涼を呼び込む「露地」の基礎知識
むしむしした夏に、みずみずしい露地で目から涼しく。ご自宅の庭でも取り入れてみませんか?
舩村佳織
2021年7月22日
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています。
二児の子育て中でもあり、家族みんなが楽しめる庭造りが得意です。設計者として、主婦としての目線から、暮らしやすさに寄り添います。
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています... もっと見る
日本の庭の様式の一つである露地。和のエッセンスがちりばめられた露地は、私たちの心に染み入るような潤いを与えてくれます。現代の住環境では露地の要素を完璧に作り上げることは難しいですが、工夫と見立てで、「市中の山居」を楽しむことも夢ではありません。露地を構成するいくつかの要素と、私たちの普段使いの庭に取り入れるアイデアをご紹介します。
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露地とは
茶事のための庭のことを露地と言い、茶庭とも言います。茶事に呼ばれた客人が茶室に入る前に通る露地は、客人が日常を離れて非日常である茶事に入り込んでいくための装置の一つです。客人が茶室へと向かう際には、決まりごとに沿った、いくつかの振る舞いを求められます。そして露地にはその振る舞いに必要な装置が順番に配されています。
茶事のための庭のことを露地と言い、茶庭とも言います。茶事に呼ばれた客人が茶室に入る前に通る露地は、客人が日常を離れて非日常である茶事に入り込んでいくための装置の一つです。客人が茶室へと向かう際には、決まりごとに沿った、いくつかの振る舞いを求められます。そして露地にはその振る舞いに必要な装置が順番に配されています。
露地は茶道をもとに成り立っていますが、今日では茶道を詳しく知らない人でも、和の庭というと露地の景色を思い浮かべるほど日本人の感覚に広く浸透した庭の様式となっています。
それでは、露地を構成する要素をいくつか見てみましょう。
それでは、露地を構成する要素をいくつか見てみましょう。
蹲(つくばい)
露地の中で最も重要で、欠かせない要素である蹲。客人が手を洗い、口をゆすぎ心身を清めて茶室に入るためのものです。
蹲は、真ん中の手水鉢(ちょうずばち)と、それを囲む役石で構成されています。役石は意匠のためだけでなく、役割を与えられて配置が決まっています。
露地の中でも目立つ存在で、フォーカルポイントとも言えるでしょう。
露地の中で最も重要で、欠かせない要素である蹲。客人が手を洗い、口をゆすぎ心身を清めて茶室に入るためのものです。
蹲は、真ん中の手水鉢(ちょうずばち)と、それを囲む役石で構成されています。役石は意匠のためだけでなく、役割を与えられて配置が決まっています。
露地の中でも目立つ存在で、フォーカルポイントとも言えるでしょう。
手水鉢に水を流す装置を作れば水音を楽しめますが、流れを作れない場合でも、水を溜めておくだけで風景に奥行きが増します。
水のある場所を水場と見立て、植栽も湿り気を感じるものを象徴的に使うことによって、狭い敷地でも山里の豊かな自然を思わせる風景となります。
本来の蹲には役石が求められますが、必ずなくてはならないと固く考える必要はありません。
水のある場所を水場と見立て、植栽も湿り気を感じるものを象徴的に使うことによって、狭い敷地でも山里の豊かな自然を思わせる風景となります。
本来の蹲には役石が求められますが、必ずなくてはならないと固く考える必要はありません。
室内から見える場所に蹲を設置し景色を楽しんでも良いでしょう。来客時には水に花を浮かべたり、水音を立てたりする演出も可能です。
照明を設置して夜の庭を演出してもすてきですね。
照明を設置して夜の庭を演出してもすてきですね。
中門(ちゅうもん)
庭全体を二つに仕切った「二重露地」で境界として使われているのが中門です。二重露地は最も一般的な露地として現代に伝わっています。山居までの道を表した「外露地」と、さらに山深く入り込む風情となる「内露地」が中門によって分けられています。
中門は四目垣(よつめがき)や枝折り戸などの簡素なものが使われることが多く、完全な目隠しとしての機能は求められていません。
茶事や和の景色を楽しむための庭と、物干し等がある実用的な庭と区別したい場合にも使うこともできます。
庭全体を二つに仕切った「二重露地」で境界として使われているのが中門です。二重露地は最も一般的な露地として現代に伝わっています。山居までの道を表した「外露地」と、さらに山深く入り込む風情となる「内露地」が中門によって分けられています。
中門は四目垣(よつめがき)や枝折り戸などの簡素なものが使われることが多く、完全な目隠しとしての機能は求められていません。
茶事や和の景色を楽しむための庭と、物干し等がある実用的な庭と区別したい場合にも使うこともできます。
飛び石・延段(のべだん)
茶室へ向かうという本来の露地の役割の中で、最も実用的な部分を担うのが飛び石と延段になります。しかし、実用性だけを優先すると美観が損なわれてしまうので、バランスもとても大事。千利休は実用性に6分・景観に4分の配慮をして石を打つよう推奨しています。
延段は畳石ともいわれます。飛び石よりも歩行時は安定感がありますが、延段ばかりだと硬い印象になってしまうので、飛び石と取り混ぜて使うのが良いでしょう。延段は自然石と切石のバランスや、目地の処理の仕方で大きく印象を変えられるので、庭の方向性に合わせてデザインを考えると幅が広がります。
茶室へ向かうという本来の露地の役割の中で、最も実用的な部分を担うのが飛び石と延段になります。しかし、実用性だけを優先すると美観が損なわれてしまうので、バランスもとても大事。千利休は実用性に6分・景観に4分の配慮をして石を打つよう推奨しています。
延段は畳石ともいわれます。飛び石よりも歩行時は安定感がありますが、延段ばかりだと硬い印象になってしまうので、飛び石と取り混ぜて使うのが良いでしょう。延段は自然石と切石のバランスや、目地の処理の仕方で大きく印象を変えられるので、庭の方向性に合わせてデザインを考えると幅が広がります。
室内から庭に降り立つ際に、まず沓脱石(くつぬぎいし)で草履を履きます。飛び石よりも高く設置し、無理せずに庭へと進むために大切なものです。飛び石へとつながる最初の一歩なので、意匠としても飛び石とのつながりを考えて石を選びたいです。
テラスやデッキのある庭でも、段差解消のステップとして取り入れることができる和の庭の要素です。
テラスやデッキのある庭でも、段差解消のステップとして取り入れることができる和の庭の要素です。
飛び石よりも軽やかな雰囲気を、という方には小さめの石を軽快に使った、あられこぼし風のアプローチはいかがでしょうか。小さい石を使ったものならばDIYでの施工も可能です。とはいえたくさんの石のバランスを見ながら配置を決めていくのはなかなか根気のいる作業。体力とセンスに自信のある方はぜひチャレンジを。
塵穴
客人が来る直前に、あらためて仕上げの掃除をした際のゴミを仮捨てするために設けられた穴です。自然石が穴を覗き込むような形になるように施工する決まりとなっています。
実際にゴミ箱として使うことはなく、客人が来た際に露地内の花や枝をさりげなく飾るための場所となっています。
まさに日本人らしい心配りの象徴といえるような装置ですね。
客人が来る直前に、あらためて仕上げの掃除をした際のゴミを仮捨てするために設けられた穴です。自然石が穴を覗き込むような形になるように施工する決まりとなっています。
実際にゴミ箱として使うことはなく、客人が来た際に露地内の花や枝をさりげなく飾るための場所となっています。
まさに日本人らしい心配りの象徴といえるような装置ですね。
塵穴に似せて、来客時にはそっと季節の草花を飾る場所を作ってみてはいかがでしょうか。あまり華美なものより、気付かないかもしれないぐらいの心遣いで、粋な演出を。
植栽
露地を山居のようにするには、植物の力が不可欠です。露地の植栽には基本的には決まりはありませんが、趣を感じさせる露地にするには人工的な植栽は避けるべきです。よって仕立て物ではなく自然樹形を使うこと、その土地の気候にあった植物を使うことを意識すると良いでしょう。
露地を山居のようにするには、植物の力が不可欠です。露地の植栽には基本的には決まりはありませんが、趣を感じさせる露地にするには人工的な植栽は避けるべきです。よって仕立て物ではなく自然樹形を使うこと、その土地の気候にあった植物を使うことを意識すると良いでしょう。
地被には苔がおすすめです。これだけでぐっと露地の雰囲気が出ます。育てやすさでおすすめなのはハイゴケ。半日陰から日当たりの良い場所までよく育ちます。乾燥は嫌うので、水やりには注意が必要です。
町中の住宅の場合、塀や植栽に気を使って設計しても、隣家やビル・マンションが目に入ってしまうもの。そんな場合は雪見障子で見えなくてよい景色を隠してしまいましょう。自然と地面に近い場所に視線が集まるので、下草類のきちんとした管理が求められます。
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茶道にはさまざまな決まりがあり、本格的な露地を作るには知識が必要となってきます。しかし、和の小庭を楽しむために露地を参考にする、と考えれば肩肘張る必要もありません。
少し眺めるだけでも和の景色があると心が和むもの。ぜひ参考にしてみてください。
露地の写真をもっと見る
教えてHouzz
みなさんはどんな露地が理想ですか? アイデアをコメント欄で共有しましょう!
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