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運命の照明との出逢い。バウハウスの傑作「カイザー・イデル」の魅力
照明には、インテリアの雰囲気を一変させる魔法のような力があります。筆者がインテリアと照明への思いを深めるきっかけとなった「運命のアイテム」、ドイツの名作照明「カイザー・イデル」の魅力をご紹介します。
杉田真理子
2016年12月16日
ソファやテーブルなど大きなアイテムと比べ、何かと脇役となってしまいがちな照明アイテムですが、例えばたった一つのテーブルランプが、空間の雰囲気を一変させてしまうことがあります。光の種類が変われば肌の見え方はまったく違ってくるとよく言われますが、それは空間そのものについても同じこと。家具は変えないままに空間の雰囲気をガラリと一変させることができる傑作ランプから、照明の魔力を感じてみませんか。今回は、ドイツ生まれの永遠の名作、「カイザー・イデル」をご紹介します。
ドイツ官公庁の管理職のデスクにも使われている、永遠の傑作
「カイザー・イデル」のランプは、まるでピクサー映画に出てきそうな愛嬌のあるフォルムが特徴。1936年のドイツに生まれました。大きなシェードとアーチ型の支柱、つるんとした丸いフォルムが特徴です。この丸さゆえか、素朴でありながら、今にも跳ねて動き出しそうな、不思議なキャラクターが備わっています。
「カイザー・イデル」のランプは、まるでピクサー映画に出てきそうな愛嬌のあるフォルムが特徴。1936年のドイツに生まれました。大きなシェードとアーチ型の支柱、つるんとした丸いフォルムが特徴です。この丸さゆえか、素朴でありながら、今にも跳ねて動き出しそうな、不思議なキャラクターが備わっています。
デザインをしたクリスチャン・デルは、バウハウスの金属工場で腕を磨いた立派な職人です。そう、「カイザー・イデル」は鉄の構造を熟知していた職人だからこそ生み出せた、究極の一品なのです。彼の名前である「デル(dell)」に「アイデア(idea)」という単語を組み合わせ、「イデル」という名前が生まれました。
どっしりとした鉄の存在感に、ミニマリスティックで機能性を追求したデザインは、発表から80年経った今でも世界中で愛され続けています。合わせるスタイルも、インダストリアルからナチュラルまで様々。傘のような大きなシェードから、暖かで、かつしっかりとした灯りを落としてくれます。
実は「カイザー・イデル」のオリジナルの発売は、1950年に一旦終了していました。しかし、フリッツ・ハンセンが2011年から復刻を販売し、現在も入手可能です。販売停止から復刻まで60年の時を経ながら、その確かな人気は変わっていないのです。
実は私自身も、「カイザー・イデル」の魅力に憑かれてしまった者の一人です。デンマーク、コペンハーゲンの骨董市で、年季が入りボロボロになった《カイザー・イデル》のテーブルランプを見つけたのは、数年前のこと。当時、これといった魅力のなかった下宿部屋にこのランプを持ち込み、明かりを灯した瞬間、空間の雰囲気がガラリと変わった、という体験をしました。
テーブルランプ以外にも、さまざまなタイプが楽しめる
ちなみに「カイザー・イデル」は、テーブルランプだけではなく、さまざまな種類があります。テーブルランプのフォルムをそのままに、ぐーんと背伸びをさせたようなデザインが可愛らしいのがフロアランプです。
ちなみに「カイザー・イデル」は、テーブルランプだけではなく、さまざまな種類があります。テーブルランプのフォルムをそのままに、ぐーんと背伸びをさせたようなデザインが可愛らしいのがフロアランプです。
フロアランプは、自分だけの小空間を灯りで演出してくれます。ソファの横におけば、読書などに便利なのはもちろんですが、居心地が良く雰囲気のある空間作りに貢献すること間違いなし。そっと自分のゾーンを作り上げてくれるような、暖かな灯りを周囲に落とします。
傘のような大きなシェードは、ペンダントランプタイプでも素敵です。因みに写真のように、黒だけではなく赤やベージュなどのカラーバリエーションもあります。
キッチンやダイニングスペースに最適のペンダントランプ。「カイザー・イデル」のようにシンプルなデザインであれば、複数並べて使うのも素敵です。また、シェードのカラーを選べば、お部屋のスタイルにも合わせやすいのも嬉しいポイントです。
同じテーブルランプといえども、シェードの形によって違いも
シェードが傘のように大きなタイプが有名ですが、よりコンパクトな違ったデザインのテーブルランプも。お好みのデザインで選んで頂けますが、こちらのタイプはキュッと斜光範囲が狭まるので、よりピンポイントに光を落としてくれます。
シェードが傘のように大きなタイプが有名ですが、よりコンパクトな違ったデザインのテーブルランプも。お好みのデザインで選んで頂けますが、こちらのタイプはキュッと斜光範囲が狭まるので、よりピンポイントに光を落としてくれます。
1台目の「カイザー・イデル」購入後、私はこのタイプのテーブルランプをもう1つ同社から購入し、部屋全体を2方向から明るくしました。「カイザー・イデル」のシンプルさ、コンパクトさたるや、どのスタイルにも合ってしまうから驚きです。年月を経て場所や趣味が変わっても、変わらず愛用し続けられます。
こちらはちょっと変わったバネ式ランプ。今にも動き出しそうな愛嬌さが倍増し、ますます遊び心のあるデザインです。ポップな印象があるうえに、非常に丈夫に出来ているので、子供向けにもオススメ。小さなお子さんの勉強机を、優しく、しっかりと灯します。
テーブルだけでなく、ベットサイドの読書灯にも。伸縮自在なので、使わない場合は、畳んでしまえるのも嬉しいですよね。こちらも複数使いが素敵です。
たった一つの照明が、空間を変えてしまうこともある
バウハウスで腕を磨いた職人から生まれた、デザイン好きにはたまらない歴史を持つ「カイザー・イデル」。その魅力は、たったそれだけで空間に変化をもたらすことができるほど大きい、と私は思います。
1つのテーブルランプとの偶然の出会いが、照明と空間との密接な関係を私に気づかせてくれたように、たった一つの照明アイテムが、ガラリと雰囲気を変えてしまった、という経験がある人は他にもいるはず。これは、というこだわりの照明アイテム、皆さんも見つけてみませんか。
ポール・ヘニングセンがデザインした名作照明「PHシリーズ」のタイムレスな魅力
フランク・ロイド・ライトの名作照明「タリアセン」シリーズ
バウハウスで腕を磨いた職人から生まれた、デザイン好きにはたまらない歴史を持つ「カイザー・イデル」。その魅力は、たったそれだけで空間に変化をもたらすことができるほど大きい、と私は思います。
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