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Houzzツアー:古いバーを改築してセンスのいいロフトスタイルの住まいに
地元の人に愛されていたバーが突然閉店。店を知っていた建築家は、ちょうど依頼を受けていたクライアントに紹介し、ロフトスタイルの明るい住まいにリノベーションしました。店舗を住宅にリノベする際に参考にしたい事例です。
Nicola Enderle
2016年9月21日
かつて、ベルリンのフリーデナウ地区に、その名もずばり、「シュルックシュペヒト(ドイツ語でバーやパブの意)」という名のバーがあった。20年以上営業し続けた有名なバーだった。人々はここに集まってはカクテルを楽しみ、ビリヤードをし、地元の仲間とおしゃべりに興じた。しかしあるとき突然、店は売りに出され、誰もが知る店の写真が入った広告が出回った。「あのバーだ、とすぐにわかりましたね。友人のなかには、あの店で働いていた人もいましたし」と建築家のスヴェン・ブルクハイムさんは振り返る。そしてみずからリノベーションを手がけることになった。
ちょうどブルクハイムさんはミュンヘン在住の夫妻のために物件を探している最中だった。「クライアントの夫妻はアパートメント最上階にあるペントハウスを強く希望していたのですが、通常、1階の部屋の方が価格はかなり下がります。夫妻も私も、この空間なら幅広いポテンシャルがあると感じました」。こうして夫妻はペントハウスの代わりにここを選んだ。ブルクハイムさんは建物の内部を取り壊して新しい間取りに造りかえ、中2階を設け、ユニークな照明をみずからデザイン。味のあるバーから一転、歴史ある建物の中はセンスあふれるロフトスタイルの住まいに生まれ変わった。
どんなHouzz?
住まい手:40代の夫婦
所在地:ドイツ、ベルリン(元はバーだった建物)
規模:200平方メートル。2つの階からなる設計:〈ストゥディオ・スヴェン・ブルクハイム〉
ちょうどブルクハイムさんはミュンヘン在住の夫妻のために物件を探している最中だった。「クライアントの夫妻はアパートメント最上階にあるペントハウスを強く希望していたのですが、通常、1階の部屋の方が価格はかなり下がります。夫妻も私も、この空間なら幅広いポテンシャルがあると感じました」。こうして夫妻はペントハウスの代わりにここを選んだ。ブルクハイムさんは建物の内部を取り壊して新しい間取りに造りかえ、中2階を設け、ユニークな照明をみずからデザイン。味のあるバーから一転、歴史ある建物の中はセンスあふれるロフトスタイルの住まいに生まれ変わった。
どんなHouzz?
住まい手:40代の夫婦
所在地:ドイツ、ベルリン(元はバーだった建物)
規模:200平方メートル。2つの階からなる設計:〈ストゥディオ・スヴェン・ブルクハイム〉
いかにもベルリンらしい店で、20年にわたり人々が集うバーだった。趣があって、気取らず、地域に根ざし愛された場所。2年前に思いがけず売りに出されたとき、まさにしかるべき人の目にとまったといえる。「広くて趣のある空間だというのはよくわかっていたので、すぐにクライアントの2人に連絡しました」とブルクハイムさん。2人はミュンヘンからやってきて、建物を見た翌日には契約書にサインし、ブルクハイムさんに大規模なリノベーションを依頼した。
アフター:吊り天井を外すと空間は上に1.5メートル分広がり、天井までの高さは5メートルに。キッチンとリビングを隔てるレンガ造りの壁にはインダストリアルな古い窓を入れ、室内の奥まで自然光が届くように配慮した。調理中は、煙などがほかのエリアへ流れないよう、新たに取り付けたスイングドアを閉めておけばよい。「リノベーションするときは、建築当時の時代に忠実であることをとにかく大事にしています。今回も、ドアは新しく入れましたが、新品ではなく年代ものを使っています」とブルクハイムさんは説明する。
「窓の高さが4メートルあるので、自然光が存分に入ってきます。夜は夕食のテーブルから月も見えるんですよ」。
ブルクハイムさんはクラシックなスチール製の窓フレームにはサンドブラスト加工をし、そのままむき出しに。はじめに窓を新しく入れたあと、無煙炭の粉で古いフレームを色づけし、新しいものとなじむよう手間をかけた。キッチンとリビングの壁に取り付けた同じくインダストリアルな古い窓とも、このフレームがみごとに合っている。
ブルクハイムさんはクラシックなスチール製の窓フレームにはサンドブラスト加工をし、そのままむき出しに。はじめに窓を新しく入れたあと、無煙炭の粉で古いフレームを色づけし、新しいものとなじむよう手間をかけた。キッチンとリビングの壁に取り付けた同じくインダストリアルな古い窓とも、このフレームがみごとに合っている。
「建築家の仕事はたいてい施主の希望やニーズがまずあって、それを形にしていく場合が多いのですが、私は逆のアプローチをとります」とブルクハイムさんは言う。「住宅を設計するとき、施主がどんなふうに暮らしたいかを考えてみるんです。住まい手が料理好きなら、キッチンが中心になるように考えます。今回のケースがそうでした」。
アフター:「子どものいない夫婦2人だけの世帯なので、設計についてはかなり自由が利き、各部屋を好きなだけオープンな空間にできました」とブルクハイムさん。
玄関スペースに続くイートインキッチンを含むエリアは、個性的でオープンな造り。外の通りと建物の間には、フリーデナウ地区の建物によくみられる小さな庭がある。通りを歩く人は見ようと思えば家の中をのぞける距離だ。
玄関スペースに続くイートインキッチンを含むエリアは、個性的でオープンな造り。外の通りと建物の間には、フリーデナウ地区の建物によくみられる小さな庭がある。通りを歩く人は見ようと思えば家の中をのぞける距離だ。
キッチンは〈ヘッカー〉製だが、ワークトップはコンクリートの特注品。インダストリアルなシェルフは、ブランデンブルクに昔からある錠前屋で使われていたもの。
「アイランドキッチンの周辺はコーティングしたスクリードを使うことにしました。ドイツではスクリードの価格が異常に高くて、3平方メートルで150ユーロ(約17000円)します。南アフリカのケープタウンでは、床にはたいていコーティングしたスクリードを使うのですが、15ユーロ(約1700円)ですみます。床を金で塗っているみたいなものです」とブルクハイムさんは笑う。
棚の右側にある金庫扉は、元からあったものを白くペイントした。開けると小さなパントリーになっている。
「アイランドキッチンの周辺はコーティングしたスクリードを使うことにしました。ドイツではスクリードの価格が異常に高くて、3平方メートルで150ユーロ(約17000円)します。南アフリカのケープタウンでは、床にはたいていコーティングしたスクリードを使うのですが、15ユーロ(約1700円)ですみます。床を金で塗っているみたいなものです」とブルクハイムさんは笑う。
棚の右側にある金庫扉は、元からあったものを白くペイントした。開けると小さなパントリーになっている。
ダイニングエリアのほか、1階はオイル仕上げをしたホワイトオークの床板を張った。
ダイニングテーブルはブルクハイムさんみずからデザイン。工場で使われていた架台にオークの板をテーブルトップに載せた。「以前は大半のものを自分で作っていましたが、その後、高度な技術のあるプロの大工さんに依頼するようになりました」という。チェアはインダストリアルな古い椅子とデザイナーもののモダンな名作チェアをあえてミックスして使っている。後者は〈イームズ〉のプラスチックアームチェアやパントンチェア(いずれも〈ヴィトラ〉製)などだ。
ダイニングテーブルはブルクハイムさんみずからデザイン。工場で使われていた架台にオークの板をテーブルトップに載せた。「以前は大半のものを自分で作っていましたが、その後、高度な技術のあるプロの大工さんに依頼するようになりました」という。チェアはインダストリアルな古い椅子とデザイナーもののモダンな名作チェアをあえてミックスして使っている。後者は〈イームズ〉のプラスチックアームチェアやパントンチェア(いずれも〈ヴィトラ〉製)などだ。
ブルクハイムさんは、昼の光と同じくらい、夜の照明も重要だと考えている。アイランドキッチンの上につるされた照明は、スチールと透明な電球で作ったブルクハイムさんオリジナルのデザイン。「電気エンジニアの人が、照明をつるそうとぐらぐらするはしごをキッチンのカウンタートップにかけたときはハラハラして心臓が止まるかと思いました」と笑って振り返る。東ドイツ時代に使われていたインダストリアルな照明は、ダイニングテーブルを十分に照らす光量がある。
右奥に見えるのは、すりガラスのガラスブロックを使ったバスルームの壁。バスルームのあたたかな灯りが間接的にリビングへも届く。
右奥に見えるのは、すりガラスのガラスブロックを使ったバスルームの壁。バスルームのあたたかな灯りが間接的にリビングへも届く。
キッチンから続くリビングにあった吊り天井も外し、空間を広げた。
アフター:上にロフト階を設けたため、床面積が増え、独立したホームオフィスもできた。「居住スペースは合計で200平方メートルになります」とブルクハイムさん。ガラスの手すりを通して下から中2階部分が見えるうえ、階下のリビングにも光が十分に差し込む。
中2階への階段にはMDFパネルを使い、階段下のスペースに収納を組み込んだ。踏板はオーク材。ここには雑多なものをしまうほか、ガス温水器もスマートに収めている。
天井に設置したダウンライトが、新設した中2階を際立たせて見せている。上の写真に見えるように、1階に積まれた薪はインテリアの一部であるだけではない。寒い日にも上の階で暖かく過ごせるよう、アパートの既存の暖房設備に加えてスイス製のストーブを入れた。ブルクハイムさんも「これは欠かせません」とのこと。
階段下の2ヵ所のドアはそれぞれ、ゲスト用のバスルームとユーティリティルームへ続く。バーだった当時からあったドアを、あたたかみを感じさせる淡いグレーに塗りかえた。一般にリノベーションといえば思わぬトラブルが起きない方がめずらしいが、今回も例外ではなかった。「奥のエリアの床が抜けたんです」とブルクハイムさんは話す。「バーの手洗いの床がきちんと保護されていなく、長年水気にさらされた結果、スチールの梁が一部錆びきっていました。バーで大勢が出入りしているときに抜けなくてよかったですよ」。
階段を上がって右へ入ると、ベッドルームとそれに続くバスルームがある。中庭にもう1つ階段があり、地下はワークスペースになっている。
階段を上がって右へ入ると、ベッドルームとそれに続くバスルームがある。中庭にもう1つ階段があり、地下はワークスペースになっている。
クライアントの希望で、中2階は、さらに居心地のよさとぬくもりのある空間にした。「中2階のベッドルームとバスルームのスタイルは、下の階とは変えています。それによって、パブリックな下の空間と、よりプライベートな上の空間とを分けているんです」とブルクハイムさんは説明する。オークの床材は白に塗ってあたたかみを出し、家具もどこかかわいらしさを感じさせるカントリー調を選んだ。
外には小さなバルコニーがあり、緑あふれる中庭が見わたせる。アパートの共有の中庭は262平方メートルの広さがある。
現在バスルームがあるエリアは、リノベーションの際に1メートルほど拡張して、外壁の面をあわせた。
アフター:「壁を入れるのは避けたいと思いました。バスルームと下のリビングルームに光が入らなくなってしまいますから」とブルクハイムさん。壁の代わりにすりガラス状のブロックを使い、光を通しながらプライバシーを確保できるように工夫した。「夜にバスルームの灯りをつけると、間接照明のようになります。」
ここにもオークの床板を張り、白の防水塗料でペイントした。洗面台キャビネットはブルクハイムさんがデザインしたものをカスタムメイドで作ってもらい、シンクを取り付けた。壁とシャワーブースは表面が美しいセメントモルタル塗りで仕上げた。
ここにもオークの床板を張り、白の防水塗料でペイントした。洗面台キャビネットはブルクハイムさんがデザインしたものをカスタムメイドで作ってもらい、シンクを取り付けた。壁とシャワーブースは表面が美しいセメントモルタル塗りで仕上げた。
教えてHouzz
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