コメント
今週のキッチン:日本の感性とドイツの機能性がつくる、書道家の美しいキッチン
ドイツの名門キッチンメーカー〈ブルトハウプ〉創始者の孫である建築家が、カナダのミッドセンチュリー住宅に暮らす日本の書道家のために設計した、シンプルで機能的で美しいキッチン
Julia Schoppe
2016年12月12日
東洋のシンプルさとドイツの機能性、そして北米・カナダのミッドセンチュリー建築がひとつになったら、いったい何が起こるのか…? 今回は、その答えとなる、まさに文化を超えた素敵な共生関係といえるプロジェクトを見てみよう。カナダのウォータールーに住む日本人の書道家、前田典子さんが、ドイツ人建築家のアンチェ・ブルトハウプさんに自宅のキッチンまわりのリノベーションを依頼したプロジェクトだ。
ブルトハウプの名前には聞き覚えがあるかもしれない。それもそのはず、カナダを拠点に活動するアンチェさんは、ドイツのキッチンメーカー〈ブルトハウプ〉の創業者の孫娘で、2012年まで、家族経営である同社トロント支部のマネジメントを任されていた人物だ。その経験とノウハウ、素晴らしいデザイン力を生かし、1950年代に建てられたこの住まいの中に、新たに暮らしの中心となるキッチンを作り出すことができた。
こちらもあわせて
ジャパニーズスタイルをお手本にキッチンの設計を考えてみると?
あなたのインテリアスタイルは?:ジャパニーズスタイル
日本の住宅デザインの伝統から学ぶ、8つのデザインのアイデア
ブルトハウプの名前には聞き覚えがあるかもしれない。それもそのはず、カナダを拠点に活動するアンチェさんは、ドイツのキッチンメーカー〈ブルトハウプ〉の創業者の孫娘で、2012年まで、家族経営である同社トロント支部のマネジメントを任されていた人物だ。その経験とノウハウ、素晴らしいデザイン力を生かし、1950年代に建てられたこの住まいの中に、新たに暮らしの中心となるキッチンを作り出すことができた。
こちらもあわせて
ジャパニーズスタイルをお手本にキッチンの設計を考えてみると?
あなたのインテリアスタイルは?:ジャパニーズスタイル
日本の住宅デザインの伝統から学ぶ、8つのデザインのアイデア
どんなキッチン?
住まい手:日本人のアーティスト、前田典子さんとご主人
所在地:カナダ、ウォータールー
キッチンの規模:およそ30平方メートル
デザイナー:〈アンチェ・ブルトハウプ・アーキテクト〉のアンチェ・ブルトハウプさん
この家のストーリーが始まったのは戦後、1950年代のこと。建築家のシャーマン・ライト(1907-1996)が、カナダのオンタリオ州、トロントの南西部に位置するウォータールーの町に、家族と暮らす自宅として、スキップフロアのある平屋住宅を設計・建設した。そして1993年からこの家に暮らし始めたのが、日本人アーティストの前田典子さんとご主人、そして2人の娘さんたちだった。
こちらもあわせて
ミッドセンチュリーモダンデザインに見る、日本の「わび・さび」の美
和風? 洋風? ジレンマはミッドセンチュリーデザインで解決しよう!
住まい手:日本人のアーティスト、前田典子さんとご主人
所在地:カナダ、ウォータールー
キッチンの規模:およそ30平方メートル
デザイナー:〈アンチェ・ブルトハウプ・アーキテクト〉のアンチェ・ブルトハウプさん
この家のストーリーが始まったのは戦後、1950年代のこと。建築家のシャーマン・ライト(1907-1996)が、カナダのオンタリオ州、トロントの南西部に位置するウォータールーの町に、家族と暮らす自宅として、スキップフロアのある平屋住宅を設計・建設した。そして1993年からこの家に暮らし始めたのが、日本人アーティストの前田典子さんとご主人、そして2人の娘さんたちだった。
こちらもあわせて
ミッドセンチュリーモダンデザインに見る、日本の「わび・さび」の美
和風? 洋風? ジレンマはミッドセンチュリーデザインで解決しよう!
前田さんがカナダに移り住んだのは、書道家としての活動のため。それまでは、家族で東京とオンタリオを行き来する生活だったという。ガラス窓がふんだんに使われた家を初めて見たとき、当時10歳だった娘さんは、「この家すてき! 家じゅうどこからでも月が見えるね」と、この家の最高のポイントにすぐに気づいたそうだ。
2009年に前田さんから相談を受けたとき、アンチェ・ブルトハウプさんは即座にこの建物の持つ可能性を感じたという。「基本にフランク・ロイド・ライトのスタイルがある1950年代築の建物で、室内のつながりを大切にした開放的な平屋になっています」とブルトハウプさんは言う。
こちらもあわせて
フランク・ロイド・ライトが日本の住宅建築に与えた大きな影響とは?【Part 1】
2009年に前田さんから相談を受けたとき、アンチェ・ブルトハウプさんは即座にこの建物の持つ可能性を感じたという。「基本にフランク・ロイド・ライトのスタイルがある1950年代築の建物で、室内のつながりを大切にした開放的な平屋になっています」とブルトハウプさんは言う。
こちらもあわせて
フランク・ロイド・ライトが日本の住宅建築に与えた大きな影響とは?【Part 1】
「前田さんが私に声をかけてくれたのは、〈ブルトハウプ〉というブランドを知っていたことと、建築を学んでいた娘さんが、私の事務所のプロジェクトを目にしたことがあったからなんです。」
こちらもあわせて
日本の住宅建築に今も息づくフランク・ロイド・ライトの影響とは? 【Part 2】
こちらもあわせて
日本の住宅建築に今も息づくフランク・ロイド・ライトの影響とは? 【Part 2】
木と大きなガラスパネルが、インテリアの中心的な素材になっている。「建物は木造で、ガラス窓をふんだんに使っています。屋内と外のつながりが強く感じられますね。家の周りには、美しく整えられた日本風の庭園があるんです」とブルトハウプさんは言う。
この家には強い個性があり、大量生産型の住宅とはまったく趣きが異なる。前田さんの成長した娘さんたちはずっと、この家の持つ哲学を守って、オープンプランリビングのコンセプトを維持するべきだという意見だった。ブルトハウプさんにとって、この条件は大きなデザイン課題となった。
この家には強い個性があり、大量生産型の住宅とはまったく趣きが異なる。前田さんの成長した娘さんたちはずっと、この家の持つ哲学を守って、オープンプランリビングのコンセプトを維持するべきだという意見だった。ブルトハウプさんにとって、この条件は大きなデザイン課題となった。
「およそ30平方メートルのキッチンエリアを、複数のゾーンがなめらかに分かりやすくつながるリンクとして、かつ料理をする場所として、いかにデザインするかが課題でした。しかもここは、家族のプライベートなキッチンというだけではなく、日本文化を紹介する会を開いたり、ゲストやクライアントをもてなすために使う場所でもあるんです」とブルトハウプさんは言う。
ゆったりとしたワンルームのダイニングエリアからは、キッチンのようすがよく見えるが、ダイニングのプライバシーは確保されており、ゆっくりと食事を楽しむことができる。
インテリアデザインのコンセプトは、日本の伝統的住宅のレイアウトにかなり近い。抑制のきいたデザインに仕上げられたキッチンも、周囲の空間にしっくり溶け込んでいる。全体的なトーンは、欧米では「ゼンスタイル」とよばれる、日本的空間ならではの調和のとれた穏やかな雰囲気がある。
インテリアデザインのコンセプトは、日本の伝統的住宅のレイアウトにかなり近い。抑制のきいたデザインに仕上げられたキッチンも、周囲の空間にしっくり溶け込んでいる。全体的なトーンは、欧米では「ゼンスタイル」とよばれる、日本的空間ならではの調和のとれた穏やかな雰囲気がある。
キッチンは、機能的なデザインにすることはもちろん、表面に使ったさまざまな素材にも細かな注意が払われている。「キッチン本体はチェリーウッド材とステンレススチール、壁にはガラスパネルを使いました。背の高い戸棚やディスプレー棚は耐錆アルミニウムを使っています。」アイランドは調理エリアであるだけでなく、「彫刻的で、2つのエリアのあいだに長く延びて流れを作る、案内役のようでもありますね」とブルトハウプさんは語る。
こちらの食器戸棚も、使いやすい空間をつくる工夫の一つだ。「それぞれ別の機能を持つキッチン周辺の部屋どうしが、そして屋内と外の空間とがここでうまく合流し、スムーズにつなげられているんです」とブルトハウプさん。
床はスレート張り。設備類はすべてベニヤ板を使用し、木工職人に制作してもらった。
床はスレート張り。設備類はすべてベニヤ板を使用し、木工職人に制作してもらった。
制作活動に日本料理クラス開講にと忙しい前田さんだが、時間ができると、キッチンをはさんでダイニングと反対側にあるテーブルで、家族といっしょに食事をとる。このエリアは、アトリエと、プライベートなリビング・ダイニングエリアとのあいだに位置するバッファゾーン(緩衝地帯)でもある。視界を遮らないシンプルなスタイルは、ここにも一貫している。このプロジェクトの完成形を見るところ、文化間の融合は、間違いなく成功しているようだ。
こちらもあわせて
日本の伝統的住宅の12の基本的な特徴とは?
教えてHouzz
カナダで実現したジャパニーズスタイルのキッチン、いかがでしたか? ご感想をおきかせください。
こちらもあわせて
日本の伝統的住宅の12の基本的な特徴とは?
教えてHouzz
カナダで実現したジャパニーズスタイルのキッチン、いかがでしたか? ご感想をおきかせください。
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む