中庭でかなえる「閉じながら開く」快適な暮らし
住宅が密集していて開放的な設計にできない場合にも、中庭をとりいれれば、内側に風や光があふれる快適な家をつくることが可能です。
小川のぞみ
2016年10月7日
ライター/ホームステージャー。日本・湘南エリアからアメリカ・カリフォルニア生活を経て、再び湘南エリアに在住(現在、高断熱・高気密の長期優良住宅に居住中)。カタログやメディアへのライティング、インテリアや整理収納のアドバイス、住宅購入相談やホームステージング(家具に関してのご相談やコーディネート)に取り組む。
ライター・コピーライター歴は10年以上。ウェブサイトや雑誌、ECサイトや通販誌、カタログや広告媒体(商業施設の冊子やポスター、大手企業発行の会報誌など)を担当。分野は、住宅、インテリア、教育、ファッション、ランジェリー、インタビュー取材など。企画からの参画やスタイリスト経験も多数。
ライター/ホームステージャー。日本・湘南エリアからアメリカ・カリフォルニア生活を経て、再び湘南エリアに在住(現在、高断熱・高気密の長期優良住宅に居住中)。カタログやメディアへのライティング、インテリアや整理収納のアドバイス、住宅購入相談やホームステージング(家具に関してのご相談やコーディネート)に取り組む... もっと見る
中庭の歴史はとても古く、イラン、中国などの古代文明の住宅にもすでに存在していたといわれます。古代ローマの住宅にも「ペリスタイル(ペリステュリオン)」と呼ばれる中庭があり、中央に泉を配した、緑と花、光に溢れる安らぎの空間でした。一方、日本では、間口が狭く奥に深い町家に「坪庭」と呼ばれる小さな中庭があり、通風と採光の確保という機能に加え、狭いながらも風情を楽しむための小さな屋外空間となっています。
このように、古今東西、規模もテイストもさまざまに存在する中庭ですが、現代の日本では、とくに都市部の住宅密集地にある、窓が少なく壁や塀に囲まれた住宅に活用されています。外に閉じつつも、中庭を使って内で十分に開くことで、快適さを生み出すことができます。Houzzの実例を参照しながら、中庭のある家の快適性とアイデアに注目してみましょう。
このように、古今東西、規模もテイストもさまざまに存在する中庭ですが、現代の日本では、とくに都市部の住宅密集地にある、窓が少なく壁や塀に囲まれた住宅に活用されています。外に閉じつつも、中庭を使って内で十分に開くことで、快適さを生み出すことができます。Houzzの実例を参照しながら、中庭のある家の快適性とアイデアに注目してみましょう。
1.プライバシーと開放感を両立する
JUN MURATA ARCHITECTSが手がけた「中海岸のコートハウス」は、道ゆく人やお隣の視線が気にならないコの字型。窓を開ければ中庭とリビングが繋がって開放的な空間に。光と風が巡る快適さも、中庭の特徴です。自然を室内にとりこむ方法は、いわゆる「大きな南庭」に面していなくても、中庭があれば豊かに感じることが分かる実例です。
JUN MURATA ARCHITECTSが手がけた「中海岸のコートハウス」は、道ゆく人やお隣の視線が気にならないコの字型。窓を開ければ中庭とリビングが繋がって開放的な空間に。光と風が巡る快適さも、中庭の特徴です。自然を室内にとりこむ方法は、いわゆる「大きな南庭」に面していなくても、中庭があれば豊かに感じることが分かる実例です。
しかもこちらの住宅は、2階の屋上庭園から1階の中庭へと緑が立体的に繋がる設計。都市の住宅密集地でも、こんなにも自然を楽しむことができる、ということを教えてくれます。
2. 中庭を通じて気配を感じる
APOLLO一級建築士事務所が手がけた「PATIO」の2階の空間です。左右の空間はもちろん、上下階も吹き抜けの中庭を通して繋がるため、住まいに一体感が出ています。明るい中庭が目に入ることでは空間に広がりを感じさせますし、また、家中ほとんどの居室同士で視線が通ります。人の気配を感じやすく安心感が出るのも嬉しい効果です。
APOLLO一級建築士事務所が手がけた「PATIO」の2階の空間です。左右の空間はもちろん、上下階も吹き抜けの中庭を通して繋がるため、住まいに一体感が出ています。明るい中庭が目に入ることでは空間に広がりを感じさせますし、また、家中ほとんどの居室同士で視線が通ります。人の気配を感じやすく安心感が出るのも嬉しい効果です。
道路に対しては、窓がなく閉じた住宅です。外からは内に開いた快適さをうかがい知ることはできません。まさに住まう人や招かれたゲストだけの特権といえます。
3. 空を切りとってインテリアにする
山縣洋建築設計事務所が設計した「TY」の中庭は、光や風の道をつくり、さらに、青天井をインテリアの一部として家の中にとりこんでいます。空の色や雲の形など、室内にいながら自然のうつろいを体感できる贅沢さが、くつろぎの時間を約束してくれます。
山縣洋建築設計事務所が設計した「TY」の中庭は、光や風の道をつくり、さらに、青天井をインテリアの一部として家の中にとりこんでいます。空の色や雲の形など、室内にいながら自然のうつろいを体感できる贅沢さが、くつろぎの時間を約束してくれます。
設計事務所アーキプレイスの作品、「空と暮らす家(スキップフロア)」も空をトリミング。他の窓にも空が映りこむという気の利いた仕掛けもみられます。住宅密集地や道路沿いに建つ住宅こそ、周囲を気にせず自然がとりこめる中庭という選択がベストと感じさせてくれる例です。
この家のHouzzツアーを読む
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外観は白い箱。家そのものが空に向かって口を開けているかのようでユニークです。一見すると周囲から隔離されているようですが、青や緑、光や風を感じる暮らしがあることが想像できます。
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5. 特別感漂う水盤のある中庭
テラジマアーキテクツの「中庭に開く家」は、リゾート感のある水盤を中庭にとりいれ、ゴージャスな印象に仕上げています。雨の日は、室内から水面の様子を眺めれば、明るい晴天の日とはことなる自然の風情を感じられます。
テラジマアーキテクツの「中庭に開く家」は、リゾート感のある水盤を中庭にとりいれ、ゴージャスな印象に仕上げています。雨の日は、室内から水面の様子を眺めれば、明るい晴天の日とはことなる自然の風情を感じられます。
夜のシーンは幻想的です。外からの視線を遮る設計となっているため、暗くなって屋内の照明をつけても、カーテンなしで過ごせます。昼夜問わず、プライベートなホームパーティを楽しめます。
6. デコレーションを楽しむ海外の中庭
塀で囲んだ中庭を、秘密の花園のようににぎやかにデコレーションした例です。グリーンや花、プレートやアイアンのインテリアに囲まれて、ベッドライクなクッションでくつろげば、内緒話に花が咲きそうです。
塀で囲んだ中庭を、秘密の花園のようににぎやかにデコレーションした例です。グリーンや花、プレートやアイアンのインテリアに囲まれて、ベッドライクなクッションでくつろげば、内緒話に花が咲きそうです。
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一つの家の中に様々な表情があって、マテリアルと空間の響きあいが素晴らしい
中庭は少し贅沢ですが、外部の視線を気にせずに開口部を解放できる解放感は格別ですね。