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My Houzz:住む人の気持ちを豊かに変える。築54年の家が教えてくれたこと
この家なら、きっと自分たちらしく暮らせるーーそう感じた住まい手が選んだのは、 タイムスリップしたかのような風情漂う、昭和の古い日本家屋でした。
池袋からほど近い場所ながら、夏目漱石、竹久夢二などが眠る霊園や鬼子母神などの寺社も多く、今まだ古い町並みを残す静かな住宅地、雑司ヶ谷。〈らいおん建築事務所〉を主宰する嶋田洋平さんとカフェを経営する玲子さんご夫妻は、職住近接を求めて以前からこの界隈で暮らしてきた。
結婚、出産、子育て、子供の独立など、家族の状況に応じて家を住み替えていくべきという考えから、賃貸派の洋平さん。これまでもライフスタイルの変化に合わせて物件を選んできた。ここに来る前に暮らしていた物件は、夫妻の仕事場から歩いてすぐの、広さ70平方メートル以上あるマンション。築浅で設備も整っていたが、ごくありふれた分譲賃貸マンションだった。
「僕は仕事で空き家をリノベーションして賃貸の提案をしたり、古いビルの再生事業を手がけたりしているので、ありきたりなマンションでの暮らしに、ずっと違和感がありました」という洋平さん。そんなある日、間取りを見るのが好きな玲子さんがたまたまインターネットで見つけたのが、昔ながらの路地に立つ、昭和の風情漂う木造住宅だった。
「自分たちの世界観に合う家、自分たちらしい家を探してきた僕たちにとって、『ここだ!』と思える家でした」と洋平さん。家族4人で住み始めてまだ5か月だが、この家の不思議な魅力は家族のライフスタイルにさまざまなよい変化をもたらしているという。
どんなHouzz?
住まい手:30代と40代の夫婦+子ども2人
所在地:東京都豊島区
規模:延床面積120平方メートル
間取り:7DK+1K
建物の竣工:1962年
結婚、出産、子育て、子供の独立など、家族の状況に応じて家を住み替えていくべきという考えから、賃貸派の洋平さん。これまでもライフスタイルの変化に合わせて物件を選んできた。ここに来る前に暮らしていた物件は、夫妻の仕事場から歩いてすぐの、広さ70平方メートル以上あるマンション。築浅で設備も整っていたが、ごくありふれた分譲賃貸マンションだった。
「僕は仕事で空き家をリノベーションして賃貸の提案をしたり、古いビルの再生事業を手がけたりしているので、ありきたりなマンションでの暮らしに、ずっと違和感がありました」という洋平さん。そんなある日、間取りを見るのが好きな玲子さんがたまたまインターネットで見つけたのが、昔ながらの路地に立つ、昭和の風情漂う木造住宅だった。
「自分たちの世界観に合う家、自分たちらしい家を探してきた僕たちにとって、『ここだ!』と思える家でした」と洋平さん。家族4人で住み始めてまだ5か月だが、この家の不思議な魅力は家族のライフスタイルにさまざまなよい変化をもたらしているという。
どんなHouzz?
住まい手:30代と40代の夫婦+子ども2人
所在地:東京都豊島区
規模:延床面積120平方メートル
間取り:7DK+1K
建物の竣工:1962年
引き戸を開けると、広い三和土が現れる玄関。2階にもキッチンがあるように、かつては多人数で住んでいた家だということが想像できる。写真の左手、壁の幅いっぱい、下半分を覆う木製の引き戸の内側は、造りつけの靴箱になっており、家族4人の靴を余裕で収納できる。
正面に飾られているのは、洋平さんが主宰する〈らいおん建築事務所〉のシンボルマーク。
正面に飾られているのは、洋平さんが主宰する〈らいおん建築事務所〉のシンボルマーク。
1階には6畳と8畳の和室、キッチンと3畳の洋室がある。
写真は、居間として使われている8畳間から、縁側越しに見える庭の眺め。古い日本家屋にしては天井が高く、目に入る緑とも相まって気持ちの良い空間だ。欄間の意匠も部屋ごとに異なる。「風通しが良いからか、床下の腐食などもなく、古い家にありがちな “朽ちた” 感じがなかったのも、この家に住むと決めた理由です」と洋平さんは言う。
湿度によって雨戸の立て付けが悪くなったり、蜘蛛が出たりと古い家ならではのこともあるが、それも自然の摂理。「きれいなマンションだと虫を見ることもないので、子供たちにとってもこういうところに住む時期があっていいと思っています」と、玲子さんもここでの生活を楽しんでいる。
写真は、居間として使われている8畳間から、縁側越しに見える庭の眺め。古い日本家屋にしては天井が高く、目に入る緑とも相まって気持ちの良い空間だ。欄間の意匠も部屋ごとに異なる。「風通しが良いからか、床下の腐食などもなく、古い家にありがちな “朽ちた” 感じがなかったのも、この家に住むと決めた理由です」と洋平さんは言う。
湿度によって雨戸の立て付けが悪くなったり、蜘蛛が出たりと古い家ならではのこともあるが、それも自然の摂理。「きれいなマンションだと虫を見ることもないので、子供たちにとってもこういうところに住む時期があっていいと思っています」と、玲子さんもここでの生活を楽しんでいる。
8畳間の床の間には、ゴッホの絵のレプリカと、葉山の海岸で拾った流木を飾っている。床の間横の違い棚には、アンティークショップや玲子さんが経営するカフェで行なわれるマルシェで見つけた、小引き出しや文箱を置いている。
「この家に引っ越しすると決めてから、特に和のものが気になるように」と言うのは玲子さん。「もともと家具や雑貨をみるのは好きだったんですが、いいなと思うものに出会っても、今のマンションじゃ…と消極的だったんです。でもこの家に住むようになってからは、この器はどこに飾ろうかと考えるだけでも楽しくなりました。この家をベースに興味も可能性も広がった感じがします。」
「この家に引っ越しすると決めてから、特に和のものが気になるように」と言うのは玲子さん。「もともと家具や雑貨をみるのは好きだったんですが、いいなと思うものに出会っても、今のマンションじゃ…と消極的だったんです。でもこの家に住むようになってからは、この器はどこに飾ろうかと考えるだけでも楽しくなりました。この家をベースに興味も可能性も広がった感じがします。」
玄関の横にある庭は、2つ前の写真で8畳間から見通していた庭だ。ここに引っ越してきてから、グリーンを育てるようになったという洋平さん。縁側の前にはたくさんの鉢が並ぶ。「ここに住むようになってから、不思議と意識や嗜好性も変わってきました。食事でも野菜をよく食べるようになりましたね。(笑)」
8畳間に隣接する6畳間。すりガラスから注ぐ光が優しいガラス戸も、昔のままだ。キッチンにも隣接しているので、長女で小学生の仁胡(にこ)ちゃんは、料理を作る母の玲子さんの姿を見ながら、ここで宿題をすることも多い。
テーブルは友人の農家から譲ってもらったリンゴ箱に板を乗せただけのシンプルなもので、移動も簡単だ。柳宗理《バタフライスツール》、ヴァーナー・パントンの《パントンチェア》などのデザイン家具もシンプルな和室になじんでいる。
テーブルは友人の農家から譲ってもらったリンゴ箱に板を乗せただけのシンプルなもので、移動も簡単だ。柳宗理《バタフライスツール》、ヴァーナー・パントンの《パントンチェア》などのデザイン家具もシンプルな和室になじんでいる。
キッチンでは、以前のマンションでも使用していた、アイランド型の作業台が活躍。洋平さんの知り合いの家具店に作成してもらったオリジナルだ。キッチンの左右の壁にも造りつけの天袋や棚などたくさんの収納スペースが。
キッチンの隣の3畳の洋室は、冷蔵庫や食器、毎年作る梅シロップなどを置くスペースに。食器棚は、アンティークの幼稚園の靴箱で、古道具を扱う友人から「この家にぴったり」と勧められて購入した。〈アラビア〉や〈ダンスク〉、旅行先で見つけた作家の器など、ともに器好きなご夫妻が集めてきたお気に入りが並ぶ。
「今までは重ねたり前後2列に並べて収納していたせいか、結局使うのは手前にある同じ食器ばかりだったんです。でも、こうやって並べると、どこに何があるかわかり取りやすくなるので、毎日の食事のお皿選びも楽しくなりました」と玲子さんは話す。
「今までは重ねたり前後2列に並べて収納していたせいか、結局使うのは手前にある同じ食器ばかりだったんです。でも、こうやって並べると、どこに何があるかわかり取りやすくなるので、毎日の食事のお皿選びも楽しくなりました」と玲子さんは話す。
この家は、もともと上下階の2世帯で住んでいたらしく、2階にも小さなキッチンとトイレがある。現在2階にある4つの部屋は、夫妻の寝室、子供部屋、奥様の玲子さんの部屋、洋平さんの「趣味の部屋」として使用。
写真は洋平さんの「趣味の部屋」。この家に来てから育て始めた植物がたくさん並ぶ。「日に当てた方が良いものもあれば、窓から少し離した方が元気に育つものもある。そんな植物の個性を知れば知るほど、育てるのが楽しくなりました。」
DVDを入れているガラス棚は、この部屋にもともとあったもの。棚の上に飾っている、白いパネルにさまざまな文字が描かれたアート作品は、友人のアーティスト、松田友望さんによるもの。棚の前に置かれているイラスト作品は、やはり友人でイラストレーターの鶴丸のどかさんが洋平さんの顔をモチーフにして描いた作品。
写真は洋平さんの「趣味の部屋」。この家に来てから育て始めた植物がたくさん並ぶ。「日に当てた方が良いものもあれば、窓から少し離した方が元気に育つものもある。そんな植物の個性を知れば知るほど、育てるのが楽しくなりました。」
DVDを入れているガラス棚は、この部屋にもともとあったもの。棚の上に飾っている、白いパネルにさまざまな文字が描かれたアート作品は、友人のアーティスト、松田友望さんによるもの。棚の前に置かれているイラスト作品は、やはり友人でイラストレーターの鶴丸のどかさんが洋平さんの顔をモチーフにして描いた作品。
2面の窓から光が入る、明るい子供部屋。娘さんふたりで仲良く使っている。畳が敷かれている造りつけのベッドは、かつての押入れのスペースに造られたようだ。枕もとの小窓を開けて、隣家にやってくる猫を見るのが仁胡ちゃんの楽しみだとか。
改めて湧く植物への興味や、家を自分好みのもので飾る喜び。そして玄関の引き戸を開ける音とともに聞こえるたくさんの子供たちの笑い声。
「空間が暮らしに与える影響というものを、ここに住んで実感しています。設計をしながらも、そこで行われる暮らしにまで踏み込んで考えているか、自分にとって今一度考える機会にもなりました」と、この家に来てからの意識の変化を語る洋平さん。
家の価値は新しさや利便性だけではない。“自分たちらしい”と思える空間が、家族の気持ちを豊かに変える。いくつもの家族の時間を育んできたこの家が、そのことを教えてくれたのかもしれない。
「空間が暮らしに与える影響というものを、ここに住んで実感しています。設計をしながらも、そこで行われる暮らしにまで踏み込んで考えているか、自分にとって今一度考える機会にもなりました」と、この家に来てからの意識の変化を語る洋平さん。
家の価値は新しさや利便性だけではない。“自分たちらしい”と思える空間が、家族の気持ちを豊かに変える。いくつもの家族の時間を育んできたこの家が、そのことを教えてくれたのかもしれない。
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