My Houzz: 好奇心をくすぐるスペインの漁師小屋をイメージした、写真家の自宅兼スタジオ
住む人の暮らし、夫婦や家族の絆を、豊かな感性と温かい目線で切り取る写真家のくろださくらこさん。2010年にリノベーションした〈スタジオ桜の木〉は、ギャラリーみたいな楽しさと、思わず笑顔になれる居心地の良さにあふれています。
栗原晶子|Akiko Kurihara
2017年1月11日
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。
また、エンタメ好きとして演劇や映画に関するライティングも手がけています。
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。... もっと見る
美術大学でグラフィックデザインを学んでいたくろださくらこさんが卒業後に選んだのは、写真家の道。スタジオで経験を積んだ後、2002年に独立した。そのタイミングで暮らし始めたのが、立地や広さなどの条件に合う物件として選んだ現在の住まいである。当初から自宅をスタジオとしても利用することを想定し、リノベーションが可能な中古のマンションを選んだ。
白の漆喰壁と無垢の床、そこに差し込むやさしい光。築45年のマンションの一室をフルリノベーションし、自宅兼スタジオとしての現在の姿に完成したのは、住み始めてから8年経過した2010年のことだった。
どんなHouzz?
住まい手:くろださくらこさん
職業:写真家
所在地:東京都杉並区
竣工:1971年(リノベーションは2010年)
規模:LD、キッチン、ロフト、バスルーム、トイレ、ウォークインクローゼット、(延床面積58平方メートル)
どんなHouzz?
住まい手:くろださくらこさん
職業:写真家
所在地:東京都杉並区
竣工:1971年(リノベーションは2010年)
規模:LD、キッチン、ロフト、バスルーム、トイレ、ウォークインクローゼット、(延床面積58平方メートル)
友人でもあったリフォームのプロ〈KITORI〉の山上一郎さんにリクエストしたのは、スタジオとして利用するために天井をできるだけ高くすること。結果的に天井高は約3メートルとなった。
天井や壁の漆喰塗装は、自ら手がけた。なんと当初は壁や窓枠をすべて異なる色にするプランも出したというが、プロのアドバイスを受けて、白で統一。面積の広い壁は、友人らの協力も得て仕上げた。
「ここに住みながらの施工でしたので、出来上がるまでは毎日キャンプのようでした」とくろださん。
天井や壁の漆喰塗装は、自ら手がけた。なんと当初は壁や窓枠をすべて異なる色にするプランも出したというが、プロのアドバイスを受けて、白で統一。面積の広い壁は、友人らの協力も得て仕上げた。
「ここに住みながらの施工でしたので、出来上がるまでは毎日キャンプのようでした」とくろださん。
「イメージはスペインの海辺の漁師小屋。カラフルな色を取り入れたい!」――そんな、くろださんの個性あふれる希望は、プライベートスペースで叶えられている。キッチンは、1970年代のオーソドックスな造りを活かしつつ、キッチン台と吊戸棚の扉をすべて付け替え、一枚ずつ違う色を塗った。
キッチンの脇に置いている引き戸式の食器棚は、もとは靴箱だったものをリメイクした。赤の扉がアクセント。
窓の桟には、空き瓶やガラスなどを並べて飾っている。外側のアイアンフェンスも年代を感じさせるデザイン。
リビング側から見たキッチン。壁に埋め込むように造作した書棚の裏側が玄関スペース。
壁に掛けた絵は、仕事先で譲り受けた漫画家八島一夫さんのイラスト作品。
この静かな佇まいの扉の向こうには、全く表情が異なる洗面、サニタリースペースがつながる。
この静かな佇まいの扉の向こうには、全く表情が異なる洗面、サニタリースペースがつながる。
洗面台の脇には、カラフルなタイルを採用。シートになった既製品を使うのではなく、配色を考え、1枚ずつ手作業で仕上げた。
バスルームの扉はイエロー、トイレの壁はピンク色など、このスペースは彩り豊かに塗って仕上げた。
バスルームの扉はイエロー、トイレの壁はピンク色など、このスペースは彩り豊かに塗って仕上げた。
エントランスの壁色は深い青。ここもDIYで仕上げた。「海の底のようなディープな場所をくぐって明るいリビング(スタジオ)へ出るイメージでこの色にしました」というくろださん。実はなかなか納得のいく色が出せず、4度も塗り直したという。四角くくり抜いたような天井もユニーク。照明が壁に反射して幻想的。
靴棚の上に取り付けた大きな額縁。中は、手紙やポストカードを自由に飾っている。手作りのしめ縄もアーティスティック。また、鍵や時計など、外出時に必要なものの引っ掛け収納スペースとしても利用している。
〈スタジオ桜の木〉での撮影風景。真夜中の海を思わせる幻想的な光の中で撮る人物写真のシリーズ「マーメイズ・イン・ミッドナイト」は、くろださんが撮り続けているアーティスト・ワークの一つ。
主に写真の編集作業や撮影の準備で使うワークスペース。上段に設けたロフトには、大の読書好きというくろださんが所有する本がズラリ。また、はしごを使って上がれるロフトは、撮影でスタジオに訪れたお子さんの遊び場になることも多いという。
造作カウンターの上には、パソコンや機材のほかに、くろださんのお気に入りの雑貨も並ぶ。
自作の絵や、知人のアーティストの作品をディスプレイ。
ワークスペース脇に設けたウォークインクローゼットは、撮影用機材庫として使用。
朝日で目覚められるよう、カーテンはあえて薄手のものを使用。漁師小屋をイメージし、くろださんがパッチワークした。撮影のない日の朝は、ジョギングからスタート。スタジオでの編集作業などを終えて、午後は街歩きに出かけることもよくある。
リビングの天井には、ブランコやハンモックを引っ掛けるためのフックも埋め込まれており、リラックスタイムに楽しんだり、撮影で利用することも。被写体の自然な姿を大切にしているくろださんらしい仕掛けがあることも、このスタジオの魅力だ。
撮影後のティータイムや、仕事の打ち合わせ場所、時にはセットにもなる〈スタジオ桜の木〉のダイニングテーブル。気軽に立ち寄って、写真を撮って帰れる場所にしたいとう思いでスタジオを作ってから6年が経過した。
年に数回は、撮影旅行のために海外にも訪れるというくろださん。キューバから持ち帰ったプレートは、スタジオ撮影で着替えやメイクのための控室として使用する部屋の入口に飾った。
くろださんの心を動かす「わくわくの種」にあふれた〈スタジオ桜の木〉には、これからも笑顔の花を咲かせに人が集い、やさしい時間と心に残る一枚が生まれ続けるだろう。
インテリア、風景から人物まで、さまざまな写真を撮影するくろださくらこさん。住む人の暮らし、夫婦や家族の絆を、豊かな感性と温かい眼差しで写し出す作風に定評がある。
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