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繊細な青の模様が織りなす美:中国陶器「青花」の世界
白地に繊細な青い模様が舞う中国陶器「青花」の歴史。欧米にもコレクターの多いこの美しい陶磁器の歴史をご紹介します。
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2016年9月28日
古来の伝統を脈々と受け継ぐ中国の陶磁器は、優れた品質で有名ですが、なかでも明朝に発展した「青花」と呼ばれる青い文様入りのものはよく知られています。この時代、上海の南東にある景徳鎮の町が、陶磁器の中心的な産地として世界にその名を轟かせました。今でも景徳鎮は陶磁器の都であるとされています。数多くの探検者たちによってヨーロッパに輸入された磁器は、15世紀以降発展を遂げ、20世紀に至るまで人々を魅了し続けました。
磁器とは?
磁器とはテラコッタ(素焼き)や炻器と同じ陶磁器ですが、組成や含有鉱物成分の割合によって区別されます。磁器は炻器のひとつであり、カオリン、長石と水晶から出来ています。カオリンは白色の粘土で主に景徳鎮の北部にある高嶺(カオリン)の丘で採掘されるものです。カオリンと長石が磁器の主要な成分です。
磁器とはテラコッタ(素焼き)や炻器と同じ陶磁器ですが、組成や含有鉱物成分の割合によって区別されます。磁器は炻器のひとつであり、カオリン、長石と水晶から出来ています。カオリンは白色の粘土で主に景徳鎮の北部にある高嶺(カオリン)の丘で採掘されるものです。カオリンと長石が磁器の主要な成分です。
基本的な製造工程
磁器は長く緻密な工程を経て作られます。ここではその工程の大まかな流れをご紹介します。まず素地を鋳型へ流し込んだり、ろくろを使ったりして成型します。乾燥させた後、1回目の焼成を行います(1000度以下)。この段階ではまだ脆く多孔質な器ですが、そこに釉薬をかけて2回目の焼成を行い(1200度から1300度の間、カオリンの割合が高い磁器の場合は1400度まで)、最後に絵付けをします。
磁器は長く緻密な工程を経て作られます。ここではその工程の大まかな流れをご紹介します。まず素地を鋳型へ流し込んだり、ろくろを使ったりして成型します。乾燥させた後、1回目の焼成を行います(1000度以下)。この段階ではまだ脆く多孔質な器ですが、そこに釉薬をかけて2回目の焼成を行い(1200度から1300度の間、カオリンの割合が高い磁器の場合は1400度まで)、最後に絵付けをします。
陶磁器の始まり
中国の磁器は日本の磁器と並んで、最も古い磁器のひとつです。紀元前17,000年から16,000年の間にさかのぼる、旧石器時代の終わり頃に登場し、仰韶(ぎょうしょう)文化(紀元前4,500年から3,000年)とともに新石器時代に発展しました。仰韶文化の時代には多様な形の磁器が発達し、中には動物をかたどった模様や幾何学模様が描かれたものもありました。
中国の磁器は日本の磁器と並んで、最も古い磁器のひとつです。紀元前17,000年から16,000年の間にさかのぼる、旧石器時代の終わり頃に登場し、仰韶(ぎょうしょう)文化(紀元前4,500年から3,000年)とともに新石器時代に発展しました。仰韶文化の時代には多様な形の磁器が発達し、中には動物をかたどった模様や幾何学模様が描かれたものもありました。
陶磁器の発達
中国の長く豊かな歴史において、技術面はもとより美的な観点においても陶磁器が進化したのは、唐(618年-907年)、宋(960年-1279年)、元(1279年-1368年)、明(1368年-1644年)、そして清(1644年-1912年)という五大王朝の時代です。
中国の長く豊かな歴史において、技術面はもとより美的な観点においても陶磁器が進化したのは、唐(618年-907年)、宋(960年-1279年)、元(1279年-1368年)、明(1368年-1644年)、そして清(1644年-1912年)という五大王朝の時代です。
唐朝と邢州窯(しんしゅうよう)の白磁の誕生
唐朝には、磁器のさきがけとなる「邢州窯の白磁」と呼ばれる磁器が登場。主にティーポットや壺として使われた白く半透明な輝きの器は極めて洗練されており、当時の詩人たちが甘美な言葉で描写したのも頷ける魅力をたたえています。
唐朝には、磁器のさきがけとなる「邢州窯の白磁」と呼ばれる磁器が登場。主にティーポットや壺として使われた白く半透明な輝きの器は極めて洗練されており、当時の詩人たちが甘美な言葉で描写したのも頷ける魅力をたたえています。
青白(ちんぱい)
宋朝の時代に作られた「青白」や「影青」(いんちん)は中国南部発祥の陶磁器で、青みを帯びた白さが特徴です。繊細でありながら耐久性を備えた青白には、洗練された陰刻文様の装飾が施されていました。
宋朝の時代に作られた「青白」や「影青」(いんちん)は中国南部発祥の陶磁器で、青みを帯びた白さが特徴です。繊細でありながら耐久性を備えた青白には、洗練された陰刻文様の装飾が施されていました。
景徳鎮の磁器
元朝の時代になると景徳鎮の磁器、より広い意味では陶磁器が登場します。1319年から1336年の間に作られた「青花」が発見されたのもこの地でした。中近東の芸術に影響を受けた装飾は、自然や神話から生まれた模様をとりいれて、豪華で想像力にあふれるものになっていました。
元朝の時代になると景徳鎮の磁器、より広い意味では陶磁器が登場します。1319年から1336年の間に作られた「青花」が発見されたのもこの地でした。中近東の芸術に影響を受けた装飾は、自然や神話から生まれた模様をとりいれて、豪華で想像力にあふれるものになっていました。
明朝の「青花」磁器
しかし、「青花」の名声が真に広まったのは明朝時代です。それまでは磁器に使われていたコバルトは中東から輸入していました。ところがこの時代に、鮮やかさはやや欠けるものの、中国でもコバルトが発見されたのです。こうしてコバルトは洗練されていき、続く清朝の時代には最高級の品質に達しました。明朝時代末頃には、生産が増大したため、イランやインドネシア、日本、ヨーロッパへ輸出されるようになります。
しかし、「青花」の名声が真に広まったのは明朝時代です。それまでは磁器に使われていたコバルトは中東から輸入していました。ところがこの時代に、鮮やかさはやや欠けるものの、中国でもコバルトが発見されたのです。こうしてコバルトは洗練されていき、続く清朝の時代には最高級の品質に達しました。明朝時代末頃には、生産が増大したため、イランやインドネシア、日本、ヨーロッパへ輸出されるようになります。
磁器のさまざまな使い道
磁器は、食器のように毎日使う実用を目的としたものであり、多岐にわたる機能と便利さ、それに美しさも兼ね備えていました。また、磁器は装飾品であり、芸術家たちの創作意欲を大いにそそる芸術品でもありました。卓越した技術と目を見張るような絵付けは、当時の王朝の威光を引き立てるものでもあり、磁器は権力を象徴するオブジェとして時代に君臨したのです。
磁器は、食器のように毎日使う実用を目的としたものであり、多岐にわたる機能と便利さ、それに美しさも兼ね備えていました。また、磁器は装飾品であり、芸術家たちの創作意欲を大いにそそる芸術品でもありました。卓越した技術と目を見張るような絵付けは、当時の王朝の威光を引き立てるものでもあり、磁器は権力を象徴するオブジェとして時代に君臨したのです。
アジアやヨーロッパへの磁器の輸出
韓国では領土の一部を中国に統治されていたために、陶磁器が急速に発展します。同様に日本でも、陶磁器は8世紀に日本の朝廷へ輸入されます。ヨーロッパへは、マルコ・ポーロが8世紀にポルチェッラーナ(イタリア語でタカラ貝の意味)という呼び名で磁器をもたらします。15世紀になってようやく、バスコ・ダ・ガマによってインドへのルートが開かれると、極東とヨーロッパの定期的な貿易が行われるようになりました。
韓国では領土の一部を中国に統治されていたために、陶磁器が急速に発展します。同様に日本でも、陶磁器は8世紀に日本の朝廷へ輸入されます。ヨーロッパへは、マルコ・ポーロが8世紀にポルチェッラーナ(イタリア語でタカラ貝の意味)という呼び名で磁器をもたらします。15世紀になってようやく、バスコ・ダ・ガマによってインドへのルートが開かれると、極東とヨーロッパの定期的な貿易が行われるようになりました。
「シノワズリ」に魅せられて
18世紀になると、フランスでは、太陽王ルイ14世が作り上げたアジア風の豪華絢爛たる装飾やイエズス会の伝道師たちによる書簡の影響で、中国伝来の装飾芸術に目が向けられるようになります。ただし、「シノワズリ」とよばれる中国趣味のブームが最高潮に達したのは19世紀から20世紀初頭にかけてのこと。その素材に加え、技術や模様の豊かさに魅了された人々は、こぞって明朝や清朝の器を収集。現在でも、フランスの美術館の主要なコレクションとなっています。
18世紀になると、フランスでは、太陽王ルイ14世が作り上げたアジア風の豪華絢爛たる装飾やイエズス会の伝道師たちによる書簡の影響で、中国伝来の装飾芸術に目が向けられるようになります。ただし、「シノワズリ」とよばれる中国趣味のブームが最高潮に達したのは19世紀から20世紀初頭にかけてのこと。その素材に加え、技術や模様の豊かさに魅了された人々は、こぞって明朝や清朝の器を収集。現在でも、フランスの美術館の主要なコレクションとなっています。
真作か贋作か?
中国は複製の長い伝統をもち、王室自らが複製を奨励していました。先代たちの作風の「写し」(コピー)をつくらせる王朝もあったため、器の年代特定に混乱が起きることも、ときにはあるのです。「王朝刻印」が宋の時代に使われるようになり、その後明朝、清朝の時代に普及します。この刻印は現在でも使われています。王朝刻印は、ある作品や製品が作られた年代と王朝を刻印するためのものです。
中国は複製の長い伝統をもち、王室自らが複製を奨励していました。先代たちの作風の「写し」(コピー)をつくらせる王朝もあったため、器の年代特定に混乱が起きることも、ときにはあるのです。「王朝刻印」が宋の時代に使われるようになり、その後明朝、清朝の時代に普及します。この刻印は現在でも使われています。王朝刻印は、ある作品や製品が作られた年代と王朝を刻印するためのものです。
中国磁器はどこで手に入れる?
品質の確かな一品を手に入れるためには、古美術商を通して買うのがいちばんです。古美術商は専門家であり、歴史ある器を見分ける能力が最も高い人たちです。古美術商のもとにはコレクターがたくさん集まっているため、掘り出し物を見つけたければじっくりと時間をかける必要があります。資力と情熱があれば思い切ってオークションに参加するのもよいでしょう。しかしもっと安く手に入れる方法は、中華街へ行き、とびきりの安値で売っている食器店に入ってみましょう。本物の磁器がもつ洗練はないものの、日常づかいにはぴったりな美しい器が手軽に手に入ります。
もっと使いこなしたい、漆器とガラス器の組み合わせ
Houzzで住まいの専門家を探す
品質の確かな一品を手に入れるためには、古美術商を通して買うのがいちばんです。古美術商は専門家であり、歴史ある器を見分ける能力が最も高い人たちです。古美術商のもとにはコレクターがたくさん集まっているため、掘り出し物を見つけたければじっくりと時間をかける必要があります。資力と情熱があれば思い切ってオークションに参加するのもよいでしょう。しかしもっと安く手に入れる方法は、中華街へ行き、とびきりの安値で売っている食器店に入ってみましょう。本物の磁器がもつ洗練はないものの、日常づかいにはぴったりな美しい器が手軽に手に入ります。
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