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Houzzツアー:究極の自作タイニーハウスで送る、自給自足のオフグリッド生活
家賃の負担や住宅ローンはもういやだ――そう考えた3人家族がわずか100万円足らずの資金で実現した、緑の中のオフグリッドなタイニーハウス暮らしとは?
Deirdre Avenell
2016年7月9日
「人生にレモンを与えられたら、レモネードを作れ」という格言がある。「逆境に見舞われたら、それを利用してベストをつくせ」という意味だ。マレーさんとヴィッキーさんのグッドチャイルド夫妻が人生をかけた大きな冒険に乗り出したのは、まさにこの精神を発揮してのことだった。自分たちの家を自分たちの力だけで造りあげたのだ。幼い子どもと3人で暮らしていた賃貸の家から追い出されることになったとき、マレーさんは「もう賃貸ぐらしはやめよう」と決意した。「毎月賃料を払うのはお金を捨てるようなもの。終の棲家になるはずもなく、長い目で見ると何の保証もありませんからね」とマレーさんは言う。
住宅ローンを組む資金のなかった二人は、別のアプローチをとることにした。当時、オーストラリアでは知られ始めたばかりのタイニーハウスにトライすることにしたのだ。「予算のことと、移動できることを考えて、トレーラーの上にタイニーハウスを造ればいいかも、と思ったんです。私たち夫婦は稼ぎがいいわけではありません。でも好きなことをして、シンプルに暮らしたいと思っています」とマレーさんは話す。ヴィクトリア州ヤラバレーの農地を一角を借りて建てた広さ9.9平方メートルの新居は、そんな思いをかなえた家だ。
住宅ローンを組む資金のなかった二人は、別のアプローチをとることにした。当時、オーストラリアでは知られ始めたばかりのタイニーハウスにトライすることにしたのだ。「予算のことと、移動できることを考えて、トレーラーの上にタイニーハウスを造ればいいかも、と思ったんです。私たち夫婦は稼ぎがいいわけではありません。でも好きなことをして、シンプルに暮らしたいと思っています」とマレーさんは話す。ヴィクトリア州ヤラバレーの農地を一角を借りて建てた広さ9.9平方メートルの新居は、そんな思いをかなえた家だ。
どんなHouzz?
居住者:マレー・グッドチャイルドさん(鍼灸師)、妻のヴィッキーさん(ヨガインストラクター)、4歳の娘グレースちゃん
所在地:オーストラリア、ヴィクトリア州ヤラバレー
規模:9.9平方メートル(別に5平方メートルのデッキあり)
費用:12,000オーストラリアドル(日本円換算で約92万円)
特徴:小さなワンルームの空間ながら、キッチン付きリビング、バスルーム、書斎スペース、中2階のベッドルーム、バスルームの上にさらにもう1つベッドルームを備えている。移動も比較的簡単にできる。
居住者:マレー・グッドチャイルドさん(鍼灸師)、妻のヴィッキーさん(ヨガインストラクター)、4歳の娘グレースちゃん
所在地:オーストラリア、ヴィクトリア州ヤラバレー
規模:9.9平方メートル(別に5平方メートルのデッキあり)
費用:12,000オーストラリアドル(日本円換算で約92万円)
特徴:小さなワンルームの空間ながら、キッチン付きリビング、バスルーム、書斎スペース、中2階のベッドルーム、バスルームの上にさらにもう1つベッドルームを備えている。移動も比較的簡単にできる。
マレーさんが小さな家で暮らすというアイデアを知ったのは、実際にタイニーハウスを自分で建てた人に会ったのがきっかけだった。すぐに自分もやってみたいと思ったという。「ごく限られたスペースでも生活できる点と、小さな空間でもじつに豊かに暮らせる点がすばらしいと思いました。」
「しかもとても居心地のいい暮らしに見えました。自分のなかの子ども心をくすぐられましたし、人の身の丈に合った、落ち着ける空間の広さにひかれたんです」とマレーさんは言う。だが、生活全体をここまでサイズダウンすることについて、妻のヴィッキーさんの反応はどうだったのだろうか。「とても乗り気でしたよ。自分たちの置かれた状況を考えると、とても自然な選択に思えましたから。」
「しかもとても居心地のいい暮らしに見えました。自分のなかの子ども心をくすぐられましたし、人の身の丈に合った、落ち着ける空間の広さにひかれたんです」とマレーさんは言う。だが、生活全体をここまでサイズダウンすることについて、妻のヴィッキーさんの反応はどうだったのだろうか。「とても乗り気でしたよ。自分たちの置かれた状況を考えると、とても自然な選択に思えましたから。」
タイニーハウスで暮らすという考えにインスピレーションを得た夫妻は、新居づくりの具体的な計画に取りかかった。「設計は、まず必要な空間を考えることから始まりました。私たちは二人ともフリーで仕事をしているので、事務作業用のオフィススペースが必要ですし、娘がのびのびと育てる空間も必須です」とマレーさん。
マレーさんもヴィッキーさんも、実際に建築を手がけた経験はなかった。そこで、いちばん手近な情報源、インターネットで情報集めを始めた。
「文字どおり何百時間もかけてネットで情報収集しました。ありとあらゆる情報を集め、そこから自分たちの暮らしにあうコンセプトを練っていきました」
マレーさんもヴィッキーさんも、実際に建築を手がけた経験はなかった。そこで、いちばん手近な情報源、インターネットで情報集めを始めた。
「文字どおり何百時間もかけてネットで情報収集しました。ありとあらゆる情報を集め、そこから自分たちの暮らしにあうコンセプトを練っていきました」
設計を自分たちでやってみると、建築作業も自分たちの手でやろうという気になった。費用節約効果はもちろんだが、「自分で家を建てる」ことを実感してみたいと思ったのだ。「自分が持っているもの、使っているものがどこから来たのか、その背景にある物語を知るほどに、生活が豊かで意味のあるものになる気がします」とマレーさんは言う。「創意工夫を凝らすのは楽しいことですし、限られた予算のなかで、限界に挑戦するのも大好きなんです。」
2015年3月に建築作業に取りかかった。約1年後、夫妻が手がけた家はついに完成を迎える。「建築にかかった費用は約12,000オーストラリアドル(約92万円)です。ソーラー発電、配管、家具やその他小物類など、全部含めてこれだけ。とにかく何につけても『これは自分で作れないだろうか』『代わりに使えるものはないだろうか』と自問自答して工夫しました」とマレーさんは説明する。
2015年3月に建築作業に取りかかった。約1年後、夫妻が手がけた家はついに完成を迎える。「建築にかかった費用は約12,000オーストラリアドル(約92万円)です。ソーラー発電、配管、家具やその他小物類など、全部含めてこれだけ。とにかく何につけても『これは自分で作れないだろうか』『代わりに使えるものはないだろうか』と自問自答して工夫しました」とマレーさんは説明する。
設計はマレーさんが担当し、ヴィッキーさんも意見を出して手伝った。そうして夫妻は自分たちの思い通りの完璧なを形にできた。「たとえば、私はヨガをするので、まっすぐで平らな床が必要です。そこでトレーラーのタイヤハウスの上に床を設置しました」とマレーさん。その結果、家の高さは4.5メートルになった。
オーストラリアでは、住宅の平均的な天井の高さはおよそ2.4メートル。この家の場合、トレーラーの高さを考えると、やや窮屈になる。小さな家ではどんなスペースもむだにはできないため、ほとんどの場所が2つ以上の用途を兼ねた設計になっている。
オーストラリアでは、住宅の平均的な天井の高さはおよそ2.4メートル。この家の場合、トレーラーの高さを考えると、やや窮屈になる。小さな家ではどんなスペースもむだにはできないため、ほとんどの場所が2つ以上の用途を兼ねた設計になっている。
たとえば、キッチンはテーブルを引き出せばダイニングになる。テーブルは、調理用のキッチンカウンター、食事を楽しむダイニングテーブル、作業用のテーブルと1つで3役をこなす。さらに、写真の右側に見える、前後両サイドから収納できる引き出しキャビネットも。正面に見える3つの引き出しにはキッチン道具を収納しているが、キャビネットを引き出してぐるっと回転させると、後ろ側の引き出しにはクラフトに使う材料やツールが入っている。
キッチンはダブルシンク。シンクを使わないときは、ラミネート加工したベニヤ板(マレーさんお手製)を大きなほうのシンクと水切りの上にのせ、調理スペースとして使う。
キッチンはダブルシンク。シンクを使わないときは、ラミネート加工したベニヤ板(マレーさんお手製)を大きなほうのシンクと水切りの上にのせ、調理スペースとして使う。
使用した建材はどれも、耐久性、入手しやすさ、軽さ、コスト、そして家全体の雰囲気に合うかどうかを基準に選んだ。「何につけても、まずは手元にあるものをもとに設計を考える、という順番でやりました」とマレーさんは話す。「たとえば、まず窓を手に入れたら、次に窓枠をどうするか考える、という順番です。逆の順番だと、際限なくコストがかかってしまいますからね。」
リビングエリアのカウチを含め、多くの家具が夫妻の手作りだ。木のフレーム(もちろん中は収納スペースになっている)の上に並ぶクッションは、布団を再利用して作り直したもの。中の詰め物を裁断し、必要な形に整え、この家の雰囲気にぴったりのグリーンの生地のカバーをつけた。
「カウチのグリーンはこういう色にしたいという明確なイメージにあったので、この布を見つけたときは迷わず新品を購入しました。たまたまセールだったので安く買えましたが、いつでもいちばん安いものが手に入って節約できるわけではない、ということも学びましたね」とマレーさん。
「カウチのグリーンはこういう色にしたいという明確なイメージにあったので、この布を見つけたときは迷わず新品を購入しました。たまたまセールだったので安く買えましたが、いつでもいちばん安いものが手に入って節約できるわけではない、ということも学びましたね」とマレーさん。
「家のほとんどの部分は自分たちで作りました。家具や備品はすべてヴィッキーが担当し、かわいくまとめてくれました。彼女の意見をききながら私がデザインしたわけですから、世界に1つしかない作品です。」
タイニーハウスを建てる際のいちばんの苦労は、家族全員の快適な暮らしに必要なものを限られたスペースに収めること。これには相当の工夫がいる。寝室スペース2か所は家の両端につくったロフトでしっかり確保できたが、他にも夫妻の仕事用スペースや、ときにいはひとりになれるスペースも必要だった。
「建築途中で壁にぶつかったこともあります。中2階部分を入れたとたんに、開放感が消えてしまったんです」とマレーさんは振り返る。「あれこれと代案を考え、少しゆとりを持たせる工夫をしました。でも、それが設計の他の部分にひびいて、たとえば、窓が誰も手がとどかない高さになってしまう、といった問題も出てきてしまいました。」
「そういう問題を回収するためにさらに工夫を凝らし、最終的には最初の案よりもいい形になったと思います」とマレーさん。
「建築途中で壁にぶつかったこともあります。中2階部分を入れたとたんに、開放感が消えてしまったんです」とマレーさんは振り返る。「あれこれと代案を考え、少しゆとりを持たせる工夫をしました。でも、それが設計の他の部分にひびいて、たとえば、窓が誰も手がとどかない高さになってしまう、といった問題も出てきてしまいました。」
「そういう問題を回収するためにさらに工夫を凝らし、最終的には最初の案よりもいい形になったと思います」とマレーさん。
最終的には、存在感が大きすぎる中2階を開放感のあるキャットウォークに変更した。「カウチの頭上、低めの位置に、板をわたしたフロアをつくったんです。上へ上がって立つと2階の位置になります。板のすき間から光が通るので、下のカウチに座っていても狭い場所に閉塞感はありません。他にはないアイデアだと思いますよ」とマレーさんは話す。
「家づくりを通して気づいたのは、高さを変えると空間が変化するということですね」とマレーさん。。空間を無駄なく使おうとすれば、縦の空間を使いこなすしかない、というのがマレーさんの結論だ。「狭い空間ですが、同時に複数の会話が進行していもうるさい感じはしません。会話が交錯しないからだと思いますね。」
上階のキャットウォークに沿って設置した木の枝は、有機的なフォルムの手すりになっている。安全性を高めてくれるうえに、自然美を活かしたデザインにもなっている。マレーさんが川辺を散策していて見つけたものだ。再生材でできた家にラスティックな魅力をプラスしている。
上のフロアの後方にあたるロフト部分は夫妻の寝室。木製の棚板を支える支柱はやはり拾ってきたもので、枝というより1本の木に近い形だ。「つくられた空間」というより、木がそこに生えて伸びてきたかのような、自然な空間に思える。
窓を大きめにしたので、天井が低くても明るさと広さを感じられる。中古品を利用した窓は、開けると風が通り抜け、暑い夏の夜も快適だ。
窓を大きめにしたので、天井が低くても明るさと広さを感じられる。中古品を利用した窓は、開けると風が通り抜け、暑い夏の夜も快適だ。
ここはマレーさんのお気に入りの場所。寝室としても、くつろぎの場所としても申し分ない。「ベッドの上に座っていると、風が気持ちよく吹き抜けて、ひとりきりの気分を味わえるんです。ちょうど木のてっぺんにいるような気分ですね。」
セルフビルドにしたことで、コストを抑えられただけでなく、技術が必要な工事についても学ぶことができた。マレーさんは配管設備も自分で設置。外部の雨水タンクから水を引いて、オフグリッドの度合いを高めた家を実現した。
マレーさん手作りのシャワーブースには、日本の風呂をイメージした浴槽がある。合板に、エポキシ樹脂をコーディングして防水処置をした。浴槽はコンパクトだが深さがあり、雨水タンクから引いた水を入れ、薪ストーブを使った温水システムで温めて使う。
「コストがかかったのは建築の終盤です。配管と電気設備、塗装の部分でした。塗装は本当に大変でしたよ! でも油性のライミングステイン塗料を使ったら、安いヨーロッパアカマツのライニングボードにシックでラスティックな雰囲気が出せました」
マレーさん手作りのシャワーブースには、日本の風呂をイメージした浴槽がある。合板に、エポキシ樹脂をコーディングして防水処置をした。浴槽はコンパクトだが深さがあり、雨水タンクから引いた水を入れ、薪ストーブを使った温水システムで温めて使う。
「コストがかかったのは建築の終盤です。配管と電気設備、塗装の部分でした。塗装は本当に大変でしたよ! でも油性のライミングステイン塗料を使ったら、安いヨーロッパアカマツのライニングボードにシックでラスティックな雰囲気が出せました」
「この家に入ると、みんな子どものツリーハウスを思い出すみたいです。縦の空間に目がいきますし、階段をのぼって上へ上がれて、そこに使えるスペースがあるわけですから」とマレーさん。写真はバスルームの後方にあたる家の正面部分で、この階段をのぼるとグレースちゃんのロフトがある。ロフトには、おもちゃなどの持ちものを入れる作り付けの収納も。
下に見えるのは「ヌック」(「隅っこ」「隠れ場所」という意味)と呼んでいるスペース。グレースちゃんのロフトの下に位置し、家の正面にある階段のすぐ向かいにあたる。ひとりで静かに過ごしたいときにぴったりの場所だ。
あえて質素でシンプルに徹し、全体的にそっけなさもあるデザインは、日本の「わび・さび」にインスピレーションを受けたという。完璧ではないもの、はかないもの、不揃いなものに美を見いだす精神だ。「わびさび」は夫妻が家のイメージを求めてネットで情報集めをしていたときの検索キーワードの1つ。他に、「ジャパニーズスタイル」「禅」「リサイクル」「アップサイクル」を検索したという。
あえて質素でシンプルに徹し、全体的にそっけなさもあるデザインは、日本の「わび・さび」にインスピレーションを受けたという。完璧ではないもの、はかないもの、不揃いなものに美を見いだす精神だ。「わびさび」は夫妻が家のイメージを求めてネットで情報集めをしていたときの検索キーワードの1つ。他に、「ジャパニーズスタイル」「禅」「リサイクル」「アップサイクル」を検索したという。
子どもでも楽に安全に上のフロアへ出入りできるようにするのは、最重要事項だった。「4歳の娘がいるので、ロフトの寝室のトラップドア(隠し扉)の開け閉めは楽にできるか、ロフトへのぼるときの階段のサイズはちょうどいいか、など、娘にとっての安全性と使いやすさを常に検討しました」とマレーさん。
グレースちゃんが自分の寝室にいるときは、安全を考えて、階段へ続く引き戸の隠し扉は閉めるようにしている。「グレースの部屋から下のヌックへ降りる階段もあるのですが、普段はだいたいメインの階段を使っています」。グレースちゃんはどの階段も難なく上り下りできるそうだ。
グレースちゃんが自分の寝室にいるときは、安全を考えて、階段へ続く引き戸の隠し扉は閉めるようにしている。「グレースの部屋から下のヌックへ降りる階段もあるのですが、普段はだいたいメインの階段を使っています」。グレースちゃんはどの階段も難なく上り下りできるそうだ。
家のあちこちで目にするのが、オーストラリアのファンタジー作家、メイ・ギブスが生んだ「ガムナッツ・ベイビーズ」。グレースちゃんはもちろん、家族みんなが愛するキャラクターが目を楽しませてくれる。ここでは、ソーラー発電を使った照明を操作するメインスイッチの下にひっそりと。
雄大な眺めが広がるデッキ。その眺めの片隅にソーラーパネルが見える。家づくりで他の人の手を借りた数少ない部分の1つだ。「友人のドミニク・ホーキンスには、本当に感謝しています」とマレーさんは言う。「太陽発電を実現するために、いろいろと助けてくれたんです。長年使って処分するつもりだったからと、バッテリーを無料で譲ってくれましたし」とマレーさん。
太陽光利用により、自家発電が可能になり、オフグリッドをかなえたが、そのための資材も再生品を利用した。徹底して環境に配慮した家なのだ。「ドミニクは天才ですよ。彼がバッテリーを使える状態に直してくれたので、ソーラーエネルギーを活用できるようになりました。本当にすばらしいことです。」
太陽光利用により、自家発電が可能になり、オフグリッドをかなえたが、そのための資材も再生品を利用した。徹底して環境に配慮した家なのだ。「ドミニクは天才ですよ。彼がバッテリーを使える状態に直してくれたので、ソーラーエネルギーを活用できるようになりました。本当にすばらしいことです。」
家そのものは小さいが、家のある敷地は6万平方メートルを超える。夫妻がずっと求めていたシンプルでサステナブルな生活が、豊かな自然に囲まれた環境で実現できたわけだ。将来、別の土地へ移りたいと思うときに備えて、家はトレーラーの上に建ててある。
オーストラリアでは、一般車両として道路を走れるのは車高約4.27メートルまでという制限がある。そのため、ロフトの寝室の上にある屋根の先端部分は折りたたみ式にしてある。
「移動したくなったときのことを考え、高さの問題を解決しなくてはいけなかったので、屋根を低くできるように設計しました。屋根の端に蝶番を取り付けてあるんです。外から見ると壁の上のほうにV字型になった部分があるのですが、ここを取り外せば屋根を下げられるしくみです。」
オーストラリアでは、一般車両として道路を走れるのは車高約4.27メートルまでという制限がある。そのため、ロフトの寝室の上にある屋根の先端部分は折りたたみ式にしてある。
「移動したくなったときのことを考え、高さの問題を解決しなくてはいけなかったので、屋根を低くできるように設計しました。屋根の端に蝶番を取り付けてあるんです。外から見ると壁の上のほうにV字型になった部分があるのですが、ここを取り外せば屋根を下げられるしくみです。」
友人の助けを借りながら自分の手でつくりあげたシステムについて、「環境にはよく配慮した家になったと思います。オフグリッド住宅ですからね。ソーラーパネルで自家発電し、太陽熱と薪ストーブで給湯、雨水を集めて使い、生活排水を再利用した水を野菜畑にまいて、その畑でとれたものを食べる、というサイクルになっています」とマレーさんは話す。
サステナビリティこそ、夫妻が何より大事にしたかったライフスタイルだ。夫妻が暮らすのはヴィクトリア州にある〈PEACEファーム〉の一角であり、ファームとは積極的に関わっている。PEACEはPermaculture(パーマカルチャー、資源の維持や自給をめざす持続型の開発や農業を指す)、 Education(教育)、 Art(アート)、 Community(コミュニティ)、Enterprise(事業)の頭文字をとっている。このファームはオーガニックな暮らしを学び実践する場であり、自分たちでできる持続可能な生活スタイルをコミュニティに発信している。夫妻もこの精神に強く賛同しており、家づくりでも実践した。
サステナビリティこそ、夫妻が何より大事にしたかったライフスタイルだ。夫妻が暮らすのはヴィクトリア州にある〈PEACEファーム〉の一角であり、ファームとは積極的に関わっている。PEACEはPermaculture(パーマカルチャー、資源の維持や自給をめざす持続型の開発や農業を指す)、 Education(教育)、 Art(アート)、 Community(コミュニティ)、Enterprise(事業)の頭文字をとっている。このファームはオーガニックな暮らしを学び実践する場であり、自分たちでできる持続可能な生活スタイルをコミュニティに発信している。夫妻もこの精神に強く賛同しており、家づくりでも実践した。
写真はマレーさんとヴィッキーさんの家庭菜園の一部。食べる野菜のほとんどを自分で育てれば、もっと自給自足に近づける。
2016年の初めにこのタイニーハウスへ移ってきたマレーさん一家。ライフスタイルは一変したが、一家全員が新しい暮らしを楽しんでいる。「生活をかなりサイズダウンさせたので、自由な時間とエネルギーが生まれました。余裕を感じます。こうしなくては、という追い立てられる感覚も減りました。やらなければならないことが山積みで、追われるように走り続ける必要もありません。ローンもないですからね」とマレーさん。
住宅ローンを借りずにすむのは、タイニーハウスの大きな強みだ。オーストラリアの不動産価格は上昇傾向にあり、多くの人にとって、自分の家を持つことは手に届かない夢になりつつある。たとえ手に入れたとしても、多くの人は生涯のほとんどにわたりローンを払い続けることになる。そんななか、マレーさんとヴィッキーさんは、無理なく自分たちの家を手に入れて、さらにサステナブルなライフスタイルも実現した。
小さくても居心地のいい家で暮らすうちに、家族の絆はさらに強くなった。「みんなで一緒に過ごす時間が長いですからね。お互いに仲よくする、ということは、こういう家で暮らすための大事なスキルですね」とマレーさんは語る。この先、グレースちゃんが望んだ場合は、大学を出て独り立ちするまでの間を過ごすための別棟を建てることも視野に入れている。
住宅ローンを借りずにすむのは、タイニーハウスの大きな強みだ。オーストラリアの不動産価格は上昇傾向にあり、多くの人にとって、自分の家を持つことは手に届かない夢になりつつある。たとえ手に入れたとしても、多くの人は生涯のほとんどにわたりローンを払い続けることになる。そんななか、マレーさんとヴィッキーさんは、無理なく自分たちの家を手に入れて、さらにサステナブルなライフスタイルも実現した。
小さくても居心地のいい家で暮らすうちに、家族の絆はさらに強くなった。「みんなで一緒に過ごす時間が長いですからね。お互いに仲よくする、ということは、こういう家で暮らすための大事なスキルですね」とマレーさんは語る。この先、グレースちゃんが望んだ場合は、大学を出て独り立ちするまでの間を過ごすための別棟を建てることも視野に入れている。
この家にはもう1つ、利点がある。家の周りには広大な田園が広がっていて、散歩場所には事欠かない点だ。一家は小屋でにわとりも飼っている。前の小屋はキツネが荒らしてしまったので、今度の小屋は少し丈夫で安全にしたつもりだ。
「タイニーハウスに暮らしていると、外の自然をとても身近に感じます。タイニーハウスは、暮らす人をしっかりと守り、育んでくれる場所になる。タイニーハウスは、自分たちと外の世界をつなぐインターフェースのような存在、といえるでしょう。外の世界をすべてを四方を壁で囲んだ箱の中に詰め込もうとする家とは違いますね」とマレーさんは話す。
「タイニーハウスに暮らしていると、外の自然をとても身近に感じます。タイニーハウスは、暮らす人をしっかりと守り、育んでくれる場所になる。タイニーハウスは、自分たちと外の世界をつなぐインターフェースのような存在、といえるでしょう。外の世界をすべてを四方を壁で囲んだ箱の中に詰め込もうとする家とは違いますね」とマレーさんは話す。
自分でタイニーハウスを建てることを検討している人へのアドバイスをたずねると、こんな答えが返ってきた。「ぜひやってみてください。自分が本当に必要とするものがわかると思います。自分の手でつくるプロセスと、なぜそうしたいのかを信じる気持ちがあれば、きっとうまくいきます」と力強い声が返ってきた。
「私たちの場合も、友人や家族、それからタイニーハウスを愛する人たちに自分たちの考えを話し、意見交換をするうちに、アイデアがふくらみ、計画が前進していきました。主にオーストラリアのタイニーハウスのSNSコミュニティを利用したのですが、たくさんのことを教えてもらいましたし、精神的にも支えてもらったと思います。」
「私たちの場合も、友人や家族、それからタイニーハウスを愛する人たちに自分たちの考えを話し、意見交換をするうちに、アイデアがふくらみ、計画が前進していきました。主にオーストラリアのタイニーハウスのSNSコミュニティを利用したのですが、たくさんのことを教えてもらいましたし、精神的にも支えてもらったと思います。」
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