名作建築:コルビュジエの集合住宅〈ユニテ・ダビタシオン〉の住み心地
世界遺産にも指定された、コルビュジエの集合住宅の傑作、〈ユニテ・ダビタシオン〉。南仏、マルセイユにあるこの住宅に惚れ込み、37平方メートルの部屋を手に入れたカップルの快適な暮らしをHouzzフランス編集部が取材しました。
Valérie Carreno & Frédéric Sautai
2016年11月29日
「輝く都市」の名でも知られる、マルセイユの〈ユニテ・ダビタシオン〉は、1950年代に建築家、ル・コルビュジエが自らの都市計画の構想を垂直に実現した集合住宅だ。世界遺産にも選定されているこの住宅の特徴の1つは、各アパートメントが15〜20メートルという深い奥行きをもっていることだ。コルビュジエは、「住まい手が詩情と喜びに溢れた生活を送ることのできる、心地よい幸せな空間をつくること」を何よりも重視して、この住宅を設計した。
今回ご紹介するのは、セドリックさんとフランシーヌさんのカップルが暮らすワンルームのアパートメントだ。二人は心血を注いでリノベーションしたこの家がとても気に入っている。「ここに暮らすということ自体が、わくわくする冒険です。実は以前、私はセドリックと一緒にこの建物内で開かれた展覧会に来たんです。そのとき、こんな素晴らしい建物に暮らせたら素敵だろうな、と思いながら中を見学していました。それで、廊下を歩き回り、掲示板を眺めていると、警備の方がやってきて、最近ある所有者がアパートメントを売りに出している、と教えてくれたんです。しかも、すぐに連絡ができるよ、と。でも、何度電話しても不在だったので、がっかりして車に乗り、帰り道を走り始めました。すると、所有者から電話がかかってきて、『今ならアパートメントにいるけれど、来られますか?』と。もちろん、すぐにUターンして、生まれたときからここに住んでいたというオーナーに会いに行きました」とフランシーヌさんは振り返る。
「2012年にこの建物の一部が焼ける火事があり、その後2年をかけて修繕された部分を購入したので、僕たちが買ったアパートメントは新しい部分です。でも、すべては創建当初どおりに復原されていました。幸運なことにキッチンやキャビネットは火事に遭わなかったので、修繕が行われたのは床とコンクリートの壁のみ。他の部分はすべて、一度解体し、必要な部分を修繕して、再度組み立てられたものです」とセドリックさんは話す。
教えてHouzz
住まい手:フランシーヌさんとセドリックさん
所在地:フランス、マルセイユにある〈ユニテ・ダビタシオン〉、別名「輝く都市」
規模:屋内の延床面積37平方メートル、テラス7平方メートル
設計:シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)
写真 : Jours & Nuits © 2016 Houzz
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今回ご紹介するのは、セドリックさんとフランシーヌさんのカップルが暮らすワンルームのアパートメントだ。二人は心血を注いでリノベーションしたこの家がとても気に入っている。「ここに暮らすということ自体が、わくわくする冒険です。実は以前、私はセドリックと一緒にこの建物内で開かれた展覧会に来たんです。そのとき、こんな素晴らしい建物に暮らせたら素敵だろうな、と思いながら中を見学していました。それで、廊下を歩き回り、掲示板を眺めていると、警備の方がやってきて、最近ある所有者がアパートメントを売りに出している、と教えてくれたんです。しかも、すぐに連絡ができるよ、と。でも、何度電話しても不在だったので、がっかりして車に乗り、帰り道を走り始めました。すると、所有者から電話がかかってきて、『今ならアパートメントにいるけれど、来られますか?』と。もちろん、すぐにUターンして、生まれたときからここに住んでいたというオーナーに会いに行きました」とフランシーヌさんは振り返る。
「2012年にこの建物の一部が焼ける火事があり、その後2年をかけて修繕された部分を購入したので、僕たちが買ったアパートメントは新しい部分です。でも、すべては創建当初どおりに復原されていました。幸運なことにキッチンやキャビネットは火事に遭わなかったので、修繕が行われたのは床とコンクリートの壁のみ。他の部分はすべて、一度解体し、必要な部分を修繕して、再度組み立てられたものです」とセドリックさんは話す。
教えてHouzz
住まい手:フランシーヌさんとセドリックさん
所在地:フランス、マルセイユにある〈ユニテ・ダビタシオン〉、別名「輝く都市」
規模:屋内の延床面積37平方メートル、テラス7平方メートル
設計:シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)
写真 : Jours & Nuits © 2016 Houzz
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引っ越してきて以来数年がたつが、セドリックさんは今もこの家に夢中だ。「部屋に入り、エントランス空間を抜けると、外界とは完全に切り離された世界になります。出窓を開けると、屋外と屋内がひとつになります。本当に、とても安らかで、時を超えたかのような空間なのです」とセドリックさん。オークの戸棚類と無垢材のフローリングは、歴史的建造物管理建築家(ABF)によって、元通りに復原された。(〈ユニテ・ダビタシオン)は歴史的建造物に指定されており、手を加える場合は歴史的建造物管理建築家の監修が必要となる。)
キッチンのアイランドは、シャルロット・ペリアンがデザインしたオリジナルよりも少し大きくて高さが低い。メタル製の脚がついた黒いメラミンのテーブルを合わせている。
キッチンのアイランドは、シャルロット・ペリアンがデザインしたオリジナルよりも少し大きくて高さが低い。メタル製の脚がついた黒いメラミンのテーブルを合わせている。
シャルロット・ペリアンがデザインしたオリジナル部分。もともとはカウンターだったが、歴史的建造物管理建築家の監修をうけつつ、よりコンテンポラリーに仕上げた。「シャルロット・ペリアンにも、未来の生活の細々とした利便性を事細かに予測することはできなかったみたいですね! キッチンのデザインについては、私たちのライフスタイルに合わせて、少し設計し直してもらいました。」
オリジナルの亜鉛プレートを棚に。キッチンのワークトップやシンクとも統一されている。
オリジナルの亜鉛プレートを棚に。キッチンのワークトップやシンクとも統一されている。
バス・トイレのスペースはオリジナル。リノベーションの際に、バス・トイレの背後に、歴史的建造物管理建築家の手を借りてクローゼットを追加した。室内に入ってしまうと見えない位置だ。
〈ユニテ・ダビタシオン〉のバスルームは船のキャビンを模したもの。「小さな扉が付いていたのですが、閉塞感があったので、取り払ってしまいました」とセドリックさん。
〈ユニテ・ダビタシオン〉のバスルームは船のキャビンを模したもの。「小さな扉が付いていたのですが、閉塞感があったので、取り払ってしまいました」とセドリックさん。
「インテリアについては、1950年代の雰囲気そのままではなく、コンテンポラリーな感覚をミックスしました。有名なアンティークディーラーのレジーヌ・ヴノさんと、息子さんのギレム・ファジェさんに細かく手を貸してもらいました」と二人は話す。
例えば、曲線的でなめらかなデザインの〈ピエール・ポーラン〉のアームチェアとオットマンは、〈クァドラ〉のパープルとオレンジの伸縮性のある生地を張っている。
まるでこのアパートメントのために誂えたかのような写真の戸棚は、セドリックさんが一目惚れしたアイテムだ。「マルセイユの蚤の市で、解体された状態で売られていたのをレジーヌさんが見つけたんです。抜け感のあるスタイルの家具で、壁に設置しなくても、フローティングのような軽快さがあります。
例えば、曲線的でなめらかなデザインの〈ピエール・ポーラン〉のアームチェアとオットマンは、〈クァドラ〉のパープルとオレンジの伸縮性のある生地を張っている。
まるでこのアパートメントのために誂えたかのような写真の戸棚は、セドリックさんが一目惚れしたアイテムだ。「マルセイユの蚤の市で、解体された状態で売られていたのをレジーヌさんが見つけたんです。抜け感のあるスタイルの家具で、壁に設置しなくても、フローティングのような軽快さがあります。
フランシーヌさんによれば、ベッド周りにはいろいろ苦労があったという。「ここに引っ越してきた当初、部屋の真ん中には普通のベッドがどんと置いてあったんです。それで、リビングをもっと活用するために、解決策を考えて、折りたたみ式収納ベッドを取り入れることにしたんです。問題は、この壁にベッドを設置してくれる業者がなかなか見つからなかったこと。でも、最終的には、大掛かりな工事の必要もなく、すべてが組み込まれているこのベッドを見つけることができました。」
屋内は大きな開口部から壁がブルーに塗られたテラスへと続いている。各アパートメントのテラスは異なる原色で塗られていて、全体のファサードをダイナミックに見せている。戸口に見える木製のステップはオリジナルのもので、暖房システムが納められている。フランシーヌの希望で窓にはオレンジと白の遮光カーテンをかけている。オレンジは、前出のオットマンなど室内で差し色として使われている色だ。
テラスには、コンクリート製のテーブルがついていて、オリジナルのモザイクタイルの模様がある。ここでプラドビーチや海を眺めながらランチをとるのは、最高の楽しみだそうだ。
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