのでしょうか。畳に座ってリラックスして見る景色の美しさは格別だと想像ができます。借景のある家を新築・リフォームするなら、このような畳というスペースを作るというのはいかがでしょうか。
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もう引退してしまいましたが、父が畳職人だった事もあり、私の実家は水回りと廊下以外は全て畳の間です。
また、父が50年以上お茶を嗜んでいる事もあって和室が2部屋あるので、畳は欠かせないという事もあります。
お陰で私は今も椅子の上に正座してしまう程です(笑)
畳とちゃぶ台、布団の組み合わせは、同じ部屋を食事の場にも寝室にも出来るという、狭い土地に建つ家にはぴったりの多様な使い方を実現するものですし、お客様がいらしても客用布団さえ用意してあればお泊り戴けるというのも良い点です。
何より、そのまま座れる、ごろっと横になれるというのは寛げる家には何よりのものですので、もっと畳がこれからの家でも取り入れられれば良いなと思っています。
世界における畳がこんな風にご利用いただけてることにうれしく思います。伝えてくださってありがとうございました