名作デザイン:時代を超えて愛される〈マリメッコ〉のテキスタイル
1950年代から今日まで、鮮やかでシンプルで美しいデザインで世界を魅了するフィンランドの〈マリメッコ〉。ドイツのHouzzから、時代を超えて愛されるブランドの歴史をひもとく記事をお届けします。
Clara Ott
2018年3月15日
〈マリメッコ〉の創業は1951年。その斬新な柄とたくみなデザインのドレスはあっという間に「知的な女性たちのユニフォーム」になった。〈マリメッコ〉の成功は偶然ではなく、創業者のアルミ・ラティアの優れた経営手腕のたまものだった。彼女は同時代のアーティストたちを制作に巻き込み、クオリティの高い画期的なデザインをつぎつぎと世に出していったのだった。人々が心から求めるものを見極めてつくりだした、シンプルで美しいデザインは、瞬く間に世界中で人気を博すようになった。
今日に至るまで、〈マリメッコ〉のテキスタイルやドレス、ベッドリネンや食器は、フィンランド・デザインを代表する存在であり、カラフルでセンスのいいデザインはアーティストやクリエイターから高い評価を受けている。この記事では、ファンなら知っておきたい〈マリメッコ〉の歴史をご紹介していこう。
今日に至るまで、〈マリメッコ〉のテキスタイルやドレス、ベッドリネンや食器は、フィンランド・デザインを代表する存在であり、カラフルでセンスのいいデザインはアーティストやクリエイターから高い評価を受けている。この記事では、ファンなら知っておきたい〈マリメッコ〉の歴史をご紹介していこう。
はじまり
1951年、アルミ・ラティアは「シンプルで着やすく美しい普段着」をつくるべく、フィンランドの首都ヘルシンキでテキスタイルの会社を設立。〈マリメッコ〉という社名は、フィンランド語で「小さなマリーのための服」という意味だ。
1950年代にはヴォッコ・ヌルメスニエミ、1960年代はマイヤ・イソラを起用し、成功を収める。初期の典型的なデザインは、クラシックなストライプなどの柄を、大胆な色で表現したものだった。
ぱっと目を引く柄、すっきりとした形が美しい〈マリメッコ〉の服には、数多くの有名人が夢中になった。ジャクリーン・ケネディもその1人だ。フィンランド人の国民性は、伝統を大切にし、新しいことに大胆に取り組む質ではないが、〈マリメッコ〉は以前からあるシンプルなデザインの日常服にちょっとひねりを加えているところがポイントだった。こうして誕生したドレスのいくつかは、やがてクラシックとなっていった。
1951年、アルミ・ラティアは「シンプルで着やすく美しい普段着」をつくるべく、フィンランドの首都ヘルシンキでテキスタイルの会社を設立。〈マリメッコ〉という社名は、フィンランド語で「小さなマリーのための服」という意味だ。
1950年代にはヴォッコ・ヌルメスニエミ、1960年代はマイヤ・イソラを起用し、成功を収める。初期の典型的なデザインは、クラシックなストライプなどの柄を、大胆な色で表現したものだった。
ぱっと目を引く柄、すっきりとした形が美しい〈マリメッコ〉の服には、数多くの有名人が夢中になった。ジャクリーン・ケネディもその1人だ。フィンランド人の国民性は、伝統を大切にし、新しいことに大胆に取り組む質ではないが、〈マリメッコ〉は以前からあるシンプルなデザインの日常服にちょっとひねりを加えているところがポイントだった。こうして誕生したドレスのいくつかは、やがてクラシックとなっていった。
1964年:《ウニッコ》の誕生
マリメッコといえば、なんといっても大胆な花柄の《ウニッコ》。デザイナーのマイヤ・イソラが1964年に生み出したデザインだ。それまで、創業者のラミアは「花柄だけはつくらないこと。野に咲く花の美しさにはかなわないから」という方針をかかげていたが、反逆精神旺盛なマイヤ・イソラはあえて花柄に挑戦。ポピーの花をモチーフにしたこの柄をつくりだした。今日にいたるまで、〈マリメッコ〉を代表する柄として世界中で愛されていることは、皆さんご存知のとおりだ。
当初は赤、青、白のみだったが、やがて他の色も追加されていった。2014年の同社設立50周年には、ブラック/オレンジ、ターコイズ/赤の限定色が発売された。
マリメッコといえば、なんといっても大胆な花柄の《ウニッコ》。デザイナーのマイヤ・イソラが1964年に生み出したデザインだ。それまで、創業者のラミアは「花柄だけはつくらないこと。野に咲く花の美しさにはかなわないから」という方針をかかげていたが、反逆精神旺盛なマイヤ・イソラはあえて花柄に挑戦。ポピーの花をモチーフにしたこの柄をつくりだした。今日にいたるまで、〈マリメッコ〉を代表する柄として世界中で愛されていることは、皆さんご存知のとおりだ。
当初は赤、青、白のみだったが、やがて他の色も追加されていった。2014年の同社設立50周年には、ブラック/オレンジ、ターコイズ/赤の限定色が発売された。
チーフ・デザイナー、マイヤ・イソラの力
チーフデザイナーに就任したイソラは70代で引退するまで〈マリメッコ〉のデザインを牽引していった(2001年に引退、その数年後に亡くなった)。彼女が同社のために生み出したデザインは約500パターンあるといわれている。
1978年からは、娘のクリスティーナ・イソラも同社のデザイナーとなった。実際、クリスティーナは16歳のころから母親の仕事を手伝っていた。クリスティーナは《ウニッコ》などの定番柄にモダンなカラーを加えていった。写真のイエローとグレーの組み合わせも彼女のアイデアだ。
チーフデザイナーに就任したイソラは70代で引退するまで〈マリメッコ〉のデザインを牽引していった(2001年に引退、その数年後に亡くなった)。彼女が同社のために生み出したデザインは約500パターンあるといわれている。
1978年からは、娘のクリスティーナ・イソラも同社のデザイナーとなった。実際、クリスティーナは16歳のころから母親の仕事を手伝っていた。クリスティーナは《ウニッコ》などの定番柄にモダンなカラーを加えていった。写真のイエローとグレーの組み合わせも彼女のアイデアだ。
1964年:《カイヴォ》
〈マリメッコ〉の製品につけられたフィンランド語の名前には、なんともかわいらしい響きがある。しかし、意味を知れば、なるほどと思うものばかりだ。「カイヴォ」とは泉の意味で、マイヤ・イソラが泉にうっかりバケツを落としたときに目にした波紋から思いついたデザインだった。水といってもありきたりなブルー系ではなく、黒と白のメリハリのある模様にし、時代を超えたエレガンスを感じさせるデザインとなっている。
〈マリメッコ〉の製品につけられたフィンランド語の名前には、なんともかわいらしい響きがある。しかし、意味を知れば、なるほどと思うものばかりだ。「カイヴォ」とは泉の意味で、マイヤ・イソラが泉にうっかりバケツを落としたときに目にした波紋から思いついたデザインだった。水といってもありきたりなブルー系ではなく、黒と白のメリハリのある模様にし、時代を超えたエレガンスを感じさせるデザインとなっている。
1964年:《キヴェット》
クッションカバーや壁紙、洋服用の布地、食器の柄として変わらぬ人気を誇る《キヴェット》も、生まれて60年になる定番柄だ。モチーフは、マイヤ・イソラが手描きで描いた、完璧ではない円。ベーシックな幾何学模様に少しひねりを加えるのが〈マリメッコ)流。それに、自然界には完璧な形などめったにないという事実も繁栄している。「キヴェット」とはフィンランド語で「石」という意味。もちろん、石から発想した柄だ。
この柄の壁紙には、グレー、赤、黒があり、擦り切れにくいビニールでできているので、子供部屋にもぴったりだ。
クッションカバーや壁紙、洋服用の布地、食器の柄として変わらぬ人気を誇る《キヴェット》も、生まれて60年になる定番柄だ。モチーフは、マイヤ・イソラが手描きで描いた、完璧ではない円。ベーシックな幾何学模様に少しひねりを加えるのが〈マリメッコ)流。それに、自然界には完璧な形などめったにないという事実も繁栄している。「キヴェット」とはフィンランド語で「石」という意味。もちろん、石から発想した柄だ。
この柄の壁紙には、グレー、赤、黒があり、擦り切れにくいビニールでできているので、子供部屋にもぴったりだ。
1971年:《トゥーリ》
フィンランド人は快適なベッドルームをとても大切にする人たち。〈マリメッコ〉ももちろんそうで、心地よい眠りをもたらすデザインもたくさんつくりだしている。男性女性問わず使える柄をつくるのは簡単なことではないが、「風」を意味する《トゥーリ》は、まさにジェンダーフリーなロングセラーだ。そよかぜになびく木々の姿が、モノクロ写真のように優しき描かれた柄に包まれれば、ぐっすりと眠れそうだ。
フィンランド人は快適なベッドルームをとても大切にする人たち。〈マリメッコ〉ももちろんそうで、心地よい眠りをもたらすデザインもたくさんつくりだしている。男性女性問わず使える柄をつくるのは簡単なことではないが、「風」を意味する《トゥーリ》は、まさにジェンダーフリーなロングセラーだ。そよかぜになびく木々の姿が、モノクロ写真のように優しき描かれた柄に包まれれば、ぐっすりと眠れそうだ。
2002年:《ボットナ》
デンマーク人デザイナーのアンナ・ダニエルソンが手がけた《ボットナ》も美しい木々の葉を描いた作品。ナチュラルでシンプルでクリアな構成、モノクロの曲線で描かれる模様は、壁紙のように広い面に使うのに向いている。〈マリメッコ〉のデザインはどれも単純化されたパターンが美しさを生み出している。モノクロはもちろん、明るいグリーンと白の組み合わせは、まるでうっそうとした森のような気分の柄だ。
デンマーク人デザイナーのアンナ・ダニエルソンが手がけた《ボットナ》も美しい木々の葉を描いた作品。ナチュラルでシンプルでクリアな構成、モノクロの曲線で描かれる模様は、壁紙のように広い面に使うのに向いている。〈マリメッコ〉のデザインはどれも単純化されたパターンが美しさを生み出している。モノクロはもちろん、明るいグリーンと白の組み合わせは、まるでうっそうとした森のような気分の柄だ。
2003年:《ヘトキエ》
マイヤ・ロウエカリがデザインした《ヘトキエ》は、家の中に都会の風を感じさせてくれる柄。〈マリメッコ〉でなければ、都会のストレスは持ち込むことなく、これほど美しく心地よく優雅に都会を描くことなどできなかったはず。控えめなライン、映画のような風景のファブリックは、壁紙によく似合う。また、食器やタオルでも楽しめる。
マイヤ・ロウエカリがデザインした《ヘトキエ》は、家の中に都会の風を感じさせてくれる柄。〈マリメッコ〉でなければ、都会のストレスは持ち込むことなく、これほど美しく心地よく優雅に都会を描くことなどできなかったはず。控えめなライン、映画のような風景のファブリックは、壁紙によく似合う。また、食器やタオルでも楽しめる。
2004年:《カイク》
「カイク」とは「こだま」という意味。マリメッコらしい、自然を題材にしたデザインだ。明るい柄が大好きな子供たちにぴったりだし、何より自然の大切さを教えることのできる模様だろう。
マイヤ・ロウエカリが、休暇中に心に残ったシラカバ林の風景を描いた作品。写真のように、子どもの使うシャワーカーテンに使うのも楽しい。シラカバは生命力の強さから、母性の象徴にもなっている。ナプキン、トレー、シーツ、タオルなど、さまざまなアイテムに似合う柄だ。
「カイク」とは「こだま」という意味。マリメッコらしい、自然を題材にしたデザインだ。明るい柄が大好きな子供たちにぴったりだし、何より自然の大切さを教えることのできる模様だろう。
マイヤ・ロウエカリが、休暇中に心に残ったシラカバ林の風景を描いた作品。写真のように、子どもの使うシャワーカーテンに使うのも楽しい。シラカバは生命力の強さから、母性の象徴にもなっている。ナプキン、トレー、シーツ、タオルなど、さまざまなアイテムに似合う柄だ。
2009年:食器《イン・グッド・カンパニー》
フィンランド人デザイナー、サミ・ルオツァライネンもイソラ母娘に大きな影響を受けたデザイナーの1人。ルオツァライネンはマリメッコの食器シリーズをデザインしている。
《イン・グッド・カンパニー》シリーズには、ボウル、ピッチャー、プレート、カップ、マグがある。デザインのヒントになったのは、日本の茶道。彼がデザインしたシンプルなフォルムの食器には、イソラの名作《ウニッコ》をプリントしたものもある。
フィンランド人デザイナー、サミ・ルオツァライネンもイソラ母娘に大きな影響を受けたデザイナーの1人。ルオツァライネンはマリメッコの食器シリーズをデザインしている。
《イン・グッド・カンパニー》シリーズには、ボウル、ピッチャー、プレート、カップ、マグがある。デザインのヒントになったのは、日本の茶道。彼がデザインしたシンプルなフォルムの食器には、イソラの名作《ウニッコ》をプリントしたものもある。
2012年:《コンポッティ》
「コンポッティ」とは「コンポート」のこと。さまざまなフルーツを使って作るコンポートをモチーフにしてアイノ−マイア・メトソラが〈マリメッコ〉のためにデザインした柄で、マイヤ・イソラが手がけた《キヴェット》のように密度の濃い作品だ。
「コンポッティ」とは「コンポート」のこと。さまざまなフルーツを使って作るコンポートをモチーフにしてアイノ−マイア・メトソラが〈マリメッコ〉のためにデザインした柄で、マイヤ・イソラが手がけた《キヴェット》のように密度の濃い作品だ。
時代を超えて愛されるデザイン
写真のファブリックのように、〈マリメッコ〉のスタイルは時代を超えた魅力をもっている。1960年〜70年代は、オレンジ、ブラウン、ベージュといった色合いが主流として、知識人やアーティスト、自立した女性たちが〈マリメッコ〉のドレスに身を包み、ブランドは大きく成長していった。
今では、〈マリメッコ〉のテキスタイルでできた洋服で育った人たちが、幸せな思い出とともに、その子供たちに鮮やかで美しいデザインを受け継いでいる。〈マリメッコ〉のデザインはこうして、世代を超えて受け継がれていくのだろう。
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今では、〈マリメッコ〉のテキスタイルでできた洋服で育った人たちが、幸せな思い出とともに、その子供たちに鮮やかで美しいデザインを受け継いでいる。〈マリメッコ〉のデザインはこうして、世代を超えて受け継がれていくのだろう。
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記事に「時代を超えて愛されるデザイン」とありましたが、本当にその通りですね。こんなにシンプルなモチーフと単純な色彩で作られたデザインなのに、時代の持つ「あたらしさ」や「なつかしさ」が表現されている... 心地よく作者が意図する方向へ心が動かされるので、安心して感動できます。