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命と資産を守る「地震に強い家づくり」とは?
地震国の日本では、防災は常に意識しなければならないこと。補強やリフォーム、新築のときには、地震に強い家づくりを検討することが大切です。
Junko Kawakami
2018年6月19日
Freelance since 1999.
日本は自然が豊かな一方で、地震の多い国でもある。9月1日の防災の日は1923年の関東大震災にちなんだものだが、この数十年間だけでも阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震など、大規模な地震に見舞われており、世界で起こる震度6以上の地震の5回に1回は日本で起こっているといわれる。
家には雨風から住む人の身を守ってくれるシェルターとしての機能がある一方で、倒壊すれば命を奪うものにもなる。地震に強い住宅を手に入れることは、命と資産を守る上で、重要な防災対策となる。そこで、この記事では、Houzzに登録しているプロによる「地震に強い家づくり」をご紹介する。
家には雨風から住む人の身を守ってくれるシェルターとしての機能がある一方で、倒壊すれば命を奪うものにもなる。地震に強い住宅を手に入れることは、命と資産を守る上で、重要な防災対策となる。そこで、この記事では、Houzzに登録しているプロによる「地震に強い家づくり」をご紹介する。
外壁をはがし、新たに筋交を取付けて補強したところ(〈株式会社耐震防災〉提供)
既存の家を補強する
耐震診断・耐震リフォームを実施する
すでに立っている家の場合、耐震診断を行って、耐震強度が満たないと判断された場合は、耐震補強やリフォームを行うのが、地震に備える1つの方法だ。「1981年5月末以前のいわゆる旧耐震基準の時代に建てられた建物のほか、構造計算を行わずに増改築などをして手を加えた建物についても、耐震強度が失われている場合がありますので注意が必要です」と耐震診断、耐震補強・リフォームを手掛ける建築家、坂田真二さんは話す。
既存の家を補強する
耐震診断・耐震リフォームを実施する
すでに立っている家の場合、耐震診断を行って、耐震強度が満たないと判断された場合は、耐震補強やリフォームを行うのが、地震に備える1つの方法だ。「1981年5月末以前のいわゆる旧耐震基準の時代に建てられた建物のほか、構造計算を行わずに増改築などをして手を加えた建物についても、耐震強度が失われている場合がありますので注意が必要です」と耐震診断、耐震補強・リフォームを手掛ける建築家、坂田真二さんは話す。
内装をはがし、構造用合板により補強したところ(〈株式会社耐震防災〉提供)
耐震診断から補強工事・リフォームへの流れとしては、まず建築士が現地に赴き、建物の面積、高さ、間取り、床下、小屋裏、建物の劣化状況などを調査し、「耐震改修促進法」に基づく耐震診断法により耐震強度の判定を行い、強度が基準に満たない場合は、補強工事を行う。
耐震診断から補強工事・リフォームへの流れとしては、まず建築士が現地に赴き、建物の面積、高さ、間取り、床下、小屋裏、建物の劣化状況などを調査し、「耐震改修促進法」に基づく耐震診断法により耐震強度の判定を行い、強度が基準に満たない場合は、補強工事を行う。
基礎の補強における筋交いのようす(〈株式会社耐震防災〉提供)
建物の面積や工事の規模にもよる。耐震補強工事を多く手がける〈株式会社耐震防災〉では、工事期間は20〜30坪ほどの住宅で1〜1ヵ月半、コストはおおむね300〜450万円程度とのこと。決して小さな出費ではないが、自治体によっては補助金制度がある場合もある。
「専門の相談部署がある自治体もあるので、まず問い合わせてみるのがおすすめです。補助金制度を利用できる工事は登録された設計事務所、建設会社だけに限定されている場合もあり、その場合は自治体から専門業者の情報をもらえます。また、〈日本建築防災協会〉のホームページでも、各都道府県の窓口、設計事務所を探せます」と坂田さん。
また、普段からできることとしては、建物の水漏れや雨漏り、きしみ、外壁や基礎のクラック(ひび)などチェックして、維持管理をこまめにしっかり行うことも重要だ。
建物の面積や工事の規模にもよる。耐震補強工事を多く手がける〈株式会社耐震防災〉では、工事期間は20〜30坪ほどの住宅で1〜1ヵ月半、コストはおおむね300〜450万円程度とのこと。決して小さな出費ではないが、自治体によっては補助金制度がある場合もある。
「専門の相談部署がある自治体もあるので、まず問い合わせてみるのがおすすめです。補助金制度を利用できる工事は登録された設計事務所、建設会社だけに限定されている場合もあり、その場合は自治体から専門業者の情報をもらえます。また、〈日本建築防災協会〉のホームページでも、各都道府県の窓口、設計事務所を探せます」と坂田さん。
また、普段からできることとしては、建物の水漏れや雨漏り、きしみ、外壁や基礎のクラック(ひび)などチェックして、維持管理をこまめにしっかり行うことも重要だ。
新築で検討したい地震対策
建物を支える地盤を強くする
新耐震基準を満たした家を建てても、家の下にある地面そのものが液状化してしまっては、ダメージは避けられない。だが、平地が海沿いに集中しており、河川も多い日本は、軟弱な地盤も少なくない。そうした土地に家を建てる際には、まず、地盤対策を行うという方法がある。
例えば、〈一般社団法人 地盤対策協議会〉の《スーパージオ工法》は、再生プラスティック製の「スーパージオ材」(写真の黒いブロック状のもの)を敷き詰めた上に家を建て、液状化が起こった際にも建物に被害が及ばないようにする工法だ。
建物を支える地盤を強くする
新耐震基準を満たした家を建てても、家の下にある地面そのものが液状化してしまっては、ダメージは避けられない。だが、平地が海沿いに集中しており、河川も多い日本は、軟弱な地盤も少なくない。そうした土地に家を建てる際には、まず、地盤対策を行うという方法がある。
例えば、〈一般社団法人 地盤対策協議会〉の《スーパージオ工法》は、再生プラスティック製の「スーパージオ材」(写真の黒いブロック状のもの)を敷き詰めた上に家を建て、液状化が起こった際にも建物に被害が及ばないようにする工法だ。
液状化とは、砂の多い地盤で起こりやすい現象で、普段は地中で安定的な状態にある砂と水分が、地震の揺れで砂の粒子がバラバラになることで、地盤が液体のような状態になる現象のこと。しかし、《スーパージオ工法》では、地震動によって生じた水分をスーパージオ材の中にためる(写真参照)ことで、周囲の地盤の液状化を防ぐことができる。実際、東日本大震災のときに液状化が起こった船橋市でも、69棟のスーパージオ工法採用住宅は倒壊せず、不同沈下する(地盤が不均等に沈下して建物が傾く)こともなかった。
また、地震の揺れを吸収する免震作用があるので、建物自体に伝わる揺れが優しくなり、木造家屋に大きなダメージを与える「キラーパルス」が発生しないため、直下型地震対策になるとされている。
費用はかかるが、5万円で10年の免震保証が受けられる(最大30年年まで延長可能)。
また、地震の揺れを吸収する免震作用があるので、建物自体に伝わる揺れが優しくなり、木造家屋に大きなダメージを与える「キラーパルス」が発生しないため、直下型地震対策になるとされている。
費用はかかるが、5万円で10年の免震保証が受けられる(最大30年年まで延長可能)。
耐震性の高い木造住宅を選ぶ
木造建築は日本の伝統でもあり、「やはり木の家に住みたい」と思う日本人は多い。一方で、「木の家は鉄筋コンクリートや鉄骨に比べて耐震性が低い」というイメージもある。たしかに、旧耐震基準時代(1981年5月末以前)に建てられた建物は大きな揺れで倒壊するリスクが高いが、それは木造でもRCや鉄骨でも同じこと。
「木造は弱い」というイメージの背景にはいわゆる「4号特例」をめぐる問題がある。建築基準法6条1項4号において、2階建て以下、延面積500平方メートル以下、高さ13m以下、軒の高さ9m以下の木造建物は「4号建築物」とされ、構造計算が義務付けられておらず、建築確認での構造計算書などの資料の提出を免除されているため、この制度を利用した建物のなかには構造強度の足りない建物ものが存在するのだ。もちろん、「4号特例」の建物であっても規定の基準を満たした建物であれば十分な耐震性があるはずなのだが、抜き打ち検査などを行うと条件を満たしていない建物が少なからず見つかるのが現状である。そうした住宅が地震で倒壊すると「木造は弱い」というイメージにつながってしまうのだ。
木造建築は日本の伝統でもあり、「やはり木の家に住みたい」と思う日本人は多い。一方で、「木の家は鉄筋コンクリートや鉄骨に比べて耐震性が低い」というイメージもある。たしかに、旧耐震基準時代(1981年5月末以前)に建てられた建物は大きな揺れで倒壊するリスクが高いが、それは木造でもRCや鉄骨でも同じこと。
「木造は弱い」というイメージの背景にはいわゆる「4号特例」をめぐる問題がある。建築基準法6条1項4号において、2階建て以下、延面積500平方メートル以下、高さ13m以下、軒の高さ9m以下の木造建物は「4号建築物」とされ、構造計算が義務付けられておらず、建築確認での構造計算書などの資料の提出を免除されているため、この制度を利用した建物のなかには構造強度の足りない建物ものが存在するのだ。もちろん、「4号特例」の建物であっても規定の基準を満たした建物であれば十分な耐震性があるはずなのだが、抜き打ち検査などを行うと条件を満たしていない建物が少なからず見つかるのが現状である。そうした住宅が地震で倒壊すると「木造は弱い」というイメージにつながってしまうのだ。
そんななか、〈エヌ・シー・エヌ〉が開発したのは、耐震性の高い木造住宅をつくるため、必ず構造計算を行い、安定した構造強度のある材料を使う《SE構法》だ。
《SE構法》では、柱や梁には強度を確保した質の高い集成材を使い、地震の揺れによって損壊の起こりやすい接合部には金物を使うことで、合理的かつ安定的に構造強度を上げた躯体をつくる。完成引き渡しから10年間は無償保証を提供し、10年経過後も、指定された検査メンテナンスを行うことにより、さらに10年間の保証延長が可能だ。先日の熊本地震においても《SE構法》で建てた住宅は倒壊事例がなかったことが確認されている。
また、木造でも9メートルのスパンをとることが可能となり、大空間をつくれるので、設計の自由度が高まる点もメリットだ。
《SE構法》では、柱や梁には強度を確保した質の高い集成材を使い、地震の揺れによって損壊の起こりやすい接合部には金物を使うことで、合理的かつ安定的に構造強度を上げた躯体をつくる。完成引き渡しから10年間は無償保証を提供し、10年経過後も、指定された検査メンテナンスを行うことにより、さらに10年間の保証延長が可能だ。先日の熊本地震においても《SE構法》で建てた住宅は倒壊事例がなかったことが確認されている。
また、木造でも9メートルのスパンをとることが可能となり、大空間をつくれるので、設計の自由度が高まる点もメリットだ。
《SE構法》の家は、構法のノウハウを身につけた登録業者(工務店、設計事務所など)によって建てられる。新潟県の〈アーキレーベル 鈴木組〉も登録業者の1つで、自社で手掛ける住宅のすべてにこの構法を採用している。
「耐震性を高めるために住環境やデザインが犠牲になるとしたら、本当に資産価値のある高性能な住宅とはいえません。《SE構法》の場合は木造住宅でも大型建造物同様の構造計算を行うので、工学的な安全性の裏付けをとりながら、大空間、大開口などの自由な空間デザインを提案できる点が魅力です」と同社の鈴木巌さんは話す。
「耐震性を高めるために住環境やデザインが犠牲になるとしたら、本当に資産価値のある高性能な住宅とはいえません。《SE構法》の場合は木造住宅でも大型建造物同様の構造計算を行うので、工学的な安全性の裏付けをとりながら、大空間、大開口などの自由な空間デザインを提案できる点が魅力です」と同社の鈴木巌さんは話す。
また、構造体(スケルトン)をつくってその中に間取り、内装、設備(インフィル)をつくっていくという「スケルトン&インフィル」方式となるので、建てた後も、暮らしの変化にあわせてリフォームやリノベーションをしやすいというメリットもある。
神奈川県の〈明治ホームズ〉も、登録業者として、施主が耐震性を重視する場合は、《SE構法》を採用している。東日本大震災以降は、耐震性の高い住宅を求める施主が増え、最近では手がけている住宅の5割が《SE構法》となっている。写真のような大きな吹き抜けのある木造住宅は、《SE構法》ならではの設計だ。
《SE構法》にデメリットがあるとすれば、通常の木造住宅よりもコストがかかる点だ。「これまでの実績では、《SE構法》のコストは坪7〜10万円ほどです。ただし、一般的な木造住宅の全体コストにおいて構造部材が占める割合は10%ほどですが、《SE構法》を採用したからといってそれが2倍、3倍に膨らむわけではありません。例えば、キッチンの仕様にかける予算と大差なかったりします。究極的には、家づくりについてどこにお金をかけるかは施主の選択になります」と〈明治ホームズ〉の建築家、榎俊二さんは話す。
災害時のインフラになるスマートハウスを選択する
大きな震災に見舞われたとき、まず困るのが水道や電気などのライフラインを絶たれること。そこで、愛知県東海市の〈榊原デザイン一級建築士事務所〉の建築家、榊原正樹さんが考案したのが、《スマートガレージハウス》だ。
愛知県は車社会で複数の車を所有する世帯も多い。榊原さんはもともと大のオープンカー好きで、1700人近いの愛好家が集まる同好会も主宰しており、ガレージハウスの設計を得意としていた。そんななか、東日本大震災をきっかけに太陽光発電や家庭用蓄電池によって電力自家供給できるスマートハウスへの関心への高まったのをうけ、自動車やガレージを災害時のインフラとして活用できる住宅《スマートガレージハウス》を考案した。
大きな震災に見舞われたとき、まず困るのが水道や電気などのライフラインを絶たれること。そこで、愛知県東海市の〈榊原デザイン一級建築士事務所〉の建築家、榊原正樹さんが考案したのが、《スマートガレージハウス》だ。
愛知県は車社会で複数の車を所有する世帯も多い。榊原さんはもともと大のオープンカー好きで、1700人近いの愛好家が集まる同好会も主宰しており、ガレージハウスの設計を得意としていた。そんななか、東日本大震災をきっかけに太陽光発電や家庭用蓄電池によって電力自家供給できるスマートハウスへの関心への高まったのをうけ、自動車やガレージを災害時のインフラとして活用できる住宅《スマートガレージハウス》を考案した。
スマートメーターを使って家庭用電力の発電・供給を効率的に管理するホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)も導入。太陽光発電を利用し、日常時は売電によって収入も生み出す。高気密、高断熱の建材を使用し、地熱を利用して冷暖房コストも下げる。
たとえ災害に襲われても、家が無事で、エネルギーがあれば、日常生活の復旧はぐっと楽になる。例えば写真の日産「リーフ」であれば大容量のバッテリーに約2日分の電力を蓄えておくことができる。電気自動車の力を利用した、「普段から環境に優しく、非常時には被災者に優しい」家である。
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