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世界の暮らしとデザイン:家族の歴史を紡ぐ美しきロシアの別荘、ダーチャ
祖母や祖父から受け継いだ家具やインテリア小物を大切に使いながら、歴史と新しさの両方を感じさせる美しいロシアのダーチャ(セカンドハウス)をご紹介します。
Евгения Назарова
2016年10月16日
モスクワでデザイナーとして働くイリナ・ラブレンティエワさん夫妻は、夏と週末を過ごすための小さなダーチャ(別荘)を3年前に購入した。モスクワ郊外での田舎暮らしのために作られた家で、サイディングボードで仕上げたごく普通の建物だった。少しだけ手を加えるつもりだったのだが、いったん改装作業を始めてみると、ラブレンティエワさんはだんだん夢中になってしまった。そこで計画を変更し、プロジェクト規模を拡大。サイディングボードをはがして木に張り替え、基礎と屋根裏に断熱加工を施し、インテリアも一新した。
家族から受け継いだ黒い戸棚に、祖父が使っていた黒い椅子。ラブレンティエワさんのインテリアには、いろいろなところに家族の歴史がちりばめられている。「ウリヤノフスクにあったおばあちゃんの田舎の家で夏を過ごすのが大好きだったんです。木彫り細工をする家具職人がたくさんいるところで、どの家にも彫刻を施した家具がありましたね。これもみんな、おばあちゃんの家にあったものなんです。子どものころから見ていた記憶があるから、とても愛着がわいて、こんなにたくさん持って来てしまいました」とラブレンティエワさんは言う。
ダーチャについてはこちらもあわせて
世界のHouzzから:ロシアの小さなセカンドハウス、「ダーチャ」の世界
家族から受け継いだ黒い戸棚に、祖父が使っていた黒い椅子。ラブレンティエワさんのインテリアには、いろいろなところに家族の歴史がちりばめられている。「ウリヤノフスクにあったおばあちゃんの田舎の家で夏を過ごすのが大好きだったんです。木彫り細工をする家具職人がたくさんいるところで、どの家にも彫刻を施した家具がありましたね。これもみんな、おばあちゃんの家にあったものなんです。子どものころから見ていた記憶があるから、とても愛着がわいて、こんなにたくさん持って来てしまいました」とラブレンティエワさんは言う。
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写真:Sergey Ananiev
どんなHouzz?
住まい手:イリナ・ラブレンティエワさん一家
所在地:モスクワ地域
規模:延床面積88平方メートル
設計:〈ラブカデザイン〉のイリナ・ラブレンティエワとアナスタシア・カメンスキー
時間に迫られることもなく、リノベーション工事には2年間を費やした。自分の家族のために設計するという仕事には、たくさんのプラス面があったようだ。「自分のなかで葛藤もなかったし、夫はデザインに関して私にすべて任せてくれました。本当は気になっていたようですが…」とラブレンティエワさんは言う。「スタイルの基本は『おばあちゃんち』なのですが、実際に住む私たちは現代人ですから、歴史を受け継ぐダーチャ、という雰囲気になりました」。
どんなHouzz?
住まい手:イリナ・ラブレンティエワさん一家
所在地:モスクワ地域
規模:延床面積88平方メートル
設計:〈ラブカデザイン〉のイリナ・ラブレンティエワとアナスタシア・カメンスキー
時間に迫られることもなく、リノベーション工事には2年間を費やした。自分の家族のために設計するという仕事には、たくさんのプラス面があったようだ。「自分のなかで葛藤もなかったし、夫はデザインに関して私にすべて任せてくれました。本当は気になっていたようですが…」とラブレンティエワさんは言う。「スタイルの基本は『おばあちゃんち』なのですが、実際に住む私たちは現代人ですから、歴史を受け継ぐダーチャ、という雰囲気になりました」。
デザインには、〈ラブカデザイン〉のパートナー、アナスタシア・カメンスキーさんと共同で取り組んだ。オリジナルの階段は残し、幅を広げて鮮やかな緑色にペイントした。「階段の下に収納を作りつけることも可能だったんですが、家の広さが限られているので、余白スペースを残したかったんです」とラブレンティエワさんは言う。そこで、階段の下はそのままにしてヴィンテージのスーツケースを置いた。このスーツケースと1960年代のアームチェアは、フリーマーケットで見つけたものだ。
小さい家のため、リビングルームのほか、ほとんどの部屋は扉で仕切っていない。1階の壁と天井の板材には、半透明の白い仕上げ塗装を施した。天井高は2.4メートルほどしかないが、この仕上げのおかげで縦と横の面の境界線が曖昧になり、天井の圧迫感を感じさせない。左に見える鋳鉄製のヒーターは、以前のオーナーが残していったもので、目立つ傷をカバーする程度に少しだけ手を加えた。
フローリングを塗装していたオリジナルの床は、ラーチ材の床に取り換えた。温かく心地良いダーチャの雰囲気に合わせ、リビングには小さな暖炉を設置。暖炉の下には、アンティークの鋳鉄製の台が敷かれている。このエリアの壁には、御影石のタイルをパッチワークのように並べている。
家族から受け継いだ品々のなかに混じっているのは、世界各地で見つけてきたヴィンテージアイテムだ。ダークな無垢材のチェストの上には、〈エタジェルカ〉で買ったイギリス製の古いラジオが載っている。古い地図は、ラブレンティエワさんがドイツで買ったものだ。彫刻の施された椅子は、ラブレンティエワさんの祖父のものだった。
キッチンには、ベランダに出られるガラスのドアを取り付け、特注した壁付きキャビネットを設置。おばあちゃんから受け継いだ黒い戸棚もある。織物で有名なロシアの町、イヴァノヴォで作られたかぎ針編みのテーブルクロスとリネンのカーテンが、昔ながらのダーチャの雰囲気を醸し出している。カーテンは、イヴァノヴォ産のテーブルクロスをアレンジしたものだ。
「私が子どもの頃に感じたものを、息子たちにも感じてもらいたいんです」とラブレンティエワさんは言う。「田舎の家に行くと必ず、壁に小さい家族の写真をたくさん並べて作ったフォトギャラリーコーナーがありました。私は自分の家でも他人の家でも、その写真を見るのが大好きだったので、このダーチャにも取り入れることにしたんです。」
どれも、かなり昔に現像されたオリジナルの写真だ。いちばん古いものは1928年にさかのぼる。
どれも、かなり昔に現像されたオリジナルの写真だ。いちばん古いものは1928年にさかのぼる。
仕事部屋には、ゲスト用のベッドも用意されている。〈IKEA〉の製品だが、オリジナリティを出し、鮮やかな色を部屋のアクセントにするため、ラブレンティエワさんがブルーにペイントして使い込まれたような風合いに加工した。〈ZARA HOME〉の美しいカーペットをベッド上の壁に飾り、コンテンポラリーな雰囲気に仕上げている。
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仕事部屋の窓まわりにも、テーブルクロスをカーテンとして用いている。今回のテキスタイルは〈ザラ ホーム〉でぴったりの製品が見つかった。
ラブレンティエワさんが受け継いだ黒いテーブルも置かれている。「私が子どものころはダイニングテーブルとして使っていて、この周りに家族みんなが集まっていました。当時はすごく大きなテーブルに見えていたので、この家でもキッチンで使おうと考えていたんです。でもウリヤノフスクから持って来てみると、実際はかなり小さいことが分かり、代わりに仕事部屋で使うことにしました。どうやってこの周りに家族全員が座っていたのか、今でも不思議ですね」とラブレンティエワさんは振り返る。
アンティークの黒いサイドテーブルは、ラブレンティエワさんとカメンスキーさんが、あるクライアント向けのプロジェクトのためにインドで購入したもの。しばらくの間は、同じくインドで買ったもう1つのテーブルといっしょに使用されていたのだが、その後クライアントが別の家具に買い替えることになり、オリジナルのテーブルをデザイナーの2人に1つずつプレゼントしてくれたのだ。
ラブレンティエワさんが受け継いだ黒いテーブルも置かれている。「私が子どものころはダイニングテーブルとして使っていて、この周りに家族みんなが集まっていました。当時はすごく大きなテーブルに見えていたので、この家でもキッチンで使おうと考えていたんです。でもウリヤノフスクから持って来てみると、実際はかなり小さいことが分かり、代わりに仕事部屋で使うことにしました。どうやってこの周りに家族全員が座っていたのか、今でも不思議ですね」とラブレンティエワさんは振り返る。
アンティークの黒いサイドテーブルは、ラブレンティエワさんとカメンスキーさんが、あるクライアント向けのプロジェクトのためにインドで購入したもの。しばらくの間は、同じくインドで買ったもう1つのテーブルといっしょに使用されていたのだが、その後クライアントが別の家具に買い替えることになり、オリジナルのテーブルをデザイナーの2人に1つずつプレゼントしてくれたのだ。
ヴィンテージのグジェリ陶器コレクションは、夫の母親から受け継いだもの。ラブレンティエワさんが白くペイントした古い棚に飾られている。「新しいものは1つもありません。本物のソビエト時代のグジェリなんです。」
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この家は収納スペースが比較的少ない。「ダーチャは、1年中訪れることを想定した別荘ではないので、それほど収納は必要ないんです」とラブレンティエワさんは言う。オーク材のチェストはイギリスのフリーマーケットで手に入れたもので、ヴィンテージの椅子は道端で見つけた。
息子たちのベッドルームの色づかいは、サーモンピンクとブルーを選んだ。
テーブルと照明:〈イケア〉
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設計を手がけたラブレンティエワさん(右)とカメンスキーさんは、共同で設計事務所を営んでいる。
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