形とレイアウト、機能とデザイン。レンジフードのバリエーション
存在感を放つキッチンパーツ、レンジフード。日本でポピュラーな実用性の高いものから個性的なオリジナルデザインまで多彩なタイプの特色を、キッチンのプロが解説します。
キッチンを計画する際はまず、レイアウトや全体のデザインが先行しますが、機器類の選定も大変重要なポイント。これは、コストにも多分に影響する部分です。そして、他の機器類に比べ、特にサイズからしても、その存在感は侮れないのがレンジフードです。キッチンのプランニング時、食洗機やコンロ、水栓金具に海外ブランドを希望されるお客様は少なくありませんが、ことレンジフードに関しては、お手入れのしやすさを最優先とされる方が多く、デザインについては、なぜかリクエストが少ないようです。
とはいえ、換気扇としての機能性とデザイン性、ともにベストなレンジフードを選ぶことはとても大切です。実用性を追求したもの、インテリアになじむかどうかを重視したもの、空間のポイントになるものなど、国内で人気のタイプから多様なデザインに驚かされる海外のキッチンのレンジフードまで、さまざまな事例を見比べて、一度じっくり研究してみるとよいのではと思います。
- 形のバリエーション
従来型のフードには最も基本的に、深型と浅型という分類があります。写真の深型は別名「ブーツ型」と呼ばれ、なじみ深いデザインのフードです。集合住宅、一般住宅ともに、キッチンにおいては極めてスタンダードなタイプであり、価格も低めに設定されています。
浅型(フラット型)
マンションなど、梁のでっぱりや天井が低かったりと、設置スペースの条件が厳しい場合には、浅型(フラット)タイプを採用します。シロッコファンやターボファンなどと一体化しており、縦方向にコンパクトな設計になっているのです。逆に言うと、設置スペースに特に不利な条件がなければ、浅型をあえて使用することは稀といえます。
換気扇の構造は、大まかに排気ファンとフードとに分かれます。排気ファンには、プロペラファン、シロッコファン(現在の主流です)、ターボファンがあるのですが、ブーツ型フードは、プロペラファンにもシロッコファンにも対応できるという利点があります。
マントル型
側面に傾斜があり、屋根のような形をした、マントル型と呼ばれるレンジフード。前述のタイプより掃除がしやすいともいわれています。
側面に傾斜があり、屋根のような形をした、マントル型と呼ばれるレンジフード。前述のタイプより掃除がしやすいともいわれています。
同じマントルフードでも、やわらかな曲線が人気のタイプ。ダクトカバーもカーブを描いています。クラシック、またはカントリータイプのキッチンとの相性は抜群です。
このマントルフードには、ダブルシロッコファンに金属製のフィルターがセットされています。現在売れ筋のフィルターレスタイプではありませんが、着脱は簡単。時折、食洗器に入れて洗浄すれば、お手入れも苦にならないはず。デザインと機能性の両立が可能です。
ボックス型
シンプルな形状が人気のボックス型。スタイリッシュなデザインのキッチンにぴったりです。深型か浅型かといえば、もちろん深型。ウォールキャビネットと並んだ場合、同化してしまうほどのシンプルさが魅力です。
シンプルな形状が人気のボックス型。スタイリッシュなデザインのキッチンにぴったりです。深型か浅型かといえば、もちろん深型。ウォールキャビネットと並んだ場合、同化してしまうほどのシンプルさが魅力です。
こちらはボックス型のバリエーションで、キッチンと同じ幅で宙に浮かぶように作ったオーダーメイドのレンジフードです。ダウンライトの手元灯と一体化させているデザインが秀逸。通常のレンジフード下端位置は床から165~170cmとすることが多いですが、こちらはダイナミックなサイズなので、圧迫感を避けるため、一般的な設置位置よりも少し高めに設定されているようです。
スリム型
そして近年、急激に普及が進んでいるのがこのタイプ。メーカーによりスリム型、フラットスリム型などと呼ばれます。料理から上がる油煙がまず整流板という下部に取り付けられた平らな板にぶつかって、四方から吸い込まれる仕組みなので、フィルターがいらず、日常のお手入れは整流板をきれいに拭くこと、時々オイルポットにたまる油を捨てることだけ。すっきりとしたデザインとともに、お手入れが簡単なことも人気の秘密のようです。
そして近年、急激に普及が進んでいるのがこのタイプ。メーカーによりスリム型、フラットスリム型などと呼ばれます。料理から上がる油煙がまず整流板という下部に取り付けられた平らな板にぶつかって、四方から吸い込まれる仕組みなので、フィルターがいらず、日常のお手入れは整流板をきれいに拭くこと、時々オイルポットにたまる油を捨てることだけ。すっきりとしたデザインとともに、お手入れが簡単なことも人気の秘密のようです。
- レイアウトのバリエーション
ここまで「型」に注目して紹介したレンジフードはほとんどが正面の壁に付けたタイプでしたが、取り付け位置のバリエーションもあります。
壁から「半島」のように突き出た形をしたキッチンは「ペニンシュラ型」と呼ばれています。レンジフードも同じように壁からコンロを覆うようにせり出すデザインのものを「ペニンシュラフード」、あるいは横壁面取り付けタイプ、サイド型フードなどと呼びます。
センターフード(天井取り付けタイプ)
人気のアイランドキッチンにはセンターフードをセットします。壁に接触していないので、天井取り付けタイプ、天井吊タイプとも呼ばれます。自ずと目立つので、インテリアとしてもしっくりなじむ、もしくは、あえてアクセントになるデザイン&カラーをセレクトしたいものです。取り付け位置を正確に決めたうえで、下地を準備する必要があるので、取り付ける側としては何かと神経を使うスタイルです。
人気のアイランドキッチンにはセンターフードをセットします。壁に接触していないので、天井取り付けタイプ、天井吊タイプとも呼ばれます。自ずと目立つので、インテリアとしてもしっくりなじむ、もしくは、あえてアクセントになるデザイン&カラーをセレクトしたいものです。取り付け位置を正確に決めたうえで、下地を準備する必要があるので、取り付ける側としては何かと神経を使うスタイルです。
- 機能のバリエーション
ここで、レンジフード機能のバリエーションについても、いくつかご説明します。
ほとんどの高気密&高断熱住宅は、24時間換気システムを導入しています。通常のレンジフードは排気をするのみ。換気計画がなされたうえでシステムが稼働しているため、排気ばかりではバランスが崩れてしまうので、排気と同時に給気をする必要があります。そういうケースに対応するのがこの「同時給排型」レンジフード。給気と排気の2本のダクトを格納する必要があるので、少々カバーが大きくなりますが、他に給気システムを設ける必要がありません。
横引きレンジフード
油煙を横から引き込むタイプのレンジフードは、吸い込み口が近いため吸引力が強いうえ、何といっても上部に何もないすっきり感が魅力。外壁に面した場所であれば、新築時に限らず取り付け可能です。ほかのタイプももちろんそうですが、キッチンのレイアウトにもかかわってきますので、プロに相談してじっくり検討してみてください。
油煙を横から引き込むタイプのレンジフードは、吸い込み口が近いため吸引力が強いうえ、何といっても上部に何もないすっきり感が魅力。外壁に面した場所であれば、新築時に限らず取り付け可能です。ほかのタイプももちろんそうですが、キッチンのレイアウトにもかかわってきますので、プロに相談してじっくり検討してみてください。
- デザインのバリエーション
面材と揃える
日本で採用されているレンジフードは、ファンの部分である本体と、幕板と呼ばれるカバーで構成されています。幕板には、正面部分の「前幕板」と、側面の「横幕板」があり、状況によって用意するものを変えます。この写真のように、収納キャビネットの扉と同じ面材で前幕板を製作すると、レンジフードの存在感がぐっと薄れ、スマートに仕上がります。
タイル張りで仕上げる
大判のタイルを貼って仕上げたフードです。耐火性においても安心感があり、コンロ前面の10cm角ほどのタイルとも相性抜群!キッチンの風格をアップするためにも、効果的なデザインです。
大判のタイルを貼って仕上げたフードです。耐火性においても安心感があり、コンロ前面の10cm角ほどのタイルとも相性抜群!キッチンの風格をアップするためにも、効果的なデザインです。
手の込んだ左官仕上げ
まるで絵本に登場するキッチンのようなデザイン。表面に左官仕上げをしています。フードカバーは、換気扇本体と同じく油煙の影響を受けるものです。拭き掃除はできそうにありませんが、汚れてもそれが「味」になるデザインといえるでしょう。機能性や合理性が求められるキッチンの中でも、コンロまわりは特に汚れが発生しやすい場所です。にもかかわらず海外のキッチンの事例を見ると、このようにデコラティブなデザインもかなり多いようです。個性を表現したいという欲求からでしょうか、インテリアデザインへのこだわりを強く感じます。
まるで絵本に登場するキッチンのようなデザイン。表面に左官仕上げをしています。フードカバーは、換気扇本体と同じく油煙の影響を受けるものです。拭き掃除はできそうにありませんが、汚れてもそれが「味」になるデザインといえるでしょう。機能性や合理性が求められるキッチンの中でも、コンロまわりは特に汚れが発生しやすい場所です。にもかかわらず海外のキッチンの事例を見ると、このようにデコラティブなデザインもかなり多いようです。個性を表現したいという欲求からでしょうか、インテリアデザインへのこだわりを強く感じます。
フォーカルポイントになるデザインつき
レンジフードがキッチンスペースの象徴的存在となっています。地中海らしいタイル使いとカラーが印象的。私たち日本人の感覚ではなかなか発想できないデザインですが、キッチンにいる時間を楽しもう!という住み手の情熱が伝わってきます。
レンジフードがキッチンスペースの象徴的存在となっています。地中海らしいタイル使いとカラーが印象的。私たち日本人の感覚ではなかなか発想できないデザインですが、キッチンにいる時間を楽しもう!という住み手の情熱が伝わってきます。
トラッドな木製
こちらは、「マントル」の本来の意味「炉棚、炉前飾り」(暖炉の上部や側面を囲む飾り、あるいは棚)を思い起こさせる、トラディショナルな木製のレンジフードカバーです。とても雰囲気がありますが、日本の消防法では、ガスコンロからレンジフード下端までは80cm以上の間隔が義務付けされており、なおかつ可燃材は、決められた間隔以上を確保しないと安易に施工することができません。もしこういった木製のカバーを採用したい場合は、内部に不燃材を使用する、またはIHコンロを選択するなど、十分な検討が必要です。
こちらは、「マントル」の本来の意味「炉棚、炉前飾り」(暖炉の上部や側面を囲む飾り、あるいは棚)を思い起こさせる、トラディショナルな木製のレンジフードカバーです。とても雰囲気がありますが、日本の消防法では、ガスコンロからレンジフード下端までは80cm以上の間隔が義務付けされており、なおかつ可燃材は、決められた間隔以上を確保しないと安易に施工することができません。もしこういった木製のカバーを採用したい場合は、内部に不燃材を使用する、またはIHコンロを選択するなど、十分な検討が必要です。
超ワイドタイプ
ステンレスに味わいのある加工を施してある、幅150cmほどのレンジフードカバー。ツインのガスコンロ&オーブンの油煙を同時に吸い上げるためには、これくらい大型のフードが必要です。換気扇、吸い込み力が強いと、音も大きくなる傾向があるようなので、素材や形状を工夫すれば、フードカバーで和らげることが可能かもしれません。
これだけのバリエーションがある、実に奥の深いレンジフード。オーダーキッチンを創る立場である私自身、これからも研究と試行錯誤が続きそうです。興味のあるタイプが見つかったら、ぜひ専門家やプロの方に相談してみてくださいね。
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どのタイプのレンジフードが気になりますか?
ステンレスに味わいのある加工を施してある、幅150cmほどのレンジフードカバー。ツインのガスコンロ&オーブンの油煙を同時に吸い上げるためには、これくらい大型のフードが必要です。換気扇、吸い込み力が強いと、音も大きくなる傾向があるようなので、素材や形状を工夫すれば、フードカバーで和らげることが可能かもしれません。
これだけのバリエーションがある、実に奥の深いレンジフード。オーダーキッチンを創る立場である私自身、これからも研究と試行錯誤が続きそうです。興味のあるタイプが見つかったら、ぜひ専門家やプロの方に相談してみてくださいね。
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