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Houzzツアー : 親子屋根の2棟をサンルームがつなぐ、自然なコミュニケーションの2世帯住宅
サンルームとインナーテラス、ウッドデッキの中庭を介して仲良く並び、心地よくつながる家族3世代の住まい。
takako kawaguchi
2016年9月15日
「多くの2世帯住宅を手掛けてきましたが、最近のご希望はほとんどが “完全分離型”。キッチンも玄関もすべて別々、というプランです。そこではいかに家族の接点をつくり出していくかが大切なポイントとなってきます。プライバシーを守りつつ、自然なつながりを持てる形、それを考え、提案することにやりがいを感じますね」と語るのは、遠藤浩建築設計事務所の遠藤浩さん。そんな遠藤さんがつくったのがこちらの写真、広々とした中庭を囲むようにして建つ、3世代が暮らす2世帯住宅である。
東京・目黒の住宅地にあり、今どきの都内では珍しくまとまった敷地に、大小、親子のように並び建つ三角屋根の2棟。離れて建つ2棟をつないでいるのが、ガラス張りのサンルームとウッドデッキを敷いた中庭である。祖母と親世帯、子世帯をさりげなく結びつけ、暮らしの快適さも生み出す鍵となる空間だ。
どんなHouzz?
家族構成:親世帯/祖母、50代夫婦、20代次女
子世帯/20代長女夫婦
所在地:東京都目黒区
敷地面積:310.54平方メートル
延床面積:166.97平方メートル
構造・規模:木造2階建て
設計:遠藤浩建築設計事務所
施工:株式会社 匠陽
竣工:2015年6月
どんなHouzz?
家族構成:親世帯/祖母、50代夫婦、20代次女
子世帯/20代長女夫婦
所在地:東京都目黒区
敷地面積:310.54平方メートル
延床面積:166.97平方メートル
構造・規模:木造2階建て
設計:遠藤浩建築設計事務所
施工:株式会社 匠陽
竣工:2015年6月
「完全分離の2世帯住宅」「中庭が欲しい」というオーナー家族の2つの希望から生まれた、「中庭を挟んだ2つの家をサンルームで “架け橋” のようにつなぐ」という遠藤さんのアイデア。サンルームは両世帯が共同で使う物干し場として活用され、コミュニケーションが自然に生まれるスペースとなっている。中庭のデッキと一体化しているため、大きな開放感があり、家全体が明るい印象にも。
サンルームの広さは4.8畳。正面ガラスは両サイドはフィックスに、中央部分は引違い戸とした。
サンルームの広さは4.8畳。正面ガラスは両サイドはフィックスに、中央部分は引違い戸とした。
オーナー家族が中庭をリクエストしたのは、家の中全体を自然光で満たしたい、と望んだため。特に、長くこの地に住み続けてきた祖母には日当たりのいい部屋を用意してあげたかったのだそう。いざ住み始めてみると、19畳ある中庭は室内に陽射しを届けるだけでなく、普段はゆとりのスペースを活かしてふとんなどを干すこともでき、家族知人が揃った日にはバーベキューを楽しむ、絶好の憩いの場となっている。
デッキに使用したのは南米・アマゾン産のイぺ材。熱帯広葉樹で耐久性に優れ、港湾や船舶のデッキにも採用されているため、“デッキ材の王様” とも呼ばれる素材だ。節がなくなめらかな仕上がりで高級感にあふれ、経年変化で濃い褐色となって風合いが増していくのも魅力である。
サンルームの他にも、中庭に面したインナーテラスを各戸に設けた。「観葉植物や、風雨にさらされるデッキ用サンダルの置き場に便利です。小雨くらいなら窓を開け放して風を入れられるなど、内と外との折り合いをつける緩衝帯となれば」と遠藤さん。写真は親世帯のインナーテラス。
こちらは子世帯のインナーテラス。遠藤さん自身の家にも中庭があり、「サンダルが雨で濡れたり汚れたりするのが気になる、と妻に言われるので(笑)、インナーテラスのような中間領域が必要だなと」。実体験を反映した、住まい手の立場でのプランニングが光っている。
中庭デッキ、インナーテラス、サンルーム、すべてのデッキの下には排水口を設置し、水はけ対策も施している。
中庭デッキ、インナーテラス、サンルーム、すべてのデッキの下には排水口を設置し、水はけ対策も施している。
中庭から見て左手の2階建てが親世帯。1階にある13.3畳のLDKは吹き抜けの掃き出し窓からも陽射しがふんだんに入り、気持ちよく過ごせる空間だ。内装に木の質感を活かしたのは遠藤さんのこだわり。「手や足が直接触れるところはやはり木の素材が落ち着くのでは、と考えています。あとはポイントとして梁を見せたり、照明器具にも木の要素を添えて空間になじませました」。
床材はすべて、無垢のナラ材をミツロウワックスで仕上げて統一。しっとりした白さが美しい壁紙は〈イケダコーポレーション〉が扱う、ドイツ製の《オガファーザー》。ウッドチップと再生紙でつくられた天然壁紙で、調湿性があり、体にも優しいのが特徴である。
床材はすべて、無垢のナラ材をミツロウワックスで仕上げて統一。しっとりした白さが美しい壁紙は〈イケダコーポレーション〉が扱う、ドイツ製の《オガファーザー》。ウッドチップと再生紙でつくられた天然壁紙で、調湿性があり、体にも優しいのが特徴である。
吹き抜けの掃き出し窓に取り付けたキャットウォークは、陽射しを遮らないデザインに。和の香りもほんのりと漂い、落ち着きのあるテイスト。
ダイニングとつながっているキッチン。トップはステンレスメーカーにオーダーして製作したもの。キッチンの隣にはサンルームに接する形で、日当たりのいい祖母の個室があり、ここにもミニキッチンやトイレ、ソファや食卓などを完備。玄関を通らず、中庭から直接出入りすることも可能に。
玄関にはベンチと手摺を造作し、祖母の外出を優しくサポート。三和土にカラフルなビー玉をあしらい、楽しげでオリジナリティのあるデザインにしている。
玄関を入ってすぐの場所にある和室。縁なし畳を敷いたシンプルな空間に、祖母が作ったステンドグラスのペンダントライトが美しく映えている。家族の歴史を紡ぎ、受け継がれている様子は、訪れたゲストの心も温めてくれそうだ。
2階へと階段を上がった先、吹き抜けに面した絶好の場所にあるのがスタディコーナー。3m以上ある長いカウンターは、親夫婦と、一緒に暮らす次女が日々の用事をしたり、洗濯物をたたむなどの家事やパソコン作業をするのにぴったり。足元には棚を設置し、収納性も高めてある。
「家の中の過ごしやすい場所にワークスペースをつくることが多いですね。こうした共有空間があれば、実は各々の個室はそんなに広くする必要はないのです。寝るとき以外、ここで過ごせばいいわけですから。自然と家族間のコミュニケーションも増えるようになります」。レイアウト的にも、オープンな共有スペースをつくることで空間につながりと抜け感を生み、広さを感じさせるのが遠藤さんの手法である。
カウンターはラバーウッド材。ワックスはやや赤めのマホガニー風カラーにして、アクセントをつけている。
「家の中の過ごしやすい場所にワークスペースをつくることが多いですね。こうした共有空間があれば、実は各々の個室はそんなに広くする必要はないのです。寝るとき以外、ここで過ごせばいいわけですから。自然と家族間のコミュニケーションも増えるようになります」。レイアウト的にも、オープンな共有スペースをつくることで空間につながりと抜け感を生み、広さを感じさせるのが遠藤さんの手法である。
カウンターはラバーウッド材。ワックスはやや赤めのマホガニー風カラーにして、アクセントをつけている。
親世帯から出入りできる、広々としたルーフバルコニー。この下にはサンルームに接した祖母の部屋と子世帯の寝室がある。
外壁に使ったのはガルバリウム鋼板。表面の波状にはピッチの違いで大・中・小があり、こちらの家で採用したのは「中波」と呼ばれるもの。大きすぎず細かすぎずのほどよいピッチで、直線的な家の外観にマッチしている。
外壁に使ったのはガルバリウム鋼板。表面の波状にはピッチの違いで大・中・小があり、こちらの家で採用したのは「中波」と呼ばれるもの。大きすぎず細かすぎずのほどよいピッチで、直線的な家の外観にマッチしている。
こちらは平屋建ての子世帯、10畳のLDK。中庭に面して窓をたくさん設けてあるのが印象的だ。構造材の垂木を見せた天井が、実際よりも空間をぐっと広く見せている。床材や壁紙はすべて親世帯と同様のものを使用。
LDと奥の個室との境は、鏡張りの引き戸に。長女が趣味で続けているダンスやヨガのためのアレンジで、あたかもスタジオのような趣を自宅で楽しむことができる。
鏡つき引き戸の奥は、左右にロフトがある部屋。将来的には子供部屋にすることも想定し、中央に間仕切りを設けたり、ロフトベッドにもできるよう考慮した設計である。現在はたっぷりとした収納スペースとして活用中。
都会の中でプライバシーを守りながら、中庭に開いた形で陽射しにも恵まれた家。親子屋根の外観が象徴するように、家族それぞれが無理のない距離感で暮らし、自然にコミュニケーションをとりながら、心地よい親子の時間をこの先もずっと楽しんでいくことだろう。
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