新築も、リフォームも。知っておきたいインテリアの構成要素:灯りでつくる心地よい空間
インテリアコーディネーターとして活動する筆者が、インテリア素材の基本的な知識をお伝えするシリーズ。今回は、住宅の灯りについて解説します。
これから新築する人も、リフォームの予定がある人も。知っておきたいインテリアの構成要素についてお伝えしているシリーズ、第7回目は「灯り」について。
明かりは、使い方次第で部屋の居心地を変えるだけでなく、過ごす人の心や眠りにまで影響を及ぼします。
エンドユーザーの方との打ち合わせでも、皆さんにとって「ダウンライト」はもはや常識。「間接照明」を希望される方も増えてきて、灯りに対する興味がとても高まっているのを感じています。
「新築も、リフォームも。知っておきたいインテリアの構成要素」シリーズをもっと読む:
第1回 床材いろいろ
第2回 壁と天井、どう仕上げる?前編
第3回 壁と天井、どう仕上げる?後編
第4回 間仕切りで暮らしを豊かに
第5回 住宅設備のデザイン・機能〈キッチン編〉
第6回 住宅設備のデザイン・機能〈バス・トイレ・洗面室編〉
明かりは、使い方次第で部屋の居心地を変えるだけでなく、過ごす人の心や眠りにまで影響を及ぼします。
エンドユーザーの方との打ち合わせでも、皆さんにとって「ダウンライト」はもはや常識。「間接照明」を希望される方も増えてきて、灯りに対する興味がとても高まっているのを感じています。
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心と体を休める灯り
朝日とともに目覚め、太陽が高い時間に活発に活動し、日が暮れたら眠る。それが動物としての人間の自然な姿ですが、現代社会に生きる私たちは、いつもそんな暮らしをするわけにはいきません。
多くの人にとっては、日没後も明るい照明の下で働き、住まいに戻って眠りにつく日々。その住まいに戻ってから過ごす時間に、「夕日のような光」を浴びることで、人の体はリラックスし、体内時計をリセットするきっかけをつくることができます。
朝日とともに目覚め、太陽が高い時間に活発に活動し、日が暮れたら眠る。それが動物としての人間の自然な姿ですが、現代社会に生きる私たちは、いつもそんな暮らしをするわけにはいきません。
多くの人にとっては、日没後も明るい照明の下で働き、住まいに戻って眠りにつく日々。その住まいに戻ってから過ごす時間に、「夕日のような光」を浴びることで、人の体はリラックスし、体内時計をリセットするきっかけをつくることができます。
「夕日のような光」とは、低い位置に置かれたオレンジ色の光のこと。
白熱電球や電球色のLEDを使ったベッドサイドのスタンドや、床置きのランプなどのことです。
昼間の太陽のような、高い位置からの白い光を浴びていると、人間の体は「活動時間」と勘違いしてしまい、なかなか眠りにつくことができません。
オレンジ色の光は物が見えにくくてどうしても好きになれないという方は仕方がありませんが、リビングや寝室など、長い時間を過ごす場所には電球色の照明をおすすめします。
白熱電球や電球色のLEDを使ったベッドサイドのスタンドや、床置きのランプなどのことです。
昼間の太陽のような、高い位置からの白い光を浴びていると、人間の体は「活動時間」と勘違いしてしまい、なかなか眠りにつくことができません。
オレンジ色の光は物が見えにくくてどうしても好きになれないという方は仕方がありませんが、リビングや寝室など、長い時間を過ごす場所には電球色の照明をおすすめします。
タスク照明・アンビエント照明
照明器具の役割は、大きく2つに分けることができます。1つはタスク(作業)照明。
人が作業をする場所だけを照らし出す照明のことです。
照明器具の役割は、大きく2つに分けることができます。1つはタスク(作業)照明。
人が作業をする場所だけを照らし出す照明のことです。
もう1つは、アンビエント(周囲環境)照明。
アンビエント照明とは、天井や壁面につけられていて、空間全体を照らし出す照明のことです。
アンビエント照明とは、天井や壁面につけられていて、空間全体を照らし出す照明のことです。
タスク照明・アンビエント照明は、オフィスや公共施設などの照明計画で用いられる手法ですが、住宅にもこの考えをぜひ取り入れたいもの。
この2つの役割の照明器具を上手に組み合わせれば、食事や団らん、読書や映画鑑賞など、シーンごとに点け替えて、部屋を豊かに使い分けることが可能です。
また、必要のない照明は消しておくことができるので省エネの効果もあります。
この2つの役割の照明器具を上手に組み合わせれば、食事や団らん、読書や映画鑑賞など、シーンごとに点け替えて、部屋を豊かに使い分けることが可能です。
また、必要のない照明は消しておくことができるので省エネの効果もあります。
照明器具の複数使い
戦後すぐの時代は、日本の住まいの灯りは天井から下げられた小さな白熱電球1つ。灯りに家族が寄り添い合って、夜の時間を過ごしていました。その後は蛍光灯が普及し、1台の照明で部屋のすみずみまで明るく照らすことが主流となりました。
LED照明の登場で照明器具はより小さくなり、省エネ化も進みました。
1部屋に1台の照明が当たり前だった時代から、複数の照明器具を使い分ける時代へと、昨今は変わりつつあります。
戦後すぐの時代は、日本の住まいの灯りは天井から下げられた小さな白熱電球1つ。灯りに家族が寄り添い合って、夜の時間を過ごしていました。その後は蛍光灯が普及し、1台の照明で部屋のすみずみまで明るく照らすことが主流となりました。
LED照明の登場で照明器具はより小さくなり、省エネ化も進みました。
1部屋に1台の照明が当たり前だった時代から、複数の照明器具を使い分ける時代へと、昨今は変わりつつあります。
ダウンライト
複数使いの照明器具。代表的なのはダウンライトでしょう。天井に複数配置することで、床面をまんべんなく明るく照らすことができます。天井には光が直接当たらないため、天井面が暗くなることが特徴です。
屋外の環境では、地面が明るい時は空も明るいもの。人間という動物には、その感覚がすっかり身についています。
そのため、天井面が暗いダウンライトは非日常的な感覚を呼び起こし、なんだかカッコイイ雰囲気だな、と思わせる効果があるのです。
複数使いの照明器具。代表的なのはダウンライトでしょう。天井に複数配置することで、床面をまんべんなく明るく照らすことができます。天井には光が直接当たらないため、天井面が暗くなることが特徴です。
屋外の環境では、地面が明るい時は空も明るいもの。人間という動物には、その感覚がすっかり身についています。
そのため、天井面が暗いダウンライトは非日常的な感覚を呼び起こし、なんだかカッコイイ雰囲気だな、と思わせる効果があるのです。
そんなダウンライトも、壁際に配置することでまた違った印象に。
1つ前の事例では正面に壁がありませんので、外の暗さと対照的に床の明るさが際立っています。
この事例ではダウンライトが壁面を照らすことで、空間が明るく感じられ、軽快な印象になります。
人間の視野は、およそ上下に30度ずつ、合計60度です。その視野角に入る壁面が照らされていると、実際の照度(光の明るさのこと)以上に、人間の目に明るく感じさせる効果があるのです。
1つ前の事例では正面に壁がありませんので、外の暗さと対照的に床の明るさが際立っています。
この事例ではダウンライトが壁面を照らすことで、空間が明るく感じられ、軽快な印象になります。
人間の視野は、およそ上下に30度ずつ、合計60度です。その視野角に入る壁面が照らされていると、実際の照度(光の明るさのこと)以上に、人間の目に明るく感じさせる効果があるのです。
ブラケットライト
壁面に取り付ける照明器具、ブラケットライト。壁が明るくなる点は壁際のダウンライトと変わらないように思えますが、照明器具から離れた壁も照らすことができ、光がやわらかい印象になります。
壁面に取り付ける照明器具、ブラケットライト。壁が明るくなる点は壁際のダウンライトと変わらないように思えますが、照明器具から離れた壁も照らすことができ、光がやわらかい印象になります。
間接照明
耳にする機会の増えた「間接照明」。「光源」や「器具」が直接見えない照明のことを言います。建築と一体になっているため「建築化照明」と呼ばれることも。
この事例のように天井を1段高くした「折り上げ天井」に入れると、品よくやわらかい光で空間全体を照らし出します。
間接照明のうち、天井面を照らす照明のことを「コーブ照明」と言います。コーブ照明は天井をより高く感じさせる効果があります。
耳にする機会の増えた「間接照明」。「光源」や「器具」が直接見えない照明のことを言います。建築と一体になっているため「建築化照明」と呼ばれることも。
この事例のように天井を1段高くした「折り上げ天井」に入れると、品よくやわらかい光で空間全体を照らし出します。
間接照明のうち、天井面を照らす照明のことを「コーブ照明」と言います。コーブ照明は天井をより高く感じさせる効果があります。
それに対して、壁面を照らす間接照明のことを「コーニス照明」と呼びます。
コーニス照明は、壁面を明るくすることで、空間を広く感じさせる効果があります。
コーニス照明は、壁面を明るくすることで、空間を広く感じさせる効果があります。
ダイニングテーブルのペンダント照明
ダイニングテーブルの上には、天井から吊り下げるペンダント照明を選ぶケースが多いかと思います。
このペンダント照明、実は2種類あるのをご存じでしょうか。
この事例の照明はシェードがガラスでできているので、壁や天井にも光が当たるタイプ。テーブル面だけでなく周り全体を明るくします。タスク照明でありながら、アンビエント照明の役割も果たしています。
ダイニングテーブルの上には、天井から吊り下げるペンダント照明を選ぶケースが多いかと思います。
このペンダント照明、実は2種類あるのをご存じでしょうか。
この事例の照明はシェードがガラスでできているので、壁や天井にも光が当たるタイプ。テーブル面だけでなく周り全体を明るくします。タスク照明でありながら、アンビエント照明の役割も果たしています。
対して、この事例の照明は、シェードが金属板でできています。
周りに光がほとんどもれず、テーブル面を重点的に照らすタイプですので、タスク照明としての役割に特化しています。
このような照明は、この1台だけだと、周囲がなんとなく暗いな、という印象になりがち。障子の上のブラケットライトのような、空間全体を照らすアンビエント照明をつけておくと安心です。
周りに光がほとんどもれず、テーブル面を重点的に照らすタイプですので、タスク照明としての役割に特化しています。
このような照明は、この1台だけだと、周囲がなんとなく暗いな、という印象になりがち。障子の上のブラケットライトのような、空間全体を照らすアンビエント照明をつけておくと安心です。
ペンダント照明を壁際に吊るすスタイルも、近年人気があります。
空間の中での見せたいコーナーを明るくすることで、見る人の意識がその場所に向かいます。
シェードの模様が陰になって描き出される光の模様も、美しいものですね。
空間の中での見せたいコーナーを明るくすることで、見る人の意識がその場所に向かいます。
シェードの模様が陰になって描き出される光の模様も、美しいものですね。
火を暮らしに取り入れる
火も、煮炊きや暖をとる目的だけではなく、かつては人間の暮らしの中で照明の役割を果たしていました。赤々と揺らめく炎は、人の心と体をリラックスさせる効果があります。
キャンドルは簡単に手に入りますし、お店にはアロマ効果のあるものも多数並んでいます。お気に入りの香りをじっくり探してみるもの楽しいでしょう。
ゆっくりできるお休みの日に、または眠りにつく前の数十分、心を落ち着けて過ごす時間に、取り入れてみることをおすすめします。
火も、煮炊きや暖をとる目的だけではなく、かつては人間の暮らしの中で照明の役割を果たしていました。赤々と揺らめく炎は、人の心と体をリラックスさせる効果があります。
キャンドルは簡単に手に入りますし、お店にはアロマ効果のあるものも多数並んでいます。お気に入りの香りをじっくり探してみるもの楽しいでしょう。
ゆっくりできるお休みの日に、または眠りにつく前の数十分、心を落ち着けて過ごす時間に、取り入れてみることをおすすめします。
この事例はエタノール暖炉です。
キャンドルと比べるとダイナミックな炎ですね。エタノールが燃えると水と二酸化炭素が発生しますが、有害なガスなどを出す心配がありません。そのため、煙突などの設備が要らず、近年は家具の中に組み込むことができたり、マンションの部屋などでも使用することが可能になりました。
キャンドルと比べるとダイナミックな炎ですね。エタノールが燃えると水と二酸化炭素が発生しますが、有害なガスなどを出す心配がありません。そのため、煙突などの設備が要らず、近年は家具の中に組み込むことができたり、マンションの部屋などでも使用することが可能になりました。
キャンドルも暖炉も、裸火はちょっとこわいという方、こんなものはいかがですか? 電池式のキャンドルです。
光はLEDですが、芯の部分に揺らめく炎のようなダミーの灯りがついていて、かなり近くに寄らないとダミーだとわからないくらい。本当によくできていますので、十分リラックス効果が望めますよ。
知っておきたいインテリアの構成要素。次回は「家具」についてお話ししますね。
「新築も、リフォームも。知っておきたいインテリアの構成要素」シリーズをもっと読む:
第1回 床材いろいろ
第2回 壁と天井、どう仕上げる?前編
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光はLEDですが、芯の部分に揺らめく炎のようなダミーの灯りがついていて、かなり近くに寄らないとダミーだとわからないくらい。本当によくできていますので、十分リラックス効果が望めますよ。
知っておきたいインテリアの構成要素。次回は「家具」についてお話ししますね。
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minakocchiさま
おっしゃる通り、雰囲気が壊れてしまう照明も、ぐっと雰囲気を良くする照明もありますね。建物についている照明はなかなか変えられませんが、テーブルランプやスタンドならば比較的かんたんに取り入れることができます!
コメントありがとうございました。
Aya Kamikawaさま
LEDならば、瓶の中に閉じ込めるような使い方も出来そうですね。
照明のこと。このように丁寧に書かれて写真付きですととても参考になります。新築、リフォームする方にぜひご覧になって戴きたいです!
ちょっと後悔話ですが…ダウンライトの大切さ身に沁みています・・・もっと早くに知りたかったです。残念!昨年、北欧ログハウス風の山荘を建てました。照明…ダウンライト…
照明器具会社に見に行くも… 本、雑誌を見ても…ピンときませんでした。
建築家の人に「暗すぎる。光が拡散する」等々言われれば、そうかなあと言う通りにしました。結果、ダウンライトが多すぎ明るすぎて、落ち着かず全く点けていません。また図面を見てもいまひとつ全体の感じがつかめませんでした。器具も予算があり器具とLEDが一体化した物と後でわかりどうすることもできません。調光機を付ければよかったと。調光機も大事ですね。
ありがとうございます。