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Houzzツアー:沖縄の海をダイナミックに望む、建築家の自邸兼オフィス
段差を巧みに利用し、光と風の心地よい流れと贅沢な眺望を実現。すべての居室から青い海を眺められる、沖縄の家。
Miki Anzai
2016年8月15日
沖縄本島の中部、東海岸沿いに位置するうるま市。エメラルドグリーンに近い、碧色の海を見下ろせる高台に立つのは、コンクリート造の重厚な建物だ。このファサードの印象からは想像もつかない、とてつもなく開放的な空間が、この家には展開されている。なんと、玄関とトイレを除く全室から、目の前に広がる海の景色を一望できるのだ。県内で数多くの住宅建築を手がける建築家が、自邸兼オフィスとして設計し、インテリアデコレーターの夫人と愛犬とともに暮らす、自然と一体化した家。沖縄という土地に適した、通風や眺望を空間に大胆に取り込んだ住宅建築が高く評価され、第1回沖縄建築賞の正賞などを受賞している。
広大な海を眺め、潮風を肌で感じる
なんといっても圧巻なのは、大開口を設けたリビング。外の景色を額縁のように切り取る眺めだけでなく、そこからテラスにも出られるので、沖縄の青空と海との一体感を味わえる。この内外の連続性を実現させているのが、大型の木製ガラス引き違い戸だ。全3枚の引き戸を、テラスとの境の壁内(戸袋)にすべておさめれば、四季を通じてダイナミックで心地よい大空間が生まれる。
なんといっても圧巻なのは、大開口を設けたリビング。外の景色を額縁のように切り取る眺めだけでなく、そこからテラスにも出られるので、沖縄の青空と海との一体感を味わえる。この内外の連続性を実現させているのが、大型の木製ガラス引き違い戸だ。全3枚の引き戸を、テラスとの境の壁内(戸袋)にすべておさめれば、四季を通じてダイナミックで心地よい大空間が生まれる。
モダンかつシンプルな建物外観。前面道路(南)側から眺めたときに、奥行き感や立体感が感じられるよう、手前から段階的に建物が高くなるように計画されている。
どんなHouzz?
居住形態:新築の自宅兼オフィス
住まい手:夫婦+愛犬1匹
所在地:沖縄県うるま市
構造:鉄筋コンクリートラーメン構造
設計・監理:株式会社クレールアーキラボ
施工:有限会社仲真組
延床面積:211.60平方メートル(1階、2階)
敷地面積:630.82平方メートル
竣工:2015年1月
(2015年、第1回沖縄建築賞 住宅建築部門 正賞受賞、日本建築学会 建築九州賞佳作受賞)
どんなHouzz?
居住形態:新築の自宅兼オフィス
住まい手:夫婦+愛犬1匹
所在地:沖縄県うるま市
構造:鉄筋コンクリートラーメン構造
設計・監理:株式会社クレールアーキラボ
施工:有限会社仲真組
延床面積:211.60平方メートル(1階、2階)
敷地面積:630.82平方メートル
竣工:2015年1月
(2015年、第1回沖縄建築賞 住宅建築部門 正賞受賞、日本建築学会 建築九州賞佳作受賞)
殺風景になりがちなコンクリートの壁には、施工時に型枠を留めるボルト(セパ)を利用して、絵画や時計などを掛けることで、フォーカルポイントをつくり出している。
段差が生む視線と風の流れ
ワンルームのような大空間の床に、あえて高低差をつけることで、視線と風の抜ける道を確保している。一番奥(西側)のダイニングエリアの天井高は285cm。リビングの床は、ダイニングより30cm下げ、さらにその先のテラスは、リビングより10cmほど床を低く設定している。
段差が生む視線と風の流れ
ワンルームのような大空間の床に、あえて高低差をつけることで、視線と風の抜ける道を確保している。一番奥(西側)のダイニングエリアの天井高は285cm。リビングの床は、ダイニングより30cm下げ、さらにその先のテラスは、リビングより10cmほど床を低く設定している。
各エリアの床を、西から海側の東に向かって段差をつけることで、「空間に気流が生まれ、自然に風が流れやすくなるうえ、視線にも変化が生まれ、より広く感じられます」と、その効果を語る畠山武史さん。もともとこの敷地(約190坪)のおよそ1/3が斜面ということもあり、「微妙な斜面のレベル差をそのまま活かすことで、コストを抑えることもできました」と語る。
快適な光と風を取り込む小窓
ダイニングの奥は坪庭になっており、室内との境界線には、リビングと同様、ガラス引き違い戸を設置。引き戸をすべて開けると、開放感を得られるだけでなく、外壁にレイアウトした小窓(90センチ平方メートル)から、さわやかな風や光が流れ込む。この開口を通して、季節ごとに変わる木々の景色も楽しめるのだ。外壁の厚さは20cmだが、四方を斜めにつくることで、厚さを感じさせない工夫もなされている。
「粗」と「色彩と質感」の調和
内壁・外壁および天井は、普通型枠のコンクリート打ち放し仕上げで、床には、割肌の玄昌石(げんしょうせき)を採用した。これには、晴天ばかりでなく台風の多い沖縄の自然と対峙しながら、「自然と一体化できるような粗っぽい空間にしたかったから」という狙いがある。いっぽう、この粗っぽいイメージの躯体に対して「インテリアは無垢や質感のある素材を中心に、色彩とのバランスを配慮した」そうで、部屋全体が見事に調和している。
ちなみに台風到来時には、引き戸に専用の防風スクリーン「ハリケーンファブリック」という商品を設置するので、暴風や豪雨、飛来物からも建物を守ることができる。
ダイニングの奥は坪庭になっており、室内との境界線には、リビングと同様、ガラス引き違い戸を設置。引き戸をすべて開けると、開放感を得られるだけでなく、外壁にレイアウトした小窓(90センチ平方メートル)から、さわやかな風や光が流れ込む。この開口を通して、季節ごとに変わる木々の景色も楽しめるのだ。外壁の厚さは20cmだが、四方を斜めにつくることで、厚さを感じさせない工夫もなされている。
「粗」と「色彩と質感」の調和
内壁・外壁および天井は、普通型枠のコンクリート打ち放し仕上げで、床には、割肌の玄昌石(げんしょうせき)を採用した。これには、晴天ばかりでなく台風の多い沖縄の自然と対峙しながら、「自然と一体化できるような粗っぽい空間にしたかったから」という狙いがある。いっぽう、この粗っぽいイメージの躯体に対して「インテリアは無垢や質感のある素材を中心に、色彩とのバランスを配慮した」そうで、部屋全体が見事に調和している。
ちなみに台風到来時には、引き戸に専用の防風スクリーン「ハリケーンファブリック」という商品を設置するので、暴風や豪雨、飛来物からも建物を守ることができる。
テーブルと一体化したキッチン
アイランドキッチンは、全長410cmの無垢の一枚板を使い、ダイニングテーブルと一体化させている。フラットなつくりにすることで、作業が楽になるだけでなく、「ホームパーティーを開くと、友人たちが談笑しながらキッチンを囲み、料理を手伝ってくれます。でき上がった食事をすぐに出して、ワイワイと話しながら食べられるのも楽しいです」と話す畠山さん。
キッチン・ダイニングのコンクリート壁は、構造上、厚くしなくてもよい場所に窓を取り付け、その下部を窓と同じサイズにくりぬいて、飾り棚を設けている。壁の向かい側に配した特注のキッチンキャビネットは、部屋を仕切る壁の役割も果たしている。
アイランドキッチンは、全長410cmの無垢の一枚板を使い、ダイニングテーブルと一体化させている。フラットなつくりにすることで、作業が楽になるだけでなく、「ホームパーティーを開くと、友人たちが談笑しながらキッチンを囲み、料理を手伝ってくれます。でき上がった食事をすぐに出して、ワイワイと話しながら食べられるのも楽しいです」と話す畠山さん。
キッチン・ダイニングのコンクリート壁は、構造上、厚くしなくてもよい場所に窓を取り付け、その下部を窓と同じサイズにくりぬいて、飾り棚を設けている。壁の向かい側に配した特注のキッチンキャビネットは、部屋を仕切る壁の役割も果たしている。
2つの玄関に続くアプローチ
右側が建築設計事務所の入口で、左側が自邸の入口。店舗エリアと住空間は、内部でも完全に分離されている。
右側が建築設計事務所の入口で、左側が自邸の入口。店舗エリアと住空間は、内部でも完全に分離されている。
海を眺めながら働く贅沢
オフィスからの眺望も抜群だ。リビングの開口のような引き違い戸ではないが、アルミの開き戸となっており、外にも出られる。また、コンクリートの壁を、杉板型枠の打ち放し仕上げにすることで、コンクリートながら木目のような模様を表現。普通型枠とは違った風合いを演出している。
オフィスからの眺望も抜群だ。リビングの開口のような引き違い戸ではないが、アルミの開き戸となっており、外にも出られる。また、コンクリートの壁を、杉板型枠の打ち放し仕上げにすることで、コンクリートながら木目のような模様を表現。普通型枠とは違った風合いを演出している。
水の流れと光の移ろい
自邸の玄関からポーチに沿っては、水盤が設けられ、壁泉から流れ出る水が、暑い夏でも涼しさを感じさせてくれる。ポーチとの境をガラス張りにして天井を吹き抜けにすることで、季節や時間の移ろいとともに、さまざまな表情が楽しめる。日が暮れてから水中ライトを灯せば、神秘的な世界が広がり、癒されるという。
自邸の玄関からポーチに沿っては、水盤が設けられ、壁泉から流れ出る水が、暑い夏でも涼しさを感じさせてくれる。ポーチとの境をガラス張りにして天井を吹き抜けにすることで、季節や時間の移ろいとともに、さまざまな表情が楽しめる。日が暮れてから水中ライトを灯せば、神秘的な世界が広がり、癒されるという。
期待が高まる玄関
水、光、木、石を取り入れた玄関からは、まだ海は見えない。玄関を上がり、リビングに入った瞬間、息をのむ光景が待っている。
開放感あふれるリビングの感動をよりいっそう高めているのが、この玄関の天井だ。リビングの天井高(300cm)より、あえて90cmも低く抑えているので、続きのリビングが実際よりも格段に広く感じられる仕掛けになっている。
水、光、木、石を取り入れた玄関からは、まだ海は見えない。玄関を上がり、リビングに入った瞬間、息をのむ光景が待っている。
開放感あふれるリビングの感動をよりいっそう高めているのが、この玄関の天井だ。リビングの天井高(300cm)より、あえて90cmも低く抑えているので、続きのリビングが実際よりも格段に広く感じられる仕掛けになっている。
深い庇と外壁でよい眺望を確保
この寝室を含め、海に向かった各部屋の大開口には、室内の高さと揃えた深い庇と、長めの外壁を設けている。こうすることで、日射を遮ることができるだけでなく、余計な周囲の景色が消せるため、どこからでも素晴らしい景色を見渡せる。床材は、重厚で硬い無垢のロックファー(アジアンウォールナット)材を使用し、リビングとは趣を変えている。
この寝室を含め、海に向かった各部屋の大開口には、室内の高さと揃えた深い庇と、長めの外壁を設けている。こうすることで、日射を遮ることができるだけでなく、余計な周囲の景色が消せるため、どこからでも素晴らしい景色を見渡せる。床材は、重厚で硬い無垢のロックファー(アジアンウォールナット)材を使用し、リビングとは趣を変えている。
浴室もオーシャンビュー
湯船に入りながらでも、500m先に広がる海を見渡せる。浴槽はより多くのパノラマビューを取り込める高さに設定。天井は、畠山夫人が左官職人と一緒に作業をし、自らのイメージ通り、こてのあとが少し残る質感と、青を基調にところどころ黒を混ぜることで、理想の風合いを実現させた。浴槽は大和重工、シャワーはグローエ、洗面台は大洋金物(Tform)。
湯船に入りながらでも、500m先に広がる海を見渡せる。浴槽はより多くのパノラマビューを取り込める高さに設定。天井は、畠山夫人が左官職人と一緒に作業をし、自らのイメージ通り、こてのあとが少し残る質感と、青を基調にところどころ黒を混ぜることで、理想の風合いを実現させた。浴槽は大和重工、シャワーはグローエ、洗面台は大洋金物(Tform)。
肌ざわりのよい石材
階段、浴室とリビング・ダイニングの床を玄昌石で統一したのは、「コンクリートと色の相性がよく、インテリアが映えるから」だけでなく、「表面がツルツルと滑らないため、愛犬も安心して部屋中を駆け巡れるから」と語る畠山さん。「夏は、ひんやりとして、裸足で歩くと気持ちよい」そうだ。
階段、浴室とリビング・ダイニングの床を玄昌石で統一したのは、「コンクリートと色の相性がよく、インテリアが映えるから」だけでなく、「表面がツルツルと滑らないため、愛犬も安心して部屋中を駆け巡れるから」と語る畠山さん。「夏は、ひんやりとして、裸足で歩くと気持ちよい」そうだ。
風に触れ、空に近づく
1階の寝室の上には、ゲストルームや趣味の部屋として使える約12畳の開放的な空間をつくった。北(写真左)側のピクチャーウィンドウは、ガラスをはめ込んだフィックス窓にしているが、海に面した東側の開口からはベランダにも出られ、さらに高い位置から海を見下ろすことができる。
1階の寝室の上には、ゲストルームや趣味の部屋として使える約12畳の開放的な空間をつくった。北(写真左)側のピクチャーウィンドウは、ガラスをはめ込んだフィックス窓にしているが、海に面した東側の開口からはベランダにも出られ、さらに高い位置から海を見下ろすことができる。
海の眺望を最大限に取り込む
真東にある海の方向に沿って、コンクリートの壁をまっすぐ配置し、その壁に仕切られた3つの大開口が、きれいに雁行(がんこう)している。前面道路(平面図下部、次の写真の左側)から建物奥(平面図上部、次の写真の右側)に向かって、オフィス、リビング、浴室、寝室と、公共性の高い順に室を配している。各空間を仕切る25cm厚の壁を抜けるごとに、それぞれ違った海の姿が望めるのも、大きな魅力だ。
真東にある海の方向に沿って、コンクリートの壁をまっすぐ配置し、その壁に仕切られた3つの大開口が、きれいに雁行(がんこう)している。前面道路(平面図下部、次の写真の左側)から建物奥(平面図上部、次の写真の右側)に向かって、オフィス、リビング、浴室、寝室と、公共性の高い順に室を配している。各空間を仕切る25cm厚の壁を抜けるごとに、それぞれ違った海の姿が望めるのも、大きな魅力だ。
照明は色を揃えつつ、形状にメリハリをつけることで、建物は夕景にも美しく映える。
沖縄の海を一望できる絶好のロケーションを最大限に活かし、「光が映し出す陰影、風が運ぶ四季の香り、雨音が奏でる季節の移ろい、その自然を思う心を大切に、長く愛される建築、普遍的な建築」をめざしたという畠山さん。自らと家族、仕事場のために建てた自邸には、建築家の設計哲学が凝縮されている。
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沖縄の海を一望できる絶好のロケーションを最大限に活かし、「光が映し出す陰影、風が運ぶ四季の香り、雨音が奏でる季節の移ろい、その自然を思う心を大切に、長く愛される建築、普遍的な建築」をめざしたという畠山さん。自らと家族、仕事場のために建てた自邸には、建築家の設計哲学が凝縮されている。
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