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世界のHouzzから:あなたの知らない、本当のロシア紅茶の楽しみ方
ロシアンティーといえば、紅茶にジャムを入れて飲むもの、と思っていませんか? 実はロシア人はそんな飲み方をしていないのだとか。「サヴァルカ」と呼ばれる本当のロシア紅茶の楽しみ方をハウズ・ロシア版編集長が解説します。
Елена Амбросимова
2016年11月4日
ロシアにはさまざまな独自の伝統や習慣があります。「ザヴァルカ 」 と呼ばれる伝統的なロシア式のお茶の楽しみ方もその1つ。ロシアンティーというと、外国の人はサモワールとシルバーのホルダーに入れたグラスで飲むお茶を思い浮かべるようですが、それはロシアのお茶文化のごく一面にすぎません。ロシア人の日常において、お茶とは、人とゆっくりおしゃべりを楽しんだり、仲直りしたり、真剣な商談を行うときにいただくもの。この記事では、ロシアの古くからのお茶の伝統と、現代の日常生活での楽しみ方をご紹介します。
ロシア人はソーサーを使ってお茶を飲む
イギリス人はミルクを入れた紅茶をカップから直接飲みますが、ロシア人は紅茶をカップからソーサーに注いで飲む習慣があります。実はこの習慣には、豊かな歴史があるのです。まず、注意していただきたいのは、この方法はもともとロシアの商人階級の飲み方だということ。貴族階級は常にヨーロッパ式に従いカップから飲んでいましたし、商人式にソーサーから飲むのは学のない粗野な人の方法とみなされていました。「子供のころ、ソーサーに紅茶を注いで飲もうとするたび、そういう飲み方をするのは商人や馬車の御者だけですよ、と祖母に言われたものです」とヴァルヴァラ・エレメーエヴァさんは思い出を語ります。
今の時代は?
「今では、ソーサーから紅茶を飲む人なんていません。お茶を冷ますために小さい子供がするくらいですね」とハウズユーザーのarchicat90さんも言います。
写真:I. A. コロヴィン「お茶を飲む商人階級の女」1918年、ロシア国立美術館コレクション、レグヌム
イギリス人はミルクを入れた紅茶をカップから直接飲みますが、ロシア人は紅茶をカップからソーサーに注いで飲む習慣があります。実はこの習慣には、豊かな歴史があるのです。まず、注意していただきたいのは、この方法はもともとロシアの商人階級の飲み方だということ。貴族階級は常にヨーロッパ式に従いカップから飲んでいましたし、商人式にソーサーから飲むのは学のない粗野な人の方法とみなされていました。「子供のころ、ソーサーに紅茶を注いで飲もうとするたび、そういう飲み方をするのは商人や馬車の御者だけですよ、と祖母に言われたものです」とヴァルヴァラ・エレメーエヴァさんは思い出を語ります。
今の時代は?
「今では、ソーサーから紅茶を飲む人なんていません。お茶を冷ますために小さい子供がするくらいですね」とハウズユーザーのarchicat90さんも言います。
写真:I. A. コロヴィン「お茶を飲む商人階級の女」1918年、ロシア国立美術館コレクション、レグヌム
ザヴァルカとティーポット
ロシアの商人階級は、お茶の文化に2つの特徴を生み出しました。お茶請けをたくさん食べること、そして長々とお茶を楽しむことです。お茶の量も1人あたり平均10杯、ときにはサモワール数個分のお茶を飲んでおり、お腹を満たすのが目的だったといわれることも。商人たちは、商売や政治情勢、縁談の取りまとめをめぐって、お茶を飲みながら何時間も議論を交わしていたのです。
ロシアの商人階級は、お茶の文化に2つの特徴を生み出しました。お茶請けをたくさん食べること、そして長々とお茶を楽しむことです。お茶の量も1人あたり平均10杯、ときにはサモワール数個分のお茶を飲んでおり、お腹を満たすのが目的だったといわれることも。商人たちは、商売や政治情勢、縁談の取りまとめをめぐって、お茶を飲みながら何時間も議論を交わしていたのです。
となれば、カップに1杯ずつ紅茶を入れていたのでは、面倒です。そこで、解決策として、上下に重ねた写真のようなポットが生み出されました。 上のポットもまた「ザヴァルカ」と呼ばれ、紅茶の葉を3〜4杯入れたところにお湯を注いでお茶をつくります。すると、非常に濃い紅茶(これも「ザヴァルカ」と呼びます)になります。下のポットにはお湯が入っています。上のポットから濃いお茶を適当に注いだら、下の大きなポットにあるお湯で好きな濃さに薄めるのです。
有名なロシアの2段式のポットを製造したのは、有名なグジェリ陶器メーカー、クズネツォフの工場がつくったもの。現在でも、このタイプのポットを買うことができます(写真は、デュレフスキー社のもの)。
有名なロシアの2段式のポットを製造したのは、有名なグジェリ陶器メーカー、クズネツォフの工場がつくったもの。現在でも、このタイプのポットを買うことができます(写真は、デュレフスキー社のもの)。
サモワールが登場した理由
紅茶の人気が高まり、ザヴァルカの習慣が定着し、2段式のティーポットの発明を経て、サモワールが生まれました。そして、時が経つにつれて、サモワールがロシアのティータイムの象徴になりました。通常、お茶を淹れるポットはサモワールの「冠」と呼ばれる上部に置かれており、中の茶葉は下のポットから上がる蒸気で蒸す仕組みになっています。
今の時代は?
「ロシア人は今でもサモワールを使って紅茶を飲んでいるの?」ときかれたら、答えはイエスとノーの両方になります。サモワールを買うことがあるとすれば、それはダーチャに持っていくため。ダーチャとは、都会の喧騒を離れて週末や夏のひとときを過ごすための郊外の別荘です。ダーチャで過ごすゆったりとした時間には、毎回30分かけてお茶を準備するのも素敵です。でも、都会の日常生活では、今やありえないことなのです。
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伝統的な刺繍をデザインのモチーフにした、モスクワ近郊のサマーハウス
紅茶の人気が高まり、ザヴァルカの習慣が定着し、2段式のティーポットの発明を経て、サモワールが生まれました。そして、時が経つにつれて、サモワールがロシアのティータイムの象徴になりました。通常、お茶を淹れるポットはサモワールの「冠」と呼ばれる上部に置かれており、中の茶葉は下のポットから上がる蒸気で蒸す仕組みになっています。
今の時代は?
「ロシア人は今でもサモワールを使って紅茶を飲んでいるの?」ときかれたら、答えはイエスとノーの両方になります。サモワールを買うことがあるとすれば、それはダーチャに持っていくため。ダーチャとは、都会の喧騒を離れて週末や夏のひとときを過ごすための郊外の別荘です。ダーチャで過ごすゆったりとした時間には、毎回30分かけてお茶を準備するのも素敵です。でも、都会の日常生活では、今やありえないことなのです。
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紅茶グラスホルダー
「ポドスタカンニキ」と呼ばれる紅茶グラスホルダーの使用がロシアの家庭で広がったのは、17世紀の終わりからから19世紀初頭にかけてのこと。ロシア軍のコーカサス侵攻とともに、東方からもたらされました。この時代、陶磁器はとても高価だったため、居酒屋では安価なグラスが使われており、指や手のやけどを防ぐためにグラスホルダーが使われるようになりました。当時、グラスホルダーを使って紅茶を飲んだのは男性だけで、ラムなどのアルコールを加えて飲んでいました。
「ポドスタカンニキ」と呼ばれる紅茶グラスホルダーの使用がロシアの家庭で広がったのは、17世紀の終わりからから19世紀初頭にかけてのこと。ロシア軍のコーカサス侵攻とともに、東方からもたらされました。この時代、陶磁器はとても高価だったため、居酒屋では安価なグラスが使われており、指や手のやけどを防ぐためにグラスホルダーが使われるようになりました。当時、グラスホルダーを使って紅茶を飲んだのは男性だけで、ラムなどのアルコールを加えて飲んでいました。
ロシアンティーとレモン
居酒屋を発祥とするもう1つの伝統が、レモンと一緒に紅茶を飲むこと。19世紀には、交通・輸送手段といえば馬車と荷馬車であり、旅は数日にわたりました。馬車旅では、旅人の多くは揺れに酔ってしまい、食欲をなくしてしまいます。気分の悪さを解消するために、停車場では、キャベツやキュウリの漬物やレモンスライスなど、酸味や塩味のあるものを出す店やスタンドがありました。後には、レモンスライスをグラスの端に挿して出すようになります。この伝統は今でも続いており、ロシア人が「ロシア風紅茶」といえば、このスタイルのレモンティーを指します。
「それに、ロシア人は紅茶に添えたレモンを食べるという習慣があります。宇宙飛行士のユーリ・ガガーリンがエリザベス女王のレセプションに招かれたとき、レモンティーのレモンを食べてしまったのですが、それを見た女王も自分のレモンを食べて礼をつくした、という逸話もあります」とハウズユーザーのナディア・ヴォロべヴァさん。
居酒屋を発祥とするもう1つの伝統が、レモンと一緒に紅茶を飲むこと。19世紀には、交通・輸送手段といえば馬車と荷馬車であり、旅は数日にわたりました。馬車旅では、旅人の多くは揺れに酔ってしまい、食欲をなくしてしまいます。気分の悪さを解消するために、停車場では、キャベツやキュウリの漬物やレモンスライスなど、酸味や塩味のあるものを出す店やスタンドがありました。後には、レモンスライスをグラスの端に挿して出すようになります。この伝統は今でも続いており、ロシア人が「ロシア風紅茶」といえば、このスタイルのレモンティーを指します。
「それに、ロシア人は紅茶に添えたレモンを食べるという習慣があります。宇宙飛行士のユーリ・ガガーリンがエリザベス女王のレセプションに招かれたとき、レモンティーのレモンを食べてしまったのですが、それを見た女王も自分のレモンを食べて礼をつくした、という逸話もあります」とハウズユーザーのナディア・ヴォロべヴァさん。
「バーバ・ナ・チャイニク」
これはポットをあたためるカバーのこと。かぶせておくと、ポットのお湯が冷めにくくなります。
昔はディズニー映画に出てくるプリンセスの人形みたいなデザインで、スカートの中でポットをあたためるタイプのものが使われていましたが、後に、写真のようにポットに「着せる」タイプに変わっていきました。
「ロシアの国立研究大学の低温科学学科で、紅茶の適切な淹れ方を説明してもらったことがあります。重要なのは、紅茶の葉を沸騰したお湯にしばらく入れておくということ。ザヴァルカを使うとき、最初に沸騰したお湯をポットに注ぐのはそのためです(ポットにはあらかじめキルトや布製のカバーをつけておくこと)。ポットの肌をあたためたら、そのお湯は捨て、紅茶の葉を入れて、あらためて沸騰したお湯を注ぎます。そうすれば、紅茶のもつあらゆる風味を引き出すことができます。すばらしい風味になりますよ」と話してくれたのは、ハウズユーザーのshpindelmanさんだ。
これはポットをあたためるカバーのこと。かぶせておくと、ポットのお湯が冷めにくくなります。
昔はディズニー映画に出てくるプリンセスの人形みたいなデザインで、スカートの中でポットをあたためるタイプのものが使われていましたが、後に、写真のようにポットに「着せる」タイプに変わっていきました。
「ロシアの国立研究大学の低温科学学科で、紅茶の適切な淹れ方を説明してもらったことがあります。重要なのは、紅茶の葉を沸騰したお湯にしばらく入れておくということ。ザヴァルカを使うとき、最初に沸騰したお湯をポットに注ぐのはそのためです(ポットにはあらかじめキルトや布製のカバーをつけておくこと)。ポットの肌をあたためたら、そのお湯は捨て、紅茶の葉を入れて、あらためて沸騰したお湯を注ぎます。そうすれば、紅茶のもつあらゆる風味を引き出すことができます。すばらしい風味になりますよ」と話してくれたのは、ハウズユーザーのshpindelmanさんだ。
カザフ風の飲み方
一方、ハウズユーザーのヴァレンチーナ・プルカツチェヴァさんは別の淹れ方がお気に入りだ。「私はカザフ風に淹れます。金属製のポットを沸騰したお湯ですすいで温め、紅茶の葉を入れ、あらためて沸騰したお湯を入れて、それを火にかけます。お茶はお湯の表面に浮いています。お茶は沸騰する手前ぎりぎりの火加減で煮出し、できあがったら、カップに注いで3杯は続けて飲みますね。私はクリームを入れて飲むのが好き。カップにクリームを入れ、その上にお茶を注ぎます。お湯やお水で薄めることは絶対にしません。別の淹れ方としては、紅茶の葉をお湯で煮出します。ティーポットにはお湯は半分しか入れません。お茶を煮出したら、水を足して、そのまま少し置いておきます。味がなじんだら飲みます。」
一方、ハウズユーザーのヴァレンチーナ・プルカツチェヴァさんは別の淹れ方がお気に入りだ。「私はカザフ風に淹れます。金属製のポットを沸騰したお湯ですすいで温め、紅茶の葉を入れ、あらためて沸騰したお湯を入れて、それを火にかけます。お茶はお湯の表面に浮いています。お茶は沸騰する手前ぎりぎりの火加減で煮出し、できあがったら、カップに注いで3杯は続けて飲みますね。私はクリームを入れて飲むのが好き。カップにクリームを入れ、その上にお茶を注ぎます。お湯やお水で薄めることは絶対にしません。別の淹れ方としては、紅茶の葉をお湯で煮出します。ティーポットにはお湯は半分しか入れません。お茶を煮出したら、水を足して、そのまま少し置いておきます。味がなじんだら飲みます。」
ソ連時代の紅茶文化
1917年のソビエト革命以降も、ザヴァルカのティーポットと沸騰したお湯を使うロシアの商人階級のお茶の淹れ方は残りました。変わったことがあるとすれば、何時間もかけてお茶を飲むような時間はなくなったこと。その結果、朝にザヴァルカで淹れたお茶が夕方まで残っていることに。もちろん、家に帰ると残っていたお茶は捨てて、あらたに淹れ直す人もいました。
朝の残りのお茶をお湯で薄めて飲む人もいました。海外に亡命した人たちは、朝の残りを夜に薄めて飲むという習慣こそ、ソビエト時代のひどい食糧不足を示す悪しき象徴だととらえていました。しかし、冷めた紅茶を飲む習慣は、とうの昔になくなりました。ロシアの本物の紅茶好きは、さまざまな紅茶の葉、淹れ方を楽しみ、風味を味わっています。朝食のサンドイッチの消化を促してくれる飲み物であるということ以上に、お茶は大切な文化なのです。
1917年のソビエト革命以降も、ザヴァルカのティーポットと沸騰したお湯を使うロシアの商人階級のお茶の淹れ方は残りました。変わったことがあるとすれば、何時間もかけてお茶を飲むような時間はなくなったこと。その結果、朝にザヴァルカで淹れたお茶が夕方まで残っていることに。もちろん、家に帰ると残っていたお茶は捨てて、あらたに淹れ直す人もいました。
朝の残りのお茶をお湯で薄めて飲む人もいました。海外に亡命した人たちは、朝の残りを夜に薄めて飲むという習慣こそ、ソビエト時代のひどい食糧不足を示す悪しき象徴だととらえていました。しかし、冷めた紅茶を飲む習慣は、とうの昔になくなりました。ロシアの本物の紅茶好きは、さまざまな紅茶の葉、淹れ方を楽しみ、風味を味わっています。朝食のサンドイッチの消化を促してくれる飲み物であるということ以上に、お茶は大切な文化なのです。
お茶には「甘いもの」を――ロシアのお茶のおもてなし
ヨーロッパやアメリカでは、お客様に玄関口で食べ物をすすめることはあまりないと思います。でもロシアでは、おかしなことではありません。「お客様が来たらすぐにお茶と甘いお菓子をお出ししないなんて、考えられません。とても素敵であたたかいおもてなしの習慣ですよね」と話すのは、ハウズユーザーのエレナさんです。ヴィクトリア・ジョヴネルさんも同感だそう。「ロシアの紅茶文化のいちばん重要な特徴は、おもてなしと会話です。」
海外でロシア人の家庭に招かれたら、ワインよりも「ティータイム用のチョコレート」。これがいちばんおすすめの手土産です。チョコレート以外にも、ビスケットやゼフィール(写真に写っている、ロシアの大きなマシュマロ)、ハルヴァ、ケーキ、甘いペストリーも喜ばれます。「お茶には甘いものを添えて」は、ロシア人にとっては当たり前なのです。
ヨーロッパやアメリカでは、お客様に玄関口で食べ物をすすめることはあまりないと思います。でもロシアでは、おかしなことではありません。「お客様が来たらすぐにお茶と甘いお菓子をお出ししないなんて、考えられません。とても素敵であたたかいおもてなしの習慣ですよね」と話すのは、ハウズユーザーのエレナさんです。ヴィクトリア・ジョヴネルさんも同感だそう。「ロシアの紅茶文化のいちばん重要な特徴は、おもてなしと会話です。」
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紅茶と「キッチンコンサート」
19世紀には、中流階級の間では、貴族や富裕な商人階級の文化へのあこがれから、お茶を飲みながらロシア・ロマンスとよばれるギター伴奏の叙情的な歌を楽しむ文化が生まれました。後にこれが、「サミスダート」と呼ばれる読書会やクヴァルチールニキと呼ばれる文化へとつながります。サミスダートとは、体制から発行を禁じられた本を手で複製し、人づてに流通されていった「地下出版」を指す言葉で、そうした本を仲間内で読む読書会を意味する言葉でもありました。クヴァルチールニキとは、文字通りには「室内音楽家」という意味で、やはりソ連時代に地下活動をせざるを得なかった反体制ミュージシャンや、彼らが地下出版したレコードをみんなで聞く秘密音楽会(ライブが行われることもある)を指す言葉になりました。キッチンで開かれる秘密の読書会やライブでも、傍らにはお茶がありました。
今の時代は?
現在でも、ロシアでは家族が集ったり、ゲストを招いて最近のニュースや出来事を語り合う場所は、リビングではなくキッチンです。すばらしいディナーを食べ、たっぷりとアルコールを楽しんだとしても、いちばん親密な会話や議論は、常に美味しい紅茶を片手に交わされるものなのです。
19世紀には、中流階級の間では、貴族や富裕な商人階級の文化へのあこがれから、お茶を飲みながらロシア・ロマンスとよばれるギター伴奏の叙情的な歌を楽しむ文化が生まれました。後にこれが、「サミスダート」と呼ばれる読書会やクヴァルチールニキと呼ばれる文化へとつながります。サミスダートとは、体制から発行を禁じられた本を手で複製し、人づてに流通されていった「地下出版」を指す言葉で、そうした本を仲間内で読む読書会を意味する言葉でもありました。クヴァルチールニキとは、文字通りには「室内音楽家」という意味で、やはりソ連時代に地下活動をせざるを得なかった反体制ミュージシャンや、彼らが地下出版したレコードをみんなで聞く秘密音楽会(ライブが行われることもある)を指す言葉になりました。キッチンで開かれる秘密の読書会やライブでも、傍らにはお茶がありました。
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ティーバッグよりもストレーナー
お茶を淹れる時間を短縮できるティーバッグは、世界に大きく遅れをとってソ連に導入されました。最初に導入したのは航空会社のアエロフロートで、1960年代のこと。一般家庭の手に届いたのはさらに遅く、ペレストロイカのころ(1980年代後半)になってのこと。そんなわけで、1人分のお茶を飲みたいとき、ロシア人はストレーナーを使っていました。
一日の終りにお茶を楽しむとき、ティーバッグとストレーナーのどちらを選ぶかというと、それは個人の好みです。夜に飲むお茶は、自分のためのお茶。でも、ティーバッグを選ぶ人たちも、それぞれに自分なりの淹れ方があります。なぜなら、ロシアでは、紅茶は単なる飲み物ではなくて、お茶を飲む行為そのものが、一つの儀式になっているからです。
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いかがでしたか? ご感想をおきかせください。
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