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世界のHouzzから:人生とデザインについて、私たちがイタリア人に学べる5つのこと
デザイン先進国イタリアの創造性の秘密はどこに? 思いがけないデザインを生み出す背景には、人生をフルに楽しむイタリア人の人生観がありました。
Leonora Sartori
2016年6月15日
世界で最もスタイリッシュな国民と言われるイタリア人。フェデリコ・フェリーニ監督が1960年の映画『甘い生活』で描き出したイタリアの、遊びの限りをつくした放縦なライフスタイルを見て、短い休暇の間だけでもいいからこんな暮らしをしてみたいと憧れた人は多いはずだ。でも、グッチのサングラスをかけてフェラーリを乗り回し、コロッセオを臨むテラスでスパゲティを食べる(こちらはパオロ・ソレンティーノ監督の2013年アカデミー賞受賞作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』)ライフスタイルだけがイタリアのすべてではない。
今回は、イタリアのプロダクトの専門家たちの話を聞きながら、家具、テーブルウェア、家庭用品、インテリア用品などのイタリアンデザインを支える5つのルールについて見ていこう。
今回は、イタリアのプロダクトの専門家たちの話を聞きながら、家具、テーブルウェア、家庭用品、インテリア用品などのイタリアンデザインを支える5つのルールについて見ていこう。
1. 美しいものが勝る
実用的なだけのものはいつか壊れてしまう。でも、美しいものは永遠に残る。
気鋭のデザイナーたちと勇気ある企業家たちが共同して、デザインに資力と労力を注いだのが1950年代。それ以来、実用性と美しさを兼ね備えた製品を作り出すことがイタリアンデザインの使命となったのです」と、〈カッペリーニ〉のアートディレクターで建築家のジュリオ・カッペリーニ氏は言う。
美というのは、さまざまな形で現れる。あらゆるジャンルのイタリアンデザインで、隠れた宝石のような製品に出会えるはずだ。例えば、〈アレッシィ〉のワインオープナー《アンナG》(写真)の軽妙な美しさ。プラスチックと金属を絶妙に成形して、お人形さんのような形に仕上げている。あるいは、吹きガラスを使ってより高貴な印象に仕上げた、ムラーノガラスのバロック風シャンデリアの美しさもある。
実用的なだけのものはいつか壊れてしまう。でも、美しいものは永遠に残る。
気鋭のデザイナーたちと勇気ある企業家たちが共同して、デザインに資力と労力を注いだのが1950年代。それ以来、実用性と美しさを兼ね備えた製品を作り出すことがイタリアンデザインの使命となったのです」と、〈カッペリーニ〉のアートディレクターで建築家のジュリオ・カッペリーニ氏は言う。
美というのは、さまざまな形で現れる。あらゆるジャンルのイタリアンデザインで、隠れた宝石のような製品に出会えるはずだ。例えば、〈アレッシィ〉のワインオープナー《アンナG》(写真)の軽妙な美しさ。プラスチックと金属を絶妙に成形して、お人形さんのような形に仕上げている。あるいは、吹きガラスを使ってより高貴な印象に仕上げた、ムラーノガラスのバロック風シャンデリアの美しさもある。
2. キッチン至上主義
1皿のスパゲティは大きな力を秘めている。
イタリア人の生活の大きな部分を占めるのが、キッチン。料理、おしゃべり、食事というサイクルが永遠に繰り返される場所である。キッチンはみんなが集まってくる場所であり、毎日の出発点でもある。誕生日のお祝いをしたり、病気の時にチキンスープを飲んだり、テーブルでコーヒーを飲みながら世間話をするのもキッチンだ。
1皿のスパゲティは大きな力を秘めている。
イタリア人の生活の大きな部分を占めるのが、キッチン。料理、おしゃべり、食事というサイクルが永遠に繰り返される場所である。キッチンはみんなが集まってくる場所であり、毎日の出発点でもある。誕生日のお祝いをしたり、病気の時にチキンスープを飲んだり、テーブルでコーヒーを飲みながら世間話をするのもキッチンだ。
食事どきでも、ちょっとおしゃべりする時間でも、人が集まるとまず出てくる言葉で、とてもよく耳にするのが「座ってゆっくり話しましょう」「座って食事にしましょう」というフレーズ。それだけ、椅子に腰かけるということは重要なのだ。でも、大事な椅子だからといって、高価で凝ったものである必要はない。
『イタリアのアノニマスデザイン』の著者アルベルト・バッシ氏は、一般的なイタリア家庭とトラットリア(大衆食堂)には共通項があると言う。その1つが、トラットリアスタイルの《マロッカチェア》。職人の作った大衆向けの伝統的な椅子だ。また、18世紀に作られた木とラタン製の「キアヴァリ」チェアもそうだ。匠の技が生きるエレガントな椅子で、イタリア人デザイナー、ジオ・ポンティが1951年に〈カッシーナ〉のために作ったチェア、《レジェーラ》のインスピレーションともなった。
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『イタリアのアノニマスデザイン』の著者アルベルト・バッシ氏は、一般的なイタリア家庭とトラットリア(大衆食堂)には共通項があると言う。その1つが、トラットリアスタイルの《マロッカチェア》。職人の作った大衆向けの伝統的な椅子だ。また、18世紀に作られた木とラタン製の「キアヴァリ」チェアもそうだ。匠の技が生きるエレガントな椅子で、イタリア人デザイナー、ジオ・ポンティが1951年に〈カッシーナ〉のために作ったチェア、《レジェーラ》のインスピレーションともなった。
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コーヒーブレイク
イタリア人が自宅でエスプレッソを飲むことは、イギリス人にとって紅茶を飲みながら一服するのと同じくらい大事な意味がある。コーヒーはもはやただの飲み物ではなく、大切な休息の代名詞なのだ。何事もそうだが、毎日習慣的に行うことだからこそ、正しい道具を使うことが重要だ。エスプレッソに必要なのは、良いカップと良いエスプレッソメーカー。例えば、マッテオ・トゥンが〈イリー〉のためにデザインしたカップに、〈ビアレッティ〉の名品、直火式エスプレッソメーカー《モカ》なら理想的だ。
「コーヒーマシンの最初のプロトタイプが完成したのは1933年です」とバッシ氏は語る。「でも、『モカ』が本当に広まったのは第二次大戦後、『ヒゲのおじさん』をトレードマークに使った宣伝が大成功してからでした」
キアラ・アレッシィ氏はデザインの専門家で、『デザイナー不在のデザイン』の著者でもある。彼女の祖父、カルロ・アレッシィが結婚した相手が、「モカ」を発明・デザインしたアルフォンソ・ビアレッティの娘、ジェルマーナ・ビアレッティだ。「2人の会話は、いつも祖父が『やっぱり君にはビアレッティ家の血が流れてるな!』と言って終わっていましたね」とアレッシィ氏は言う。
ジェルマーナを喜ばせるため、カルロは有名な義父の例にならい、ティー&コーヒーセットをデザインすることにした。1945年に発表された《ボンベ》は、柔らかな曲線を使ったデザインで、無意識に思い描かれていた当時の理想的な主婦の姿に似ているのかもしれない。しかし、カルロの妻ジェルマーナは対照的で、どちらかと言えば「モカ」エスプレッソメーカーに近い痩せ体形の、自由な思想の持ち主だったそうだ。
今日まで、ビアレッティの《モカ》を超える製品は登場していない。長年のあいだにさまざまなデザインのエスプレッソメーカーが作られたが、《モカ》があまりに完璧なため、どれも見劣りするコピーで終わってしまうのだ。
イタリア人が自宅でエスプレッソを飲むことは、イギリス人にとって紅茶を飲みながら一服するのと同じくらい大事な意味がある。コーヒーはもはやただの飲み物ではなく、大切な休息の代名詞なのだ。何事もそうだが、毎日習慣的に行うことだからこそ、正しい道具を使うことが重要だ。エスプレッソに必要なのは、良いカップと良いエスプレッソメーカー。例えば、マッテオ・トゥンが〈イリー〉のためにデザインしたカップに、〈ビアレッティ〉の名品、直火式エスプレッソメーカー《モカ》なら理想的だ。
「コーヒーマシンの最初のプロトタイプが完成したのは1933年です」とバッシ氏は語る。「でも、『モカ』が本当に広まったのは第二次大戦後、『ヒゲのおじさん』をトレードマークに使った宣伝が大成功してからでした」
キアラ・アレッシィ氏はデザインの専門家で、『デザイナー不在のデザイン』の著者でもある。彼女の祖父、カルロ・アレッシィが結婚した相手が、「モカ」を発明・デザインしたアルフォンソ・ビアレッティの娘、ジェルマーナ・ビアレッティだ。「2人の会話は、いつも祖父が『やっぱり君にはビアレッティ家の血が流れてるな!』と言って終わっていましたね」とアレッシィ氏は言う。
ジェルマーナを喜ばせるため、カルロは有名な義父の例にならい、ティー&コーヒーセットをデザインすることにした。1945年に発表された《ボンベ》は、柔らかな曲線を使ったデザインで、無意識に思い描かれていた当時の理想的な主婦の姿に似ているのかもしれない。しかし、カルロの妻ジェルマーナは対照的で、どちらかと言えば「モカ」エスプレッソメーカーに近い痩せ体形の、自由な思想の持ち主だったそうだ。
今日まで、ビアレッティの《モカ》を超える製品は登場していない。長年のあいだにさまざまなデザインのエスプレッソメーカーが作られたが、《モカ》があまりに完璧なため、どれも見劣りするコピーで終わってしまうのだ。
お祝いの機会を大切にする
「1930年代、白とゴールドのジノリのお皿は、どこの家庭でも特別な日に使う食器でした」とアルベルト・バッシ氏は言う。エレガントですっきりとしたデザインが、普段とは違う華やかなムードにぴったりだ。「もう生産されていないので、手に入れるには蚤の市で探すしかありませんね」
現代のスタイリッシュな食器といえば、フォルナセッティのプレート(写真)。ちょっと冗談めいたところのあるエレガンスが、実にイタリア的な、リラックスした高級感を感じさせてくれる。
「1930年代、白とゴールドのジノリのお皿は、どこの家庭でも特別な日に使う食器でした」とアルベルト・バッシ氏は言う。エレガントですっきりとしたデザインが、普段とは違う華やかなムードにぴったりだ。「もう生産されていないので、手に入れるには蚤の市で探すしかありませんね」
現代のスタイリッシュな食器といえば、フォルナセッティのプレート(写真)。ちょっと冗談めいたところのあるエレガンスが、実にイタリア的な、リラックスした高級感を感じさせてくれる。
3. 家族が中心
おせっかいな家族がたくさんいれば、それだけで子どもは育つ。
いつも、自分らしくあること。自分が何者で、どこから来たのか、忘れないこと――イタリア人の生き方の本質にはこの考えがある。「何はともあれ、家族はイタリアンデザインの要の1つです」と、キアラ・アレッシィ氏は言う。「家族というのは、イタリア人にとって独特の意味を持つ存在で、家族があってこそ、人間のためのストーリーがあるデザインが生まれるんです。モノが、人と人とのコミュニケーションのための道具になるんです」
おせっかいな家族がたくさんいれば、それだけで子どもは育つ。
いつも、自分らしくあること。自分が何者で、どこから来たのか、忘れないこと――イタリア人の生き方の本質にはこの考えがある。「何はともあれ、家族はイタリアンデザインの要の1つです」と、キアラ・アレッシィ氏は言う。「家族というのは、イタリア人にとって独特の意味を持つ存在で、家族があってこそ、人間のためのストーリーがあるデザインが生まれるんです。モノが、人と人とのコミュニケーションのための道具になるんです」
予備のベッド
デザイン哲学者で、〈ラーゴ〉や〈ラバッツァ〉といった企業のコンサルタントとしても活躍するヴィルジニオ・ブリアトーレ氏の人生を大きく変えたイタリアンプロダクトが《ピソロ》。デニス・サンタキアラが〈カンページ〉のためにデザインした製品で、スツールの中に、空気を入れて膨らませるマットレスが入っている。ミラノの小さなアパートメントに8年間住んでいたというブリアトーレ氏はこう語る。「このエアーベッドは、使わないときには隠しておけて、使うときにはたった数分で、間に合わせとはいえ快適なベッドが出来上がるという、ノマドなコンセプトを見事に形にした実にセンスのいい製品です。家と呼べる場所なら、友達用のベッドが1つは用意されているべきですからね。私のこのベッドには、50人くらいが泊まりましたよ」
もう1つ、スペースを節約し2通りの使い方ができる製品が、〈ラーゴ〉のアームチェア《ハギー》(写真上)だ。〈ラーゴ〉が主催するワークショップで、2009年にブリット・ライスラーがデザインした。チェアとしてもベッドとしても使用できる。
デザイン哲学者で、〈ラーゴ〉や〈ラバッツァ〉といった企業のコンサルタントとしても活躍するヴィルジニオ・ブリアトーレ氏の人生を大きく変えたイタリアンプロダクトが《ピソロ》。デニス・サンタキアラが〈カンページ〉のためにデザインした製品で、スツールの中に、空気を入れて膨らませるマットレスが入っている。ミラノの小さなアパートメントに8年間住んでいたというブリアトーレ氏はこう語る。「このエアーベッドは、使わないときには隠しておけて、使うときにはたった数分で、間に合わせとはいえ快適なベッドが出来上がるという、ノマドなコンセプトを見事に形にした実にセンスのいい製品です。家と呼べる場所なら、友達用のベッドが1つは用意されているべきですからね。私のこのベッドには、50人くらいが泊まりましたよ」
もう1つ、スペースを節約し2通りの使い方ができる製品が、〈ラーゴ〉のアームチェア《ハギー》(写真上)だ。〈ラーゴ〉が主催するワークショップで、2009年にブリット・ライスラーがデザインした。チェアとしてもベッドとしても使用できる。
4. 何事も笑顔で取り組む
死ぬまで子どもであり続ける方法を知っている。
アッキーレ・カスティリオーニが1957年に〈ザノッタ〉のためにデザインしたスツール《メッツァドロ》に始まり、「イタリアのメーカーは、いつもひと捻りあるデザインが特徴になっています」と言うのは、建築設計事務所〈UdA〉のアンドレア・マルカンテ氏だ。
マルカンテ氏のプロジェクトは、いつも何かしら予想外の要素を含んでいる。例えば、普通サイズのソファの横に置いた巨大なランプや、アンティークとコンテンポラリーなものの共存。「部屋を、ジョルジョ・デ・キリコの絵画のようにとらえているんです。見慣れたものと異質なものが混ざった、絶妙なバランスを作り出したいと考えています。そこが魅力的なんです」と言う。
死ぬまで子どもであり続ける方法を知っている。
アッキーレ・カスティリオーニが1957年に〈ザノッタ〉のためにデザインしたスツール《メッツァドロ》に始まり、「イタリアのメーカーは、いつもひと捻りあるデザインが特徴になっています」と言うのは、建築設計事務所〈UdA〉のアンドレア・マルカンテ氏だ。
マルカンテ氏のプロジェクトは、いつも何かしら予想外の要素を含んでいる。例えば、普通サイズのソファの横に置いた巨大なランプや、アンティークとコンテンポラリーなものの共存。「部屋を、ジョルジョ・デ・キリコの絵画のようにとらえているんです。見慣れたものと異質なものが混ざった、絶妙なバランスを作り出したいと考えています。そこが魅力的なんです」と言う。
前出のカッペリーニ氏によれば、イタリアンデザインの製品には、物語があると言う。インテリア製品は、機能的なだけでなく、見る人を笑顔にするべきなのだ。
エットレ・ソットサスとアッキーレ・カスティリオーニといった名匠が手掛けたのは、まさにそれだ。彼らのデザインには、必ずどこかに驚きがあり、使う人が笑顔になって楽しくなるような、ひと捻りあるコンセプトになっている。写真は、フロス社のためにアッキーレとピエール・ジャコモのカスティリオーニ兄弟が1962年にデザインしたランプ《トイオ》。車のヘッドライトと釣り竿でできている。
「もちろん、今の若手デザイナーたちにとって、名作デザインの歴史の重みを感じながら、新しいものを作り出すのは簡単なことではないでしょう。でも、驚きの要素を探していくと、いろんな方向に向かうことができるんです。テクノロジーだったり、今でこそ手に入る素晴らしい新素材だったり」と、カッペリーニ氏は言う。
エットレ・ソットサスとアッキーレ・カスティリオーニといった名匠が手掛けたのは、まさにそれだ。彼らのデザインには、必ずどこかに驚きがあり、使う人が笑顔になって楽しくなるような、ひと捻りあるコンセプトになっている。写真は、フロス社のためにアッキーレとピエール・ジャコモのカスティリオーニ兄弟が1962年にデザインしたランプ《トイオ》。車のヘッドライトと釣り竿でできている。
「もちろん、今の若手デザイナーたちにとって、名作デザインの歴史の重みを感じながら、新しいものを作り出すのは簡単なことではないでしょう。でも、驚きの要素を探していくと、いろんな方向に向かうことができるんです。テクノロジーだったり、今でこそ手に入る素晴らしい新素材だったり」と、カッペリーニ氏は言う。
写真:Corraini Edizioni
「エクレクティックなイタリア人アーティストでデザイナーのブルーノ・ムナーリは、創造性の基盤とは、ものごとの新しい関係性を考え出す能力、見慣れたものや状況のありかたを変えていく能力だと言っています」と、日刊紙『ラ・レプッブリカ』の別冊スタイル紙『D』でデザイン記事を執筆するラウラ・トラルディ氏は言う。写真の木製ブロックもムナーリ(1907-98)の作品だ。
ブランド〈インテルノ・イタリアーノ〉の設立者でデザイナーのジュリオ・イアケッティ氏と妻のシルヴィアは、3人の子どもたちと暮らすミラノの自宅に、このような創造性へのアプローチを取り入れている。「子ども用家具は買わず、その代わり、家具を選ぶときに大きなモジュールのようにとらえて選びました。それを家やお城や島に見立てて遊ぶことができるんです。ただリビングルームにぬいぐるみをたくさん並べたって、いい遊び場にはなりません」
「遊びは真剣に考えるべきだ」と、ドイツの教育家ジャン・パウルは記しているが、イタリア人も同じ意見のようだ。
「エクレクティックなイタリア人アーティストでデザイナーのブルーノ・ムナーリは、創造性の基盤とは、ものごとの新しい関係性を考え出す能力、見慣れたものや状況のありかたを変えていく能力だと言っています」と、日刊紙『ラ・レプッブリカ』の別冊スタイル紙『D』でデザイン記事を執筆するラウラ・トラルディ氏は言う。写真の木製ブロックもムナーリ(1907-98)の作品だ。
ブランド〈インテルノ・イタリアーノ〉の設立者でデザイナーのジュリオ・イアケッティ氏と妻のシルヴィアは、3人の子どもたちと暮らすミラノの自宅に、このような創造性へのアプローチを取り入れている。「子ども用家具は買わず、その代わり、家具を選ぶときに大きなモジュールのようにとらえて選びました。それを家やお城や島に見立てて遊ぶことができるんです。ただリビングルームにぬいぐるみをたくさん並べたって、いい遊び場にはなりません」
「遊びは真剣に考えるべきだ」と、ドイツの教育家ジャン・パウルは記しているが、イタリア人も同じ意見のようだ。
5. 目に見えるものがすべてとは限らない
真実は1つにあらずと心得る。
「私たちイタリア人は、絶対的な確実性というのを信じません」とイアケッティ氏は言う。それを欠点と思うかどうかは、考え方次第。「物事をいろいろな角度から見たり、万華鏡のようにいろいろな見方をする能力に長けています。現実世界をゆがめて見せ、作品にアイロニーや空想をめぐらせたひねり加えるレンズが備わっているんです」
心の中に、ものの機能は1つだけではないかもしれない、どんなものも見た目ままとは限らない、と疑ってみる気持ちが根を下ろしているんです」と、イアケッティ氏は言う。「フォルムが変化しているだけでなく、それ以前に、まずコンセプトの変化がある。確実性を打ち壊されると人は不安に感じますが、同時に、解き放たれて自由になれるんです」
真実は1つにあらずと心得る。
「私たちイタリア人は、絶対的な確実性というのを信じません」とイアケッティ氏は言う。それを欠点と思うかどうかは、考え方次第。「物事をいろいろな角度から見たり、万華鏡のようにいろいろな見方をする能力に長けています。現実世界をゆがめて見せ、作品にアイロニーや空想をめぐらせたひねり加えるレンズが備わっているんです」
心の中に、ものの機能は1つだけではないかもしれない、どんなものも見た目ままとは限らない、と疑ってみる気持ちが根を下ろしているんです」と、イアケッティ氏は言う。「フォルムが変化しているだけでなく、それ以前に、まずコンセプトの変化がある。確実性を打ち壊されると人は不安に感じますが、同時に、解き放たれて自由になれるんです」
迷ったらホイールをつけてみる
「ソットサスがデザインしたタイプライター《バレンタイン》と、ガエ・アウレンティがフォンタナアルテのために作った車輪付きテーブル《コンルオーテ》(写真)からは、創造するという行為についてだけでなく、人生についても大切なことを学びました」と言うのは、〈カーサマニア〉、〈フォンタナアルテ〉、〈フォスカリーニ〉といったメーカーのプロジェクトを担当しているオド・フィオラヴァンティ氏だ。
「デザイナー以外でも、ものづくりで問題に直面している人たちみんなにおすすめしたいのですが、『ホイールを付けてみたらどうなるか?ハンドルを付けてみたらどうなるか?』と自問してみてください。単純ですが、この2つを考えてみると、作り出そうとしているものに対して新しい見方ができるようになります。行き詰った状況から抜け出すヒントになります」
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