18世紀に誕生した、優美でクラシックな北欧インテリア「グスタヴィアンスタイル」
古代ローマの神殿をお手本にした「ネオクラシック様式」のスウェーデン的解釈といえる「グスタヴィアンスタイル」。18世紀後半に誕生したこのスタイルの魅力とは。
西谷典子|Noriko Nishiya
2016年6月20日
6月に入ると、スウェーデンなどスカンジナビアの国々のあるヨーロッパ北部では、一晩中日の沈まない白夜が始まり、本格的な夏がやってきます。日本でも本格的な夏の前の蒸し暑い季節を迎えているシーズン。今回は北欧スウェーデンゆかりのすがすがしいクラシックインテリア、グスタヴィアンスタイルをご紹介しましょう。
スウェーデン国王グスタフ3世が持ち帰った “フランス土産”
フランスのルイ16世の妻、マリー・アントワネットの愛人がスウェーデン人の貴族であったのはご存じの方も多いと思いますが、その少し前、のちにスウェーデン国王となるグスタフ3世も同じくベルサイユに長く滞在していました。その後1771年に自国に戻り即位しますが、一緒にフランスのインテリアや建築、芸術も持ち帰り、自分流にアレンジしたのがグスタヴィアンスタイルの始まりとされています。
グスタフ3世は1792年に暗殺されるまでの約20年間のグスタフ王朝時代、フランスに大きく影響を受けた芸術を推進する文化王として君臨しました。が、ルイ16世の失脚と同時に文化の発展がストップしてしまったフランスと同様、スウェーデンの芸術文化もここまででいったん、冬の時代を迎えることになります。
フランスのルイ16世の妻、マリー・アントワネットの愛人がスウェーデン人の貴族であったのはご存じの方も多いと思いますが、その少し前、のちにスウェーデン国王となるグスタフ3世も同じくベルサイユに長く滞在していました。その後1771年に自国に戻り即位しますが、一緒にフランスのインテリアや建築、芸術も持ち帰り、自分流にアレンジしたのがグスタヴィアンスタイルの始まりとされています。
グスタフ3世は1792年に暗殺されるまでの約20年間のグスタフ王朝時代、フランスに大きく影響を受けた芸術を推進する文化王として君臨しました。が、ルイ16世の失脚と同時に文化の発展がストップしてしまったフランスと同様、スウェーデンの芸術文化もここまででいったん、冬の時代を迎えることになります。
当時の流行「ネオクラシックスタイル」のシンプルアレンジ
1748年から、イタリアのポンペイで遺跡の発掘が始まって以来、ヨーロッパでは古代ローマのデザインが流行し、「ネオクラシックスタイル」としてリバイバルし始めます。家具もそれまでの重厚な彫りの入ったものから、直線的でシンプルな神殿のデザインのように変わっていくのですが、グスタフ3世はこのネオクラシックスタイルを、さらにスウェーデンの地になじむよう、フランス風よりもシンプルで控えめなスタイルにアレンジしたのです。グスタヴィアンスタイルはたった20年という短い期間の流行ではありますが、これが自国のスタイルとして確立された、スウェーデン史の中でも大変重要な時代として記憶されています。
「ネオクラシックスタイル」についてはこちらも参考に:
アンティーク家具の「脚のデザイン」を知る 3: ネオクラシックの時代
1748年から、イタリアのポンペイで遺跡の発掘が始まって以来、ヨーロッパでは古代ローマのデザインが流行し、「ネオクラシックスタイル」としてリバイバルし始めます。家具もそれまでの重厚な彫りの入ったものから、直線的でシンプルな神殿のデザインのように変わっていくのですが、グスタフ3世はこのネオクラシックスタイルを、さらにスウェーデンの地になじむよう、フランス風よりもシンプルで控えめなスタイルにアレンジしたのです。グスタヴィアンスタイルはたった20年という短い期間の流行ではありますが、これが自国のスタイルとして確立された、スウェーデン史の中でも大変重要な時代として記憶されています。
「ネオクラシックスタイル」についてはこちらも参考に:
アンティーク家具の「脚のデザイン」を知る 3: ネオクラシックの時代
ポイントは、明るく映る「白」という色
スウェーデンの夏は白夜のシーズンをピークに日がほとんど沈まず夜通し明るい日が続きますが、秋を迎えると日照時間がどんどん短くなり、冬になると午後早くからもう日が暮れていきます。必然的に家の中も、昼夜通して暗い時間が多くなるのですが、グスタフ3世はネオクラシックデザインのシンプルなデザインを白という色で統一し、家の中を少しでも明るく見えるように工夫したのです。
スウェーデンの夏は白夜のシーズンをピークに日がほとんど沈まず夜通し明るい日が続きますが、秋を迎えると日照時間がどんどん短くなり、冬になると午後早くからもう日が暮れていきます。必然的に家の中も、昼夜通して暗い時間が多くなるのですが、グスタフ3世はネオクラシックデザインのシンプルなデザインを白という色で統一し、家の中を少しでも明るく見えるように工夫したのです。
安価で質のよいパイン材を材料に
スウェーデンの国土は森林が多く、特にパイン材の輸出大国として知られていますが、この寒い気候から。同じパイン材でも南ヨーロッパのパイン材よりもゆっくり生育するため、密度が濃く、重く上質なパイン材が豊富に収穫されます。グスタフ3世時代の家具もやはりパイン材が多く、またペイントされた家具が多いのも特徴です。グスタフ3世がフランスからもたらした金箔張りの家具は、さすがに貴族にとっても高価で、持てる人は限られていましたが、安価で良質なパイン材に白くペイントされた家具は、貴族からすぐに一般の家庭にも浸透していったのです。
スウェーデンの国土は森林が多く、特にパイン材の輸出大国として知られていますが、この寒い気候から。同じパイン材でも南ヨーロッパのパイン材よりもゆっくり生育するため、密度が濃く、重く上質なパイン材が豊富に収穫されます。グスタフ3世時代の家具もやはりパイン材が多く、またペイントされた家具が多いのも特徴です。グスタフ3世がフランスからもたらした金箔張りの家具は、さすがに貴族にとっても高価で、持てる人は限られていましたが、安価で良質なパイン材に白くペイントされた家具は、貴族からすぐに一般の家庭にも浸透していったのです。
ペイント色は白とブルーがオリジナル
その家具の色は白のほか、18世紀に流行ったブルーもあります。実はブルーは、グスタヴィアンスタイルの重要なキーカラーでもあります。現在よく見られるペールグレーにペイントされた家具は、どちらかといえばフランスのシャビーシックスタイルが流行してからもたらされた色のようで、実際にはペイントが剥がれ落ちた風合いのある、白く塗られたアンティーク家具が経年によりペールグレーに見えるか、またはもとの白のペイントの上からペールグレーに塗られたものが多いようです。
その家具の色は白のほか、18世紀に流行ったブルーもあります。実はブルーは、グスタヴィアンスタイルの重要なキーカラーでもあります。現在よく見られるペールグレーにペイントされた家具は、どちらかといえばフランスのシャビーシックスタイルが流行してからもたらされた色のようで、実際にはペイントが剥がれ落ちた風合いのある、白く塗られたアンティーク家具が経年によりペールグレーに見えるか、またはもとの白のペイントの上からペールグレーに塗られたものが多いようです。
グスタヴィアンスタイルのマストアイテム
グスタヴィアンスタイルのインテリアでは、家具を白く塗ることで家の中を明るく見せるだけではなく、鏡を利用して明るさを有効に取り入れる工夫もされました。おそらくベルサイユ宮殿の鏡の間からも影響を受けたはずですが、グスタヴィアンスタイルでは、鏡、キャンドルのついた壁灯、キャンドルスタンドなどのインテリア小物も欠かせないアイテムです。
グスタヴィアンスタイルのインテリアでは、家具を白く塗ることで家の中を明るく見せるだけではなく、鏡を利用して明るさを有効に取り入れる工夫もされました。おそらくベルサイユ宮殿の鏡の間からも影響を受けたはずですが、グスタヴィアンスタイルでは、鏡、キャンドルのついた壁灯、キャンドルスタンドなどのインテリア小物も欠かせないアイテムです。
アイコン的存在「モーラクロック」
もうひとつ、その中でも欠かせないものに、スウェーデンのダラーナ地方でつくられた「モーラクロック」と呼ばれるアイコン的な時計があります。このモーラクロックは、スウェーデンの農家の内職として18世紀半ばのロココ時代に始まったもので、各家庭で1、2個の部品を分担制で作り、村で1つのモーラクロックを完成させるシステムになっていたそうですが、多いところで90以上の家がその工程に関わっていました。こういった一般庶民の中で広まったモーラクロックは、グスタヴィアンスタイルのカントリーハウスには、マストアイテムの小物として知られています。
もうひとつ、その中でも欠かせないものに、スウェーデンのダラーナ地方でつくられた「モーラクロック」と呼ばれるアイコン的な時計があります。このモーラクロックは、スウェーデンの農家の内職として18世紀半ばのロココ時代に始まったもので、各家庭で1、2個の部品を分担制で作り、村で1つのモーラクロックを完成させるシステムになっていたそうですが、多いところで90以上の家がその工程に関わっていました。こういった一般庶民の中で広まったモーラクロックは、グスタヴィアンスタイルのカントリーハウスには、マストアイテムの小物として知られています。
イギリス・ジョージアン様式の影響
グスタヴィアン様式には、実はイギリスのジョージアンスタイルのエッセンスも混じっています。背もたれの上の部分が広い椅子は18世紀後半のイギリスの家具デザイナー、トーマス・シェラトン特有の椅子のデザインですが、グスタヴィアンスタイルの椅子は、これよりもう少しがっしりとした形に変化しています。
グスタヴィアン様式には、実はイギリスのジョージアンスタイルのエッセンスも混じっています。背もたれの上の部分が広い椅子は18世紀後半のイギリスの家具デザイナー、トーマス・シェラトン特有の椅子のデザインですが、グスタヴィアンスタイルの椅子は、これよりもう少しがっしりとした形に変化しています。
もうひとつ、オーバルの背もたれの部分を簡素なデザインに変えたものは、同じく18世紀後半に活躍したイギリスの家具デザイナー、ヘッペル・ホワイトのデザインから来たものですが、シェラトンの椅子と同様、こちらのデザインもグスタヴィアンデザインの典型的な椅子としてよく知られるタイプのものです。この頃のスウェーデンも、世界の流行に対するアンテナはしっかり張っていたようで、素早く自国のスタイルにミックスさせていたのですね。
白くペイントされたフローリング
自国の豊富な木材を使用した白塗りのフローリングも、グスタヴィアンスタイルのインテリアの重要なエレメントで、グスタフ3世がつくらせた宮殿のフローリングの一部も、やはり白に塗られています。
自国の豊富な木材を使用した白塗りのフローリングも、グスタヴィアンスタイルのインテリアの重要なエレメントで、グスタフ3世がつくらせた宮殿のフローリングの一部も、やはり白に塗られています。
それは木目がうっすら見えるほど薄い白で、まるでシルバーのように見えるのですが、雪国らしい静寂の風景とナチュラルなライフスタイルにぴったりの空間に仕上げられています。
高価なアンティーク家具、手間のかかったリプロダクション家具
現在でもグスタビヴィアンスタイルの家具は、アンティークとして市場に出てきますが、コレクターの間でかなり高価な値段で取引がされています。良質のリプロダクションとして生産されているものも多いですが、値段はさほど安くはありません。ペイントを塗り、またペイントを剥がしてシャビーに見せるという工程が何度もあり、そのペイントのしかたも社外秘で手間隙がかかっているのがその理由だそうです。とはいえ、アンティークとはやはり違うものですので、納得のいく値段のものを選ぶようにしてください。
現在でもグスタビヴィアンスタイルの家具は、アンティークとして市場に出てきますが、コレクターの間でかなり高価な値段で取引がされています。良質のリプロダクションとして生産されているものも多いですが、値段はさほど安くはありません。ペイントを塗り、またペイントを剥がしてシャビーに見せるという工程が何度もあり、そのペイントのしかたも社外秘で手間隙がかかっているのがその理由だそうです。とはいえ、アンティークとはやはり違うものですので、納得のいく値段のものを選ぶようにしてください。
優雅なフレンチロココと神聖な古代ローマの絶妙なシンプルミックス
フランス・ベルサイユ宮殿の豪華さを形だけ残し、シンプルな白という色で空間を統一することで、本来あるべきローマ時代の宮殿の神聖さをグスタフ3世独自の方法で表現し、ネオクラシックスタイルを解釈したものが、グスタヴィアンスタイルと言えるでしょう。シンプルであることが決して寒々とした冷たい感じに見えない、このバランスのとれたスタイルが、今でも根強い人気を集めている秘密のようです。
こちらの記事もおすすめ:
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ありがとうございます!ロンドンも最近ずっと雨がちなのでちょっと清々しい内容にしてみました・・。
ロンドンで見かけたスウェディッシュ・カントリー、スタイルのルーツはこんなところにあったのですね。デザインや素材といったところでつながりが深く、共感する部分の多い北欧のインテリアスタイルの深部を垣間見ることができました。今、取り入れてみたいスタイルを見つけてしまった・・・久しぶりにわくわくしてきます。ありがとうございます!!
こちらこそありがとうございます。グスタヴィアンスタイルはフレンチシャビーよりシンプルですっきりしたデザインが素敵ですよね。短期間に存在したデザインなので大変希少価値もあるようです。