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名作デザイン:エーロ・サーリネンのチューリップチェアの魅力とは?
流れるように滑らかで美しい、画期的な一本脚のフォルム。発表されて60年が経つのに未だ新鮮な魅力を放つミッドセンチュリーの傑作チェアは、どんな空間にも似合う、驚くほど万能なアイテムです。
杉田真理子
2016年12月27日
すらりとした一本の足に、根っこのように地面に広がり安定した土台。そして、花びらのような美しい曲線を描く背もたれ。まるでチューリップのような有機的なシルエットのこの椅子を、オフィスやカフェなどで目にすることも多いのではないでしょうか。今回は、フィンランドの建築家、エーロ・サーリネンにより1956年にデザインされた名作「チューリップチェア」の魅力をご紹介します。
建築史に名を残すヘルシンキ出身の建築家、エーロ・サーリネンがチューリップチェアを発表してから、60年の月日が経ちました。発表からそれほどの時が経っているとは信じがたいほど、その斬新で個性的なデザインは現在も見る者に新鮮な印象を与えます。様々なシーンで長い間使い込まれてきた安心感と、それでも飽きがくることはない目新しさ。この傑作チェアの秘密は、どこにあるのでしょうか。
ミッドセンチュリーアメリカが生み出した、華麗なる一本足
エーロ・サーリネンが活躍した20世紀中頃のアメリカは、まさにミッドセンチュリーデザインの真っ盛りでした。この時代のデザインは、ムダを削ぎ落としつつも、温かみのある使い心地を意識している点が特徴的です。サーリネンは、それまでごちゃごちゃと乱雑に見えてしまっていた家具の「脚」部分に注目し、テーブルの下の部分をすっきりさせることを試みます。結果として生まれた究極の一本脚は、当時世界初。ペデスタルと呼ばれ、これまでの概念を根底から覆すデザインとして注目されました。
エーロ・サーリネンが活躍した20世紀中頃のアメリカは、まさにミッドセンチュリーデザインの真っ盛りでした。この時代のデザインは、ムダを削ぎ落としつつも、温かみのある使い心地を意識している点が特徴的です。サーリネンは、それまでごちゃごちゃと乱雑に見えてしまっていた家具の「脚」部分に注目し、テーブルの下の部分をすっきりさせることを試みます。結果として生まれた究極の一本脚は、当時世界初。ペデスタルと呼ばれ、これまでの概念を根底から覆すデザインとして注目されました。
一本脚であるからこそ、これまでの椅子とは違った構造で、しっかりと全体を支える必要があります。そこで、チューリップチェアにはさまざまな素材が実験的に使われてきました。基礎構造部分にはアルミニウム、背面を含むフレームにはガラス繊維強化プラスチック (GFRP) を使用されており、丈夫で使い勝手の良い産業デザインのアイコンとして親しまれています。
1. クラシカルテイストにもマッチ
チューリップチェアが不思議なのは、つるんと白い、モダンでどこか未来的なフォルムのデザインでありながら、どんなテイストのインテリアにもマッチしてしまうこと。例えば写真のように、どこかクラシカルな雰囲気の部屋に木材のテーブルと合わせても、見事にはまってしまいます。木材とアルミニウム + プラスチックという異素材の組み合わせも、違和感が全くありません。
チューリップチェアが不思議なのは、つるんと白い、モダンでどこか未来的なフォルムのデザインでありながら、どんなテイストのインテリアにもマッチしてしまうこと。例えば写真のように、どこかクラシカルな雰囲気の部屋に木材のテーブルと合わせても、見事にはまってしまいます。木材とアルミニウム + プラスチックという異素材の組み合わせも、違和感が全くありません。
2. エクレクティックに楽しむ
多様なスタイルのアイテムを組み合わせて楽しむエクレクティックスタイルにも、チューリップチェアは大活躍。個性派アイテムとして、あえて目立たせるように置いてしまっても、お部屋にメリハリが出て素敵です。
多様なスタイルのアイテムを組み合わせて楽しむエクレクティックスタイルにも、チューリップチェアは大活躍。個性派アイテムとして、あえて目立たせるように置いてしまっても、お部屋にメリハリが出て素敵です。
3. オリエンタル、エスニックスタイルにも
意外なことに、オリエンタルなスタイルのお部屋にも馴染んでしまいます。秘密の一つは、椅子に置くクッション。布地や革製で様々なデザインのクッションが選べますが、その組み合わせによって、クールにも、エスニックにも、可愛らしくも自由に変化するんです。
意外なことに、オリエンタルなスタイルのお部屋にも馴染んでしまいます。秘密の一つは、椅子に置くクッション。布地や革製で様々なデザインのクッションが選べますが、その組み合わせによって、クールにも、エスニックにも、可愛らしくも自由に変化するんです。
4. チューリップだからこそグリーンにあわせても素敵
こちらは大量のグリーンと合わせた、シンプルシックな仕上がり。チューリップの、植物的で有機的なシルエットを持つチェアだからこそ、本物の植物と合わせるとその美しさがより引き立ちます。
こちらは大量のグリーンと合わせた、シンプルシックな仕上がり。チューリップの、植物的で有機的なシルエットを持つチェアだからこそ、本物の植物と合わせるとその美しさがより引き立ちます。
5. 他の名作チェアと合わせても
個性的でありながら、自己主張し過ぎることがないチューリップチェア。だからこそ、さまざまなスタイルの部屋に自然に溶け込んでしまいます。他の名作チェアとの掛け合わせも同じこと。同じくミッドセンチュリーアメリカの傑作であるイームズチェアと合わせて、60年続く歴史を感じてみてはいかがでしょう。
個性的でありながら、自己主張し過ぎることがないチューリップチェア。だからこそ、さまざまなスタイルの部屋に自然に溶け込んでしまいます。他の名作チェアとの掛け合わせも同じこと。同じくミッドセンチュリーアメリカの傑作であるイームズチェアと合わせて、60年続く歴史を感じてみてはいかがでしょう。
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