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ブルックリンスタイルの上級編、「タウンハウス」の暮らし
ニューヨーカーも憧れる、本場のブルックリンスタイルの “もうひとつの顔”。古いタウンハウスをリノベーションしたブルックリンの住まいは、日本の住宅リノベと共通項もあり、親しみが持てます。
上野朝子|Asako Ueno
2016年9月28日
ここ数年、NYの注目の地区として日本の雑誌にひんぱんに取り上げられるブルックリン。マンハッタンから足を伸ばすどころか、ブルックリンを目指す観光客がどんどん増えています。インテリア誌でも、ブルックリンのインダストリアルスタイルやエクレクティックなテイスト、センスのいいDIYが紹介されています。
ところで、ブルックリンスタイルの始まりをご存じですか? 若くて収入の少ないアーティストたちが、90年代初めにマンハッタンを離れ、まだ治安が安定せず家賃が安い、古いアパートやロフトが多いブルックリン、なかでもウィリアムズバーグに移り住みました。ここはかつて食品工場があり、労働者層の人が多く暮らしていた地区で、アーティストたちは近所の工場で使われていた椅子や机など、まさに本物のインダストリアルなインテリアアイテムを、拾ったり無料で譲り受けたりして、インテリアに再利用しました。お金をかけられないことを逆手にとって、DIYで手を加えながら、独自のカッコイイ “インダストリアルスタイル” をつくっていったのです。
でも、実はブルックリンスタイルにはもうひとつ、古くからトレードマークになっている存在があります。それは、タウンハウスと呼ばれる建物です。タウンハウスがあるのは、ブルックリンに古くからある閑静な住宅地ブルックリンハイツ、コブルヒル、キャロルガーデン、フォートグリーン、パークスロープなどの地区。こちらは、ウィリアムズバーグとはまったく趣が違います。1870年代に建てられたタウンハウスは、今は歴史的建造物になっています。レンガ造りも人気ですが、ブラウンストーンと呼ばれる渋いピンク色の石を張ったタウンハウスは、ニューヨーカーの憧れの的。「いつかブルックリンのブラウンストーンに住んでみたい」という声をよく聞きます。
ところで、ブルックリンスタイルの始まりをご存じですか? 若くて収入の少ないアーティストたちが、90年代初めにマンハッタンを離れ、まだ治安が安定せず家賃が安い、古いアパートやロフトが多いブルックリン、なかでもウィリアムズバーグに移り住みました。ここはかつて食品工場があり、労働者層の人が多く暮らしていた地区で、アーティストたちは近所の工場で使われていた椅子や机など、まさに本物のインダストリアルなインテリアアイテムを、拾ったり無料で譲り受けたりして、インテリアに再利用しました。お金をかけられないことを逆手にとって、DIYで手を加えながら、独自のカッコイイ “インダストリアルスタイル” をつくっていったのです。
でも、実はブルックリンスタイルにはもうひとつ、古くからトレードマークになっている存在があります。それは、タウンハウスと呼ばれる建物です。タウンハウスがあるのは、ブルックリンに古くからある閑静な住宅地ブルックリンハイツ、コブルヒル、キャロルガーデン、フォートグリーン、パークスロープなどの地区。こちらは、ウィリアムズバーグとはまったく趣が違います。1870年代に建てられたタウンハウスは、今は歴史的建造物になっています。レンガ造りも人気ですが、ブラウンストーンと呼ばれる渋いピンク色の石を張ったタウンハウスは、ニューヨーカーの憧れの的。「いつかブルックリンのブラウンストーンに住んでみたい」という声をよく聞きます。
タウンハウスは外観に手を加えられない分、最近では屋内やガーデンをコンテンポラリーにリノベーションするのが流行のようです。私自身はリノベーションしていない1879年築のタウンハウスに住んでいますが、外側は古い雰囲気のまま、内側はモダン、というコントラストに最近惹かれるようになってきました。今回はそんな、まだ日本ではなじみのない、でもNYでは主流のブルックリンスタイルをご紹介してみましょう。
典型的なタウンハウスの外観は
写真がブルックリンのタウンハウスです。外階段を上がった扉があるフロアはパーラーフロアと呼ばれ、客間として使われることが多く、天井もいちばん高いです。半地下はガーデンフロアと呼ばれ、表からは想像できませんが、奥にあるガーデンに続きます。キッチンもこのフロアにあることが多いです。
典型的なタウンハウスの外観は
写真がブルックリンのタウンハウスです。外階段を上がった扉があるフロアはパーラーフロアと呼ばれ、客間として使われることが多く、天井もいちばん高いです。半地下はガーデンフロアと呼ばれ、表からは想像できませんが、奥にあるガーデンに続きます。キッチンもこのフロアにあることが多いです。
こちらはレンガ造りのタウンハウス。上のブラウンストーンより小ぶりです。やはり外階段から上がって、玄関。階段脇にもドアがあって、ガーデンフロアの奥に庭があります。外階段はストゥープと呼ばれ、気候のいい季節の週末は、ここに不用品を並べてストゥープセール(ガレージセールのようなもの)を開催します。
ブルックリンのタウンハウスの暮らしはこちらの記事にも
映画『マイ・インターン』に登場する、素敵でリアルなインテリアの秘密とは?
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昔ながらのブルックリン・インテリア
このお宅は、内装は昔のまま、あまり手を加えていません。実はこのお宅を、私は実際に訪ねたことがありますが、ソファはヨーロッパの蚤の市で買って、ブルックリンで張り地を新しくしたそうです。他の家具やラグも蚤の市や郊外のアンティークショップで買ったもの。「新しい物はひとつもない」と話してくれました。壁面の古いレンガを白に塗って、家具を引き立てるなど、古い物が好きなオーナーらしいアイデアが感じられるお宅でした。
このお宅は、内装は昔のまま、あまり手を加えていません。実はこのお宅を、私は実際に訪ねたことがありますが、ソファはヨーロッパの蚤の市で買って、ブルックリンで張り地を新しくしたそうです。他の家具やラグも蚤の市や郊外のアンティークショップで買ったもの。「新しい物はひとつもない」と話してくれました。壁面の古いレンガを白に塗って、家具を引き立てるなど、古い物が好きなオーナーらしいアイデアが感じられるお宅でした。
コンテンポラリーな内装が主流
とはいえ、最近のブルックリンの傾向は、古い雰囲気はどこかに残しつつ、内装を現代的にリノベーションするのが主流です。たとえば、木製の窓枠やドア枠がやわらかな雰囲気のこのお宅は、装飾を減らして、エレガントでコンテンポラリーな雰囲気にリノベーションしています。たとえば張り出し窓のあるこの部屋。室内は細長く、家具の配置は案外難しいのですが、うまく選び、無駄なく配置しています。
とはいえ、最近のブルックリンの傾向は、古い雰囲気はどこかに残しつつ、内装を現代的にリノベーションするのが主流です。たとえば、木製の窓枠やドア枠がやわらかな雰囲気のこのお宅は、装飾を減らして、エレガントでコンテンポラリーな雰囲気にリノベーションしています。たとえば張り出し窓のあるこの部屋。室内は細長く、家具の配置は案外難しいのですが、うまく選び、無駄なく配置しています。
シンプルベースにエクレクティックテイストを
こちらのお宅は、年代を感じられるのは階段の手すりと床材だけで、あとはシンプルにリノベーションしています。もともとは部屋が3つ縦長に並んでいたのを、壁を全部外して、大きくて長いLDKにしています。家具がカントリー風なのが可愛いですね。
こちらのお宅は、年代を感じられるのは階段の手すりと床材だけで、あとはシンプルにリノベーションしています。もともとは部屋が3つ縦長に並んでいたのを、壁を全部外して、大きくて長いLDKにしています。家具がカントリー風なのが可愛いですね。
同じお宅の、ダイニングスペースの壁面には古い暖炉が。この写真だけ見ると、ちょっとカントリーハウスのようですね。バラバラな椅子がキャラクターがあって楽しい。本棚全体が白い壁に引き立って、絵のような役目を果たしています。
同じお宅の、真ん中のダイニングテーブルからテラスの風景です。長いテーブルもヴィンテージのファーマーズテーブル。いっぽう、キッチンは清潔感のある白で統一。エクレクティックなインテリアが、今のブルックリンスタイルと言えそうです。
存在感のある階段を活かして
玄関の正面には階段、というのがタウンハウスの特徴です。階段の存在が部屋を小さくしてしまうのですが、この雰囲気を壊してしまうのはやはりもったいないと、古い階段をそのまま活かしているお宅が多いです。
玄関の正面には階段、というのがタウンハウスの特徴です。階段の存在が部屋を小さくしてしまうのですが、この雰囲気を壊してしまうのはやはりもったいないと、古い階段をそのまま活かしているお宅が多いです。
限りある広さをゾーニングで工夫する
これは別のお宅ですが、廊下の壁を外して、腰高のチェストや本棚で部屋をゆるく分けています。このように、古い素材のの魅力を残しながら、細長い間取りを上手にリノベしているお宅が多いのも、ブルックリンのタウンハウスの特徴です。ニューヨーカーは狭さとの知恵比べ。狭さのレベルは違いますが、アイデアを駆使するところに親しみを感じてしまいます。
これは別のお宅ですが、廊下の壁を外して、腰高のチェストや本棚で部屋をゆるく分けています。このように、古い素材のの魅力を残しながら、細長い間取りを上手にリノベしているお宅が多いのも、ブルックリンのタウンハウスの特徴です。ニューヨーカーは狭さとの知恵比べ。狭さのレベルは違いますが、アイデアを駆使するところに親しみを感じてしまいます。
古い暖炉はインテリアの “鍵”
暖炉は1800年代からずっと各階にあります。たいていのお宅は暖炉をインテリアの “鍵” 的存在として大切に考えています。物件を買う際にも、アパートとして借りる際にも、「使える暖炉」のあるなしで値段が変わります。
暖炉は1800年代からずっと各階にあります。たいていのお宅は暖炉をインテリアの “鍵” 的存在として大切に考えています。物件を買う際にも、アパートとして借りる際にも、「使える暖炉」のあるなしで値段が変わります。
家の表側と裏側で、階の見え方が違う?
では、建物の裏側を見てみましょう。こちらの1階部分が、ガーデンフロアです。エントランス側からは半地下でしたが、ガーデン側から見ると、れっきとした1階。2階部分が、表からは1階に見えたパーラーフロアです。表と裏で、各階の見え方が違うのがおもしろいですね。
では、建物の裏側を見てみましょう。こちらの1階部分が、ガーデンフロアです。エントランス側からは半地下でしたが、ガーデン側から見ると、れっきとした1階。2階部分が、表からは1階に見えたパーラーフロアです。表と裏で、各階の見え方が違うのがおもしろいですね。
お手入れしやすいモダンな庭
ニューヨーカーは、普段は仕事を持って忙しい人が多いので、植物の手入れが大変ということもあるのでしょうか、最近はこんなモダンな庭が増えました。色づかいはあくまでシックに。写真には写っていませんが、バーベキュー用のファイヤーピットもあります。冬が長いニューヨークでは、春から秋にかけて、暖かい日差しが気持ちいい日は外で食事をするのが人気です。
ニューヨーカーは、普段は仕事を持って忙しい人が多いので、植物の手入れが大変ということもあるのでしょうか、最近はこんなモダンな庭が増えました。色づかいはあくまでシックに。写真には写っていませんが、バーベキュー用のファイヤーピットもあります。冬が長いニューヨークでは、春から秋にかけて、暖かい日差しが気持ちいい日は外で食事をするのが人気です。
ブルックリンのタウンハウスの暮らし、いかがでしたか? メンズライクなインダストリアルテイストだけがブルックリンスタイルではないことを知っていただけたでしょうか。ブルックリンも、マンハッタンのように、地区によって集まる人の性質や感覚も、インテリアの傾向もさまざまなのです。
私が今暮らしているのも、タウンハウスが集まるパークスロープという地区。大きな公園がそばにあって、子供たちもたくさん暮らしています。メンズライクなインタストリアルスタイルがシングルや若いカップルに人気だとすると、タウンハウスは家族向き。ブルックリンの上級スタイルといえるかもしれません。
日本の住まいにも参考になるニューヨークの暮らしとインテリアについて、また折をみて書いていきたいと思います。
こちらもあわせて
古いものやナチュラルな素材に合わせる、ブラックの旬な効かせ方
無骨さと包容力、今を感じるテイスト満載の「男前インテリア」
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