アンティーク家具の木材について知る 1:オーク材
家具に使われるポピュラーな木材の種類それぞれについて解説するシリーズ、第1回は日本のインテリアにもよく合うオーク材です。素材の特性や希少価値の高い杢目、色のことなど、知識を深めてください。
西谷典子|Noriko Nishiya
2016年2月28日
アンティーク家具を選ぶときのポイントのひとつとして、木の種類を知ることは大変重要です。使われている木材によって家具の価値も異なってきますし、メンテナンス方法の違いもあります。今回からのシリーズでは、家具についてのベーシックな知識を深めていただくために、主要な木材の特徴についてご説明していきたいと思います。
オークとは日本のミズナラ材
オークは樫の木と日本語に訳されることがありますが、実はそれは違っていて、日本ではミズナラのことを指します。ナラはブナ科に所属しますが、ナラの種類だけでも600種類以上あるそうです。
オークは樫の木と日本語に訳されることがありますが、実はそれは違っていて、日本ではミズナラのことを指します。ナラはブナ科に所属しますが、ナラの種類だけでも600種類以上あるそうです。
オークの木は大変堅く重いのが特徴で、虫が嫌がるタンニンを多く含んでいるため、他の木よりも害虫には強い木と言われています。しかし、1920年代に発生したいわゆる「ナラ枯れ(ナラの集団枯死)」の被害で、激減したイギリスのオーク材を補うため、北海道のオークが大量にイギリスへと輸出されました。そのため、1920年代のイギリスのオーク家具には、北海道産のミズナラ材が多く使われています。
「板目」と「柾目」
丸太を板材にした後の挽き方により、「板目」と「柾目(まさめ)」という2種類の木目の出方があります。「板目」(写真)は丸太の中心からずれて挽く方法で、ちょうど丸太の外側からそのまま縦にスライスするような感じになり、木目の特徴としては、年輪が不規則な曲線状に現れます。
丸太を板材にした後の挽き方により、「板目」と「柾目(まさめ)」という2種類の木目の出方があります。「板目」(写真)は丸太の中心からずれて挽く方法で、ちょうど丸太の外側からそのまま縦にスライスするような感じになり、木目の特徴としては、年輪が不規則な曲線状に現れます。
いっぽう「柾目」は、丸太をまず縦に4分の1に切り分けてから、その部分を縦にスライスする、あるいは年輪の中心に向かって鋸を入れ、垂直に切り出す方法で、年輪が平行に現れ、「板目」よりまっすぐで穏やかな印象のある木目です。柾目は木が収縮することが少なく、板目より頑丈な木材になる挽き方ですが、丸太の半径が最大幅となるので、高樹齢の大木でないと大きな板が取れません。また、スライスしていくと最終的に角の部分が余ることになり、板目より多く木材を切り出すことも難しいため、必然的に価格も柾目の方が高くなります。
希少価値の高い「虎斑」
オーク材の特徴のひとつに、「虎斑(とらふ)」という、虎の毛に似た杢目(文様として価値のある木目を特にこう呼ぶ)があります。この写真のコンソールテーブルの天板に出ている部分がそうですが、これはブナ科の木材にのみ見られる杢目です。この虎斑は柾目の中でも稀に現れる斑で、湿気や乾燥にも強くて木がよじれることがなく、頑丈な部分として知られています。虎斑はマグロでいえば大トロの部分。レアさやクオリティを知らずに敬遠される方もいらっしゃるようですが、非常にもったいないような気がします。虎斑があるということは上質なオーク材を使っているという証拠なので、大事に使っていただきたいものです。
オーク材の特徴のひとつに、「虎斑(とらふ)」という、虎の毛に似た杢目(文様として価値のある木目を特にこう呼ぶ)があります。この写真のコンソールテーブルの天板に出ている部分がそうですが、これはブナ科の木材にのみ見られる杢目です。この虎斑は柾目の中でも稀に現れる斑で、湿気や乾燥にも強くて木がよじれることがなく、頑丈な部分として知られています。虎斑はマグロでいえば大トロの部分。レアさやクオリティを知らずに敬遠される方もいらっしゃるようですが、非常にもったいないような気がします。虎斑があるということは上質なオーク材を使っているという証拠なので、大事に使っていただきたいものです。
特別な育て方をする上質な「ポラードオーク」
オーク材の中でも上質なものは「ポラードオーク」といって、木が育つ過程で枝を剪定し、枝先を長くさせない分、幹の部分をゆっくり成長させた特別なオークです。枝は主に薪などに使われましたが、枝を刈り込むことで木の寿命も長くなり、木質も堅く頑丈になります。このような育て方により、密度の濃い年輪を持つようになったポラードオークは、一般のオーク以上の希少価値が生まれます。自然がつくり出す個性的な杢目をもつポラードオークを家具に使うことは、ひとつのステイタスのようなものでした。
オーク材の中でも上質なものは「ポラードオーク」といって、木が育つ過程で枝を剪定し、枝先を長くさせない分、幹の部分をゆっくり成長させた特別なオークです。枝は主に薪などに使われましたが、枝を刈り込むことで木の寿命も長くなり、木質も堅く頑丈になります。このような育て方により、密度の濃い年輪を持つようになったポラードオークは、一般のオーク以上の希少価値が生まれます。自然がつくり出す個性的な杢目をもつポラードオークを家具に使うことは、ひとつのステイタスのようなものでした。
レアなコブの部分、「バール」の杢目
木の幹や根などに時折、大きなコブなどができているのを見かけたことはないでしょうか。このコブを「バール」というのですが、そのバールを柾目に切り出したものも、ポラードオーク同様に大変希少価値があり、両者ともその美しさを生かして、薄くスライスした突板(つきいた)にし、表面の化粧材として使われることが多いものです。このレアなバールの杢目をきれいに使ってデザインされたものは、ほぼ間違いなく家具の中でもトップクオリティと言えるものです。
木の幹や根などに時折、大きなコブなどができているのを見かけたことはないでしょうか。このコブを「バール」というのですが、そのバールを柾目に切り出したものも、ポラードオーク同様に大変希少価値があり、両者ともその美しさを生かして、薄くスライスした突板(つきいた)にし、表面の化粧材として使われることが多いものです。このレアなバールの杢目をきれいに使ってデザインされたものは、ほぼ間違いなく家具の中でもトップクオリティと言えるものです。
良質の家具の産地、イプスウィッチ
イギリスの東部にあるイプスウィッチ地区で生産される、イプスウィッチ・オークの家具は、アンティーク家具の業界では質のよい家具として知られています。伝統的なイプスウィッチ・オークの見分け方は、その塗装の色。モカ色と表現される薄い茶色で、スタイルは伝統的なチューダー調です。ゆっくり育ったオークのみを使用しているので、あまり濃い杢目は見られず、しっとり落ち着いた印象です。
イギリスの東部にあるイプスウィッチ地区で生産される、イプスウィッチ・オークの家具は、アンティーク家具の業界では質のよい家具として知られています。伝統的なイプスウィッチ・オークの見分け方は、その塗装の色。モカ色と表現される薄い茶色で、スタイルは伝統的なチューダー調です。ゆっくり育ったオークのみを使用しているので、あまり濃い杢目は見られず、しっとり落ち着いた印象です。
自社で生育したオーク材でつくる家具
現在でもイギリス王室御用達のティッチマーシュ・アンド・グッドウィン社は、このイプスウィッチの地で90年以上、高級オーク家具を生産し続けています。ときどき見かけるこの会社製のアンティーク家具は、長い時を経てもまったくガタつくこともなく、どっしり重いオーク材のクオリティの高さには、いつも驚かされます。現在でもこの会社は輸入に頼らず自社の土地で生育させたイギリスのオーク材で家具を作っているそうです。
現在でもイギリス王室御用達のティッチマーシュ・アンド・グッドウィン社は、このイプスウィッチの地で90年以上、高級オーク家具を生産し続けています。ときどき見かけるこの会社製のアンティーク家具は、長い時を経てもまったくガタつくこともなく、どっしり重いオーク材のクオリティの高さには、いつも驚かされます。現在でもこの会社は輸入に頼らず自社の土地で生育させたイギリスのオーク材で家具を作っているそうです。
オーク材家具の品質を見極める方法
このように、上質のオークの家具の見分け方は、強い杢目があまり見えない、目の詰まった材質で作られていることが基本です。そのほか、オークのチェストなどの背板(後ろ側)や引き出しの素材もその判断基準になります。高級なものは背板などもオーク材の一枚板で作られていますが、安いものはパイン材や合板が使われていたりします。つまり、クオリティの判断は、無垢の素材を隠れたところにも使っているかという点です。そのことは、家具自体の重さでも、ある程度は判断できるかもしれません。
このように、上質のオークの家具の見分け方は、強い杢目があまり見えない、目の詰まった材質で作られていることが基本です。そのほか、オークのチェストなどの背板(後ろ側)や引き出しの素材もその判断基準になります。高級なものは背板などもオーク材の一枚板で作られていますが、安いものはパイン材や合板が使われていたりします。つまり、クオリティの判断は、無垢の素材を隠れたところにも使っているかという点です。そのことは、家具自体の重さでも、ある程度は判断できるかもしれません。
時代により変わるオーク材家具の色
オーク材のもともとの色は、肌色のような薄いベージュの優しい色ですが、その時代の流行によって塗装が明るい色になったりダークな色になったりします。
たとえば、ヴィクトリア女王の夫アルバート公が1861年に亡くなってから、イギリス国民皆が喪に服した時代は、洋服だけではなく家具も暗い色が主流に。しかもこの時期のイギリスの家具は、ゴシック・リバイバルの流行で、かなり重厚な感じの彫刻が入ったオーク家具が好まれました。
が、その後のアーツ・アンド・クラフツの時代に入ると、形も塗装ももっとシンプルになります。このように時代の流れによって、同じオークの家具でもまったく印象が違って見えるのです。
オーク材のもともとの色は、肌色のような薄いベージュの優しい色ですが、その時代の流行によって塗装が明るい色になったりダークな色になったりします。
たとえば、ヴィクトリア女王の夫アルバート公が1861年に亡くなってから、イギリス国民皆が喪に服した時代は、洋服だけではなく家具も暗い色が主流に。しかもこの時期のイギリスの家具は、ゴシック・リバイバルの流行で、かなり重厚な感じの彫刻が入ったオーク家具が好まれました。
が、その後のアーツ・アンド・クラフツの時代に入ると、形も塗装ももっとシンプルになります。このように時代の流れによって、同じオークの家具でもまったく印象が違って見えるのです。
日本の家にも合う家具
こういった時代の流れで、日本の一般的な家庭に違和感なく合う家具が、形も色も落ち着いた1920~1940年代のイギリスのオーク家具だと言われています。オーク材はそもそも日本でもずっと使われてきた木材なので、和のインテリアにも大変合います。メンテナンス面でも、乾拭きやビーズワックスなどを使うことにより、家具の色そのものがだんだん渋くよい風合いに変わっていき、愛着をもって使い続けていけるのもオーク材のよさです。
こういった時代の流れで、日本の一般的な家庭に違和感なく合う家具が、形も色も落ち着いた1920~1940年代のイギリスのオーク家具だと言われています。オーク材はそもそも日本でもずっと使われてきた木材なので、和のインテリアにも大変合います。メンテナンス面でも、乾拭きやビーズワックスなどを使うことにより、家具の色そのものがだんだん渋くよい風合いに変わっていき、愛着をもって使い続けていけるのもオーク材のよさです。
現在、日本のミズナラは九州と四国のある一部では絶滅に近い状態のようですが、イギリスのオークも同じ状況で、森林保護の一環として国が管理して伐採を厳しく規制しています。環境のことも考えれば、質の高い木材を使ったアンティーク家具をリサイクルして使っていくことは、これからもっと見直していくべきことかもしれません。
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