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暗くて古いアパルトマンをコンテンポラリーとクラシックが融合する住まいに
パリの中心部、人気の高いサンジェルマン地区。ここに19世紀のアパルトマンを手に入れた建築家夫妻が、クラシックな魅力を生かしつつ、コンテンポラリーで暮らしやすいスタイルの家をリノベーションで実現した事例です。
Elsa Demuysère
2016年9月26日
パリ7区という絶好のロケーションのアパルトマンはアートに溢れ、快適で、魅力がつまっている。鋳鉄製のヒーターや正真正銘の木の床といったトラディショナルな要素にコンテンポラリーな家具をミックスし、19世紀のオスマン様式の建物の魅力を引き立てている。現在暮らしているのはアロン・カシャさん、ベッツィーさんの建築家夫妻と16歳の娘さん、そして飼い猫。部屋は初めから素敵だったわけではなく、引っ越すことを考えるなら、全面的にリノベーションしなければならない状態だった。小さな部屋に分かれた構造、自然光の入らない造り、暮らしにくい間取り……建築家夫妻のプロジェクトは悪条件だらけからのスタートだった。
どんなHouzz?
住まい手:アロン・カシャさん、ベッツィー・カシャさん、16歳の娘
規模:116平方メートル
所在地:フランス、パリ
設計:アロン&ベッツィー・カシャさん〈A+B カシャ・デザインズ〉
写真: Idha Lindhag
どんなHouzz?
住まい手:アロン・カシャさん、ベッツィー・カシャさん、16歳の娘
規模:116平方メートル
所在地:フランス、パリ
設計:アロン&ベッツィー・カシャさん〈A+B カシャ・デザインズ〉
写真: Idha Lindhag
夫妻がこのアパルトマンに移ろうと決めたとき、住める状態にするにはかなり手をかける必要があることは承知の上だったという。「パリのアパルトマンらしくとてもクラシックですが、老朽化がかなり進んでいました。床はゆがみ、天井には亀裂が入っていました。間取りも非常に使い勝手が悪く、例えばキッチンもダイニングも上の階にあったんです」とアロンさんは振り返る。さらに天井も低く、見るからに日当たりも悪い。住まいにするためには何もかも作り変える必要があった。
屋根の上からは、サンジェルマン・デ・プレ地区の眺望が広がる。
今では、とても自然で使いやすい間取りになった。広めの廊下は2間続きのリビングへ通じ、隣のキッチンからは小さな中庭を見下ろすことができる。廊下の反対側にはベッドルームとクローゼット、バスルームがひと続きになったスイートが位置する。2階にはもう1つのベッドルームとバスルームがある。「アパルトマン全体に感じられるクラシックな雰囲気は絶対に残したかったので、素材選びにもそれがキーワードになりました。それでも、いちばんの目標は、全体を見たときにオープンな空間にして、空間を解放することでした」とベッツィーさんは説明する。
夫妻が特に大事にしたのが、自分たちらしさの感じられる家にすること。「アパルトマンに宿る魂はとても大切なもの。自分たちの感覚に従ううちに、ふさわしいスタイルへ自然と導かれていきました」という。名作デザインのされる家具を取り入れ、ル・コルビュジエのソファや、サーリネンによるテーブルと椅子を選んだ。コンテンポラリーなアイテムと、木のフローリングのようなオーソドックスな要素を組み合わせることで、あたたかく居心地のよい雰囲気ができあがった。
夫妻と16歳になる娘さんに加え、一緒に暮らす家族のメンバーは飼い猫。「家の設計を考えるとき、猫のことも考慮に入れて、階段の下に隠れ家のような場所をつくりました。猫にとっては邪魔されずに過ごせる居場所であり、空間全体のスタイルを崩してもいません。ベッドルームの窓の外にも小さなバルコニーを設けて、猫が外に出られるようにしました」。
家全体のベースになっている色が白。白い壁、白い窓枠、白い梁が空間を明るく広々とした印象にしている。「白を使うと、さまざまなテイストの絵を飾るときにも、この上なく効果的なニュートラルな背景になります。」アート作品をはじめ、写真、カーペット、カーテンなどのアイテムが色彩を加えてくれる。
この家に、よりふたりらしさをもたらすために用いたのが、ヴィンテージ素材。正真正銘の木材を使った床板を修復して入れ直したほか、鋳鉄製のヒーターを設置し、実矧ぎにした両開きの窓をグレモン錠をつけて取り付けた。クラシックとコンテンポラリーの2つのスタイルがみごとに融合している。
「インテリアづくりはとても大事だと私たちは思っています。足を踏み入れたときに、ずっと前からここに存在していたように感じられる空間にするのが基本です。それをかなえるために、例えばル・コルビュジエのような1950年代のクラシックなデザイナーものと、コンテンポラリースタイルのユーズド家具、20世紀初めのアンティークなどを取り混ぜるのが好きなんです。」こうして生まれたのが、エクレクティックでありながらバランスのとれた調和を感じさせる空間だ。
部屋には防音対策をし、同じ建物に暮らすほかの住人に気兼ねせずすむよう考えた。
16歳の娘さんのベッドルームはソフトな色合いと繊細な雰囲気に。「トリュモーと呼ばれる、装飾壁のついた歴史ある鏡に、ピンクの生地でクッションをつけたらすてきなヘッドボードになりました」とふたり。本好きな娘さんのため、書棚をたっぷり設けてある。このスペースは元は屋根裏部屋だった。梁は白でペイントして空間を広く見せ、空調も新たにつけた。
16歳の娘さんのベッドルームはソフトな色合いと繊細な雰囲気に。「トリュモーと呼ばれる、装飾壁のついた歴史ある鏡に、ピンクの生地でクッションをつけたらすてきなヘッドボードになりました」とふたり。本好きな娘さんのため、書棚をたっぷり設けてある。このスペースは元は屋根裏部屋だった。梁は白でペイントして空間を広く見せ、空調も新たにつけた。
タイル、大理石、ガラスをセンスよく取り入れたバスルーム。
さまざまな質感の素材を組み合わせたことで生まれた、あたたかな雰囲気。「素材と小物の間に、自然にハーモニーが生まれました。例えば、椅子やソファやカーテンはレザーやリネンを選んで、ベージュやブラウン系のトーンでまとめ、古い木の素材がもつあたたかみを引き立てています。木の素材はストーン素材や大理石にも合います。」
天井が低く、自然光が入らない構造の問題もあった。まず室内の壁を撤去してひと続きの空間にし、吊り天井を取り除いて、たくさんの梁を表に出した。梁、窓、壁は白でペイントし、光あふれる明るい空間に。二面から太陽の光が入るため、室内全体に光が届く。暗く閉鎖的だった空間を一新した。
建築当時の梁も白でペイント。空間に広さを出すとともに、ぬくもりと歴史を感じさせる。
部屋のデザインにアートを取り入れるのは欠かせないという夫妻。ほぼすべての部屋に、よく計算された上でアート作品が飾られている。
空間が大胆に変わったことが写真からもうかがえる。
かつてバスルームだったスペースは、すっきりしたコンテンポラリーなキッチンに。
キッチンだった場所は明るくエレガントなバスルームへと生まれ変わった。
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